1. 物質の同定、物理的・化学的特性、分析方法 a物質の同定 化学式 C3H7NO2 化学構造
図の枠内でマウスの左ボタンをクリック → 分子の向きを回転、拡大縮小 右ボタンをクリック → 3次元化学構造の表示変更 分子量 89.09 名称 Dimethylnitromethane,isonitropropane, nitroisopropane,2−NP 商品名 NiParS−20(溶剤),NiParS−30(溶剤,1一および 2−nitropropaneの混合物) CAS登録番号 79-46-9 RTECS登録香号TZ5250000 b物理的・化学的特性 表2−ニトロプロパンの物理的・化学的特性
性状無色、 油状液体 沸点(760mmHg) 120.3℃ 融点 -93℃ 比重(液体の密度)(20°/4℃)0.988 蒸気密度(空気=1)3.06 蒸気圧(20℃) l.72MPa(12.9torr) 屈折率(20℃) l.3944 水溶解性(20℃) 17ml/l (20℃) 0.95g/l (20℃) 0.480g/l 引火点(解放式) 38℃ 低不燃性限界(空気中)2.6体積% 水/空気分配係数 128 オリーブオイル/空気分配係数 710 in vivo 全身(ラット)/空気 175
引用文献省略 2−ニトロプロパン(2−NP)(C3H7NO2)は、無色で弱い不快臭のある液 体である。それは引火性で軽度の揮発性を有し、通常の条件下で安定である。 それは水にはわずかににしか溶けないが、多くの有機液体と混和し、多種類 の有機化合物の優れた溶剤である。環境濃度における2−NPの同定と測定 には適した分析法がある。現在の方法は、ガスクロマトグラフィーおよびフ レームイオン化検出器あるいは電子捕獲検出器、または、それらの替わり に、紫外線検出器付き高速液体クロマトグラフィーが用いられる。大気中の 測定では、最初に2−NPは捕提され固形吸着媒(solid sorbent)内で濃縮され る。
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2. ヒトに村する暴露の発生源 2.1生産 現在の世界における生産量は人手できない。1977年における米国での生 産は約13,600トンであった。2−NPは、現在、米国における2社、フラン ス内の1社において製造されている。それは、タバコおよび窒素含有量の多 い物質の燃焼により微量が生成されるが、生物学的プロセスにおいて作られる寛 るという証拠はない。 2.2用途およぴ環境中への放出 2−NPは、溶剤として用いられ、主としてブレンドされ、印刷インク類、 ペイント・ニス類、接着剤、飲料容器内面などのコーティングなどに用いら れる。それは、また、脂肪酸のような近い関係にある物質を分離するための 溶剤として、化学合成の中間体として、また燃料添加剤として用いられる。 環境中への放出は、主として大気中であり、またコーティング面からの液体・ の蒸発である。
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3. 環境中の移動および分布 2−NPは、自然環境中で広く移動するようである。それは水にはわずか しか溶けず、堆積物への吸着が少ないため、生物濃縮も軽微で、容易に大気 中に蒸発し、空気中および水中の双方に分布し、個々の環境媒体に蓄積する ことはないであろう。2−NPによる紫外線吸収は環境中で自然に起こる波 長の範囲内のため、2−NPの光分解は遅い。また、2−NPの低毒性化合 物への生物的転換は、水生および陸生環境の双方においても遅いようである。
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4. 環境中濃度およびヒトの暴露/A> 一般集団への2−NPの暴露は極めて低いように見え、それはシガレット の煙(シガレット1本当り1.1−1.2μg)、飲料缶のコーティング、接着剤、印 刷物、2一NPにより分留された植物油よりの残査による。世界における産 業上の暴露は知られていないが、米国では作業場の0.02−0.19%が規制を受 けている。米国内では著しい暴露19.1mg/m3(2.5ppm)以上への暴露]は規 制され、約4,000名の作業者(作業場の約0.005%)が適用を受けている。空 気中の職業上の暴露制限は国によって異なり、3.6mg/m3(1ppm)(TWA:時 間荷重平均値)から146mg/m3(40ppm)(STEL:短時間暴露限界値)の範囲に わたっている。2−NPの製造は閉鎖工程で行われ、通常は従業員の暴露は 少ないが、塗装、印刷、溶剤抽出の作業者の一部では、過去においては職業 上の暴露限界を大きく上回る濃度に暴露されていた。ドラム缶充填作業にお いては、6g/m3(l,640ppm)の濃度が記録されている。
