環境保健クライテリア 125
Environmontal Health Criteria 125

白金 Platinum

(原著167頁,1991年発行)

更新日: 1997年1月7日
1. 物質の同定、物理的・化学的特性、分析方法
2. ヒトおよび環境の暴露源
3. 環境中の移動・分布・変質
4. 環境中濃度およびヒトの暴露
5. 体内動態および代謝
6. 実験哺乳類および in vitro(試験館内)試験系への影響
7. ヒトへの影響
8. 実験室および野外におけるその他の生物類への影響
9. ヒトの健康および環境保護のための勧告
10. 今後の研究
11. 国際機関によるこれまでの評価

→目 次


1.物質の同定、物理的・化学的特性、分析方法

白金化合物の分子式
PtO           酸化白金(U)(一酸化白金)         platinum(U)oxide
PtO2           酸化白金(W)(二酸化白金)         platinum(IV)oxide
PtCl2               塩化白金(U)(二塩化白金)         platinum(U)chloride
PtCl4               塩化白金(W)(四塩化白金)         platinum(IV)chloride
Pt(NO3)2            硝酸白金(U)                       platinum(U)nitrate
Pt(SO4)2            硫酸白金(W)                       platinum(W)sulfate
H2[PtCl4]           テトラクロロ白金(U)酸             hydrogen tetracholoro-
                                                       platinate(U)
H2[PtCl6]           ヘキサクロロ白金(W)酸             hydrogen hexachloro-
                   (塩化第二白金酸)                  platinate(W)
H2[Pt(NO2)2SO4]     ジニトロ硫化白金(U)酸             hydrogen dinitrosulfato-
                                                       platinate(U)
cis-[PtCl2(NH3)2]   シスージアミンジクロロ白金(U)     cis-diamminedichloro-
                                                       platinum(U)(一般には
                                                      「シスラチン」として
                                                       知られている)
trans-[PtCl2(NH3)2] トランスージアミンジクロロ白金(U) trans-diamminedichloro-
                                                       platinum(U)
[Pt(NH3)4]Cl2       テトラアミン白金(U)塩化物         tetraamineplatinum(U)-
                                                       chloride
[Pt(NO2)2(NH3)2]    ジアミンジニトロ白金(U)           diamminedinitro-
                                                       platinum(U)
[Pt(C5H7O2)2]       ビス(ペンタン-2,4-ジオン)白金(U)bis(penta‐2,4-dionate)-
                            platinum(U)
                                                       (一般にはbis(acetyl-
                                                       acetonato)platinum(U)
                                                       として知られている)
[Pt{(NH2)2CS}4]Cl2  テトラキス(チオ尿素)白金(U)       tetrakis(thiourea)-
                                                       platinum(U)
K2[PtCl4]           テトラクロロ白金(U)酸カリウム     potassiumtetrachloro-
                                                       platinate(U)
K2[PtCl6]           ヘキサクロロ白金(W)酸カリウム     potassium hexachloro-
