はじめに
このレビューに含まれる抗凝固剤は殺鼠剤として用いられるものである。クマリン抗凝固剤は第二次世界大戦中に開発され、ヒトの血栓塞栓症の治療に有効な抗トロンビン(訳者注:血液の凝固を起こす酵素)剤として導入された。ワルファリンは、医薬品と殺鼠剤の双方において用いられ、広範に評価された。いくつかのヒドロキシクマリンおよびインダンジオン誘導体が合成され、効果的な殺鼠剤として導入された。それらは血液凝固メカニズムの阻害作用を発現する。
ワルファリンおよびその他の抗凝固剤に抵抗性を有する種類のラットの出現は、より強力な第二世代の抗凝固剤の開発を刺激した。そのあるものは「一回投与」(single dose)抗凝固剤、あるいは「スーパーワルファリン」である。
多数の抗凝固剤系殺鼠剤が知られているが、各化合物について入手し得るすべての情報を含めるのは本モノグラフの意図ではない。その目的は、それら抗凝固剤の一般的な性質について、ヒトおよび環境に対する影響を適当な例証を用いて報告することである。
その使用がヒトの健康と環境にもたらすリスクに関して、工業製品原体と製剤化した製品との間の区別が必要である。
1.要 約
1.1 概 要
本モノグラフで報告する抗凝固剤は、主として農業および都市部の齧歯類駆除に用いられるものである。最初に広く使用された抗凝固剤系殺鼠剤のワルファリンは、ヒトの血栓塞栓症治療の効果的な薬剤として導入された。
これらの化学的構造に準拠すると、抗凝固剤系殺鼠剤は、作用メカニズムは似ているが、ヒドロキシクマリン類とインダンジオン類の2種類に分類される。
1.2 物質の同定、物理的・化学的特性、分析方法
抗凝固剤系殺鼠剤は固形の結晶あるいは粉末の剤型で入手でき、それらは水にわずかに溶ける。それらの大多数は通常の保管状態下で安定である。
抗凝固剤系殺鼠剤の測定方法の大半は、高速液体クロマトグラフィーに基づいている。
抗凝固剤系殺鼠剤類は、その化学構造式から、2種類に分類される。
ヒドロキシクマリン類の基本になる化学構造式 |
3次元 |
インダンジオン類の基本になる化学構造式 |
3次元 |
a 物質の同定
一般名 |
CAS化学名 |
第1世代Hydroxycoumarins |
Coumachlor |
3-[1-(4-chlorophenyl)-3oxobutyl]-4-hydroxy-2H-1-benzopyran-2-one |
Coumafuryl |
3-[1-(2-furanyl)-3oxobutyl]-4-hydroxy-2H-1-benzopyran-2-one |
Coumatetralyl |
4-hydroxy-3-(1,2,3,4-tetrahydro-1-naphthalenyl)-2H-1-benzopyran-2-one |
Warfarin |
4-hydroxy-3-(3-oxo-1-phenylbutyl)-2H-1-benzopyran-2-one |
第2世代Hydroxycoumarins |
Brodifacoum |
3-[3-(4′-bromo-[1,1′-biphenyl]-4-yl)-1,2,3,4,-tetrahydro-1-naphthalenyl]-
4- hydroxy-2H-1-benzopyran-2-one |
Bromadiolone |
3-[3-(4′-bromo-[1,1′-biphenyl]-4-yl)-3-hydroxy-1-phenylpropyl]-4-hydroxy-
2H-1-benzopyran-2-one |
Difenacoum |
3-[3-(1,1′-biphenyl)-4-yl-1,2,3,4-tetrahydro-1-naphthalenyl]-4-hydroxy-2
H-1-benzopyran-2-one |
Difethialone |
3-[3-(4-bromo-[1,1′-biphenyl]-4-yl-)-1,2,3,4-tetrahydro-1-naphthalenyl]-4-
hydroxy-2H-1-benzothiopyran-2-one |
Flocoumafen |
4-hydroxy-3-[1,2,3,4-tetrahydro-3-[4-[[4-(trifluoromethyl)phenyl]methoxy]ph
enyl]-1-naphthalenyl]-2H-1-benzopyran-2-one |
Indandioneの誘導体 |