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5. 体内動態および代謝 ヒトにおける2−NPの取り込みは、主として肺を通じて起こる。動物実 験において、2−NPは肺を通してのみでなく、腹腔、消化器からも急速に 吸収さ牛る。皮膚を通じての吸収については、十分な情報はない。ラットに おける体内の分布!こついての情報は、矛盾している。2−NPは急速に代謝 され、主としてアセトンと亜硝酸塩となる。また、ある程度のイソプロピー ル・アルコールをも生成する。腹腔内への注射後、2−NPとその炭素を含 む代謝産物は、最初は脂肪中において、次いで骨髄、副腎、その他の内臓で 濃縮される。吸入後は、2−NPとその炭素含有代謝産物は、肝臓および腎 臓で濃縮される。また、いくつかの異なる酵素システムがあり、代謝率およ び経路には動物種間に差が認められる。2−NPおよびその炭素含有代謝産 物は代謝変質、呼気排出、尿および糞便中への排泄により体内より急速に失 われる。ニトロ基を含む代謝産物の分布および排泄についての十分な情報は 欠落している。
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6. 実験動物およびin vitro試験系に対する影響 2−NPは、哺乳類に対し、中等度の急性毒性を有する。少なくともラッ トでは、オスはメスよりも感受性が高く、試験された動物種間では感受性は 大幅に異なる。ラットに対する6時間後のLC50(50%致死濃度)は、オスで は1.5glm3(400ppm)、メスでは2.6g/m3(720ppm)であった。致死性は主とし てその麻酔作用にあると見られるが、少なくとも8.4g/m3(2,300ppm)にl時 間以上暴露された哺乳類においては、肝細胞の損傷、肺水腫、出血を含む重 度の病理学的変化を呈した。 2−NPはラットにおいて発がん性を示す明らかな証拠がある。0.36g/m3 (100ppm)の18カ月の長期吸入暴露(7時間/日、5日/週)において、一 部のオスに肝細胞がん腫を含む肝臓の壊滅的変化を誘発した。0.75g/m3(207 ppm)の濃度においては、より早い高率の肝細胞がん腫を含む、さらに重度 の損傷を誘発した。中等度に慢性の経口投与もラットに肝細胞がん腫を過剰 に発生させた。しかし、91−98.3mg/m3〕(25−27ppm)の長期吸入暴露試験で は、検出し得る損傷は認められなかった。ラットにおいて肝細胞がん腫を誘 発させる2-NPの暴露濃度は、マウスおよびウサギに対してはほとんど影 響がなかったが、これら2種類の動物における2−NPの発がん性を完全に 否定するにはあまりにも限走的である。2−NPはラットの胎児の発育を軽 度に遅滞させたが、胎児毒性、催奇形性、生殖毒性についてのデータは不足 している。2−NPはラットの肝細胞に対し、in vitro(試験管内)およびin vivo (生体内)の双方において強い遺伝毒性を示したが、ラットのその他の臓器、 あるいは外因性の代謝活性化をもたない肝臓以外の臓器に由来する細胞管壁 においては、著しい遣伝毒性は見出せなかった。2−NPは、外因性代謝活 性化の有無双方の場含において、細菌における変異原性を示した。
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7. ヒトへの影響 7.1一般集団への暴露 2−NPの一般集団への暴露は極めて低いように見え、この暴露の影響に ついての情報はない。2−NPはペイント類およびその他の商品に用いられ てきた。これらの商品の使用による2一NPの暴露によって、一般集団中に 検出し得る傷害あるいは疾病を生じたことの証拠はない。 7.2職業暴露 7.2.l急性中毒 ヒトに対する2一NPの重大な暴露の大多数あるいはその全部は、職業に 関連している。その高濃度は急性毒性を有し、7件の職業上の死亡例は2一 NPの蒸気の吸入に帰因している(Gautieretal.,1964;Hineetal.,1978;Ron‐ dia,1979;Harrisoneta1.,1985,1987;USNlOSH,1987b)。すべてのケースの暴 露は、2−NPを含む溶剤混合物によるもので、l−3日間に合計5−16時 間に達し、タンク内部、地下室、船倉などの閉鎖的空間で、換気が少ないか あるいは全くない場所での塗装・コーティング作業中に発生している。