欧州疾病予防管理センター(ECDC)からのカンピロバクター関連情報
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欧州の感染症年次報告書(2013年)- 2011年のサーベイランスデータおよび2012年の疫学情報活動により得られたデータ
ECDC publishes its Annual Epidemiological Report
19 Dec 2013
http://www.ecdc.europa.eu/en/publications/Publications/annual-epidemiological-report-2013.pdf (年次報告書PDF)
http://ecdc.europa.eu/en/press/news/_layouts/forms/News_DispForm.aspx?List=8db7286c%2Dfe2d%2D476c%2D9133%2D18ff4cb1b568&ID=928&RootFolder=%2Fen%2Fpress%2Fnews%2FLists%2FNews&Source=http%3A%2F%2Fecdc%2Eeuropa%2Eeu%2Fen%2FPages%2Fhome%2Easpx&Web=86661a14%2Dfb61%2D43e0%2D9663%2D0d514841605d

(食品安全情報2014年3号(2014/02/05)収載)


 欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、2011年のサーベイランスデータおよび2012年の疫学情報活動により得られたデータを分析し、ECDCがモニターしている50種類以上の疾患と病原体の動向の概要をまとめた感染症年次報告書(2013年)「Annual Epidemiological Report 2013」を発行した。

 本報告書は、欧州連合(EU)加盟各国、リヒテンシュタイン、アイスランドおよびノルウェーを対象とした届出義務疾患サーベイランスプログラムの一環としてECDCがモニターしている疾患および病原体について、その動向を概説している。

 本報告書には、さまざまな感染症の動向に加え、ECDCが医療関連の感染の点有病率や抗菌剤使用について欧州の救急病院で初めて行った調査の結果も収載されている。この調査は、2011〜2012年に欧州30カ国の病院1,000カ所以上で実施された。

 本報告書の最終章では、ロンドンオリンピックや欧州サッカー選手権などを例に挙げ、大規模なイベントの開催時などにおける健康への潜在的脅威をECDCがどのようにモニターしているか(疫学情報活動)について解説している。

 本報告書の食品・水由来疾患および人獣共通感染症の部分から抜粋を紹介する。


炭疽

 2011年は、欧州連合・欧州経済領域(EU/EEA)加盟29カ国が炭疽に関するデータを提出した。計6人の確定患者が報告され、内訳はギリシャ(2人)、ルーマニア(2)、ブルガリア(1)、およびフランス(1)であった。薬物使用者の間で発生した2010年のアウトブレイク以降、患者数は散発性患者が1年間に数人報告される程度の通常レベルに戻った。


ボツリヌス症

 2011年はEU加盟27カ国、ノルウェーおよびアイスランドがデータを提出し、ボツリヌス症患者計141人が報告された。確定患者はこのうち112人で、2010年の104人より8%増加した。イタリア、ポーランド、ルーマニアおよびフランスの確定患者が全体の75%を占めた。

 報告患者数の2007〜2011年の全体的な傾向は、平均して10人未満/月で安定しており、2007〜2011年の5年間の患者発生率は人口10万人あたり0.02〜0.03であった。

 2011年にECDCはボツリヌス症に関連した公衆衛生上の脅威3件をモニターしたが、2012年はそれとは対照的に、通常の疫学情報活動ではボツリヌス症の脅威は1件も特定されなかった。2011年9月、2件の家庭内アウトブレイク(相互の疫学的関連はない)がバルセロナで発生した。これらはスペイン国内において過去25年間で初めて報告されたボツリヌス症アウトブレイク事例であった。両アウトブレイクとも可能性のある感染源は家庭料理であった。最初の家庭内アウトブレイクでは、食事を共にした家族5人が感染し、まれにしか報告されないClostridium baratii(F型神経毒素産生性)が関連していた。2番目の家庭内アウトブレイクは最初のアウトブレイクの数日後に発生し、自家製パテに存在していたと考えられるA型毒素(C. botulinum由来)が原因であった。また2011年にはオーストリアでC. botulinumのB型毒素によるボツリヌス症患者2人の家族クラスターが報告されたが、原因食品は特定されなかった。


