ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)からのカンピロバクター関連情報
http://www.bfr.bund.de/


魚の燻製・マリネ製品および未殺菌乳由来のチーズのリステリア汚染に関する食品安全基準は必ずしも遵守されていない
Food Safety Criteria for Listeria in smoked and gravad fish, and raw milk cheese are not always met
04.06.2013
http://www.bfr.bund.de/en/press_information/2013/14/food_safety_criteria_for_listeria_in_smoked_and_gravad_fish__and_raw_milk_cheese_are_not_always_met-187043.html

(食品安全情報2013年14号(2013/07/10)収載)


 欧州連合(EU)規模のベースライン調査の一環として、ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は魚の燻製・マリネ製品、ソフト・セミソフトチーズ、および加熱処理済み食肉製品でのリステリア(Listeria monocytogenes)の汚染状況を調査した。これらの食品は潜在的に多量のリステリア菌に汚染されている可能性がある。この調査の結果をまとめると、そのまま喫食可能な食品(ready-to-eat food)ではL. monocytogenesについて定められている微生物学的基準が必ずしも厳守されていないことが明らかになった。汚染レベルが基準値を超えた場合、消費者がL. monocytogenesに感染するリスクが生じる。したがって、食品製造業者は規則や基準を常に遵守するよう努めなければならない。

 ヒトのリステリア感染はサルモネラやカンピロバクター感染と比べ頻度がかなり低いが、重症化することがあるため特別な問題を提起している。L. monocytogenesはヒトで重度の髄膜炎や流産を起こすことがある。したがって、特に妊婦に対しては、感染リスクを最小限に抑えるために魚の燻製・マリネ製品および未殺菌乳由来のチーズの喫食を避けることが推奨される。

 家禽群に対して長年にわたって継続的に実施されてきたサルモネラコントロールプログラムは、特に産卵鶏群において大きな成果をもたらしている。また、とさつ時の衛生管理の改善により牛肉および豚肉のサルモネラ汚染率が低下している。生鮮牛肉・豚肉検体のサルモネラ汚染率は、2011年は1%未満であった。ひき肉、イノシシ肉および家禽肉のサルモネラ汚染率はこれよりわずかに高かった。ブロイラーおよびブロイラー肉のカンピロバクター汚染率は過去数年間と比べていくらか低下し、2011年はとさつ後のブロイラーの25.1%およびブロイラー肉検体の31.6 %でカンピロバクターが検出された。これらは2011年の人獣共通感染症病原体モニタリングプログラムの結果であり、過去数年間のデータとの比較により2011年はサルモネラおよびカンピロバクターによる食品汚染が減少したことが明らかである。しかし、ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)やエルシニア(Yersinia enterocolitica)などのその他の人獣共通感染症病原体では食品汚染率の低下は認められなかった。今後の調査で、カンピロバクター汚染率の低下傾向が持続的なものであるかどうかが明らかになるであろう。

 動物および食品からの多剤耐性菌の継続的な検出の問題は引き続き注視すべき課題として残っている。これらの多剤耐性菌の多くは直接にはヒトや動物の疾患の原因とならない。しかし、これらの細菌は薬剤耐性の性質を病原菌へと伝達することができるため、耐性菌のヒトへの定着に寄与する可能性がある。薬剤耐性のモニタリングの一環として、2011年の人獣共通感染症病原体モニタリングプログラムで分離された4,717株について抗菌剤耐性検査を行った。結果は過去数年間の傾向を再確認するものであった。特に肥育家禽群で多剤耐性菌が非常に高頻度に検出され、またそれらに由来する食肉でも多剤耐性菌が高頻度で検出された。ブロイラーおよび肥育七面鳥に由来する大腸菌分離株のそれぞれ91.8%および91.3%が少なくとも1つのグループの抗菌剤に対し耐性を示し、82.9%および85.3%が2グループ以上の抗菌剤に対し耐性を示した。BfRは、ドイツでの食品由来細菌の抗生物質耐性の状況に関する詳細報告書を2013年末までに発行する予定である。

 細菌に汚染される可能性がある食品は動物由来食品だけではない。果物や野菜などの植物由来食品もサルモネラやリステリアなどの病原菌に汚染される可能性がある。これらは取扱いが不適切であれば、ヒトの疾患の原因となりうる。2011年に発生した大規模な腸管出血性大腸菌(EHEC)アウトブレイクでは、汚染された発芽野菜が原因であった。このアウトブレイクにより、新規の例外的な食品安全ハザードに関する知識の欠如は主要な食品安全上の問題を招くことが示された。

 人獣共通感染症とは動物からヒトに伝播し得る感染症である。人獣共通感染症病原体のモニタリングに関する報告書は、ドイツ連邦消費者保護・食品安全庁(BVL)が毎年発行しており、食品および動物の人獣共通感染症病原体による汚染およびその抗菌剤耐性に関して代表的なデータを収載している。この報告書に使用されるデータは、BfRが作成した調査プロトコルに従ってドイツ連邦各州の当局が収集している。BfRは消費者の健康保護の観点からこれらのデータを評価している。

 BfRは、ドイツの人獣共通感染症とその病原体についての全般的な状況に関する報告書を毎年発行している。この報告書には、人獣共通感染症病原体モニタリングプログラムの結果以外に、食品・飼料の公的管理および動物の診断調査の包括的な結果も含まれている。


(関連報告書)

・Erreger von Zoonosen in Deutschland im Jahr 2011(ドイツ語)
http://www.bfr.bund.de/cm/350/erreger-von-zoonosen-in-deutschland-im-jahr-2011.pdf

・Baseline study on the prevalence of Listeria monocytogenes in specific ready-to-eat foods
http://www.bfr.bund.de/cm/349/baseline-study-on-the-prevalence-of-listeria-monocytogenes-in-specific-ready-to-eat-foods.pdf

・Berichte zur Lebensmittelsicherheit 2011: Zoonosen-Monitoring(ドイツ語)
http://www.bvl.bund.de/SharedDocs/Downloads/01_Lebensmittel/04_Zoonosen_Monitoring/Zoonosen_Monitoring_Bericht_2011.pdf?__blob=publicationFile&v=3

・The database SurvStat (RKI)
https://survstat.rki.de/Default.aspx



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部