                                                       platinate(W)
K2[Pt(CN)4]         テトラシアノ白金(U)酸カリウム     potassium tetracyano-
                                                       platinate(U)
K[PtCl3(NH3)]       トリクロロアミン白金(U)酸カリウム potassium amminetrichloro-
                                                       platinate(U)
K2[Pt(NO2)4]        テトラニトロ白金(U)酸カリウム     potassium tetranitro-
                                                       platinate(U)
Na2[PtCl4]          テトラクロロ白金(U)酸ナトリウム   sodium tetrachloro-
                                                       platinate(U)
Na2[PtCl6]          へキサクロロ白金(W)酸ナトリウム   sodium hexachloro-
                                                       platinate(W)
Na2[Pt(OH)6]        ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸ナトリウム
                                                       sodium hexahydroxy-
                                                       platinate(W)
Na[Pt(NH3)Cl3]      アミントリクロロ白金(U)酸ナリウム sodium amminetrichloro-
                                                       platinate(U)
(NH4)2[PtCl4]       テトラクロロ白金(U)酸アンモニウム ammonium tetrachloro-
                                                       platinate(U)
(NH4)2[PtCl6]       ヘキサクロロ白金(W)酸アンモニウム ammonium hexachloro-
                                                       platinate(IV)
Cs2[Pt(NO2)Cl3]     トリクロロニトロ白金(H)酸セシウム  cesium trichloronitro-
                                                       platinate(U)
Cs2[Pt(NO2)Cl2]     ジクロロジニトロ白金(H)酸セシウム  cesium dichlorodinitro-
                                                       platinate(U)
Cs2[Pt(NO2)Cl]      クロロトリニトロ白金(H)酸セシウム  cesium chlorotrinitro-
                                                       platinate(U)

a 物質の同定 元素記号 Pt 原子番号 78 原子量 195.09 天然の同位体 194Pt(32.9%),195Pt(33.8%),196Pt(25.3%) CAS登録番号 7440-06-4 b 物理的・化学的特性

表プラチナの物理的・化学特性*a

結晶形 銀色立方晶系 融点 1772℃ 沸点 3827(±100)℃ 密度(20℃) 21.45g/m3 溶解性*b(冷水)     不溶性     (温水)     不溶性     (他の溶媒)   アルコールに溶けない
*a;Windolz(1976);Weast & Astle(1981);Neumuller(1987)より編集 *b;Tobe & Khokhar(1977)
白金(Pt)は展性・延性に富む灰白色の貴金属で、原子番号78、原子量 195.09を有する。それは主としてアイソトープの194Pt(32.9%)、195Pt(33.8 %)、196Pt(25.3%)として天然に存在する。白金化合物の最高の酸化状態は+ 6であるが、+2および+4の状態が最も安定している。  この金属は空気中ではどのような温度でも腐食されないが、ハロゲン類、 シアン化物、イオウ、溶解したイオウ化合物、重金属類、水酸化物類には影 響される。王水(濃硝酸と濃塩酸の混合液)あるいはCl2/HCl(塩素の沸騰に より濃縮された塩酸)の温浸によって、重要な白金錯体であるヘキサクロロ 白金酸・H2[PtCl6]を生成する。ヘキサクロロ白金酸のアンモニウム塩を加 熱すると灰色の白金スボンジが作られる。分散する黒い粉末(「プラチナ・プ ラック」)は水溶液中で還元により生じる。 