ブルセラ症

 2011年はEU/EEA加盟28カ国(デンマーク、リヒテンシュタインを除く全加盟国)がデータを提出し、確定患者計332人が報告された。EU/EEA加盟国全体での確定患者の発生率は人口10万人あたり0.07で、確定患者358人が報告された2010年と同レベルであった。2010年までと同様、ギリシャ、スペインおよびポルトガルの報告患者が多く、確定患者全体の68%を占めた。EU/EEA加盟国の報告患者数は、2007年以降、大幅に減少している。


カンピロバクター症

 2011年はEU/EEA加盟27カ国がデータを提出し、確定患者計218, 380人が報告された。EU/EEA全体での粗発生率は人口10万人あたり69.54で、2010年より0.76上昇した。しかし、2010年までと同様、フランス、オランダおよびスペインのサーベイランスシステムでは全人口が対象とはなっていないことから、これらの国の発生率は計算されていない。確定患者の発生率が最も高かった国はチェコ共和国、次いでルクセンブルクで、それぞれ10万人あたり177.95、137.54であった。

 EUレベルでのカンピロバクター症確定患者発生率は、2007〜2011年に統計学的に有意に上昇している。この有意な上昇傾向は加盟13カ国(ベルギー、キプロス、デンマーク、エストニア、フランス、ドイツ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ)により報告されたが、一方、有意な低下傾向が認められたのはオーストリアにおいてのみであった。


コレラ

 2011年は、7カ国から患者計36人(確定患者35人)が報告された。患者の内訳は、英国が26人(72.2%)、ドイツが4人、オランダが2人、デンマーク、フランス、スペインおよびスウェーデンが各1人であった。報告患者はすべて国外旅行に関連していた。

 2011年の報告患者数は2010年までと比べ増加した。この増加は、2011年の英国の患者数(26人)が同国の2010、2009、2008および2007年の患者数(それぞれ13、16、16および4人)より増加したことによる。


クリプトスポリジウム症

 2011年はEU/EEA加盟21カ国がデータを提出し、確定患者計5,697人が報告された。人口10万人あたりの患者発生率はアイルランド(9.04)が最も高く、次いで英国(5.76)、スウェーデン(4.03)であった。EU/EEA加盟国全体での粗発生率は10万人あたり1.95であった。ベルギーおよびスペインのクリプトスポリジウム症サーベイランスシステムでは全人口が対象とはなっていないことから、全体の発生率の算出の際にこれらの国の確定患者データは除外されている。EU/EEA加盟国の過去5年間の確定患者の発生率は比較的安定している。


エキノコックス症

 2011年はEU/EEA加盟26カ国がデータを提出し、確定患者計784人が報告され、2010年より6.2%の増加であった。EU/EEA加盟国全体での確定患者の発生率は人口10万人あたり0.18で、2006〜2009年の4年間に統計学的に有意な低下傾向がみられて以後、2009〜2011年の間はあまり変化していない。2007年以降、合計患者数の12カ月移動平均(moving average)は比較的安定している。2010年と同様、ブルガリアとドイツの確定患者が全体の大多数(57.2%)を占めた。確定患者の発生率が最も高かった国はブルガリア(10万人あたり4.09)で、EUの平均の20倍以上であった。エキノコックス症患者の致死率は0.4 %であった(死亡者はドイツの1人とルーマニアの2人)。


ベロ毒素/志賀毒素産生性大腸菌(VTEC/STEC)感染症

 2011年はEU/EEA加盟27カ国がデータを提出し、確定患者計9,534人が報告され、これは2010年(3,715人)の2.5倍であった。発生率も上昇し、2010年の人口10万人あたり1.00に対し、2011年は2.54であった。この著しい増加の主な原因は、2011年初夏にスプラウトに関連してドイツで発生したベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)O104:H4の大規模アウトブレイクである。

