(食品安全情報2013年16号(2013/08/07)収載)
背景
家禽肉から頻繁に検出されるカンピロバクターは、英国の食中毒で最も頻繁に検出される原因菌である。
英国ではここ数年カンピロバクター症アウトブレイクの報告件数が顕著に増加している。これらのインシデントのほとんどは、食品提供業者が調理した鶏レバーのパテやパルフェに関連している。2011年には、飲食店でのカンピロバクター食中毒アウトブレイクの90%以上が鶏レバーのパテの喫食に関連していた。ヒト由来カンピロバクター分離株に最も良く似ているのは鶏レバー由来分離株であることが報告されている。
カンピロバクター症アウトブレイク件数のここ数年の増加の理由は解明されていないが、パテ・パルフェ料理の調理の際にレバーが加熱不十分のまま使用されることに関連していると考えられる。非加熱の鶏レバーのカンピロバクター汚染レベルは104 cfu/gに及ぶと報告されている。家禽肉中のカンピロバクター属菌は冷凍処理に感受性であることが知られているため、本研究では、鶏レバーの冷凍によるカンピロバクター汚染レベルへの影響を評価した。
研究方法
この研究プロジェクトの目的は、鶏レバーの冷凍処理が解凍時およびその後の保存時のカンピロバクター汚染レベルに及ぼす影響について明らかにすることであった。また、再冷凍処理の効果についても調べた。
もともとカンピロバクターに汚染されていた鶏レバー検体を-15°Cもしくは-25°Cで24時間および7日間冷凍処理した。冷凍期間の直前・直後、および解凍後4°Cでの3日間の保存期間中の毎日、レバー中のカンピロバクター菌数を測定した。-25°Cで24時間の冷凍処理により、カンピロバクターの菌数(cfu/g)は1/100まで減少した。-25°Cで24時間の冷凍、4°Cで一晩の解凍、および-25°Cで24時間の再冷凍により、菌数は1/1,000まで減少した。再冷凍処理を行った方が1回冷凍より、カンピロバクター菌数の減少が顕著であった。
鶏レバーの冷凍処理はカンピロバクター菌数を減少させるが、死滅させるわけではない。家禽肉加工業者が日常の加工工程でヒト喫食用の鶏レバーの冷凍処理を行えば、加熱不十分の鶏レバーやそれを使用したパテなどの喫食に関連するカンピロバクター症の発生を減らすことができる可能性がある。
(関連発表論文)
Lett Appl Microbiol. 2013 May 6. doi: 10.1111/lam.12098. [Epub ahead of print]
Freezing as an intervention to reduce the numbers of campylobacters isolated from chicken livers
Harrison D, Corry JE, Tchórzewska MA, Morris VK, Hutchison ML