水溶液中の白金化合物の化学的特性は、その錯体化合物に著しく影響され る。その塩類の多く、特にハロゲン−あるいは窒素−供与体の配位子*は水 溶解性である。白金は、他の白金グループの金属と同様に、炭素化合物、特 にアルケン類およびアルキン類と反応する明白な傾向を有し、Pt(U)の配位 錯体類を生成する。 白金の測定については種々の分析方法がある。原子吸光分析法(AAS: Atomic absorption spectrometry)、プラズマ発光分析法は、生物および環境のサ ンプル中の白金分析について、高度の選択性と特異性および方法の選択を可 能にしている。これらの方法による検出限界の数μg/kgあるいは数μg/lは、 種々の媒体より得られている。 高周波誘導結合アルゴン・プラズマ原子発光分析法は、より低いマトリッ クス作用と多数元素の同時分析の可能性の点で電熱AASより優れている。
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2.ヒトお‐よび環境の暴露源 地球の地殻あるいは岩石圏における白金の平均含有量は0.001〜0.005mg/ kgの範囲である。白金は金属あるいは鉱物の形状として見出される。経済 的に重要な鉱物資源は、南アフリカ共和国および旧ソピエト連邦に存在して いる。これらの鉱床の白金含有量は1〜500mg/kgである。カナダにおいて は、白金グループの金属(白金、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ロ ジウム、ルテニウム)は、その平均含有量0.3mg/kgの銅−ニッケル硫化物 の鉱石として見出されるが、銅およびニッケルの製錬過程で50mg/kg以上 に濃縮される。米国、エチオピア、フィリッピン、コロンビアにおいて少量 が採掘されている。 白金グループ金属の世界の鉱業生産量の40〜50%は白金であり、その量 は過去20年問に着実に増加している。1971年には生産量は127トン(白金 は51〜64トン)であった。自動車排気ガス触媒の導入後の1987年には、白 金グループの世界鉱業生産量は約270トン(白金は108〜135トン)に増加し た。1987年の西側世界の白金の総需要量は約97トンに達した。 白金の主要な用途は、その非常に優れた触媒反応特性に由来している。さ らに、その工業的利用はその他の顕著な特性、特に広い温度範囲にわたる化 学的腐食への抵抗性、高温度の融点、高い機械的強度、優れた延展性に関連 している。また、白金は貴金属装身具類および歯科技工にも用いられている。 白金の特殊な錯体、特にシスージアミンジクロロ白金(U)(シスプラチ ン)*は医療用に用いられている*a)。 工業発生源からの白金の環境への排出データは入手できない。白金含有の 触媒の使用期間中には、触媒の種類により、一部の白金は環境中に漏出する であろう。企業において使用されている固定触媒の中では、アンモニア酸化 に用いられる触媒のみが大量の白金を排出している。 自動車用触媒は白金の移動発生源である。限られたデータによれば、古い ペレット・タイプ触媒の白金の摩滅は、走行1km当り0.8〜1.9μgである。 その白金の約10%は水溶性である。 新しいモノリス・タイプ触媒の出現により、三元触媒によるエンジン実験 での白金の排出総量は、ペレット・タイプ触媒の1/100〜1/1,000に低減 した。60、100、140km/hのシミュレーション・スピードにおいては、走行 km当り約2〜39ng(訳者注:ナノグラム、ナノは10-9、10億分の1の意)の 割含で、排気中の白金の全排出量は3〜39ng/m3であった。各種のテスト走 行において、排出微粒子の直径平均ほ4〜9μmであった。この排出された 大部分は、金属あるいは表面が酸化された微粒子の形状であるという 限定的な証拠がある。
*a) 本モノグラフでは、職業上および/または環塊上で重要な白金および 特定の白金化合物に関心を持っている。ヒトおよび勤物における抗腫   瘍薬剤「シスプラチン」とその類似薬の毒性影響についての詳細な検   討は、これらが主として治療薬剤として用いられる物質であるため、   この環境保健クライテリアの内容の範囲をこえている。さらに、これ   らの毒性作用は、他の白金化合物と比軟し例外的である。
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3.環境中の移動・分布・変質  白金グループの金属は、他の元素と比較して、環境中では稀である。高度 に工業化された地域においては、河川底質中に上昇した濃度の白金が見出さ れる。それは水生環境内で適切なpHと酸化還元電位状態に助けられて、た とえばフミン酸やフルボ酸が白金と結合すると推定されている。  土壌中では、白金の移動は、pH、酸化還元電位、土壌水の塩化物濃度、 最初の岩石中での白金の存在の態様に依存している。白金の移動は、極端に 酸性の状態あるいは塩化物の含有量が高い場合のみに起こると見なされる。  in vitro(試験管内)試験系において、ある種の白金錯体(W)は、白金(U)の 存在する非生物的条件下で、細菌のメチルコバラミンによりメチル化される ことが立証された。