 2011年はドイツの確定患者(5,558人)が全体の58.6%を占め、発生率もドイツが10万人あたり6.80で最も高かった。確定患者報告数の2010年に比べての増加が加盟18カ国から報告された。2009〜2011年にオランダの確定患者報告数は増加を続け、2011年は2009年から169%の増加であった。EUの確定患者数は、2007年以降、2011年にVTEC O104:H4アウトブレイクにより急増するまで安定していた。

 2011年は、確定患者702人(7.4%)について血清型(OおよびH抗原の型)が報告され、O血清群については確定患者の56%で報告された。最も多く報告されたO血清群はO157(41%)で、次いでO104(20%)であった。2010年までと同様、英国とアイルランドがO157に感染した確定患者の76%を占めたが、O104感染の確定患者については、同血清群による全国的な大規模アウトブレイクが発生したドイツが全体の89%を占めた。

 溶血性尿毒症症候群(HUS)に関するデータはEU/EEA加盟15カ国から報告され、2011年はVTEC感染確定患者(n=9,534)のうち1,006人(11%)がHUSを発症した。これらのHUS患者のうち、VTEC O104が原因と報告された患者は318人のみであったが、ドイツから報告された血清群不明のHUS患者411人の大半はO104アウトブレイクの患者と推測される。HUS患者の28%(n=162)が0〜4歳の小児で、この年齢グループでは血清群O157およびO26の感染が優勢であった。HUS患者が2番目に多かったのは25〜44歳の成人で、この年齢グループではO104の感染が優勢(91%)であった。O104は15歳を超える全年齢グループのHUS患者で優勢な血清群であった。

 2011年に報告された確定患者9,534人は、2010年までの患者数と比べると大幅な増加となっている。この増加は、汚染された生のスプラウトの喫食に関連して稀な病原型のVTECであるO104:H4によりドイツで発生したアウトブレイクが原因であった。このアウトブレイクの規模は、これまでに報告されたHUSアウトブレイクの中で群を抜いており、成人女性を中心に845人のHUS患者が報告された。

 2011年6月には、フランスでもVTEC O104:H4に関連したアウトブレイクが報告された。行事への参加後にHUSや出血性下痢を発症した患者が計15人報告された。調査により、原因食品はこの行事で供されたスプラウトであると考えられた。患者5人からVTEC O104:H4株が分離され、これらの分離株はドイツのアウトブレイク株と遺伝学的特性および病原性が類似していた。

 ドイツのアウトブレイクは、喫食用スプラウトの種子の生産に関連するVTECについての欧州の食品衛生規則の改正につながった。トレーサビリティ、輸入認証および施設の認可などに関する規則について改正が行われた。改正後の規則は2013年に発効した。この規則改正では、今まで食料生産動物に関連するとされてきた病原微生物について、生の野菜・種子での検査の重要性が強調されている。


ジアルジア症

 2011年はEU/EEA加盟23カ国がデータを提出し、確定患者計16,475人が報告された。発生率が最も高かった国はブルガリア(人口10万人あたり26)で、次いでエストニア(18)、スウェーデン(11)、アイスランド(10)であった。EU/EEA加盟国全体での粗発生率は10万人あたり5. 49であった。ベルギー、スペインおよびルーマニアのジアルジア症サーベイランスシステムでは全人口が対象とはなっていないことから、これらの国の発生率は計算されていない。2007〜2011年のEU/EEA加盟国全体の確定患者発生率は比較的一定である。


A型肝炎

 2011年はEU/EEA加盟29カ国がデータを提出し、確定患者計12,659人が報告され、発生率は人口10万人あたり2.51であった。確定患者の発生率が最も高かった国はルーマニア(10万人あたり12.05)で、次いでエストニア(11.42)、スロバキア(7.36)であった。その他の国の発生率はすべて3未満であった。確定患者が最も多く報告された国はブルガリア(5,587人)で、次いでルーマニア(2,581)、フランス(1,115)であった。

 2007〜2011年の間、全体の確定患者の発生率は、ピークとなった2009年の人口10万人あたり3.51を挟んで2007年の2.81から2011年の2.51へと低下した。報告患者数は2009年以降減少傾向にある。