Chlorophacinone |
2-[(4-chlorophenyl)phenylacetyl]-1H-indene-1,3(2H)-dione |
Diphacinone |
2-(diphenylacetyl)-1H-indene-1,3(2H)-dione |
Pindone |
2-(2,2-dimethyl-1-oxopropyl)-1H-indene-1,3(2H)-dione |
Valone |
2-(3-methyl-1-oxopropyl)-1H-indene-1,3(2H)-dione |
一 般 名 | 構 造 式 |
Brodifacoum |
3次元 |
Bromadiolone |
3次元 |
Chlorophacinone |
3次元 |
Coumachlor |
3次元 |
Coumafuryl |
3次元 |
Coumatetralyl |
3次元 |
Difenacoum |
3次元 |
Difethialone |
3次元 |
Diphacinone |
3次元 |
Flocoumafen |
3次元 |
Pindone |
3次元 |
Valone |
3次元 |
Warfarin |
3次元 |
一 般 名 | 商 品 名 |
Brodifacoum |
Finale, Folgorat, Havoc, Klerat, Matikus,Mouser, Ratak+,Rodend, Talon, Vola
k, Volid |
Bromadiolone |
Apobas, Bromard, Bromorat, Bromatrol, Contrac,Deadline, Hurex, Lanirat, Mak
i, Morfaron,Musal, Ramortal, Ratimon, Rodine-c, Slaymor, Super-caid, Topidon |
Chlorophacinone |
Caid, Delta, Drat, Lepit, Liphadione, Microzul, Muriol, Patrol, Quick, Ravi
ac, Redentin OC, Rozol, Saviac |
Coumachlor |
Ratilan, Tomorin(チバガイギーにより1984年製造中止) |
Coumafuryl |
Fumarin(Rhone-Poulencにより製造中止),Fumasol, Kill-ko rat, Krumkil, Kumatox
, Lurat, Mouse blues, Ratafin, Rat-a-way |
Coumatetralyl |
Racumin, Raukumin57,Rodentin |
Difenacoum |
Compo, Diphenacoum, Matrak, Neosorexa, Rastop, Ratak, Ratrick, Silo |
Difethialone |
Baraki, Frap, Quell |
Diphacinone |
Diphacine, Gold Crest, Kill-ko rat killer, Pid, Promar, Ramik, Ratindan1 |
Flocoumafen |
Stratagem, Storm |
Pindone |
Pivaldione, Pival, Pivalyn, Tri-ban |
Valone |
Motomco trading powder |
Warfarin |
Arthrombine-K, Dethmore, Panwarfin, Warfarat, Warfarin+,Warficide, Zoocouma
rin |
一 般 名 | RTECS 番号 | CAS 登録番号 | 化学式 | 分子量 |
Brodifacoum | GN4934750 | 56073-10-0 | C31H23BrO3 | 523.4 |
Bromadiolone | GN4934700 | 28772-56-7 | C30H23BrO4 | 527.4 |
Chlorophacinone | NK5335000 | 3691-35-8 | C23H15ClO3 | 374.8 |
Coumachlor | GN4830000 | 81-82-3 | C19H15ClO4 | 342.8 |
Coumafuryl | GN4850000 | 117-52-2 | C17H14O5 | 298.3 |
