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平成17年9月1日

家庭用不快害虫用殺虫剤安全確保マニュアル作成の手引き

<目 次>

1.目的

2.背景と問題点

3.適用範囲

4.リスクの総合的検討

 4-1. 製品の企画・設計段階におけるリスク管理

 4-2. 製品販売後におけるリスク管理

 4-3. リスクコミュニケーション

 4-4. リスク削減技術の開発

 4-5. 品質保証

 4-6. 過去の健康被害事例

5.付録 (pdf.)
 ※「5.付録」のうち、「家庭用生活害虫防除剤の自主基準」については、本手引きを公表した後に改訂されている。
 家庭用生活害虫防除剤の自主基準(平成20年8月1日)(最新版)

照会先:厚生労働省医薬食品局審査管理課
化学物質安全対策室


1.目 的

 本書は、過去に発生した事故の原因究明等を通して、家庭用不快害虫用殺虫剤の製造、使用等の際に生じるリスク及びリスク要因を把握し、事故の未然防止、当該製品の品質及び安全性の向上に資することを目的として作成したものである。

 当室が先に策定した「家庭用化学製品に関する総合リスク管理の考え方」に基づき、製品の設計、製造から使用、廃棄に至るまでの総合リスク管理の手順を定め、各事業者が製品毎に「安全確保マニュアル」を作成する際の手引き書となるものである。

 家庭用化学製品において、誤使用や過剰使用を含め、過去に幾つかの事故例が報告されている。こうした過去に報告された事故を分析し、その事故原因が何かを明らかにし、特に頻度の高い事故、重篤度の高い事故を未然に防ぐ方策を検討することが必要である。本手引きは、これら検討すべき課題を明記することにより、家庭用不快害虫用殺虫剤による事故を未然に防止するための指針を示したものであり、下記の人々に利用されることを想定している。

○ 家庭用不快害虫用殺虫剤の製造(輸入)業者
○ 家庭用不快害虫用殺虫剤の販売業者
○ 消費者及び消費者団体
○ 消費者被害対策担当者
○ 家庭用化学製品規制担当者
○ 生活教育関係者


2.背景と問題点

 家庭用品については、新製品の開発が目覚ましく、極めて多種多様な製品が対象となるという特性上、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律第三条にうたわれている「事業者の責務」、すなわち事業者による安全確保が重要であり、従来より、事業者による安全確保の体制を推進してきたところである。

有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(抄)
(事業者の責務)
第三条  家庭用品の製造又は輸入の事業を行なう者は、その製造又は輸入に係る家庭用品に含有される物質の人の健康に与える影響をはあくし、当該物質により人の健康に係る被害が生ずることのないようにしなければならない。

 家庭用不快害虫用殺虫剤については、生活害虫防除剤協議会により「家庭用生活害虫防除剤の自主基準」が作成され、安全性の確保及び品質向上が図られてきたところであるが、一般家庭の室内で使用されるものもあるため特に安全の確保に留意すべきこと、医薬品や農薬と同じ又は同等の有効成分が使用されているものもあるが薬事法や農薬取締法の適用を受けないため、安全性の確保や表示の方法等に対する適切な取組みを保つことが重要である。

 これらを踏まえ、事業者自らによる製品の安全確保レベルのより一層の向上を支援すべく、当マニュアル作成の手引きを策定した。


3.適用範囲

 本手引きは、一般消費者の用に供されるものであって、主目的として不快害虫の殺虫機能が付与された製品について適用する。家庭用不快害虫用殺虫剤とは、次の定義によるものとする。

 家庭用不快害虫用殺虫剤
薬事法、農薬取締法の適用対象外製品であって、家庭用に販売される不快害虫防除を目的とした殺虫剤である。なお、不快害虫とは、刺咬、不潔感等人に不快感を与える虫等の総称であり、以下に示すものを含む。

@ クロアリ、ハチ等の昆虫
A シロアリ、キクイムシ等の木材害虫
B 昆虫以外のムカデ、ダンゴムシ、ナメクジ、クモ等の小動物

なお、上記主目的以外に防虫等の機能を標榜している製品にあっては、当マニュアルと共に、業界自主基準等を参考としていただきたい。

(不快害虫の例)
  クロアリ、アカアリ、イエヒメアリ、アリガタバチ、ダンゴムシ、ワラジムシ、ヤスデ、ゲジ、ムカデ、ヒラタキクイムシ、ナガシンクイ、シバンムシ、ユスリカ、チョウバエ、ブヨ、アブ、ヨコバイ、ナメクジ、カタツムリ、クモ、ケムシ、ガ、チャタテムシ、カメムシ、ハサミムシ、ゴミムシ


4.リスクの総合的検討

 リスクを検討すべき段階、及びそれを還元する段階として以下のものがある。

(1)製品の企画・設計段階におけるリスク管理 (4−1)
(2)製品市販後におけるリスク管理 (4−2)
(3)リスクコミュニケーション (4−3)
(4)リスク削減技術の開発 (4−4)
(5)品質保証 (4−5)
(6)過去の健康被害事例 (4−6)

