(食品安全情報2014年25号(2014/12/10)収載)
英国食品基準庁(UK FSA)は、生鮮鶏肉のカンピロバクター汚染について年間調査を実施しており、今回その上半期の中間集計結果を発表した。FSAはカンピロバクター対策を食品安全上の最優先課題としており、この問題に取り組むためフードチェーン全体において組織的な活動を牽引している。
今回発表されたデータにより以下の結果が示された。
第1四半期から第2四半期にかけて全体的に汚染率の上昇が認められた。これは、気温の上昇によりカンピロバクターの増殖がしばしば見られる夏季に第2四半期の検体採取が行われたことが原因と考えられる。
本調査は2014年2月〜2015年2月の間の12カ月間実施され、英国の小売チェーン店舗および小規模な個人商店・食肉店で販売される丸ごとの鶏肉計4,000検体について検査が行われる予定である。
カンピロバクターは十分な加熱調理により死滅するが、英国内で発生する食中毒ではカンピロバクター症が最も多く、その年間患者数は28万人と推定される。家禽肉がこれらのカンピロバクター症患者の主要な感染源となっている。
FSAは今回の結果から、食品業界、特に小売業者は生鮮鶏肉のカンピロバクター汚染低減のため一層努力する必要があることが示されたとしている。調査はまだ半ばであるが、鶏肉検体の18%で最高レベルの1,000 cfu/gを上回るカンピロバクター汚染が検出され、70%以上で何らかのレベルのカンピロバクターが検出されている。これらより、現状は消費者がカンピロバクターから保護される状況とはかけ離れている。
鶏肉を十分に加熱し、ガイドラインに沿って適切に調理すれば、公衆衛生上のリスクは極めて小さい。一部の小売業者に課題に取組む兆しが認められる。この動きが強まれば、多くの消費者の感染リスクを低減させる持続的な改善が期待できる。
鶏肉業界および小売業者のカンピロバクター対策には、以下のような取組みを含むいくつかの新たな進展が見られている。
小売業者別の検査結果(表)
FSAは、小売業者別のデータの解釈は慎重に行われなければならないと助言している。各小売業者および「その他(others)」のカテゴリーの業者の結果について信頼区間(CI)が記載されている。CIは推定値の上限と下限を示しており、検体数を反映している。
本調査の現段階で得られた結果では、CIを考慮に入れると、最高レベル(>1,000 cfu/g)のカンピロバクター汚染を示す鶏肉検体の割合が小売業界全体の平均より低かった主要小売業者はTesco社のみであった。また、最高レベルのカンピロバクター汚染を示す鶏肉検体の割合が業界の平均より高かった主要小売業者はAsda社のみであった。しかし、今回の結果から、最終製品でのカンピロバクター汚染低減のための業界の統一目標を達成した小売業者は1社もないことが示唆された。
*「その他(others)」のカテゴリーには、Kantar社の2010年のデータから市場シェアが小さいと判断されたスーパー(Lidl社、Aldi社、Iceland社など)、コンビニエンスストア、個人商店、食肉店などが含まれる。
FSAは、生の鶏肉が消費者に販売される前にカンピロバクター汚染レベルを可能な限り低減させるため、その生産の各段階で対策を講じるよう業界に働きかけている。鶏肉は、消費者が以下の助言に従い適正な調理手順を実践する限り安全である。