Coumatetralyl | GN7630000 | 5836-29-3 | C19H16O3 | 292.4 |
Difenacoum | GN4934500 | 56073-07-5 | C31H24O3 | 444.5 |
Difethialone | DM0013800 | 104653-34-1 | C31H23BrO2S | 539.5 |
Diphacinone | NK5600000 | 82-66-6 | C23H16O3 | 340.4 |
Flocoumafen | DJ3100300 | 90035-08-8 | C33H25F3O4 | 542.6 |
Pindone | NK6300000 | 83-26-1 | C14H14O3 | 230.3 |
Valone | NK5775000 | 83-28-3 | C14H14O3 | 230.3 |
Warfarin | GN4550000 | 81-81-2 | C19H16O4 | 308.4 |
b 物理的・化学的特性
一般名 | 水溶解性 | 蒸気圧 |
mg/l | 温度(℃) | pH | mPa | 温度(℃) |
Brodifacoum | <10 | 20 | 7 | <0.13 | 25 |
Bromadiolone | 19 | 20 | | 0.002 | 20 |
Chlorophacinone | 100 | 20 | | 微量 | 20 |
Coumachlor | 0.5 | 20 | 4.5 | <10 | 20 |
Coumatetralyl | 4 | 20 | 4.2 | 8.5×10-6 | 20 |
20 | 20 | 5 | | |
425 | 20 | 7 | | |
Difenacoum | <10 | 20 | 7 | 0.16 | 45 |
Difethialone | 0.39 | 25 | | 0.074 | 25 |
Diphacinone | 0.3 | | | 13.7×10-6 | 25 |
Flocoumafen | 1.1 | 22 | | 0.133×10-6 | 25 |
Pindone | 18 | 25 | | 非常に低い | 25 |
Warfarin | 実際には不溶 | | | | |
1.3 ヒトおよび環境の暴露源
第一世代のヒドロキシクマリン類は、殺鼠剤として1940年代末期に導入された。ワルファリンおよびその他の第一世代抗凝固剤系殺鼠剤への耐性の出現は、さらに強力な第二世代の抗凝固剤の開発に導いた。食餌製剤(baits)成分の濃度は、殺鼠剤の有効性に応じて変化する。
1.4 環境中の分布と暴露濃度
抗凝固剤系殺鼠剤は主として食餌製剤として用いられる。それらの揮発性は低いため、空気中の濃度は無視し得る。それらは水にわずかに溶けるのみであるため、その使用は水の汚染源にはならないであろう。
抗凝固剤系殺鼠剤は、成長中の農作物への直接施用はないため、植物性食品中での残留はないと考えられる。
標的外の脊椎動物類は、まず食餌製剤を食べることにより、次いで中毒死した齧歯類を食べることにより、殺鼠剤に暴露される。小さいペレット(球)と丸粒状の餌は、鳥類にとりたいへん魅力的である。
ワルファリンは血栓塞栓症の治療薬として用いられていた。
抗凝固剤系殺鼠剤への職業暴露の可能性は、製造、製剤化、餌への適用の過程で存在するが、暴露濃度のデータは入手できない。
1.5 作用機序と代謝
抗凝固剤系殺鼠剤はビタミンKの拮抗剤である。それらの主な作用部位は肝臓である。肝臓では、それぞれの凝固促進剤酵素原に転化される前に、血液凝固前駆物質のいくつかがビタミンK依存性の平進後の作用(postt ranslation processing)を受ける。作用の特徴はK1エポキシド・レダクターゼの阻害にあるように見える。
抗凝固剤系殺鼠剤は、消化管から容易に吸収され、また、皮膚および呼吸器系を通じても吸収される。経口投与後の種々の動物種における排出経路は糞を介してが主である。
ラットにおけるワルファリンおよびインダンジオン類の代謝分解には、主にヒドロキシル化が含まれる。しかし、第二世代の抗凝固剤の大部分は未変化のまま排出される。尿中排泄が少ないことは尿からの代謝生成物の分離を妨げる。肝臓は抗凝固剤系殺鼠剤の蓄積と貯蔵の主要な臓器である。蓄積は脂肪中でも起こる。
1.6 哺乳動物類およびin vitro(試験管内)試験系への影響
ラットおよびマウスにおける中毒の徴候は、出血増加傾向と関連する。