(1)は、製品の製造にかかる以前、製品の企画・設計段階でのリスク管理である。この時点でのリスク管理は、
@リスク要因(ハザード)の網羅的洗い出しとそのチェックリスト化、
A過去の事例の参照等を通じた各ハザードのリスク評価、
Bリスクの許容性評価、
Cリスク削減策の検討とその選択、
等の事項を網羅するものとし、製品化の可否を十分に検討する必要がある。

(2)は、(1)によって企画・設計され、製造された製品が市販された後のリスク管理である。ここでは、
@健康被害事例を含めた消費者情報の収集、
A製品並びに配合化学物質のリスクに関する最新情報の調査等
を通じてリスクの再検討を行い、必要に応じて、
B上記@、Aを反映した表示、警告内容の変更、製品・容器の改良、製造・販売方針の変更 等を行うことが課題となる。

(3)は、製品の企画・設計段階から販売後までのリスク管理を通じ適宜行う必要がある。具体的には、
@製品のリスク表示:取扱説明書を介した安全情報の提供や(2)の検討結果の積極的なフィードバック、
A @を実施するための体制の整備や改善、
B安全教育やセミナーの実施、メディアやネットワークを介した情報提供
等である。これらにより企画・設計段階で想定されたリスクや、(2)のAを通じ新たに見出されたリスクに関して適切な情報を還元することができるシステムが構築される。

(4)は、製造品質管理システムのP(plan)−D(do)−C(check)−A(action)サイクルを通じて常に検討されるべき課題である。企画・設計段階での検討によって事前にリスクは回避されるべきであるが、販売段階を通じてもリスクを可能な限り削減するための改善が必要である。新規製品の開発には従来品で得た削減技術を応用することが肝要である。また、製品開発には、リスクを更により削減するための技術の開発に努めるべきである。

(5)は、これら(1)〜(4)を行うにあたり、製品の品質保証システムを整備し、設計〜廃棄に至るまでのリスク管理を総合的に行うことを意味する。

(6)は、製品使用によって生じた健康被害事例があれば、その状況調査や原因について徹底的に解析し、可能な限り専門家の意見と合わせリスク削減策に資するとともに、上記(2)、(3)、(4)の重要な資料として活用する。健康被害事例はすべてをファイル化して、永久保存管理して、日常のリスク管理に活用することが必要である。


 4−1 製品の企画・設計段階におけるリスク管理

企画・設計段階におけるリスク管理の要件として以下のものがある。

@ 製品は、本来の目的で使用されたとき、使用者等に対して受容できない健康上のリスクを与えないこと。
A 製品は、使用者の健康上のリスクを可能な限り少なくするように設計され、製造されること。
B 製品の性格から、健康上のリスクを除去できない場合は、設計の変更や警告表示を含めた適切なリスク削減策を講じること。
C Bによっても削減できない健康上のリスクが 予測される場合には、使用者に対してその危険性を適切に知らせること。
D 製品は、誤使用をできるだけ減らすような設計であること。
E 妊婦(胎児)、乳幼児、老人等、弱者に対するリスクを減らすように配慮した設計であること。
F 通常の輸送、貯蔵、及び家庭環境で起こりうる過酷条件下でも、製品は上記の@、Aを満たすように設計され、製造され、包装されること。
G 製品及び内容物の廃棄時の作業者の健康上のリスク及び屋外使用や廃棄による環境汚染のリスクにも配慮すること。

 次項以降に具体的な検討事項を示す。

4−1−1 暴露に関する要因特定 

4−1−1−1 製品の剤型 

製品の性状として液体、粉末、顆粒等があると考えられる。また、製品の剤型としては、エアゾール剤、くん煙剤、蒸散剤、粉剤、ベイト(毒餌)剤、液剤等が考えられる。製品を設計するにあたってはそれらの使用方法、使用場面等を勘案し、剤型に起因する危険性を予測しておく必要がある。

○エアゾール剤(全量噴射型エアゾールを含む)
暴露経路: 吸入、皮膚・眼粘膜に接触
留意点
・狭い場所で噴霧される場合があるので、ガスや溶剤の成分の暴露にも注意が必要である。
・火気の近く等高温等の過酷条件下で破裂する可能性があることに注意する必要がある。
・使い切らないまま長期間にわたり保管した場合、漏出する可能性がある。
・処分される際には、使い切る前に廃棄されたものが爆発する可能性、廃棄されたものに穴を開け残余のガスを抜く作業を行う際に皮膚に接触したり、吸入したり、目に入ったりする可能性がある。

○くん煙剤、蒸散剤
暴露経路: 吸入、皮膚・眼粘膜に接触
留意点
・狭い場所で使用される場合があるので、発生する成分を吸入する可能性がある。
・狭い場所で使用される場合があるので、発生する成分が皮膚に接触する可能性がある。

○粉剤
暴露経路: 吸入、皮膚・眼粘膜に接触、経口摂取
留意点
・散布時に飛散した微粉末を吸入する可能性がある。
・誤って食べる可能性がある。

○錠剤、粒剤、ベイト(毒餌)剤
暴露経路:皮膚に接触、経口摂取
留意点
・ベイトタイプのものは、容器の破損による薬剤の漏洩等により皮膚に接触する可能性がある。
・誤って食べる可能性がある。
・ベイトタイプのものは、固体のみならず、半固体、ゲル状の剤型もある。

