欧州食品安全機関(EFSA)からのカンピロバクター関連情報
http://www.efsa.europa.eu/


欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症、その病原体および食品由来アウトブレイクの傾向と感染源に関する年次要約報告書(2011年)
The European Union Summary Report on Trends and Sources of Zoonoses, Zoonotic Agents and Food-borne Outbreaks in 2011
EFSA Journal 2013,11(4):3129
Published: 09 April 2013, Approved: 28 February 2013
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/doc/3129.pdf (報告書PDF)
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/3129.htm
(ECDCのサイト)
http://ecdc.europa.eu/en/publications/Publications/zoonoses-food-outbreaks-report-2011-ecdc-efsa.pdf (報告書PDF)
http://ecdc.europa.eu/en/publications/Publications/Forms/ECDC_DispForm.aspx?ID=1092
(関連記事)
カンピロバクター症患者と大腸菌感染症患者の増加およびサルモネラ症患者の減少傾向:欧州食品安全機関(EFSA)と欧州疾病予防管理センター(ECDC)の人獣共通感染症に関する年次要約報告書(2011年)
Rise in human infections from Campylobacter and E. coli, whilst Salmonella cases continue to fall: EFSA and ECDC 2011 zoonoses report
09 Apr 2013
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/130409.htm (EFSAプレスリリース)
http://ecdc.europa.eu/en/press/Press%20Releases/zoonoses-report-europe-2011-ecdc-efsa.pdf (ECDCプレスリリース)
(ECDC関連記事)
Rise in human infections from Campylobacter and E. coli, whilst Salmonella cases continue to fall: ECDC and EFSA 2011 zoonoses report
09 Apr 2013
https://www.ecdc.europa.eu/en/news-events/rise-human-infections-campylobacter-and-e-coli-whilst-salmonella-cases-continue-fall

(食品安全情報2013年10号(2013/05/15)収載)


 人獣共通感染症とは、自然界で動物とヒトとの間で直接的に、または汚染食品などを介して間接的に伝播する感染性の疾患である。人獣共通感染症の予防には、どの動物およびどの食品が主要な感染源であるかを特定することが重要である。このため、欧州連合(EU)の全加盟国から関連情報が収集され、その分析が行われている。

 2011年は加盟27カ国から、人獣共通感染症、その病原体および食品由来アウトブレイクに関するデータが欧州委員会(EC)および欧州食品安全機関(EFSA)に提出された。また、欧州疾病予防管理センター(ECDC)は人獣共通感染症のヒト患者に関するデータを提供した。さらに、EU非加盟の欧州3カ国からもデータの提供があった。EFSAおよびECDCは協力してデータを分析し、その結果を年次要約報告書として発表した。10種類の人獣共通感染症および食品由来アウトブレイクに関する報告が収載されている。

 カンピロバクター症は、2010年に比べ2011年はEU域内の報告率が上昇し、確定患者数が増加した。カンピロバクター症は依然として最も報告患者数の多い人獣共通感染症で、2011年の確定患者数は計220,209人であった。カンピロバクター症確定患者数は明確な季節変動を示し、また過去4年連続で有意な増加傾向を示している。カンピロバクター陽性の食品検体および動物検体の割合は前年までとほぼ同レベルであり、ブロイラー肉のカンピロバクター汚染率が依然として高かった。

 サルモネラ症は患者数が2010年より5.4%減少し、2007年に比べると37.9%も減少した。EU域内では2008年から2011年までの間、統計学的に有意な減少傾向が見られている。2011年の確定患者数は計95,548人であった。サルモネラ症患者数の減少は、家禽群におけるサルモネラ管理プログラムの成功が主な要因であると考えられる。ほとんどの加盟国で家禽でのサルモネラ低減目標が達成され、家禽群のサルモネラ汚染は減少しつつある。食品では、ブロイラー生鮮肉でサルモネラが最も頻繁に検出された。EUのサルモネラ基準を満たしていない製品の割合が高かった食品カテゴリーは、ひき肉、加工肉および生きた二枚貝であった。

