欧州食品安全機関(EFSA)からのカンピロバクター関連情報
http://www.efsa.europa.eu/


欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症、その病原体および食品由来疾患アウトブレイクの傾向と感染源に関する年次要約報告書(2012年)
The European Union Summary Report on Trends and Sources of Zoonoses, Zoonotic Agents and Food-borne Outbreaks in 2012
EFSA Journal 2014;12(2):3547
Published: 19 February 2014, Approved: 22 January 2014
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/doc/3547.pdf (報告書PDF)
http://ecdc.europa.eu/en/publications/Publications/EU-summary-report-zoonoses-food-borne-outbreaks-2012.pdf (報告書PDF、ECDCサイト)
http://ecdc.europa.eu/en/publications/_layouts/forms/Publication_DispForm.aspx?List=4f55ad51-4aed-4d32-b960-af70113dbb90&ID=1029 (ECDCのサイト)
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/3547.htm

(食品安全情報2014年5号(2014/03/05)収載)


 2012年は欧州連合(EU)加盟27カ国から、人獣共通感染症の発生、その病原体および食品由来疾患アウトブレイクに関するデータが欧州委員会(EC)および欧州食品安全機関(EFSA)に提出された。また、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は人獣共通感染症のヒト患者に関するデータを提供した。さらに、EU非加盟の欧州3カ国からもデータの提供があった。EFSAおよびECDCは協力してデータを分析し、その結果を今回の年次要約報告書に発表した。本報告書には15種類の人獣共通感染症、および食品由来疾患アウトブレイクに関するデータが収載されている。

 カンピロバクター症は、2011年に比べてEU域内の発生率が低下し、確定患者数が減少した。しかし、カンピロバクター症は依然として最も報告患者数の多い人獣共通感染症で、2012年の確定患者数は計214,268人であった。カンピロバクター症確定患者数は明確な季節変動を示し、また過去5年間(2008〜2012年)に有意な増加傾向を示してきた。カンピロバクター陽性の食品検体および動物検体の割合は前年までとほぼ同レベルであり、ブロイラー肉のカンピロバクター汚染率が依然として高かった。

 サルモネラ症は患者数が2011年に比べて4.7%減少した。EU域内では2008年から2012年にかけて、患者数の統計的に有意な減少傾向が見られている。2012年の確定患者数は計91,034人であった。サルモネラ症患者数の減少は、家禽群におけるサルモネラ管理プログラムの成功が主な要因であると考えられる。ほとんどの加盟国で家禽でのサルモネラ低減目標が達成され、家禽群のサルモネラ汚染は減少しつつある。食品では、ブロイラー生鮮肉でサルモネラが最も頻繁に検出された。EUのサルモネラ基準を満たしていない製品の割合が高かった食品カテゴリーは、ひき肉・加工肉、食肉製品、および生きた二枚貝であった。

 リステリア症は患者数が2011年よりわずかに増加し、2012年の確定患者数は計1,642人であった。EU域内の患者数は季節変動を示し、2008年から2012年にかけて統計的に有意なゆるやかな増加傾向がみられる。患者の致死率は前年までと同様に高く17.8%であった。2012年はリステリア症による死亡者が加盟18カ国から計198人報告され、2006年以降で最も多かった。小売のそのまま喫食可能な(ready-to-eat)食品から法的な安全基準を超える菌数のリステリア(Listeria monocytogenes)が検出されることはほとんどなかった。この基準を超える検体は水産食品で最も多く見つかった。

 ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)感染症は計5,671人の確定患者が報告され、2011年に比べ40%の減少であった。血清群が判明した患者ではO157が最も多く、次いでO26 および O91であった。EU域内の確定患者数は2008年から2012年にかけて増加傾向がみられており、2011年以前でも2008〜2010年にかけての増加は有意である。加盟国で生鮮牛肉からのヒト病原性VTEC株の検出はまれであり、また菌数のレベルも低かった。牛肉およびウシ個体から検出されたヒト病原性VTEC株の血清群は、O157、O26、O91、O103、O145などであった。

 ウシ結核菌感染の確定患者数は125人であった。2011年より減少し、加盟数カ国が大部分の患者を占めていた。EU域内のウシでの牛結核の有病率はわずかに上昇したが、依然として非常に低いレベルである。有病率のこのわずかな上昇は、特定の1加盟国での4年連続の上昇による。

 ブルセラ症はEU域内の確定患者数が2011年とほぼ変わらず計328人であった。ブルセラ陽性のウシ、ヒツジおよびヤギ群の数は減少が続いているが、2011年からの減少はわずかであった。

 トリヒナ症の2012年の確定患者数は301人であった。2011年よりわずかに増加したが、2009年以前と比べると低い水準が続いている。ブタのトリヒナ陽性率は2011年と同レベルで、飼育動物より野生動物で陽性率が高かった。しかし、原因食品が確定したアウトブレイク9件のうち7件は豚肉の喫食が原因であった。

 トキソプラズマは2011〜2012年にEU域内のブタ、ヒツジ、ヤギ、野生イノシシおよび野生のシカで検出が報告された。また、ネコ(自然宿主)、ウシ、イヌ、およびその他の数種類の動物種にも検出され、様々な飼育・野生動物種に幅広く分布することが示された。

 食品由来疾患アウトブレイクは計5,363件が報告され、患者数は55,453人、入院患者数は5,118人、死亡者数は41人であった。報告されたアウトブレイクのほとんどはサルモネラ、細菌性毒素、ウイルス、およびカンピロバクターが原因で発生していた。食品由来疾患アウトブレイクの感染源となった食品は、卵・卵製品が最も多く、次いで複合食品、魚・魚製品であった。また、水由来のアウトブレイクが16件報告され、その病因物質はカリシウイルス、VTEC、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium parvum)およびロタウイルスであった。


(EFSA関連記事)

欧州食品安全機関(EFSA)および欧州疾病予防管理センター(ECDC)による報告書 ―カンピロバクターはわずかに減少、サルモネラは減少、リステリアは増加
Campylobacter decreases slightly, Salmonella down, Listeria up - EFSA and ECDC say
19 February 2014
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/140219.htm

(ECDC関連記事)

欧州疾病予防管理センター(ECDC)と欧州食品安全機関(EFSA)による人獣共通感染症、その病原体および食品由来疾患アウトブレイクに関する年次報告書:カンピロバクターはわずかに減少、サルモネラは減少、リステリアは増加
ECDC/EFSA annual report on zoonoses and food-borne outbreaks shows Campylobacter decreasing slightly, Salmonella down and Listeria monocytogenes up
19 Feb 2014
http://ecdc.europa.eu/en/press/news/_layouts/forms/News_DispForm.aspx?List=8db7286c%2Dfe2d%2D476c%2D9133%2D18ff4cb1b568&ID=956&RootFolder=%2Fen%2Fpress%2Fnews%2FLists%2FNews&Source=http%3A%2F%2Fecdc%2Eeuropa%2Eeu%2Fen%2FPages%2Fhome%2Easpx&Web=86661a14%2Dfb61%2D43e0%2D9663%2D0d514841605d



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部