薬品部第三室研究業績 平成10年度
1.医薬品の分析法に関する研究
- 外用抗真菌薬(イミダゾール系抗真菌薬)の迅速分析法の適用外とされた外用抗真菌薬の試験方法を新たに開発しました.(薬務局監視指導課委託研究費)
- キャピラリー電気泳動を用いた多種成分配合の消化器官薬中アズレンスルホン酸ナトリウムの分析法を検討しました.(官民共同プロジェクト研究/創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業)
- 希少疾病(熱帯地域からの輸入寄生虫症)用の未承認医薬品である塩酸メフロキン錠の「規格及び試験方法」をさらに整備しました.これにより,治験薬として供給するこれらの希少薬の品質をよりよく確保できるようになりました.(官民共同プロジェクト研究/創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業)
- 指定検査機関の試験結果の信頼性確保を目的として,精度管理に関する研究を行いました.(薬務局監視指導課委託研究費)
- 監視指導課,国立試験研究機関及び地方衛生研究所等との間に,国立衛研をキーステーションとして双方向ネットワークを試験的に構築し,検査データや試験法などに関する情報交換を行いました.(厚生科学研究/医薬安全総合研究事業)
- 中毒起因物質となりうると思われる医薬品8種について,その分析マニュアルを作成しました.(厚生科学研究/医薬安全総合研究事業)
2.日本薬局方の規格及び試験方法に関する研究
- 第13改正日本薬局方の第1追補及び第2追補収載品目について,参照赤外吸収スペクトルを作成しました.また,それに関連して,臭化カリウム錠剤法により測定試料の調製を行うとき,塩酸塩の形の医薬品では塩素イオンが臭素と置換を起こすため,スペクトルに変化が現れる問題を検討し,一定の解決方策を見出しました.(日本公定書協会/医薬品の規格及び試験方法に関する研究)
- 医薬品各条への原薬の新規収載ならびに既収載品目の見直しの際に,ICHの原薬の不純物ガイドラインとの関連で,どのような点に留意して純度試験,特に不純物(類縁物質)の規格を整備するかを検討しました.(厚生科学研究/医薬安全総合研究事業)
3.誌上発表(原著論文)
- 最所和宏,王 麗琴,石橋無味雄,外岡弘道,奥田秀毅,小嶋茂雄:高速液体クロマトグラフ法によるH2受容体拮抗薬の迅速分析法,医薬品研究,29,620-626(1998) (要旨)HPLC法の移動相の組成比などの諸条件を検討し,4種のH2受容体拮抗薬の同一条件による迅速分析法を確立した.市販品9剤形に確立した方法を適用し,特異性,真度及び精度を調べたところ良好な結果が得られた.
- Wang Liqin, Saisho, K., Ishibashi, M. and Kojima, S.: Rapid
determination of H2-receptor -antagonists by high performance Liquid
Chromatography, Tianjin Pharmacy, 10, 64-66(1998) (要旨)ODSカラムを用いたHPLC法によるH2受容体拮抗薬の迅速分析法を確立した.4種6剤形の製剤中からの主薬の抽出溶媒を検討したところ,メタノールによる抽出が最適であった.本法による製剤の定量は回収率及び精度は迅速分析法として十分なものであった.
4.誌上発表(総説・解説)
- 最所和宏,石橋無味雄:医薬品の迅速分析法-フェニルプロピオン酸系消炎鎮痛剤,月刊薬事,40(12),2883-2887(1998) (要旨)厚生省医薬安全局監視指導課の研究班において,国立医薬品食品衛生研究所が作成した原案を東京医薬品工業会及び大阪医薬品協会にて検討を加え,その結果に基づき作成されたフェニルプロピオン酸系消炎鎮痛剤のHPLC法による迅速分析法の概要及び試験法を実施するにあたっての注意点を解説した.