Morbidity and Mortality Weekly Report(CDC MMWR)からのカンピロバクター関連情報
http://www.cdc.gov/mmwr/


主に食品を介して伝播する病原体による感染症の罹患率と動向 − 食品由来疾患アクティブサーベイランスネットワーク(FoodNet)の米国内10カ所のサイトでのデータ(2006〜2013年)
Incidence and Trends of Infection with Pathogens Transmitted Commonly Through Food - Foodborne Diseases Active Surveillance Network, 10 U.S. Sites, 2006-2013
Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR), April 18, 2014 / 63(15);328-332
http://www.cdc.gov/mmwr/pdf/wk/mm6315.pdf (PDF版)
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6315a3.htm?s_cid=mm6315a3_w

(食品安全情報2014年10号(2014/05/14)収載)


 本報告は、食品由来の9種類の病原体による感染症について、食品由来疾患アクティブサーベイランスネットワーク(FoodNet)が収集した2013年の暫定データの概要と2006年以降の動向を解説している。2013年には、合計で患者19,056人、入院患者4,200人および死亡者80人が報告された。ほとんどの病原体で、罹患率は米国の「Healthy People 2020」計画で設定された目標値よりかなり高く、また5歳未満の小児で最も高かった。2010〜2012年と比較すると、2013年の推定罹患率はサルモネラでは低下、ビブリオでは上昇し、これらを含む6種類の病原体(カンピロバクター、リステリア、サルモネラ、志賀毒素産生性大腸菌(STEC)O157、ビブリオ、エルシニア)全体ではあまり変わっていない。6種類の病原体全体の罹患率は2006〜2008年以降、大きな変化がみられていない。FoodNetは、カンピロバクター、クリプトスポリジウム、サイクロスポラ、リステリア、サルモネラ、STEC O157、O157以外のSTEC、赤痢菌、ビブリオおよびエルシニアの検査機関確定患者について、合計で米国人口の約15%(2012年では約4,800万人)をカバーする10カ所のサイトで、住民ベースのアクティブサーベイランスを実施している。


患者数、罹患率および動向

 2013年は、FoodNetにより患者19,056人、入院患者4,200人および死亡者80人が確認された(表)。患者の病原体ごとの内訳(患者数、人口10万人あたりの罹患率)は、サルモネラ(7,277人、15.19)、カンピロバクター(6,621人、13.82)、赤痢菌(2,309人、4.82)、クリプトスポリジウム(1,186人、2.48)、O157以外のSTEC(561人、1.17)、STEC O157(552人、1.15)、ビブリオ(242人、0.51)、エルシニア(171人、0.36)、リステリア(123人、0.26)およびサイクロスポラ(14人、0.03)であった。罹患率が最も高かった年齢層は、サイクロスポラ、リステリアおよびビブリオでは65歳以上、それ以外のすべての病原体では5歳未満の小児であった。

 サルモネラ分離株のうち6,520株(90%)の血清型が明らかになり、上位3位までの血清型はEnteritidisが1,237株(19%)、Typhimuriumが917株(14%)、Newportが674株(10%)であった。ビブリオでは231株(95%)について種の情報が得られ、Vibrio parahaemolyticusが144株(62%)、V. alginolyticusが27株(12%)、V. vulnificusが21株(9%)であった。O157以外のSTECでは458株(82%)についてO血清群が特定され、O26(34%)、O103(25%)、O111(14%)の順に多かった。

 2010〜2012年と比較して2013年の罹患率が有意に低かった病原体はサルモネラ(9%の低下、95%信頼区間(CI)[3%〜15%])、有意に高かったのはビブリオ(32%の上昇、CI[8%〜61%])で、その他の病原体では有意な変化が認められなかった(図1)。2006〜2008年との比較では、カンピロバクターおよびビブリオで2013年の罹患率が有意に高かった(図2)。食品由来の主要な6種類の病原体(上記参照)全体での2013年の罹患率は、2010〜2012年および2006〜2008年それぞれと比較して有意な差がなかった。