○液剤(油剤、乳剤、液剤、懸濁剤、ミスト剤)
 暴露経路:吸入、皮膚・眼粘膜に接触
 留意点
・液の飛散、容器の破損若しくは転倒等による液漏れにより吸入したり、皮膚に接触する可能性がある。
・揮発成分を含むものは吸入する可能性がある。
・ミスト剤については、吸入したり、目に入ったりする可能性がある。

不快害虫用殺虫剤242製品の分類数    
剤 型 製品数 内 容 量 容 器
1.エアゾール剤 84 300mLが70%。あとは450mL〜200mL。 エアゾール缶
2.全量噴射型エアゾール剤    
3.くん製剤    
4.蒸散剤    
5.粉剤 50 500gが中心。後は300g〜450g プラボトル
6.粒剤 58 100g〜500gの中でまちまち。
ベイト(毒餌タイプ)は3g〜6g×3個入りなど。
プラボトル
袋+紙箱
7.液剤 29 500mL、450mLが中心。 プラスプレー
8.懸濁剤    
9.錠剤 全てのベイト(毒餌)タイプ2g〜3gの固形、半固形、ゲル状の財形でプラスチックの容器に囲われている。 プラスチックのステーション(ボックス、ハウスと呼称)
10.塗布剤    
合 計 242    


4−1−1−2 物理化学的性状

各剤型において下記の物理化学的性状を考慮し、評価を行うこと。

○エアゾール剤(全量噴射型のエアゾールを含む)
 性状(色、臭い)、噴霧粒子径、pH、粘度、反応性、安定性(熱、その他)、製品圧力、噴射到達距離、噴霧量(/時間)、噴霧状態(スプレーパターン)、内容量(質量、体積)、質量偏差、製品(原液又は噴射物)の揮散速度、揮発成分(原液中)の蒸気圧、比重(原液)、表面張力(原液)、引火点、火炎長、分解性、蓄積性、残留性、漏洩試験等 なお、必要に応じて付着率も考慮すること。

○くん煙剤、蒸散剤
 性状(色、臭い)、内容質量、質量偏差、乾燥減量、燻煙時間/蒸散速度、発熱、安定性(温度、光、その他)、飛散性、分解性、蓄積性、残留性、等 なお、必要に応じて付着率も考慮すること。

○固体(粉剤、錠剤、粒剤、ベイト(毒餌)剤)
 性状(色、臭い)、粉末度/粒子度、嵩密度(疎・密)、内容質量、乾燥減量(水分量)、表面積、安定性(光、熱、その他)、流動性、飛散性、硬度、分解性、蓄積性、残留性等

○液剤(油剤、乳剤、液剤、懸濁剤、ミスト剤)
 性状(色、臭い)、pH、粘度、安定性(光、熱、その他)、製品の揮散速度、揮発成分の蒸気圧、引火点、乳化性(乳剤)、内容量(質量、体積)、比重、表面張力、分解性、蓄積性、残留性等

4−1−1−3 配合成分

 配合成分の決定にあたっては化学物質の安全性、物理化学的性状等を把握した上で選定すること。

4−1−1−4 使用方法

 実際の使用場所(屋外あるいは屋内)、使用場面、使用方法を想定し、吸入、皮膚・眼粘膜への接触、誤食・誤飲、家具や器具への接触時の反応性等を考慮した評価を行うこと。

4−1−1−5 使用頻度

 製品が実際に使用される頻度を想定し、リスク分析を行うこと。また、効能の持続性、有効成分の残留性等も勘案し、総合的に評価を行う必要がある。
 

4−1−1−6 使用量

<適正使用量、通常使用量の範囲におけるリスク> 一回あたりの使用量(噴霧量、散布量、濃度等)、屋内で使用する場合は対象空間の容積、温度、措置場所、噴霧の場合は噴霧の方向等を考慮し、評価を行うこと。薬剤に直接接触する場合と、空間中に揮散した成分を吸入する場合が考えられる。空間の濃度は使用する空間の広さによっても変わるので、対象とする空間によって使用量を調節する必要がある。

<異常な使用をした際に想定されるリスク> 大量使用(一度に使い切る等)、連続使用、異常高温下での使用、狭い空間での使用等、使用方法を逸脱する方法で使用された場合も考慮し、評価を行うこと。

<参考>エアゾールの噴射量 市販の空間用エアゾールには、5秒あたりの噴射量が約2gで300mL容量の製品ライフが8分以上の従来タイプと、5秒あたりの噴射量が6〜10gで300mL容量の製品ライフが2〜3分前後の多量噴射型のタイプ(平成元(1989)年に、高圧ガス保安法に基づく燃性区分が除外されてから市場にでたもの)があるが、下記の点に留意し、単位時間あたりの噴射量については、使用者に対する安全性を十分に確保するよう適切な評価を行う必要がある。

@平成12年厚生省生活衛生局長通知生衛1852号において、室内空気中の総揮発性有機化学物質量(TVOC)の暫定目標値が400μg/m3と設定されている。室内空気中に存在する化学物質の総量をできるだけ抑制することは国際的な要請であるが、多量噴射型のタイプは室内空気中に揮発性有機物を多量に放出するものである。
A多量噴射型のエアゾールは室内空気中に揮発性有機化合物を多量に放出するものであるため、   従来タイプのエアゾールに比較して、噴射直後における有効成分の最高気中濃度を含む気     中濃度の経時的推移にも大きな差を生じるので、使用者に対する安全性の観点から単位時間あたりの噴射量を検討すべきである。
B多量噴射型タイプは、以前の燃性区分に従えば「強燃性」に該当するものもあり、火気に対する危険性を考慮する必要がある。