抗凝固剤系殺鼠剤のLD50(50%致死量)には大幅な変化があり、毒性は経口による場合が最高を示す。経皮および吸入毒性も高い。
一部の抗凝固剤は、標的以外の哺乳類に対し標的齧歯類と同様の範囲の急性毒性を示したが、毒性発現範囲は動物の種類間で変わることがある。
ラットへの反復経口投与後では、観察された主な影響は抗凝固剤作用と関連するものであった。
齧歯類以外の動物への反復暴露について入手し得るデータはほとんどない。
ラットにおけるワルファリンの1件の研究では、発生への影響が示された。そのほかには、抗凝固剤は実験動物に催奇形性を有するとの説得力のある証拠はない。
すべての抗凝固剤系殺鼠剤には変異原性を示唆する証拠はないが、個々の化合物について変異原性のないことを立証するため入手し得るデータは不十分である。齧歯類においては、系統、性別、食餌が、抗凝固剤の毒性を左右する重要な要素である。
抗凝固剤含有の食餌を摂取した家畜における中毒事例が報告されている。死亡と重度の臨床症状は、一般には、第二世代の抗凝固剤によるものであった。ワルファリンとその他の抗凝固剤(インダンジオン類と第二世代ヒドロキシクマリン類の双方)との大きな差異は、後者では体内の滞留時間がより長いため、ワルファリンよりも長時間の影響を示す点である。したがって、中毒の場合には、解毒剤のビタミンK1による治療をより長い期間続ける必要がある。
1.7 ヒトへの影響
多くの中毒事例(意図的と意図的でない場合の双方の)が報告されている。抗凝固剤への職業暴露による少数の中毒例も起こっている。抗凝固剤系殺鼠剤の急性中毒の症状には、軽度あるいは中程度の中毒における出血増加傾向から、より重度の場合の多量の出血の範囲にまで及んでいる。この中毒の徴候は、吸収後1日から数日遅れて発現する。
ワルファリンは、ヒトにおいて、妊娠期間中に治療薬として服用された場合には、奇形の誘発に関連性を示した。殺鼠剤として抗凝固剤を用いた後では、発生欠損の事例は報告されていない。
血漿プロトロンビン濃度は、中毒の程度の一指標である。これはプロトロンビン時間(訳者注:外因系凝固動態を総合的に検査する方法で、検査対象の血液に組織トロンボプラスチンと塩化カルシウムを加えてフィブリンの析出するまでの時間を測定する)のような総合的な検査よりも鋭敏な徴候である。反復的な職業暴露においては、血行中のデカルボキシプロトロンビンあるいはビタミンK2,3-エポキシドの微量の直接測定がさらに感度の高い評価をもたらすであろう。
抗凝固剤中毒の治療は、中毒の程度により類別される。特殊な薬理学的治療には、ビタミンK1の非経口的投与、重症の場合には血液成分との併行投与が含まれる。プロトロンビン時間は、効果と治療を必要とする期間の判定に有用であろう。
1.8 実験室および自然界のその他の生物類への影響
抗凝固剤系殺鼠剤の標的以外の生物への影響の可能性は次の2種に分類される。一次的影響は、食餌製剤(殺鼠剤含有の)の摂取を通じての直接中毒、二次的影響は、中毒(死)した齧歯類を食べることによる影響である。
工業製品原体の製品では、抗凝固剤は魚類に対して高い毒性を示す。食餌製剤では、水溶性が低いため危険を招くようには見えない。この理由により、誤用以外では、魚類による摂取はないであろう。
鳥類では、抗凝固剤系殺鼠剤に対する感受性は種類により異なる。多くの研究報告は、実験室条件での毒性試験であるため、直接摂取より生じる鳥類のリスクを評価するのは困難である。丸粒状の食餌製剤は小型の鳥類にとり魅力的であり、自然状態でのリスクを増強させている。
二次的毒性に関して、野生動物を用いた実験室での試験では、抗凝固剤により中毒あるいは死亡した動物を無選択に食べることにより、食肉動物の中毒があり得ることを示している。自然界において食肉動物のいくつかの死亡例(some deaths)が報告されている。
1.9 評価と結論
抗凝固剤系殺鼠剤は正常な血液凝固メカニズムを破壊し、出血増加傾向を示し、遂には多量の出血を起こす。
一般集団に対する抗凝固剤系殺鼠剤への意図的でない暴露は起りそうもない。
職業的接触は重大な暴露源になる可能性がある。それは、製造、製剤化、食餌の調製と施用の際に起こることがある。
抗凝固剤系殺鼠剤化合物は、消化管、皮膚、呼吸器から容易に吸収される。肝臓は、蓄積および貯蔵の主要臓器である。血漿プロトロンビン濃度は、急性中毒の程度と、治療の効果および必要期間の適切な指標である。