死亡 を招いた場含の2−NPの実際の濃度は測定されなかったが、あるケースで は犠牲者の血液中の2一NPの含有量(0.013gll)が、ガスクロマトグラフィ 一.FID(フレームイオン化検出器付き)により決定され、その濃度は2.18g/ m3(600ppm)と推定された(Harrisonetal.,1987)。暴露中あるいは暴露後の症 状には、頭痛、吐き気、目まい、眠気、虚脱感、食欲不振、嘔吐、下痢、頚 部・胸部・腹部の疾痛を含み、初期の症状には治療を必要とした。犠牲者達 は入院し、一般には症状は軽快し、一部のケースでは1日以内に退院するま でに好転した。しかし、この改善は一時的で、7件のケースのすべてにおい て退院した人々は、数日内に体調を悪化させ再入院した。その後の症状には、 持続的な吐き気、嘔吐、無食欲、血便、精神錯乱、不安、反射作用の喪失、 血清アミノ転換酵素およびその他の肝臓損傷の指標の増加が含まれる。死亡 は暴露後4−26日(平均10日)以内におこった。すべてのケースにおいて、 主因は急性肝障害であった。寄与要因は、肺水腫、胃腸器官の出血、呼吸器 官および腎臓の障害であった。死後の肝臓の顕微鏡検査では肝組織の壊死、 一部のケースでは脂肪質の分解が認められた。犠牲者の中には、肝疾患の病 歴保有者および飲酒過多の者はいなかった。 これらの死亡例に加えて、2−NPの急性暴露による、死亡には至らなか った4件の重大なケースがあった(Gautieretal.,1964;Hineetal.,1978;Har‐ risoneta1.,1985,1987;USNIOSH,1987b)。その内、1件以外は上述の死亡者 の同僚であったが、受けた用量はより少なかった、と考えられる。初期の症 状は死亡者と類似していたが、死亡を免れ完全に回復した。しかし、血清酵 素濃度は暴露後数カ月間、軽度の増加を維持した。死亡者の事例では、これ らの作業者が暴露された2−NPの実際の濃度は不明である。1名の生存者 は入院時において、2−NPの血清内濃度は8.5mglIを示した。その時同時 に入院し、その後に死亡した共同作業者の2−NP血清内濃度は13mgllで あったため、Harrisoneta1.(1987)は、2−NPは極めて急勾配の用量一反応 関係を有するか、あるいは個人の感受性の実質的な差異の何れかであろう、 と推測した。6名の男性(約300名のグループからの)は、2−NIPを含むエポ キシ樹脂コーティングからの暴露後に中毒性肝炎を発症した(Williamset a1., 1974)。中毒性肝炎の発症は、コーティング中のメチレンジアニリンによるも のとされ、2−NPの可能性については原因の一部として検討されなかった。 より低濃度の2−NPへの暴露は、前記の症状の一部をつくるように見え る。364mg/m3(100ppm)以上の濃度への短期および間欠的暴露は頭痛と吐 き気を起こさせるようである(Angus Chemical Co.& Occusafe,Inc.,1986)。作業場の空気を汚染している混含溶剤の蒸気〔この研究実施時に利用可能であ った比色法を用い、73−164mg/m3(20−45ppm)と推測]ヘの暴露は、1日 周期の症状をもたらした(Skinner,1947)。作業者は、仕事の開始時には気分 が良いが、正午近くでは吐き気と食欲喪失を表した。作業終了時にはこれら の症状は更に悪化し、嘔吐と下痢を伴う。嘔吐は作業者が職場を去った後も 続き、彼等は夕食をとることはできない、しかし眠ることはできる。翌朝に は彼らは再び気分を回復する。同僚達は、吐き気と嘔吐は経験しなかったが、 仕事中に徐々に増幅するように感じられる後頭部の頭痛に悩まされた。すべ ての作業者は、1日以上作業場から離れた場含には症状から解放され、2− NPのメチル・エチル・ケトンヘの代替措置は、これらの症状を完全に消失 させた。Skinner(1947)は、他の工場の作業者への36−109m/3(10−30ppm)、 4時間以下/日、3日以上/週の暴露において、認め得る悪影響ななかった と述べている。 これらのケース・スタディの欠陥は、Hineeta1.,1978の1件を除いては、 その暴露は2−NPを含有する混含溶剤であって、2−NP単独(Hine eta1., 1987)ではないという点にある。従って、観察された影響は全面的な確信を 持って2−NPによるものであるとは言えない。しかし、原因物質が単独で はないとしても、多数の要素は2一NPが主因であることを指摘している。 その混含物で一般的なのは溶剤のみであり、混含物中の溶剤のみが肝毒性と して知られている。溶剤混含物による生体の症状と損傷作用は、溶剤構成の 大きな差異(2−NPの一般的存在は別として)があるにもかかわらず、それ ぞれよく似ており、また2−NP単独の暴露から生じるものともよく似てい る。さらに、上述の通り、2−NPの他の溶剤への代替措置により、すべて の症状は除外された。