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4.環境中濃度およびヒトの暴露 環境中における白金の極めて低い濃度と、それに関連する分析の問題のた め、その環境中濃度に関するデータベースは極度に限定されている。 米国において、自動車触媒導入以前に高速道路の近くで採取された大気サ ンプルの白金濃度は、検出限界の0.05pg/m3(訳者注:pgはピコグラム、ピ コは10-12、1兆分の1の意)以下であった。ドイッにおける最近のデータで は、道路近くの空気中の 白金(微粒子サンプル)濃度は1pg/m3以下から13pg /m3までが示された。田園地方での濃度では同程度のオーダー(0.6pg/m3以下 から1.8pg/m3)であった。 ペレット・タイプの自動車触媒の導入による道路周辺の白金の大気中濃度 は、拡散モデルと実験的排出データに基づいて推測されてきた。道路上と周 辺の白金の予測濃度は、総白金として0.005〜9ng/m3の範囲内であった。 モノリス・タイプ触媒からの総白金排出量は、ペレット・タイプ触媒のおそ らく1/100から1/1,000と低く、このタイプの触媒からの白金濃度は、 1m3当りピコグラムあるいはフェムト(注:10-15の意)グラム(fg)の範囲内 であろう。 カリフォルニア州内の各所における広葉樹に蓄積した路側の粉塵中で、37 〜680μg/kg乾燥重量が検出された。サンプル数は限られているが、この結 果は自動車が道路際の環境に白金を放出していることを示している。  植物チャンバー実験において、三元触媒装着のエンジンからの軽度に希釈 した排気ガスに4週間暴露した栽培草類には検出限界の2ng/g乾燥重量の 白金は含まれていなかった。 ミシガン湖の底質中の白金の調査では、白金は過去50年問以上、かなり 均一な割合で蓄積続けている、との結論に達した。堆積物の1cmから20cm までの中心部の濃度変動は、わずか0.3から0.43μg/kg乾燥重量しか認めら れなかった。 淡水中の白金濃度は報告されていないが、ドイツのライン河の高度に汚染 された堀割水路の川底の底質中では高濃度(730〜31,220μg/kg乾燥重量)が 見出されている。 ロッキーマツ材のサンプル中には、不検出から56μg/kg(灰重量)までの範 囲の白金が含まれていた。しかし、その近辺の土壌中の含量も同範囲であり、 これらの限られたデータによれば蓄積傾向は示されていない。 極端にアルカリ性の土壌で育った植物から分離されたサンプルでは、100 〜830μg/kg(乾燥重量)の白金が検出された。  海水サンプルにおいては、37〜332pg/lの範囲が含まれていた。東太平洋 の堆積物の中心部では、白金濃度は1.1〜3μg/kg(乾燥重量)を変動した。最 高濃度(21.9μg/kg)は、海洋沖の底質において検出されている。大型海草中 では、0.08〜0.32μg/kg乾燥重量の白金濃度が見出されている。 一般集団の血液中では、0.1〜2.8μg/lの白金濃度が見出されている。職業 上暴露された作業者の血清中では、150〜440μg/lが報告されている。  作業場における白金濃度のデータベースは限定されている。分析上の欠陥 により、古いデータ(0.9〜1,700μg/m3)はおそらく信頼できないであろう。 しかし、これらのデータより、白金塩類への暴露は、現在大多数の国におい て適用されている職業暴露限度の2μg/m3よりも高かったと推定できる。最 近の作業場での研究によれば、その濃度は検出限界以下から0.05μg/m3ある いは0.08〜0.1μg/m3が測定された。
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5. 体内動態および代謝 各種の白金化合物への単回吸入暴露(5〜8mg/m3、48分間)の後でば、吸 入された191ptの大部分は体内から速やかに除去された。その後の期問にお いては緩慢な排泄が統いた。191PtCl4、191Pt(SO4)2、1919PtO2、191Pt金属への暴 露10日後においては、191Ptの全身残留は、最初の生体負荷のそれぞれ1、 5、8、6%であった。191Ptの大部分は肺から粘液線毛作用により排泄され、 嚥下の後に糞便に排泄される(半減期24時問)。また、少量の191Ptは尿中で検 出されたが、これは極めて少量が肺および胃腸器官から吸収されることを示 している。 ラットにおける191PtCl4の各種経路の暴露による運命(fate)の比較研究(25 μci(キュリー)/動物)では、残留は静脈内投予後において最高値を示し、 次いで気管内暴露であった。また、経口投与後では最低であった。経口的に 与えられた191PtCl4は、ごく微量が吸収されるのみでその大部分は胃腸器官 を通過し糞便を経て排泄され、3日後には最初の投与量の1%以下が全身に おいて検出された。静脈内投与後では、191Ptは糞便と尿の双方にほとんど等 量が排泄されたが、その排泄は経口投与後の場合よりも遅く、3日後の全身 残留は約65%であり、28日後でも最初の用量の14%が残留していた。ま た、気管内投与の場合と比較すると、その生体残留は、これらの時点におい てそれぞれ22%および8%であった。  主要な蓄積部位は、腎臓、肝臓、脾臓、副腎である。腎臓において発見さ れる多量の191Ptは、白金が一度吸収されると、その大部分は腎臓中に蓄積 し、尿中に排泄されることを示している。脳内の白金が低レベルであるのは、 白金イオンの血液脳関門の通過は限定された範囲であることを示唆している。 極端に高濃度の水溶性塩頚を含む飼料が投与された場合には、ラット1匹 当りの白金消費総量が4週問で4,308mgに達するのとは対照的に、不溶解 性のPtO2は少量しか取り込まれない。 単純な白金塩類およびシスプラチン(訳者注:白金化合物の一種で、泌尿 器系の悪性腫瘍治療剤)の双方については、最初の速かな排泄とそれに統く 暴露後の長期の排泄期間が実証されており、その残留のプロフィルには著し い差異のある証拠はない。しかし、シスプラチンでは高い塩化物濃度が水和 作用を抑制するため、細膵包外液中では極めて安定である。この事実はそれが 主として未変化体として排泄されることを説明しており、単純な白金塩類と は対照的に、その排泄は主に尿を経て行われる。