特別の解毒剤はビタミンK1である。
第一および第二世代の抗凝固剤系殺鼠剤の主な相違点は、後者は体内持続がより長く、そのため出血期間も長引く傾向がある。
多くの抗凝固剤は、通常の使用条件下では安定である。それらの水溶性は低く、また、食餌中の濃度も低いため、水の汚染源にはならないであろう。それらは土壌粒子に速やかに結合し、脱着はきわめて遅く、浸出もない。
標的以外の生物類にとっては、食餌製剤を直接食べるリスク(一次的危険)、中毒齧歯類を食べるリスク(二次的危険)の可能性がある。
2.結論およびヒトの健康と環境の保護のための勧告
2.1 結 論
a) | 一般集団に対する、食品および水を介しての抗凝固剤系殺鼠剤の暴露はありそうもなく、重大な健康危害を形成することはない。 |
b) | 意図的あるいは非意図的な多量の摂取あるいは製造・製剤化中における長期の皮膚接触の場合には中毒事故が起こるかも知れない。 |
c) | 抗凝固剤系殺鼠剤は環境中で比較的持続性を示すが、低濃度の食餌製剤としての特殊な使用により、環境汚染の可能性は限られたものになる。 |
d) | 鳥類、家畜、畜産動物、野生動物の直接的および二次的中毒が起こるかも知れない。 |
e) | 第一および第二世代の抗凝固剤系殺鼠剤の間の主要な差異は、後者の体内滞留はより長く、より長期にわたる出血増加傾向を示す点である。 |
f) | 抗凝固剤系殺鼠剤の作用機序は知られており、効果的な解毒剤、例えばビタミンK1が利用できる。 |
g) | この種の化合物が変異原性あるいは発がん性を示す証拠はない。 |
h) | ワルファリンのみが、ラットおよびヒトにおいて、ある程度の催奇形性を有することが示されている。 |
2.2 ヒトの健康と環境の保護のための勧告
a) | 暴露された作業者は、適切な生物学的モニタリングおよび健康診断を受けるべきである。 |
b) | 製剤中への適当な濃度の苦味剤の添加は、事故による摂取を減少させるであろう。 |
c) | 一次的中毒を防止するため、食餌製剤は鳥類や家畜にとって魅力のないものとし、拍動性食餌を与える方法(pulsating baiting)も用いるべきである。 |
d) | 食餌製剤を置く場所は注意深く選定すべきである。 |
e) | 食肉動物の二次的中毒のリスクを減少させるため、死亡した齧歯類は焼却するか埋めるべきである。 |
f) | 殺鼠剤の安全な取り扱いについての教育が不可欠である。 |
3.今後の研究
a) | ヒトの暴露についての研究、特に催奇形性および胚毒性作用の可能性についての研究が必要である。 |
b) | 抗凝固剤系殺鼠剤の職業暴露のリスクを評価するためには、さらに情報が必要である。 |
c) | 抗凝固剤の吸収と影響を決まった手順で評価するため、プロトロンビン時間測定よりも鋭敏な手法の開発が必要である。 |
d) | 標的以外の生物個体群の二次的影響を評価するためには、さらにデータが必要である。 |
e) | 第二世代の抗凝固剤系殺鼠剤が、胎盤を通してどの程度移動するかを評価すべきである。 |
f) | 抗凝固剤系殺鼠剤の摂取後における体組織分布と、血液凝固以外の生理学的作用、特にカルシウムと骨代謝についての情報を収集すべきである。これは、これらの化合物の長期低濃度暴露のために特に必要である。 |
4.国際機関によるこれまでの評価
WHOの危険性による農薬の分類に関する勧告(WHO,1994)において、抗凝固剤系殺鼠剤はそれらのLD50(50%致死量)により次の通り分類された。
クラスTa(きわめて危険) (Extremely hazardous) | 経口LD50(mg/kg) |
Brodifacoum | 0.3 |
Bromadiolone | 1.12 |
Chlorophacinone | 3.1 |
Difenacoum | 1.8 |
Difethialone | 0.56 |
Diphacinone | 2.3 |
Flocoumafen | 0.25 |
クラスTb(高度に危険) (highly hazardous) |
Coumachlor | 33 |
Coumatetralyl | 16 |
Warfarin | 10 |
クラスU (中程度に危険) (Moderately hazardous) |
Pindone | 50 |
Brodifacoumについての中毒情報モノグラフが発行されており(IPCS,1992)、warfarinのものは作成中である。
|
|