米国疾病予防管理センター(US CDC)からのカンピロバクター関連情報
http://www.cdc.gov/


食品由来細菌の抗生物質耐性に関する報告書
Antibiotic resistance in foodborne germs is an ongoing threat
July 1, 2014
http://www.cdc.gov/narms/pdf/2012-annual-report-narms-508c.pdf (CDC NARMS 2012年次報告書PDF)
http://www.cdc.gov/narms/reports/annual-human-isolates-report-2012.html (同報告書紹介webページ)
http://www.cdc.gov/media/releases/2014/p0701-antibiotic-resistance.html

(食品安全情報2014年16号(2014/08/06)収載)


 米国疾病予防管理センター(US CDC)の2012年のデータによると、食品由来細菌の抗生物質耐性率は低下と上昇の両方の傾向がみられ、この問題は依然として公衆衛生上の脅威となっている。米国では、食品由来の抗生物質耐性菌の感染患者が毎年約430,000人発生し、食品およびその他を感染源とする多剤耐性サルモネラの感染患者は毎年約100,000人と推定されている。

 最新のデータによると、多剤耐性サルモネラの割合は過去10年間に減少し、重要な2種類の抗菌剤グループであるセファロスポリン系およびフルオロキノロン系薬剤への耐性率は2012年も低レベルであった。しかし、腸チフスの原因であるチフス菌(Salmonella Typhi)のキノロン系薬剤への耐性率は2012年に68%に上昇し、腸チフス患者に繁用される治療法の1つが多くの患者で効かなくなる懸念がある。

 S. Heidelberg感染者の約5人に1人は、セファロスポリン系薬剤のセフトリアキソンに耐性の株の感染者である。S. Heidelbergは、家禽肉に関連して最近発生した複数のアウトブレイクでみられた血清型である。セフトリアキソン耐性は、重度のサルモネラ症の治療が困難になるため、特に小児で大きな問題である。

 これらのデータは全米抗菌剤耐性モニタリングシステム(NARMS)の最新の報告書に掲載されている。NARMSは、ヒト(CDCが担当)、小売食肉(米国食品医薬品局(US FDA)が担当)および食料生産動物(米国農務省が担当)から分離された食品由来細菌の抗生物質耐性の検査を1996年から行っている多機関協力サーベイランスシステムである。今回のCDC NARMSの報告書では、2012年のヒト由来分離株の耐性率を2003〜2007年のベースラインレベルと比較している。


○今回の報告書のその他の知見から

  • FDAは家禽へのエンロフロキサシンの使用承認を2005年に撤回したが、カンピロバクターのシプロフロキサシン耐性率は25%で変化がなかった。シプロフロキサシンおよびエンロフロキサシンは両者ともフルオロキノロン系薬剤の一種である。

  • 赤痢菌のシプロフロキサシンおよびアジスロマイシン耐性率(それぞれ2%、4%)が上昇している。しかし、共耐性の株は見つかっていない。

  • フルオロキノロン耐性率は2012年も依然として低かったが、検査機関での耐性試験に使用されるフルオロキノロン系薬剤であるナリジクス酸に耐性の分離株では、その50%がサルモネラの最も一般的な血清型であるS. Enteritidisであった。ナリジクス酸耐性は、広く使用されるフルオロキノロン系薬剤であるシプロフロキサシンへの感受性の低下と関連している。別の調査により、ナリジクス酸耐性のS. Enteritidisへの感染患者の多くは国外旅行中に感染したことがわかっている。
 本報告書ではカンピロバクターの耐性データの解釈に新しい方法が導入され、また利用者が細菌種と抗生物質を選択することによりその組み合わせのNARMSデータの経年変動がわかるオンライン対話型のグラフへのリンクが掲載されている。

 CDC NARMSは、全米50州から提出される6種類の一般的な食品由来細菌の臨床分離株について抗生物質耐性をモニターしている。2012年、CDC NARMSは5,000を超える分離株の抗生物質耐性試験を行った。NARMSは2012年の結果を2003〜2007年のベースラインレベルと比較することにより、食品由来細菌が耐性を獲得しつつあるのか、または失いつつあるのかに関する重要な情報をもたらしている。


(オンライン対話型グラフ)
NARMS 2012 Human Isolates Final Report-Interactive Graphs
http://www.cdc.gov/narms/interactive-data-displays.html



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部