 サルモネラの血清型ごとの罹患率は、2010〜2012年と比較すると、2013年はEnteritidis(14%の低下、CI[0.2%〜25%])およびNewport(32%の低下、CI[17%〜44%])で有意な低下が認められたが、Typhimuriumでは有意な変化が認められなかった。しかし、2006〜2008年と比較すると、2013年の罹患率はTyphimuriumのみが有意な低下を示した(20%の低下、CI[10%〜28%])。

 2012年の18歳未満の下痢症発症後の溶血性尿毒症症候群(HUS)患者は62人(18歳未満の人口10万人あたりの罹患率は0.56)で、このうち38人(61%)が5歳未満の小児であった(5歳未満の人口10万人あたりの罹患率は1.27)。2006〜2008年と比較すると、5歳未満(36%の低下、CI[9%〜55%])および18歳未満(31%の低下、CI[7%〜49%])ともに2012年の罹患率は有意に低下していた。

 培養によって感染が確定した患者(一部の患者はCIDT(culture-independent diagnostic test:培養非依存の診断検査)でも陽性)に加え、CIDTで陽性となったが培養による確認がなされなかった患者1,487人が報告された。培養で確認されなかったのは、臨床検査機関または公衆衛生検査機関で培養検査が行われなかったこと、または培養検査が行われたが病原体が増殖しなかったことが理由である。このカテゴリーのカンピロバクター症患者1,017人のうち、430人(42%)が培養検査なし、587人(58%)が培養検査で増殖なしであった。同じくこのカテゴリーのSTEC感染患者247人については、59人(24%)が培養検査なし、188人(76%)が培養検査で増殖なしであった。公衆衛生検査機関に送付されたCIDTでSTEC陽性の192検体の培養液のうち65検体(34%)で志賀毒素陽性が確認された。CIDTで陽性となったが培養による確認がなされなかったのは、上記以外に、赤痢菌(147人)、サルモネラ(69人)、ビブリオ(4人)、リステリア(2人)およびエルシニア(1人)の各感染患者であった。


表:培養により確定した細菌感染および検査機関で確定した寄生虫感染の患者数、入院患者数および死亡者数*(病原体ごと、米国FoodNet、2013年)

 N/A=数値なし;STEC=志賀毒素産生性大腸菌
 * 暫定データ
 † 人口10万人あたり
 § 「Healthy People 2020」で設定されたカンピロバクター、リステリア、サルモネラ、STEC O157、ビブリオおよびエルシニア感染の人口10万人あたりの罹患率の目標値
 ¶ これら病原体については上記の目標値の設定なし


図1:培養により確定した細菌感染および検査機関で確定した寄生虫感染の2013年の罹患率と2010〜2012年の平均罹患率との比較(病原体ごとの推定変化率、米国FoodNet)

 confidence interval (CI)=信頼区間;STEC=志賀毒素産生性大腸菌
 * 有意な変化なし:95%CIがNo changeラインの上下両方にわたる
  有意に上昇:推定変化率および95%CIがNo changeラインより上
  有意に低下:推定変化率および95%CIがNo changeラインより下


図2:培養により確定したカンピロバクター、STEC O157、リステリア、サルモネラおよびビブリオ感染の各年の罹患率の2006〜2008年を基準としたときの相対値†(米国FoodNet、2006〜2013年)

 † 各折れ線は、年ごとの罹患率を2006〜2008年の平均値と比較したときの相対値を示しており、実際の罹患率を示すものではない。


(関連記事)
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National report card on food safety indicates more can be done
April 17, 2014
http://www.cdc.gov/media/releases/2014/p0417-2013-foodborne-infections.html

(CIDRAP関連記事)
米国疾病予防管理センターのデータによると食品由来感染症の発生状況に改善ほとんどなし
CDC sees little overall progress on foodborne infections
CIDRAP News, Apr 18, 2014
http://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2014/04/cdc-sees-little-overall-progress-foodborne-infections



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部