オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)からのカンピロバクター関連情報
http://www.rivm.nl/


制酸薬の服用により胃腸炎患者が増えている可能性がある
Possibly more cases of gastroenteritis caused by antacids
2014-08-14
http://www.rivm.nl/en/Documents_and_publications/Common_and_Present/Newsmessages/2014/Possibly_more_cases_of_gastroenteritis_caused_by_antacids

(食品安全情報2014年20号(2014/10/01)収載)


 オランダでは、カンピロバクターによる胃腸炎の患者が最近増加している。この傾向には特定のタイプの制酸薬(プロトンポンプ阻害薬)の使用が関連していると考えられる。オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)の研究者は2014年8月14日発行の科学誌『Eurosurveillance』に発表した論文で、高齢者のカンピロバクター感染症の多くがプロトンポンプ阻害薬の使用と関連している可能性があるとしている。


胃腸炎とプロトンポンプ阻害薬の関係

 オランダにおけるカンピロバクター感染症の患者数は、近年、他の欧州諸国と同様、増加傾向にある。オランダでの2011年のカンピロバクター症患者数は102,000人と推定されている。このうち1,100人は感染が重症で入院を必要とした。RIVMの研究者は、制酸薬の一種で、処方の頻度が近年上昇しているプロトンポンプ阻害薬とカンピロバクター症患者数の増加との関連について調査した。その結果、これらの制酸薬の使用とカンピロバクター感染との関連が証明された。2011年にプロトンポンプ阻害薬の使用と関連していたカンピロバクター症患者の割合は、若年者では12%、高齢者では40%と推定された。この差は主に、高齢者(51歳以上)の方が制酸薬を使用している人の割合が高いことによるものである。プロトンポンプ阻害薬の使用者に限定すると、若年者の方が高齢者よりカンピロバクター感染のリスクが高いことが示唆された。これは、高齢者では他の種々の健康上の理由により胃酸の働きが弱まっているためであると考えられる。以上の結果から、入院患者の場合、1,100人のうち約300人が制酸薬の使用と関連付けられた。


作用機序

 胃の内部は酸性環境にあるため、食品中の細菌は通常は死滅する。プロトンポンプ阻害薬を使用すると胃液の酸性度が弱まるため、食品中の細菌が胃の内部で長時間生残し、腸への感染が起こる可能性が高くなる。プロトンポンプ阻害薬の使用は、サルモネラ、大腸菌、リステリアなどの病原菌による胃腸炎の発生にも影響を及ぼす可能性がある。


(発表論文)
Potential association between the recent increase in campylobacteriosis incidence in the Netherlands and proton-pump inhibitor use - an ecological study
Eurosurveillance, Volume 19, Issue 32, 14 August 2014
http://www.eurosurveillance.org/images/dynamic/EE/V19N32/art20873.pdf
http://www.eurosurveillance.org/ViewArticle.aspx?ArticleId=20873



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部