4−1−1−7 使用及び保管場所 

 製品が使われる場所の環境について次のような要因を考慮して、安全性の評価を行う必要がある。

○ 空間の容積や密閉性(屋内で使用する場合) トイレ、浴室等狭い空間で使用される可能性がある。また、換気設備や換気口となる窓がない空間で使用される可能性がある。

○ 屋外で使用する場合 使用した場所の環境汚染や付近の水系生物に対して影響を及ぼす可能性がある。

○ 火気がある場所での使用 エアゾール剤の場合、溶剤や噴射剤等可燃性の成分が多く含まれている製品を台所等の火気のある空間で使用すると引火したり、爆発する可能性がある。また、火気の近くに製品を置くと製品の温度が上昇し、引火、爆発の可能性がある。

○ 使用及び保管する場所の環境 直射日光があたったり、暖房器具の傍に置かれた場合、高温のために成分が変質したり、エアゾール剤では缶の内圧が上昇し、最悪の場合には容器が破裂する可能性がある。

○ 水まわりで使用する場合 湿度の高い環境で使用され又は保管された場合、物性の変化等の可能性がある。

4−1−1−8 容器、包装形態 

 プラスチック、金属、紙等材質の違いによる容器、包装の特性を把握し、それらに起因するリスクを考慮すること。

○ 容易に変形や破損しない材質、構造にする。

○ 十分な保存安定性を確保する。

○ 幼児、老人等の誤飲、誤食、誤使用、また、保存中や使用時のいたずらを防ぐような設計とする。

○ 燃焼時に有毒ガスが発生しないようにする。

4−1−1−9 廃棄 

廃棄にあたって想定される暴露要因をもとにリスク分析を行うこと。以下のような例が考えられる。

○内容物の漏出

○未使用、使用途中の廃棄

○エアゾール缶を廃棄するための穴空け、ガス抜き時の噴出、漏出

○エアゾール缶の誤った廃棄方法(たき火や焼却処分)した際の爆発

4−1−2 製品に関する情報収集 

 効率のよい情報収集を行い、それに基づく試験実施が必要である。以下にそのための手段となる情報源等の例を示す。

○規格基準
・ 法律による規制基準(家庭用品品質表示法、有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律、労働安全衛生法、消防法、高圧ガス保安法等)
・ 関連する規格基準、試験法(表示法も含む)
・ 業界による規制基準(生活害虫防除剤協議会の自主基準等) 

○ 国内・国外情報
国内外の印刷物による情報
(例)
・ 化学物質のMSDS(Material Safety Data Sheet)
・ WHO/IPCS(国際化学物質安全性計画)の「環境健康影響クライテリア」
・ 産業中毒情報(ACGIH許容濃度:日本産業衛生学会許容濃度)
・ WHO/IARC(国際がん研究機関)の「化学物質発ガン性リスク評価モノグラフ」
・ EU、米国、カナダ等の毒性分類(例:HAZARDOUS PRODUCT ACT等)
・ CD-ROMやオンラインで提供される各種データベース
・ 国内外の公共機関から出される情報等。

○過去の情報 (過去の健康被害事例を参照)
・ メーカー各社に寄せられたクレームデータ
・ 国民生活センター、消費生活センター等に寄せられた苦情・事故情報
・ (財)日本中毒情報センターに寄せられた情報
・ (社)日本化学工業会:化学製品PL相談センターの情報
・ 消費者調査、アンケート情報

○ 学会

○ 関連団体からの情報

4−1−3 製品毎の具体的検討事項 

 製品の安全性については、各成分のMSDSや文献等の各種情報源等を利用して情報を収集・評価し、担保できるようにしておく必要がある。原材料の毒性情報が、十分には得られなかった場合や、製品としての安全性評価には不十分と考えられる場合には、製品の使用状況、成分量等を考慮し、必要に応じて新規に試験を実施する等して十分な情報の収集に努めること。

4−1−3−1 配合成分 

収集を考慮すべきデータとしては、例えば以下のものが考えられる。

○ 使用される化学物質の毒性等
・ 急性経口毒性(単回投与経口毒性)
・ 急性経皮毒性(単回投与経皮毒性)
・ 急性吸入毒性(単回投与吸入毒性)
・ 慢性毒性
・ 皮膚刺激性
・ 眼粘膜刺激性
・ 変異原性
・ 神経毒性 (必要な場合)
・ 抗原性(T型アレルギー性)/皮膚感作性(W型アレルギー性)
・ 生殖・発生毒性
・ 魚毒性
・ 吸収・分布・代謝