従って、この証拠の重みは、2−NPを含む溶剤混合 物の暴露後の人体の症状と損傷は、もし全部ではないにしても、主として2 −NPにより発生する、との見解を支持している。 7.2.2長期暴露の影響 2−NPは40年間以上も使用されてきたという事実にもかかわらず、長 期影響のデータは極めて少なく、それらの情報は主として2−NPの製造会 社の未公表リポートより得られたものである。 アンガス化学会社は2−NPの主要なメーカーであり、米国、メキシコ、 ドイツ、スウェーデン、オランダの各種工場(訳者注:この各種工場は、2 一NPの製造のみでなく、溶剤の抽出・自動車組み立て・ペイント製造・化 学・印刷・インク製造・コーティング製造が含まれている。)より、職業上暴 露された1,800名以上の作業者の情報を集めた。(P.114−116の「2一ニト ロプロパンの長期職業暴露の研究」参照)入手した情報によれば、生存従業 員の医療記録では、肝機能に問題はなく、2一NPの慢性暴露に関連した明 らかな症状あるいは状態についての問題は存在しなかった(Angus Chemical Co.and Occusafe,Inc.,1986)。 上記の調査の主要部分は、Miller&Temple(1979)により、2−NP製造会 社に雇用された1,481名の作業者に対して、1955−1977年に実施された初 期の死亡率の研究である。 その暴露は、直接、間接、暴露ゼロと範囲を限走した。公式の産業衛生上・ の監視は1977年まで行われなかった。個人の暴露は、実際の暴露データで はなく職務名に基づいて決定されていた。アンガス化学およびオキュセイフ 社(1986)は、これらのデータの分析は、この作業者群中には、異常ながんあ るいはその他の疾病パターンを示唆していない、との結論を出した。しかし、 彼等は「コホート・の規模が小さく、暴露および観察の期間が比較的短いた め、これらのデータより−NPはヒトに対し発がん性を示さない、との結 論を下すのは不可能である」と述べた。同一のコホートについての追跡リポ ート(Bolender,1983)における知見では、最初の結論を変更していない。 このコホートは、長期暴露(15年以上)を経験した限られた数の作業者で あるという点を強調する必要がある。個人暴露データが入手できないため、 入手可能のデータから、2−NPはヒトにおいては発がん性を有しない、と の結論を出すことはできない。
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8. ヒトの健康リスクの評価および環境への影響 8.1ヒトの健康リスク 2−NPの生物学的発生源は知られていないが、2−NPはタバコの煙の 微量成分として検出されており、おそらく硝酸塩を多量に含む有機物質のそ の他のタイプの煙にも存在すると考えられるため、極めて低レベルの非職業 的暴露がほとんど普遍的に存在するに違いない。2−NPを用いて分離され た脂肪酸を含む食品中の残査、飲料缶内層およびその他のコーティングは、 代表的な低量(μg)の2−NPの追加的な暴露発生源であろう。その低濃度暴 露のヒトヘの影響は、もし存在するとしても、未知である。 作業者の暴露源には、印刷に用いられる輪転グラビアおよびフレキソグラ フィ(訳者注:曲面印刷法)用のインク類、建設業および保守管理、高速道路 マーキング、造船業および保守管理、家具製造業、食品包装が含まれている。 1980年に米国で実施された調査に基づき2−NPの職業暴露は作業場の1%、 が規制され、重大な職業上の暴露19.1mg/m3(2.5ppm)以上コについて作業 場の0.005%が規制を受けた。これより、全世界で、数千名の作業者のうち 数十名が重大な職業上の暴露を受けていたことになる。この職業暴露の影響 は明らかではない。 2−NPによる産業現場での死亡例は、現在に至るまで極めて少ない。閉 鎖的空間における2一NP含有の溶剤混合物の使用中に、その高濃度の蒸気 への急性暴露による死亡の主因はすべて肝障害であった。非致死濃度の2− NPへの暴露は、一過性の疾病あるいは不快感を生じさせるであろうが、こ の化学物質がヒトにがんを誘発する、あるいは長期の有害影響をもたらす、 との症例あるいは疫学的証拠はない。 動物データは、2−NPはラットにおける強力な肝発がん物質であること を立証している。高濃度ではあるが致死的ではない濃度(少なくとも0.36g/ m3,100ppm)ヘの慢性暴露は、ラットにおいて高頻度の肝腫瘍および肝がん を誘発したが、これらの観察はマウスおよびウサギにおける少数の研究では 再現できなかった。2−NPがラットにがんを誘発するメカニズムについて は、未だ明らかにされていない。