 リステリア症は患者数が2010年よりわずかに減少し、2011年の確定患者数は計1,476人であった。患者の致死率は前年までと同様に高く12.7%であった。そのまま喫食可能な(ready-to-eat)小売食品からは、法的な安全基準を超える菌数のリステリア(Listeria monocytogenes)はほとんど検出されなかった。この基準を超える検体は水産食品、チーズおよび発酵ソーセージで最も多く見つかった。

 ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)感染は計9,485人の確定患者が報告され、2010年の2.6倍であった。血清群が判明した患者ではO157が最も多い血清群であった。しかし、O104感染の患者も1,064人(血清群が判明した患者の20.1%)が報告され、これらはドイツを主として発生した大規模なアウトブレイクの患者であった。2011年には、VTEC感染患者のうち1,006人が溶血性尿毒症症候群(HUS)を発症した。HUS患者数は2010年の4.5倍であり、主にドイツのアウトブレイクでの成人患者であった。EU域内のVTEC患者報告数は2008年以降増加が続いている。VTEC陽性の動物および食品はウシおよび牛肉が大部分であったが、その他の動物種や食品からも検出された。

 エルシニア症は計7,017人の確定患者が報告され、2010年より3.5%の増加であった。しかし、2007〜2011年の5年間については統計学的に有意な減少傾向がみられた。食品および動物ではYersinia enterocoliticaが主に豚肉およびブタから検出された。

 ウシ結核菌感染の確定患者数は132人であった。2010年より減少し、加盟数カ国が大部分の患者を占めていた。EU域内のウシでの牛結核の有病率はわずかに上昇したものの、依然として非常に低レベルである。このわずかな上昇は、特定の1加盟国で有病率が3年連続で上昇したことによる。

 ブルセラ症は確定患者数の減少が続いており、2011年は計330人であった。ブルセラ症を発症したヒツジ群およびヤギ群の数は減少が続いている。ウシのブルセラ症は2010年に比べ発症群の数がわずかに減少した。

 寄生虫性の人獣共通感染症であるトリヒナ症およびエキノコックス症の2011年の確定患者数は、それぞれ268人および781人であった。トリヒナ症患者数は2010年よりわずかに増加したが、2009年以前と比較すると低レベルが続いている。2011年にブタから検出されたトリヒナは2010年に比べわずかに多く、飼育動物より野生動物で陽性率が高かった。

 エキノコックス症の確定患者数は2010年より3.3%増加した。Echinococcus multilocularisによる多胞性エキノコックス症(alveolar echinococcosis)の患者が増加した結果であり、この患者は過去5年間にわたり増加し続けている。E. multilocularisは中欧の複数の加盟国により主にキツネからの検出が報告された。

 2011年には、EU域外で感染した狂犬病患者1人が報告された。動物の狂犬病症例数の全般的な減少傾向は2011年も続いた。狂犬病症例はバルト海沿岸、東欧および南欧の加盟国から主に野生動物での発生が報告されたが、飼育動物およびペットでの発生の報告もあった。

 食品由来アウトブレイクは計5,648件が報告され、患者数は69,553人、入院患者数は7,125人、死亡者数は93人であった。報告されたアウトブレイクのほとんどはサルモネラ、細菌性毒素、カンピロバクターおよびウイルスが原因で発生していた。しかし1件あたりの患者数が最も多かったアウトブレイクは志賀毒素産生性大腸菌(STEC)/VTECを病因物質とし、発芽野菜に関連したものであった。食品由来アウトブレイクの感染源となった食品は、卵・卵製品が最も多く、次いで混合食品、魚・魚製品であった。また、水由来のアウトブレイクが11件報告され、病因物質はカンピロバクター、カリシウイルス、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium hominis)およびVTECであった。



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部