○ 使用される化学物質の揮発性、燃焼性、引火性、着火性、爆発性、腐食性等

○ 配合製剤(製品)としての毒性

○ 光や熱による分解等により反応、生成する物の毒性

○ 他製品と混合した場合に起こりうる反応生成物の毒性

○ 使用量、使用回数に伴う暴露量

4−1−3−2 容器・包装形態 

○ 容器の破損や腐食による溶出、漏れ等の可能性はないか

○ 容器の強度上の欠陥(誤落下時の漏れ、飛び跳ねの回避)はないか

○ 構造上の欠陥はないか

○ 製品の誤使用、誤操作を誘発しないか

4−1−3−3 使用方法・誤使用  

使用中に想定される事故・誤使用の例として、以下のものが考えられる。

○ 使用中に起こりうる事故
  (例)
  ・ 飲食物、食器、玩具、ペット類、観賞植物等に薬剤がかかった。
  ・ 子供がそばにいて薬剤がかかった、薬剤に触れた。

○ 記載された使用方法や使用上の注意を逸脱した使用による事故
  (例) ・ 使用量の目安を大幅に超えて使用した。
  ・ 長時間連続して使用した。
  ・ 狭く、換気が悪い等密閉度の高い状態にある室内で使用した。
  ・ 熱湯で薄めて使用した。
  ・ 子供やペットがいたずらし皮膚についた、眼に入った、誤飲した。
  ・ 使用期限を過ぎた製品を使用した。

○使用説明・表示の不適切による問題
  (例)
  ・ 使用方法が複雑で誤使用を招きやすい。
  ・ 説明が不十分で誤使用を招きやすい。

○不適切な警告表示による問題
 

○未使用品や使用途中の製品の廃棄方法による事故
 

4−1−4 リスク削減方策の検討

 より安全性の高い薬剤(成分)を開発・採用することは言うまでもないが、想定される事故に対して、剤型、物理化学的性状、容器構造、注意表示等の面から、事故を減らすための工夫、万一事故が起こってしまった場合に被害を食い止めるための工夫等のリスク削減方法を検討する。

○ (例)薬剤の吸入事故

 <事故の発生を減らすための工夫>
・使用時濃度の想定実験及びその際の安全性評価に基づいた濃度設定
  ・粒子径の管理
・子供による誤噴霧防止構造の検討
・使用量の目安の記載

 <危険性低下又は被害拡大防止の工夫>
・ 応急処置法の記載

○ (例)眼や皮膚への接触事故  

<事故の発生を減らすための工夫>
・ 濃度の減少  

 <危険性低下又は被害拡大防止の工夫>
・ 皮膚や眼についた際の除去方法の記載
・応急処置法の記載  

○ (例)誤飲、誤食事故

 <事故の発生を減らすための工夫>
・ 苦み物質等の誤食防止剤の添加
・ チャイルドレジスタントパッケージの採用  

 <危険性低下又は被害拡大防止の工夫>
・ 応急処置法の記載

○ (例)廃棄に伴う事故
・ 廃棄時の注意、廃棄方法の明記

4−1−5 製品表示、取り扱い説明書 

 製品表示にあたっては各種法律、自治体の条例等が定める品質表示実施要領を優先して表示すること。その他については、生活害虫防除剤協議会による家庭用不快害虫用殺虫剤の自主基準に準拠すること。  必要があれば使用期限を明記し、保存方法によって容器の材質や内容物の品質の変化が予想されるものにあってはその旨と危険性を明記する必要がある。  安全面の注意としては、「眼」、「皮膚」、「吸入」に対する警告表示が主なものである。これらについては一般的な認知度は高いと思われるものの、使用法を誤ると事故につながる危険性がいまだ潜在的に存在する。これらのことからも、使用上の警告表示は継続していく必要がある。

4−1−6 リスク削減方策による新たなリスクの発生

 削減方策を講じることによって発生すると思われる新たなリスクを列挙し、その重要度・対策を検討し、必要があればリスク調査に戻る。

(例)注意事項、応急処置法の記載
書き込み事項がふえて見にくくなり、結局読まれない。

(例)容器の改良
効果面積が減り、大量使用を誘発する。使いにくくなる。

4−1−7 最終的リスク評価・判断 

 最終的な評価は、家庭用品規制法第3条(事業者の責務)の主旨を踏まえた、リスク調査分析と科学的な根拠、また経済性、技術的可能性を加味して行われなければならない。法的基準はもちろん、業界基準を逸脱するようなリスクは避けるべきである。最終的なリスク評価・判断は各事業者において決定されるものであり、リスク管理の責任者は評価の根拠についてよく理解しておくと共に、現場において具体的なリスク回避、軽減対策が徹底されるよう指導しなければならない。

4−2.製品販売後におけるリスク管理

4−2−1 消費者相談窓口の設置 

 市販後は消費者相談窓口を設置し、責任者をおいて健康被害事例等の収集と改善に努めること。

4−2−2 (財)日本中毒情報センター等への製品情報の提供

 自社製品の安全性に関する情報を中毒情報センター等に提供し、万一の事故に備え、迅速な対応を取ることができるようにしておくこと。

4−2−3 関係機関との連携強化

 (財)日本中毒情報センター、国民生活センター、消費生活センター、化学製品PL相談センター、生活害虫防除剤協議会等との情報交換を行い事故の未然防止、拡大防止、再発防止に活用する。

