欧州食品安全機関(EFSA)からのカンピロバクター関連情報
http://www.efsa.europa.eu/


ヒト、動物および食品由来の人獣共通感染症細菌の抗菌剤耐性が引き続き広く確認される(EFSA/ECDCの報告書)
Antimicrobial resistance remains commonly detected in bacteria in humans, animals and food: EFSA-ECDC report
25 March 2014
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/3590.htm (報告書PDF)
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/140325.htm

(食品安全情報2014年10号(2014/05/14)収載)


 欧州食品安全機関(EFSA)と欧州疾病予防管理センター(ECDC)が共同で発行した報告書「欧州連合(EU)域内のヒト、動物および食品由来の人獣共通感染症細菌と指標細菌の抗菌剤耐性に関する年次要約報告書(2012年)」(The European Union Summary Report on antimicrobial resistance in zoonotic and indicator bacteria from humans, animals and food in 2012)から、ヒト、動物および食品由来の人獣共通感染症細菌の抗菌剤耐性が引き続き広く確認された。報告書の要旨の一部を紹介する。


 2012年は、人獣共通感染症細菌の抗菌剤耐性に関するデータがEU加盟26カ国から欧州委員会(EC)およびEFSAに、19加盟国からECDCにそれぞれ提出された。また、EU非加盟の欧州3カ国からもデータが提出された。EFSAおよびECDCは、英国動物衛生獣医学研究所(AHVLA)およびHasselt大学(ベルギー)の協力のもとにこれらのデータを解析し、その結果を本EU年次要約報告書として発表した。抗菌剤耐性に関するデータは、ヒト患者・動物・食品由来のサルモネラおよびカンピロバクター分離株、および動物・食品由来の指標大腸菌および指標腸球菌分離株について報告されている。加盟数カ国から動物・食品におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の存在に関するデータが報告され、2カ国からは同菌分離株の抗菌剤感受性のデータが追加報告された。

 サルモネラ、カンピロバクターおよび指標大腸菌でフルオロキノロン系薬剤(シプロフロキサシン)への耐性または感受性低下を示す分離株の割合が高いことは、依然として懸念すべき問題である。食品・動物由来のサルモネラ属菌分離株では、肥育七面鳥、ブロイラー肉、七面鳥およびブロイラー由来株でシプロフロキサシン耐性率が最も高く、報告した加盟国の平均は由来ごとに46.0〜86.2%の範囲であった。シプロフロキサシン耐性は、繁殖鶏群や産卵鶏群由来株よりブロイラー由来株で高頻度に報告された。ニワトリ(Gallus gallus)から分離されたサルモネラ属菌分離株のシプロフロキサシンおよびナリジクス酸耐性率は、加盟2カ国で2006〜2012年に大幅な上昇傾向がみられ、別の加盟1カ国では低下傾向がみられた。指標大腸菌については、ブロイラーおよびブタ由来の分離株でそれぞれ52.7%および7.5%のシプロフロキサシン耐性率が認められた。さらに、ニワトリ、ブロイラー肉、ブタおよびウシ由来のカンピロバクター分離株で、フルオロキノロン系薬剤への高レベルから極めて高レベルの耐性率が観察された(ブタ由来Campylobacter coli分離株の32.0%からブロイラー肉由来C. coli分離株の82.7%まで)。

 第三世代セファロスポリン系薬剤であるセフォタキシムへの耐性は、ニワトリ、七面鳥、ブタ、ウシ、ブロイラー肉、豚肉および牛肉由来のサルモネラ属菌分離株において0.4〜4.5%の非常に低レベルから低レベルで観察され、ニワトリ、ブタおよびウシ由来の指標大腸菌分離株では1.4〜10.2%の低レベルから中レベルで観察された。ニワトリ、ブタ、ウシおよびブロイラー肉由来のカンピロバクター分離株ではエリスロマイシン耐性が0.4%(ニワトリ由来C. jejuni)から23.9%(ブタ由来C. coli)の範囲で検出された。

 食肉および動物由来のサルモネラ分離株では、テトラサイクリン、アンピシリンおよびスルホンアミドへの耐性が9.5〜66.7 %の範囲で示され、ブロイラー、産卵鶏、繁殖鶏およびウシ由来の分離株に比べブタおよび七面鳥由来の分離株で耐性率が高かった。サルモネラ分離株のシプロフロキサシンおよびナリジクス酸耐性率は、繁殖鶏、産卵鶏、ブタおよびウシ由来の分離株(5.8〜25.5%)に比べ肥育七面鳥およびブロイラー由来の分離株(41.5〜86.2%)の方が高かった。食肉および動物由来のカンピロバクター分離株では最高76.8%までのテトラサイクリン耐性が認められたが、ゲンタマイシン耐性率は4.1%未満とかなり低かった。

 ブロイラーおよびブタ由来の指標大腸菌分離株では、テトラサイクリン、アンピシリンおよびスルホンアミドへの耐性率が29.5〜54.7%の範囲で認められたが、産卵鶏由来の分離株では耐性率は18.3〜25.2%と低かった。ウシの場合、これらの抗菌剤への耐性率は、肥育子牛などの若齢牛由来の分離株では34.7〜46.7%の範囲であったが、成長した乳牛などの比較的高齢の牛由来の分離株では耐性率は低かった。概して、これら3種類の抗菌剤に対する耐性率は、ブロイラーおよびブタ由来の分離株よりウシおよび産卵鶏由来の分離株の方が低かった。

 分離株ごとにデータを報告した国では、ブロイラー、ブタおよびウシ由来のサルモネラ分離株が総じて高い多剤耐性(疫学的カットオフ値を用いた判定で少なくとも3つのクラスの抗菌剤に耐性)率を示した。しかし、臨床上重要な抗菌剤であるシプロフロキサシンおよびセフォタキシムの両剤に対する共耐性(感受性同時低下)は、サルモネラ属菌のごく一部の分離株でしか認められなかった。ブロイラー由来のC. jejuni分離株では多剤耐性が認められないか、または非常に低レベルまたは低レベルで検出され、シプロフロキサシンおよびエリスロマイシンへの共耐性は低レベルで検出された。ブロイラー、産卵鶏および七面鳥由来の一部のサルモネラ分離株では、特にS. KentuckyおよびS. Infantisでシプロフロキサシンへの高レベルの耐性が認められたが、ブタおよびウシ由来分離株では認められなかった(豚肉由来株では認められた)。S. Infantisをはじめとする少数の種類の血清型の動物・食品由来サルモネラ分離株には、5剤耐性を示す株が存在することがわかった。これは、以前、流行的な伝播を示したサルモネラに5剤耐性を示した血清型があったことから、注目すべき事実である。

 動物由来分離株の抗菌剤耐性レベルが統計学的に有意な経時的傾向を示したケースが数カ国で認められた。サルモネラ分離株の場合、耐性レベルの上昇傾向より低下傾向を示した国が多く、カンピロバクター分離株の場合は統計学的に有意な変動傾向の大部分が上昇傾向であった。



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部