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6.実験用哺乳類および in vitro(試験管内)試験系への影響 白金の急性毒性は、主として白金化合物の種類に依存する。溶解性の白金 化合物は、不溶性のものよりもずっと毒性が強い。例えば、ラットに対する 経口毒性[LD50(50%致死量)の数値]は次の順で低下する。 ヘキサクロロ白金(W)酸ナトリウム・Na2[PtCl6](25〜50mg/kg)>ヘキサ クロロ白金(W)酸アンモニウム・(NH4)2[PtCl6](195〜200mg/kg)>四塩化白 金(W)・PtCl4(240mg/kg)>硫酸第二白金(W)・Pt(SO4)2・4H20(1,010mg/ kg)>二塩化白金(U)PtCl2(>2,000mg/kg)>二酸化白金(IV)・PtO2(>8,000 mg/kg)。後の二化合物のLD50は算定されていない 白子の(albino)ウサギの皮膚試験においては、二酸化白金(IV)・PtO2、二 塩化白金・PtCl2(U)、テトラクロロ白金(U)酸カリウム・K2[PtCl4]ジアミ ンジニトロ白金(U)・[Pt(NO2)2(NH3)2]ビス(ペンタン−2−ジオン)白金 (U)・Pt(C5H7O2)2、トランスージアミンジクロロ白金(U)・trans-[Pt2 (NH3)2]は非刺激物質に分類された。へキサクロロ白金(W)酸アンモニウム ・(NH4)2[PtCl6]テトラクロロ白金(U)酸アンモニウム・(NH4)2[PtCl4]ヘ キサクロロ白金(W)酸ナトリウム・Na2[PtCl6]ヘキサヒドロキソ白金(W) 酸ナトリウム・Na2[Pt(OH)6]テトラシアノ白金(U)酸カリウム・K2[Pt (CN)4]テトラアンミン白金(U)塩化物・[Pt(NH3)4]Cl2、シスージアミンジ クロロ白金(W)・cis-[PtCl2(NH3)2]は刺激物質のように見えるが、その程 度は様々である。 眼の刺激試験においては、試験された白金化含物のすべては刺激作用を示 した。トランスージアミンジクロロ白金(U)・trans-[PtCl2(NH3)2]および テトロクロロ白金(U)酸アンモニウム・(NH4)2[PtCl4]では腐食性を有する ことが判明した。  モルモットおよびラットにおいて、塩化白金錯体類の静脈注射後に激しい 呼吸困難が観察されたが、これはおそらく非アレルギー性のヒスタミンの放 出によるものであろう。この非特定的なヒスタミン放出は、動物とヒトの双 方におけるアレルギー感作の診断の説明を複雑化させている。  硫酸白金(W)・Pt(SO4)2の週3回、4週問の皮下および静脈内注射後では、 皮膚試験(モルモットおよびラット)、被動性転嫁(passive trans:P-K反 応)、footpadテスト(マウス)による測定では、アレルギー状態の誘発はなか った。白金−卵白複合物の投与による実験動物の感作も成功しなかった。 メスの冠毛つきリスター系ラット(female hooded Lister rats)に対するテト ラクロロ白金酸アンモニウムの遊離塩・(NH4)2〔PtCl4〕による感作が、腹膜 内、筋肉内、皮下、気管内、footpadルート経由により、百日咳菌アジュバ ンド*と共に試みられたが、直接的皮膚試験・受身皮膚アナフィラキシー (PCA)テスト・RAST*で示されたように、その結果は失敗であった。しか し、白金−タンパク質を用いた場合にはPCAテストでは陽性の結果が報告 されている。  カニクイザル(Macaca fasicularis)に村する200μg/m3のヘキサクロロ白金 (W)酸ナトリウム・Na2[PtCl6]の4時間/日、隔週での12週問の鼻部のみ による吸入暴露では、対照動物と比較して著しく大きな肺の欠損(deficits)が 観察された。また、ヘキサクロロ白金(W)酸アンモニウム・(NH4)2[PtCl6] の暴露では、オゾンとの共存暴露においてのみ、重大な皮膚過敏症と肺の過 剰反応性を発生させた。 オスのSprague−Dawley系ラットを用いた経口投与試験では、塩化白金(W) ・PtCl4塩類(飲料水中に182mg/l)および硫酸白金(W)・Pt(SO4)2・4H20 (248mg/1)は4週間の観察期問中では正常な体重増加への影響はなかった。 しかし、3倍の白金濃度の場合には、体重増加率は飼料と水の20%消費減 少と平行し、最初の1週問の期問中のみ約20%減少した。  生殖、胎児毒性、催奇形性に吋する白金の、影響について入手し得る実験 データはごく限られている。硫酸白金(W)・Pt(SO4)2(200mgPt/kg)は、スイ スICR系マウスの仔獣の体重を、分娩後8〜45日の間減少させた。妊娠12 日目にヘキサクロロ白金(W)酸ナトリウム・Na2[PtCl6](20mgPt/kg)に暴露 された母獣より生まれた仔獣への主な影響は活動の減少であった。固体の白 金の針金や薄片は生物学的には不活性と見なされており、ラットおよびウサ ギの子宮内への移植後の悪影響は、おそらくその異物の物理的存在によるの であろう。 妊娠18日のラットへの191PtCl4の静脈内投与(25μキュリー/動物)では、 限定された範囲内での胎盤関門の通過が認められた。 数種類の白金化合物は多数の細菌システムにおいて変異原性が見出されて いる。