4−2−4 新規情報のチェック 

 市販後も最新の情報を常に入手できるよう配慮する必要がある。情報内容としては例えば、以下のようなものがある。

・ 規格基準の改正

・ 国内・国外情報の更新

・ 国内外の最新の印刷物やインターネットによる情報

・ CD−ROMやオンラインで提供される各種データベースの更新状況

・ 国内外の公共機関から出される最新情報

・ 必要に応じて消費者アンケート調査を実施した場合、そこで得た情報

・ 学会において発表された最新の情報

4−3.リスクコミュニケーション

 把握されたリスクは使用者に適切に伝えられる必要があり、そのための手段、方法を検討しておく必要がある。またリスク評価実施者、リスク管理実施者、および消費者、事業者、科学者・専門家、学会等、製品関係者との間で 情報を相互交換する場が確保される必要がある。特に製品の使用者・消費者からの情報が反映される仕組みを整備しておくことが重要である。 リスクコミュニケーションは、リスク評価やリスク管理の実施過程でも常に保証されるべきもので、それは消費者への一方的な情報提供を意味するものではなく、関係者の間での知識や情報の共有化、相互理解を深めることによって、関係者が一体となってリスク管理を実現させるためのものである。

4−3−1 情報の提供と収集 

4−3−1−1 情報の提供 

 もっとも直接的な方法として、製品表示、取扱説明書による使用者への情報の提供が考えられる。製品表示および取扱説明書は、製品を安全に使用するために必要な情報を満たしつつ、消費者に効果的に情報を伝えるものであることが必要である。以下の事項に留意して作成する。

○製品には次の事項を明示する。

1. 製品名
2. 品名
3. 適用害虫
4. 有効成分等の名称
5. 内容量
6. 使用方法
7. 使用、取扱い及び保管等に関する注意事項
8. 予見される事故等に関する適切な指示又は警告
9. 製造番号又は記号
10. 事業者社名および所在地、連絡先
11. 保管方法
12. 関連法令等に基づく注意事項

○ 表示は、 関連法令、自治体条例等の定める品質表示実施要領を優先して表示する。

○ 表示は、最小販売単位ごとに、その容器又は包装の見やすい個所に、容易に読み取ることができるように表示すること。容器又は包装に表示することが困難な場合は、容易に取り外しができない下げ札や取扱い説明書等を取り付け、これに表示することもできる。これらは、使用時においても容易に読み取ることができるように表示しなければならない。使用時の製品に表示することが困難なものにあっては、表示がなされている容器又は包装等を使用期間中保管する旨を表示する。

○ 起こりうる危険の種類、予防及び事後の処置を具体的に明記すること。特に、重篤な危険の種類(死亡、失明の可能性等)、その予防手段及び緊急時処置を明確に記載する。

○ 必要ならば使用期限を明記し、保管方法によって容器の材質や内容物の品質の変化が予想されるものにあってはその旨と危険性を明記する。

○ 記載事項は簡潔かつ明瞭にする。

○ 処置方法等について詳しい情報を知らせるための問合せ先を記載する。

○ 成分が床面等に長時間残存する場合はその旨と、その処置方法を明記する。

○ 家庭用生活害虫防除剤等の自主規準を遵守すること。

4−3−1−2 情報の収集と検討 

健康被害事例を収集・検討する際には以下のようなことに注意する必要がある。

○ 相談・苦情件数は、実際の健康被害発生事例の一部であり、また、被害情報はさまざまな機関に寄せられるので、全てを網羅することは困難であること。

○ 製造、販売業者の情報は、ほとんどの場合公開されていないことから、同種の製品による健康被害事例については一般には不明であることが多いこと。

○ 情報の質と量について検討すること。1件の事故であっても、製品が重篤な問題を内包していることを示している可能性もあること。また、危害・事故に至らなくてもその可能性を示唆する情報もあり、事故の未然防止へ向け予防的に取り組む姿勢を常に持つことが重要であること。

4−3−2 情報のフィードバック 

 販売後に収集した、製品の使用・消費段階における事故の未然防止、および事故が発生してしまった場合の拡大防止や再発防止に役立つ各種情報を迅速・的確に使用者に伝達できる体制
・システムを構築しておく必要がある。

 例えば、社内・外の製品事故やクレームの情報を迅速に、適切な関係部門・部署および関係機関にフィードバックし、原因の究明、応急対策、恒久対策等に活用する体制・システムを構築すること。その際、JIS規格「苦情対応マネジメントシステム」(JIS Z9920)等を参考にし、製品事故・クレーム情報を事業者が把握・分析・管理できる社内体制を構築すること、またその分析結果を適切に消費者へ伝達するシステムを構築すること等が必要である。

 さらに、この事故防止関連情報を1社だけで保有するのではなく、業界全体で共有化できる「事故情報の共有化システム」の構築も重要と考えられる。

(例)

・ 全般的な製品事故情報やクレームの情報 事業者の上層部が直轄する社内体制の構築

・ 使用・消費段階の製品事故やクレームの情報 製品企画・設計、開発、製造・生産段階へフィードバック

・ 製造・生産段階での原材料・工程・製品検査の情報 製品企画・設計・開発段階へフィードバック

・ 製品開発段階での安全性・安定性・使用・モニター試験の情報 製品企画・設計段階へフィードバック

4−3−3 情報入手ルートの整備 

 情報源の本来の目的と自主性を尊重しつつ、それらの内容、公開性、利用方法等を系統立てて整理し、必要な情報を迅速に入手するためのルートを確保しておくことが必要である。