 確定患者のうち2,801人について感染した国が報告された。2,106人が国内感染で、それ以外(695人)は国外旅行中の感染であった。国外旅行関連の患者を報告した国は、オーストリア(2人)、デンマーク(8)、エストニア(8)、フィンランド(10)、フランス(348)、ドイツ(227)、ギリシャ(7)、ハンガリー(5)、アイルランド(4)、リトアニア(3)、マルタ(2)、オランダ(51)、ポルトガル(4)、スロベニア(2)およびノルウェー(14)であった。


レプトスピラ症

 2011年はEU/EEA加盟27カ国がデータを提出した。アイスランド、リヒテンシュタインおよびノルウェーは未報告である。確定患者計526人が報告され、発生率は人口10万人あたり0.11であった。発生率が最も高かった国はルーマニア(10万人あたり0.46)で、次いでスロベニア(0.44)であった。最も多くの確定患者を報告したのはルーマニア(98人)で、次いでフランス(71人)であった。

 確定患者526人のうち146人は国内感染、64人は国外旅行関連と報告され、残りの316人については感染した国が不明であった。国外旅行関連患者を報告した国は、ベルギー(7人)、デンマーク(4)、フランス(3)、ドイツ(19)、アイルランド(2)、オランダ(17)および英国(12)であった。確定患者数は2007年以降減少傾向にあるが、2010〜2011年はあまり変化していない。


リステリア症

 2011年はEU/EEA加盟28カ国がデータを提出し、リヒテンシュタインおよびポルトガルは未報告である。確定患者計1,516人が報告され、発生率は人口10万人あたり0.31であった。発生率が最も高かったのはデンマークで(10万人あたり0.88)、次いでフィンランド(0.80)であった。確定患者数が最も多かった国はドイツおよびフランスで、それぞれ330人および282人であった。

 確定患者1,516人のうち1,186人が国内感染、12人が国外旅行関連として報告されたが、残り318人の国外旅行関連情報は不明であった。報告患者数には季節性のピークのレベルの違いによる多少の年変動があるものの、発生動向に大きな変化はみられていない。


サルモネラ症

 2011年はEU/EEA加盟29カ国から確定患者計96,883人が報告された。全体での確定患者発生率は人口10万人あたり20.4であった。

 確定患者の発生率が最も高かった国はチェコ共和国で(10万人あたり80.69)、次いでスロバキア(71.70)、リトアニア(70.70)であった。ギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガルおよびルーマニアの5カ国の発生率は10万人あたり10未満であった。

 全体の確定患者発生率は2007〜2011年の間に着実に低下した。この5年間にEU加盟10カ国(オーストリア、デンマーク、フィンランド、ドイツ、ギリシャ、イタリア、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、スウェーデン)の報告患者数は統計学的に有意(p<0.001)な減少傾向を示した。フランスのみが患者数の有意な増加傾向を示した。増加の理由は、2008年以降、民間検査機関が国立サルモネラリファレンスセンターにサルモネラ分離株を送付する割合が上昇したことと、Salmonella Typhimurium単相性変異株による大規模なアウトブレイク2件が発生したことである。

 その他、2012年の疫学情報活動により得られたデータから、以下の4件のアウトブレイクの概要が記載されている。

  • 2011〜2013年に複数国にわたり発生した国外旅行関連ではないサルモネラ(S. Stanley)感染アウトブレイク
  • スイカに関連したS. Newport感染アウトブレイク
  • スモークサーモンに関連したS. Thompson感染アウトブレイク
  • 感染源不明の単相性S. Typhimurium PT U323感染アウトブレイク

細菌性赤痢

 2011年はEU/EEA加盟28カ国から確定患者計7,322人が報告された。細菌性赤痢は比較的まれな感染症であり、EU/EEA加盟国全体での確定患者の発生率は人口10万人あたり1.61であった。

 2008〜2011年の間、報告患者数が増加または減少した国があるが、EU/EEA加盟国全体ではあまり変化していない。

 確定患者の発生率はブルガリアが最も高く10万人あたり10.63で、次いでスロバキアが9.86、スウェーデンが4.82であった。


トキソプラズマ症(先天性)