比較研究において、シスプラチンは他のテストされた白金塩類よりも 強い変異原性をしばしば示した。哺乳類細胞(チャイニーズハムスター卵 巣細胞-HCFF-システム)によるin vitro(試験管内)研究においては、シス ージアミンジクロロ白金(U)・cis−[PtCl2(NH3)2]、トリクロロアンミン白金 (U)酸カリウム・K[PtCl3(NH3)]、トリアミン白金(U)塩化物・[Pt(NH3)3Cl] Clの変異原性活性の比は、100:9:0.3であった。テトラクロロ白金(U) 酸カリウム・K2[PtCl4]、トランスージアミンジクロロ白金(U)・trans[PtCl2 (NH3)2]の変異原性は限界すれすれ(marginal)であったが、一方、テトラア ミン白金(U)塩化物・[Pt(NH3)4]Cl2は変異原性を示さなかった。また、テ トラクロロ白金(H)酸カリウム・K2[PtCl4]およびテトラアミン白金(U)塩 化物・[Pt(NH3)4]Cl2は、ショウジョウバエ(melano gaster種)の性関連の劣性 致死テスト、マウスの小核テスト、チャイニーズハムスター骨髄テストにお いて変異原性は観察されなかった。 シスプラチン以外は、白金および白金化合物の発がん性の実験的データは 入手できない。シスプラチンについては、動物に対する発がん作用の十分な 証拠が存在する。しかし、シスプラチンとその類似物質はその他の白金化合 物と比較するとむしろ例外的である。これは、それらの抗腫瘍作用について のユニークなメカニズムを反映している。グアニンの特定位置におけるシス 異性体によってのみ形成されるDNAのストランド(鎖)内の橋かけ結合がこ の抗腫瘍作用の理由とされている。がん細胞内におけるDNA合成は脆弱化 され、一方、正常細胞においてはシスプラチンによるグアニンの損傷は、合 成以前に修復されるように見える。
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7.ヒトへの影響  白金塩類への暴露はおおむね職業的環境に限定され、主として白金金属製 錬所および触媒製造プラントにおいて発生する。  白金塩類の過敏症*aの原因となる化合物は、ヘキサクロロ白金(W)酸・H2 [PtCl6」およびヘキサクロロ白金(W)酸アンモニウム・(NH4)2[PtCl6]、テトラ クロロ白金(U)酸カリウム・K2[PtCl4]へキサクロロ白金(W)酸カリウム・ K2[PtCl6]、テトラクロロ白金(U)酸ナトリウム・Na2[PtCl4]のような一部の 塩化塩類である。テトラニトロ白金(U)酸カリウム・K2[Pt(NO2)4]テトラ アミン白金(U)塩化物・[Pt(NH3)4]Cl2、テトラキス(チオ尿素)白金(U)・[Pt {(NH2)2CS}4]Cl2のようなハロゲン配位子のない白金(非ハロゲン化錯体) およびシスージアミンジクロロ白金(U)・cis[PtCl2(NH3)2]のような中性錯 体は、完全抗原を形成するタンパク質と反応しないらしく、アレルギー性は 認められない。  過敏症の徴候および症状には、皮膚の葦麻疹、接触皮膚炎、くしやみ、息 切れ、チアノーゼから重症の喘息に至る呼吸障害が含まれる。白金への最初 の接触から最初の症状発現までの潜伏期間は、数週間から数年まで様々であ る。感作*がひとたび確立されると作業者が作業場で暴露される限り症状は 悪化するが、暴露作業からの配置転換により通常は消失する。しかし、感作 後に長期間暴露されると、それらの人々は症状から完全に解放されることは ないであろう。  入手可能の文献から明瞭な濃度−影響関係は推論できないが、白金塩類過 敏症発症のリスクは、暴露強度に関連するように見られる。金属白金は、非 アレルギー性のように見える。「白金」指輪による接触皮膚炎を主張し唯一 報告された症例を除いて、アレルギー反応は報告されていない。 白金塩類過敏症の臨床的発現はアレルギー反応を反映している。そのメカ ニズムは、タイプT(IgE介在の)の反応のように見える。感受性の高い人々 における白金塩化物錯体に吋するIgE抗体生成の可能性は、in vivo(生体内) およびin vitro(試験管内)テストの基礎において推測されている。低い分子 量(相対分子質量)の白金塩類は完全抗原を生成するための血清タンパク質と 結合するハプテン*として作用すると考えられる。 溶解性の白金錯体の希釈濃度を用いた皮膚穿刺試験は、アレルギー性に対 する再現性のある、信頼し得る、適度に鋭敏な、高度に特異的な生物学的モ ニターである。暴露作業者の定常的なスクリーニングに用いられる化合物は ヘキサクロロ白金(W)酸アンモニウム・(NH4)2[PtCl6]、ヘキサクロロ白金 (W)酸ナトリウム・Na2[PtCl6]テトラクロロ白金(U)酸ナトリウム・Na2 [PtCl4]である。皮膚穿刺試験の感受性と信頼性は、現在入手し得るin vitro 試験では達成されていない。白金塩化物錯体には、酵素抗体法およびRAST において特異的なIgE抗体が発見されており、その皮膚穿刺テストの結果と の関連性が報告されているが、RASTの非特異性のため、スクリーニングの 目的での適用性(applicabmty)は疑問視されている。  白金と白金塩類との間のごく限られた交叉反応性が、皮膚テストおよび RASTにおいて見出されている。白金以外の白金グループ金属への反応は、 白金塩頚に感受性の高い個人においてのみ認められている。  喫煙、アトピー*、非特異的呼吸器反応充進は白金塩類過敏症と関連があ り、それらは素因になり得るであろう。  各国における自動車触媒の導入時において、一般集団の実際の暴露状況に ついてのデータは欠けている。