2−NPは、in vitro(試験管内)およびin vivo (生体内)の双方において強い遣伝毒性を示す。ラットにおける、この化含物 の肝発がん性は、肝臓に特異的な反応性を有する生成物の影響のように見ら れる。DNA損傷を受ける動物種は確認されていない。2−NPは、肝細胞の 増殖を誘発し得るため、腫瘍促進作用をも有しているのであろう。ラットと ヒトとの間における−NPの代謝活性化の類似性と相違点の大部分は不明 である。 現在、哺乳類において発がん性を示す物質は、ヒトの発がん物質と見なさ れている。2−NPの暴露の正確なリスク・アセスメントには、さらに研究 が必要である。 8.2環境への影響 2一NPは環境に対する脅威とは指摘されていない。それは自然環境中で の移動性が高く、個々の環境媒体に蓄積することはない。それは環境中での 日光への暴露で光分解により、また土壌および水中において生物学的プロセ スにより破壊されるようである。しかし、自然界での分解についてのこれら の予測や推定を確認するためには、2−NPの環境中での挙動に関する実験 的および観察上のデータは不十分である。微生物類、無脊椎動物、魚類につ いての観察では、非哺乳類生物に対する低い急性毒性を示している。
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9. ヒトの健康を守るためにの勧告 2−NPはヒトにおいて発がん性を有するとの徴候(indications)はない。ラ ットにおけるその発がん性を考慮して、職業上の暴露、ペイント類、ニス類 などの消費者用商品中の存在は最小限にし、英現できる場合には、低毒性の 溶剤への代替を勧告する。作業場のモニタリングは、作業者への実際の暴露 を抑制するため継続すべきである。非職業暴露をなくすことは不可能である が、そのような暴露は最小限にするべきである。2−NPは、食品加工に用 いてはならない。
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10.今後の研究 10.1環境 2−NPは、環境中での移動性が高く、各環境媒体に蓄積せず、環境中で 微生物および紫外線により低毒性物質に分解されるように見えるが、これら の推測を実験的に確認し、種々の環境媒体中での分解速度の定量化が望まし い。 10.2疫学 2−NP製造プラントおよびその含有製品(例えば、インク類、ペイント 類)を使用する作業者のコホートについて、がんおよびその他の有害影響の 発生率を検討すべきである。 10.3体内毒性動態 2一NPの毒性作用の動物種および性別の差異についての解明を促進する ため、その体内における代謝および分布について、さらに詳細な検討が必要 である。分布および代謝の研究には、炭素および窒素部分の双方の代謝産物 を含めるべきである。皮膚吸収についての実験データも入手すべきである。 実験動物から得られたデータをヒトヘ容易に外挿するため、ヒトの細胞を用 いた2−NPの代謝についての研究が必要である。 10.4発がん性 2−NPが遣伝毒性およびがんを誘発する生化学的および分子生物学上の メカニズムを解明するため、継続的な努力を払うべきである。 ll.国際機関によるこれまでの評価 2一NPは、1979年および1981年に、国連食料農業機構(FAO)および世 界保健機関(WHO)の食品添加物に関する専門家委員会め合同会議で評価さ れたが、1日許容摂取量(ADI:Allowabledailyintake)は設定されなかった。 委員会は、2−NPは食品プロセスには使用すべきでないと勧告したが、脂 肪類および油脂類の製造中での分留溶剤としての暫定的使用が許可された (FAOIWHO,1984)。2−NPは、JECFA(FAOIWHO合同食品添加物専門家委 員会)において1989年に再評価を受け、それはラットにおける肝発がん物質 と見なされ、脂肪および油脂類の製造時の分留溶剤としての暫定的使用許可 は延長されなかった(FAOIWHO,1990)。欧州経済共同体(EEC)は、2−NP は引火性で、吸入、摂取、皮膚接触は有害であることを認め、加盟国はその 適切な包装、表示、保管の実施を保証した(IRPTC:国際有害化学物質登録 制度、1986)。 国際がん研究機関(IARC)は、1981年に2-NPの評価を実施し、ラット においてはその発がん性についての十分な証拠が存在するが、疫学情報はそ のヒトヘの発がん性を評価するためには不十分である、との結論を下した。 2−NPは「ヒトヘの発がんの可能性のある物質」のグループ2Bに分類さ れた(IARC、1987)。
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