 2011年はEU加盟19カ国からデータが提出され、確定患者計29人が報告された。これは2010年の報告患者数の10分の1程度であり、2010年に報告患者数の87%を占めたフランスからサーベイランスデータを本報告書作成時点までに入手できなかったことが原因である。患者の発生を報告したのは6カ国のみで、13カ国は患者発生なしと報告した。EU全体の確定患者の発生率は1歳未満の人口10万人あたり1.01であった。


トリヒナ症

 2011年はEU/EEA加盟30カ国中27カ国がデータを提出し、患者計363人が報告された。13カ国は患者発生なしと報告した。確定患者は268人で2010年より20.2%多かった。2011年の確定患者の発生率は人口10万人あたり0.06で2010年と同程度であり、2007〜2009年に比べると大幅に低下した。確定患者発生率の2009年からの継続的な低下は、主にブルガリアおよびルーマニアでの報告患者数の大幅な減少の結果である。

 2011年は8カ国が2010年より多い確定患者数を報告した。ラトビアは、2010年から2011年にかけての確定患者数の増加が最大で(9人から50人に増加)、2011年の発生率も最高であった(10万人あたり2.24)。一方リトアニアは、2010年から2011年にかけての確定患者数の減少が最大であった(77人から29人)。2011年には、加盟7カ国から計17件の食品由来アウトブレイクが報告された。


野兎病

 2011年はEU/EEA加盟26カ国がデータを提出した。デンマーク、オランダ、ポルトガルおよびリヒテンシュタインは未報告である。全体で確定患者数は724人、発生率は人口10万人あたり0.15であった。発生率はスウェーデンが最も高く(10万人あたり3.72)、次いでフィンランド(1.40)、チェコ共和国(0.54)であった。確定患者数が最も多かったのはスウェーデンであった(350人)。


腸チフス/パラチフス

 2011年はEU加盟25カ国、アイスランドおよびノルウェーがデータを提出し、患者計1,161人が報告され、このうち確定患者は1,155人で2010年より21%の減少であった。確定患者の発生率は人口10万人あたり0.26であった。加盟2カ国(ブルガリア、ポーランド)は腸チフス/パラチフスとサルモネラ症とを区別していないため、両国のデータは含まれていない。2011年の全体での確定患者発生率は最近4年間で最も低かった。2011年に確定患者発生率が最も高かった国は英国であった(10万人あたり0.84)。


変異型クロイツフェルトヤコブ病(vCJD)

 2011年は、EU域内で変異型クロイツフェルトヤコブ病(vCJD)の新規患者3人の死亡が報告された。このうち2人は英国からの報告であった。実際には、2011年の英国でのvCJDによる死亡者は計5人で、このうち3人は2009年に既に高度疑い患者と診断されていた患者であった。フランスからは患者1人が報告された。いずれの患者も血液ドナー、または血液や血液製剤のレシピエントではなかった。全体でのvCJDの死亡率は依然として低く、人口100万人あたり0.01であった。


エルシニア症

 2011年はEU/EEA加盟25カ国がデータを提出し、確定患者計7,041人が報告され、発生率は人口10万人あたり2.19であった。前年までと同様、ドイツの報告患者が最も多く、EU/EEAの報告患者全体の47.9%を占めた。確定患者の発生率が最も高かったのはリトアニアおよびフィンランドで、10万人あたりそれぞれ11.40および10.31であった。

 2007〜2011年の間、EU/EEA域内の確定患者数は大幅な減少を示した。EUの加盟6カ国(デンマーク、ドイツ、リトアニア、スロベニア、スペイン、スウェーデン)は確定患者数の大幅な減少を報告したが、ハンガリー、ルーマニアおよびスロバキアでは大幅な増加がみられた。

 2010年までと同様、エルシニア症患者が最も多く感染した菌種はYersinia enterocoliticaで(2011年の全確定患者の98.4%)、次いでY. pseudotuberculosis(0.9%)であった。



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部