英国食品基準庁(UK FSA)からのカンピロバクター関連情報
http://www.food.gov.uk/


食品微生物学的安全性諮問委員会(ACMSF)の2011年次報告書
ACMSF 2011 annual report published
27 November 2012
https://acmsf.food.gov.uk/sites/default/files/multimedia/pdfs/committee/acmsf-report-2011.pdf
http://www.food.gov.uk/news-updates/news/2012/nov/acmsfannrep2012#.UMU60aXDVJA

(食品安全情報2013年1号(2013/01/09)収載)


 食品微生物学的安全性諮問委員会(ACMSF:Advisory Committee on the Microbiological Safety of Food)は、2011年の活動内容をまとめた年次報告書を発行した。ACMSFは、英国食品基準庁(UK FSA)に食品の微生物学的安全性に関する助言を行う組織である。


【報告書の序文および第2章から一部を以下に紹介する。】

○序文

 2011年1月、FSAは、消費者がそのまま摂取する未殺菌の乳およびクリームの健康リスクについてACMSFの見解を求めた。ACMSFが検討後に下した結論は、提出されたエビデンスにもとづくと、低温殺菌は生乳の喫飲の健康リスクを低減させる重要な対策であるというACMSFの提言を変更する必要はないというものであった。またACMSFは、さらに多くのデータの集積によってリスクの推定がより正確になる可能性があると付け加えた。

 2011年は、未殺菌の乳・乳製品中のウシ結核菌(Mycobacterium bovis)に関連した消費者リスクについて、提出されたデータにもとづく第1回目の検討会では確固とした結論が得られなかったため、検討会は計2回行われた。少数の委員のグループにより追加のデータが検討され、その結果、正式な半定量的リスク評価の枠組みを用いた改訂版の会議資料が提出された。ACMSFは、用いられたリスク評価の枠組みを歓迎し、ウシ結核菌に関しては未殺菌の牛乳・牛乳製品によるヒトの健康リスクは極めて低いという結論に同意した。

 2011年9月、ACMSFの「高リスクグループに関する特別部会(Ad Hoc Group on Vulnerable Group)」は、フードチェーンにおけるトキソプラズマのリスクに関し最終報告書案を発表した。この報告書案は、トキソプラズマ症と食品に関する様々な問題についてFSAがACMSFに助言を要請したことに答えるものとして発表された。数カ所の修正を条件として、ACMSFは報告書案の提言を支持し、報告書案がパブリックコメント用に発表されることに同意した。

 ACMSFは、感染性胃腸疾患に関する第2回全国調査(IID2)、農村地域経済および土地利用プログラム(RELU:Rural Economy and Land use programme)の一環としての調査、およびFSAの「Food and You」調査など、関連する数件の調査の概要について説明を受けた。また、食品由来感染症疫学グループ(Epidemiology of Foodborne Infections Group)の会議における主要な議論の内容について最新情報を提供された。さらに、ドイツとフランスで発生したベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)アウトブレイクの疫学・微生物学調査の詳細についても情報提供を受けた。

 2011年も引き続き、ACMSFではいくつかの特別部会が活動した。「高リスクグループに関する特別部会」はフードチェーンにおけるトキソプラズマのリスクプロファイル案をまとめ、「食品由来ウイルス感染症特別部会(Ad Hoc Group on Foodborne Viral Infections)」は食品由来ウイルスのリスクに関する検討の参考とするためにエビデンスの収集を続けた。


○第2章:ACMSFの2011年の活動

鶏レバーパテの問題

 ACMSFは、鶏レバーのパテとパルフェに関連したカンピロバクターアウトブレイクの近年の増加に関して検討を加えたのに続き、カンピロバクターと鶏レバーについての講義をTom Humphrey教授に依頼した。同教授は、カンピロバクターは歴史的に交差汚染リスクが問題であると認識されてきたが、鶏の筋肉組織やレバー中のカンピロバクターがもたらすリスクも同様に重要であると指摘した。同教授は筋肉組織やレバーのカンピロバクター汚染に関するデータを示し、このうちニュージーランドでの調査では、検査された鶏レバー30検体中27検体でカンピロバクターの内部汚染があり、いくつかの検体では1,100cfu / 100gを超える汚染が検出されていた。この調査では、レバー内部のカンピロバクターの生残に対する温度と加熱時間の影響も調べられ、その結果、70°C近くに達するまで生菌数の大幅な減少は認められなかった。レバーを軽く加熱しただけでは、内部がこの温度に達する可能性は低いと考えられた。

 ACMSFは結論として、カンピロバクターやその鶏レバーの汚染についてさらに理解を深める必要があると指摘した。ACMSF は、すべてのカンピロバクターはレバーを内部温度70℃で2分間加熱することで死滅すること、但し、適切な食品安全情報を発信する際にはレバーを塊肉ではなくひき肉と見なす必要があることを強調した。


【その他、以下に掲げるテーマに関する活動の詳細が記載されている。】

  • ウシ結核菌:低温殺菌されていない乳・乳製品による健康リスク
  • 生乳
  • ドイツとフランスで発生した大腸菌アウトブレイク
  • 感染性胃腸疾患に関する第2回調査
  • フードチェーン関連のトキソプラズマに関するリスクプロファイル


国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部