4−3−4 消費者の理解と安全行動の推進 

4−3−4−1 安全教育、地域セミナー等への参画 

 製品表示の種類、意味等の紹介方法を工夫する等、製品の安全使用にあたって消費者の理解を深めることに努める。また、社会教育の場へ事業者として参画する。

4−3−4−2 メディアおよびネットワークを介したキャンペーン 

 一定期間に多くの人の関心を集めるには、メディアやネットワークを介したキャンペーンが効果的である。

○ (例)
・ 事故時に同様の事故の連鎖を防ぐためのキャンペーン。
・ 関係業者による自発的なネットワーク上のキャンペーン。
・ 業界による安全知識の普及活動。

4−3−4−3 提供する情報内容の考察や提供方法の検討 

○ 一過性の情報提供では、時をおいて類似の事故が繰り返される場合もあることから、情報を繰り返して提供する。製品の表示の改善、品質の改善も考慮する必要がある。

○ 製品情報や事故防止のための情報をホームページ等のネットワークを利用して提供する。

○ 行政だけでなく業界による消費者教育も必要である。

4−4.リスク削減技術の開発

 家庭用不快害虫用殺虫剤を使用した時、使用者のみならず、使用者の周辺の人やペット等の生物、及び、使用場所の居住者及び利用者等の健康被害に対するリスクを軽減する工夫や技術開発を積極的に推進すること。特に、製品についての知識を十分に有していない消費者が使用したとしても周辺に生活する小児や高齢者等への健康被害が生じない、小児が誤って使用した場合にも健康被害が少ない、もしくはないことを目ざし、所要の方策を検討し、開発を行うよう心がけることが必要である。以下に取りうる対策を示す。

4−4−1 新規有効成分および新規製剤の開発 

 安全性の高い新規有効成分の開発や人への暴露リスクの少ない製剤の開発はリスク削減には最も有効、かつ、基本的な対策になりうる。また、引火性や爆発性等の危険性のない製剤の開発や環境への負荷が少ない製品の開発や使用法に関しても配慮が望まれる。

4−4−2 フェイルセーフ・フールプルーフ 

家庭用不快害虫用殺虫剤は、国民の誰もが使用する、及び、使用できる製品群であることから、製品開発にあたってフェイルセーフ・フールプルーフを考慮することは有効な対策になりうる。
 フェイルセーフ・フールプルーフとは、誰もが扱えて、事故や失敗を起こさないよう必ず働く安全装置を意味する。即ち、

@ フェイルセーフとは
 仮に誤使用があったとしても、安全な製品であること。
 (例:高い安全性が確認された有効成分や副資材の使用による製品化、落下等によっても破損がない強度をもった容器の使用)

A フールプルーフとは
  誤使用そのものが起こらないような構造、機能等を有すること。
 (例:エアゾール等のボタン構造への安全機能付与:ガードピン、ロック機能、小児が取り扱えない機能)

4−4−3 ポジティブリストやネガティブリストの作成 

 製品の原材料がもつ情報を整理し、使用しうる物質のリストと、使用を避けるべき物質のリストを作成しておくと製品のリスク削減に大きく役立つ。新たな情報を絶えず追加整理することが更に有効な効果をもたらす。

4−4−3−1 ポジティブリストとは 

 製品を製造するにあたって、安全に使用できると考えられる物質を選定しておき、製品の原料として使用できる候補物質としてリスト化するもの。物質のポジティブリスト化は、一定の安全性基準を満たしているかを確認した上で行う。  この方式を採用する際には、各種の公定書や、各種業界の作成している自主基準等に収載されている品質規格、使用量、使用範囲等の制限条件を考慮しなくてはならない。
(例)
・ 食品添加物公定書
・ 日本薬局方
・ 殺虫剤指針
・ 農薬登録
・ 薬事法承認
・ MSDS(material safety data sheet) 、等。

4−4−3−2 ネガティブリスト 

 製品化において原材料として使用される可能性のある物質から、有害性の観点から使用を避けるべきものや、安全対策の観点から慎重に取り扱われるべき物質をリスト化するもの。使用に際して最低限守るべきものを規定するものである。 リスト化の参考となるものとして、以下のような法規制等がある。

(例)
・ 食品衛生法
・ 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律
・ 毒物及び劇物取締法
・ 薬事法
・ 農薬取締法
・ 化学物質の審査および製造等の規制に関する法律
・ 労働安全衛生法で環境濃度(許容濃度)がもうけられている物質
・ 高圧ガス保安法
・ 消防法
・ 廃棄物の処理および清掃に関する法律
・ 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律
・ 室内空気汚染に係わる化学物質の室内濃度に関する指針値等。

その他、以下のような国際情報を入手し、ポジティブ、ネガティブ・リスト化を進めることが望ましい。
(例)
・ IARC MONOGRAPHS ON THE EVALUATION OF CARCINOGENIC RISKS OF HUMAN
・ ECETOC JOINT ASSESSMENT OF COMMODITY CHEMICALS REPORT
・ ATSDR TOXICOLOGICAL PROFILES
・ INTERNATIONAL CHEMICAL SAFTY CARD
・ WHO TECHNICAL REPORT SERIES
・ CIS/ILO
・ IPCS
・ US/EPA、FDA等。