少数の排気データと拡散モデルに基づいた大 気中濃度の予測では、一部の国々において適用されている金属白金の吸入性 粉塵総量の職業上の暴露限度の1mg/m3の10,000分の1以下である。排出 白金の大部分はおそらく金属のかたちであるため、自動車触媒からの白金排 出による感作は極めて低いであろう。もし、排出された白金の一部が溶解性 でアレルギー誘発性であったとしても、溶解性白金塩類の職業暴露限界(2 μg/m3)との安全幅*は少なくとも2,000になるであろう。 予備的な免疫学的研究として、自動車触媒の抽出物のサンプルを用い、3 名のヒトのボランティアに皮膚穿刺試験が行われたが、陽性の反応は誘発さ れなかった。 白金あるいはその塩類によるヒトの発がんリスク評価のデータは入手でき ない。シスプラチンについてのヒトの発がん性の証拠は不十分と見なされて いる。
a) "platinosis”(白金症)との用語は"silicosis"(珪肺)のように惟性線維化  の肺疾忠をな意味するため、白金塩類関連の疾息にはもはや用いられない。  それに代わり、「白金塩類アレルギー」「反応性ハロゲン配位子を含む白金  化合物のアレルギー」「白金塩類過敏症」(PSH:platinum salt hypersensitvity) が用いられ、最後の用語が好まれている。
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8.実験室および野外における その他の生物類への影響 白金の単純な錯体は細菌に対する影響力をもっている。多数のグラム陽性 および特にグラム陰性の細胞成育を低下させることなしに、選択的に細胞分 裂を阻害するシスプラチンのような中性錯体の発見は、白金の抗腫瘍剤とし て医薬品への利用を可能とした。 緑色藻挽 Euglena gracilis の成育と発生は、実験室の「小宇宙」(microcosm) においてヘキサクロロ白金(W)酸・H2[PtCl6](250,500,750μg/l)により阻害 された。シスブラチンは2.5mgれの濃度では、水ヒヤシンス Eichhornia cras- sipes に対し、白化現象(chlomsis)と成育阻害を生じさせた。  ヘキサクロロ白金(W)酸・H2[PtCl6]による3週間の暴露では、無脊椎動 物ミジンコ属に対して、LC50(50%致死濃度)として520μgPt/lが得られた。 濃度14および82μg/lにおいて、幼虫の総数として測定された繁殖は、それ ぞれ16および50%の阻害を受けた。  テトラクロロ白金(U)酸・H2[PtCl4]の短期暴露後における静的生物学的 テストにおいては、24、48、96時間のLC50の数値は、それぞれ15.5、5.2、 2.5mgPt/lであることが、coho種サケ Oncorhynchus kisutch により発見され た。一般遊泳能力および鱒(えら)の活動は0.3mg/1で影響を受けた。聴およ び嗅覚器官の損傷は0.3mg/l以上で認められた。また、0.03〜0.1mg/lの濃 度においては影響はなかった。 陸生植物に対する白金の影響が研究されてきたが、それらはすべて溶解性 白金塩化物により実施された。砂礫栽培における大豆およびトマトの成育は、 ヘキサクロロ白金(W)酸・H2[PtCl4]の3×10-5〜15×10-5mol/kg(5.9〜29.3 mg/kg)の濃度において抑制された。0.057、0.57、5.7mg/lの四塩化白金(W) ・PtCl4を含む水耕溶液中で育った9種類の園芸作物において、トマト、ピ ーマン、カブラ葉部、ハツカダイコンの根部の乾燥重量は、その最高濃度に おいて著しく減少した。この濃度レベルでは,大多数の種類の作物の芽と未 成熟の葉は白化した。一部の種類においては、低レベルの四塩化白金(W)・ PtCl4は、成育へも同様の影響を及ぽした。さらに、最高の白金濃度では蒸 散も抑制されたが、これは気孔抵抗の増加によるものであろう。  また、肥料溶液中で育成されている南アフリカの牧草種の Setaria verticil- lata の苗の成育に対する刺激は、テトラクロロ白金(U)酸カリウム・K2 [PtCl4]として投与された低濃度の白金(0.5mgPt/l)において観察された。2 週間後には、最長の根は65%まで増加した。白金2.5mg/lの最高濃度にお いては、根部の成育の遅滞および葉の白化現象のかたちでの植物毒性が見ら れた。
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9.ヒトの健康および環境保護のための勧告 9.1 採用前スクリーニング(一次検診)および医学的評価 白金塩類過敏症(PSH:platinum salt hypersensitivity)発症のリスクに対する 作業者のスクリーニングの際には、溶解性白金塩類に暴露される可能性のあ るすべての従業員に対し、次の事項を実施すべきである。  ・以前の呼吸器疾患、アレルギー、喫煙、職歴に特に留意した質問調査。  ・肺機能テスト(肺気量測定、フローボリューム)、気管支反応性(冷気、メ   タコリン、ヒスタミン等)、総血清IgEを含む免疫学的プロフィルを包含 する完全な医学的検査。 ・チリダニ類、草木類の花粉あるいは同程度に一般的な大気中アレルゲン 類を含む抗原の組み合わせを用いたアトピー状態に対する皮膚穿刺試験。 ・ヘキサクロロ白金(W)酸アンモニウム・(NH4)2[PtCl6]、テトラクロロ白 金(U)酸ナトリウム・Na2[PtCl4]、ヘキサクロロ白金(W)酸ナトリウム ・Na2[PtCl6]の、新しく調製され、適切に緩衝性のある塩類溶液(すな わち、2.5g塩化ナトリウム/l、1.37g炭酸水素ナトリウム/1、2gフ ェノール/lを含む5%v/vグリセロール/水)を用いた皮膚穿刺試験。 試験に用いる濃度は、特定の状況に応じて10-9〜10-3g/mlの間を使用 する。すべての試験は重複して実施し、陽性および陰性の生理食塩水の 対照を含めるべきである。 9.2 非アレルキー性物質との置換 実行可能の場合には、製錬・製造・使用中のアレルギー性白金化合物を非 ルギー性物質に置換する試みをなすべきである。 9.3 雇用期間中のスクリーニンクおよび医学的評価  a) 雇用期間中の感作を検出するため、暴露の可能性のあるすべての作業者 に対し、皮膚穿刺試験を少なくとも年1回実施すべきである。白金皮膚 試験の反復が感作の原因になる、という説得力のある証拠はない。雇用 後2年間は感作がより頻繁に起こる期間であるため、年に4回の間隔で    の試験を考慮すべきである。 b) もし医学的症状あるいは徴ふが白金塩類過敏症の発生を示唆した場合に は、その作業者はできるだけ早く暴露のリスクからはずすべきである。 呼吸器官の機能変化を検出するためには、9.1項で述べた肺機能評価を 適当な間隔で実施すべきである。 9.4 作業場の衛生 a) 白金塩類過敏症は、作業場の時間荷重平均濃度が、常時、ACGIH(米国 産業衛生専門家会議)の許容濃度(TLV:threshold limit value)の2μg/m3 以下に維持されているにもかかわらず起こり得るので、最も効果的な予 防は管理方法の改善である。これには、白金塩類エアロゾルと粉塵の暴 露を実際的な最低限度に低減させるために、閉鎖型の工程と最適の換気 が含まれる。 b) 漏洩あるいは事故より生じる高レベルで短時間の白金濃度は、感作の点 からは重要であることが示唆されている。白金の暴露濃度と感作の発生 との間の関連性は不明であるため、職業上の暴露限界の低減の勧告は正 当化できない。しかし、一般に用いられている8時問の時間荷重平均濃 度である2μg/m3の職業上の暴露限界を天井値(a ceiling value)に変更し、 個人の標本を地域の標本と組み合わせて用いることで実際の白金暴露を より正確に決定することが勧告される。 c) 技術的なコントロールは常に暴露を最小化するため適切でなければなら ない。しかし、一部の状況下では、特別にデザインされたエアストリー ム・ヘルメット*を含む防護服の使用が必要であろう。  d) 作業者には、作業場でのみ使用される清潔な作業衣を支給すべきである。 屋外用の衣服を作業場で着用してはならない。
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10.今後の研究 a) 実験動物において、白金塩類過敏症の発生についての濃度ほ−反応関係の 情報が欠けているように見えるため、感作に対する暴露濃度の影響の研 究を実施し、感作と誘発の閾値を明確にすべきである。 b) 呼吸器の過剰反応性のような因子の影響をより詳しく研究し、白金塩類 過敏症発生のリスクのある個人のスクリーニングとその確定に対し、そ れらの適用可能性を規定すべきである。 c) 感作の指標として、溶解性白金の刺激が皮膚穿刺試験よりも鋭敏であれ ば、その利用を研究すべきである。 d) 過去における白金塩類過敏症のヒトの職業的研究の大多数は、白金製錬 所における断面研究◆において実施された。このタイプの研究に固有の、 過去の暴露および疾病による退職作業者に関するデータ不足のため、作 業者集団中の白金塩類過敏症の実際の発生率を決定するための縦断的研 究*を実施すべきである。さらにヒトによる研究、例えば、感作に対す る暴露濃度の影響および感作と誘発の閾値の決定などをデザインすべき である。 e) シスプラチンによる職業的および環境的暴露の程度は、現時点では不明 である。本化合物の製造中および使用中の暴露を規定するための研究の 開始を勧告する。 f) 自動車触媒から排出される白金の量と化合物の種類の測定を、さらに実 施すべきである。 g) 微粒子化された白金金属のヒトおよび動物に対する毒性影響は十分には 研究されていない。当面、適切な吸入研究が求められており、次いでさ らに試験が必要であろう。 h) サンプリング方法と分析の正確度と精密度とを確実にし、比較性を向上 させるため、精度管理プログラムを開始すべきである。  i) 自助車触媒よりの白金含有の排気は、おそらく一般集団に悪影響をもた らさないでデろう。しかし、安全を考えて、その可能性をレピューしな けれなまらない。
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11. 国際機関によるこれまでの評価 白金および白金化合物の発がん性については、この環境保健クライテリア ・モノグラフにおいて、その詳細に言及したシスプラチン(2項の注参照)を 除いては、国際機関による評価はなされていない。 国際がん研究機関(IARC)は、動物に対するシスブラチンの発がん性の証 拠は十分であるがヒトに対しては不十分である(IARC,1987b)と見なしてい る。シスプラチンは、「ヒトに対し発がん性を示す可能性が高い」とされる グループ2Aに分類されている。
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Last Updated :10 August 2000
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