4−5.品質保証

 最終的な製品の製造にあたって品質保証システムを整備し、設計から廃棄に至るまでのリスク管理を総合的に行う。

4−5−1 品質保証システムの整備 

4−5−1−1 各段階での品質保証 

 品質を保証するため、製品設計、原料・資材受け入れ、製造、(保管)、輸送、保管、販売、(店頭保管)、使用(使用者保管)、および廃棄の各段階において考慮、もしくはチェックすべき項目を分類し、書き記す。

(例)
○ 設計:製品規格諸項目の設定 (規格試験法、パッケージ規格、処方、製造フロー、原料規格、部材規格、製造条件等)製品規格書の作成

○ 原料・資材の受け入れ: 受け入れ時検査(パッケージ規格、原料規格、部材規格 等に合致しているかのチェック等)

○ 製造: 製造条件の設定、作業標準書・製造記録の作成、完成品の品質チェック並びに記録

○ 輸送: 梱包形態、輸送条件の設定

○ 保管: 保管条件の設定

○ 営業・販売: 営業、流通からの製品情報収集と分析

○ 使用: 消費者からの製品情報収集と分析

○ 廃棄: 廃棄条件の設定

4−5−1−2 品質保証のための方針立案 

4−5−1―1の各項目につき、具体的に行うこと、注意すべきことについて検討を行う。

(例)

・ 人為的な誤りが起きやすい点を列記する。

・ 汚染に十分配慮する。ちり、粉塵等が製品に混入しないよう構造上の対策をとる。

・ 品質管理のために必要な試験室や設備を備える。(他の試験・研究機関等を利用して自己の責任で試験を行う場合はこの限りではない。)

・ 製造部門と品質管理部門を別に設けてそれぞれ責任者を指定し、責任体制を明確にする。

・ 作業員に対する教育及び訓練を十分に行う。

・ 製造の標準書及び作業(作業手順書)標準書を設定し、この遵守を徹底する。

・ 計画的に品質管理のための試験、検査を実施する。

・ 設備、器具等は定期的に点検整備する。

・ ロットの追求が行えるような作業体制とし、その記録を整備する(作業工程、例えば秤量、原材料の受払い等の際に十分なチェックと記録を行う。)。

・ 製造工程の最終段階において品質チェックを十分行う。

・ 出荷後の製品について品質チェックが必要となる場合に備え、検体を適当な条件下で、製品の流通期間を考慮して十分な(又は、必要な)期間保存する。

・ 各記録は整備し、少なくとも3年間保持する。

・ 製品に対する苦情を含めた必要な情報を収集、記録して、製造管理及び品質管理の改善に役立てること。

・ 製造を他に委託する場合は、委託者が製造及び製品についての責任をもち、検体、記録等の保管責任にもあたること。

・ 各作業室は、混同や手違いが起きぬよう、原材料、器具等を所定の場所に整備すること。

・ 成分及びその含有量等については、安全性を確認すること。

・ 使用される成分は、天然物及びその抽出物を除いて「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」に基づく既存化学物質又は公示化学物質、「労働安全衛生法」の公表化学物質であること。

・ 製品は、「毒物及び劇物取締法」第2条第1項に規定する毒物又は同条第2項に規定する劇物に該当しないこと。

・ 製品の安全性の確認にあたっては、製品又は成分について必要と思われる毒性等についての試験データを保持すること。この場合、安全性に関する既存文献又は原料供給会社等から提供された信頼性ある資料であってもよい。

4−5−1―3 品質保証システムの整備 

 どのようなチェックを行うことがその製品の品質保証について重要なのかを検討する。上記の例示を含め各検討項目について、社内での役割分担を明確にする。社内の連携は密にしなくてはならないが、品質の監査は設計者側の立場からではなく、消費者の立場で行うことが望ましい。

4−5−2 品質管理のマニュアル化と実行の確認 

 上記の品質保証システムは品質管理マニュアルとして文書化する。また、品質保証責任部門を明確にし、システムの運用状況を定期的にチェックすることが望ましい。

4−5−3 品質検査、製造記録の作成と管理・保存 

 何らかのトラブルが発生した場合に備え、その原因が明確に追求できるように、最終の製品から原材料までのロットの追及が行えるよう、原材料受け入れ試験結果記録、品質試験結果記録、製造記録等を作成し、管理し、保管すること。

4−6.過去の健康被害事例

4−6−1 概況 

@ (財)日本中毒情報センターが収集した情報 2003年1月1日〜12月31日の1年間に(財)日本中毒情報センターで受信したヒト急性中毒に関する問い合わせは、36,233件であった。そのうち家庭用の殺虫剤に関する問い合わせは1,775件(4.9%)であり、この中から不快害虫用殺虫剤を用途および商品名から抽出した。その結果、362件が抽出され、これらについて健康被害状況の解析を行った。

 (財)日本中毒情報センターへの連絡者は、医療機関が126件(34.8%)、一般市民が234件(64.6%)、その他の機関が2件(0.5%)であった。年齢層別では、1歳未満が84件(23.2%)、1〜5歳が237件(65.5%)、6〜19歳が2件(0.6%)、20〜64歳が22件(6.1%)、65歳以上が9件(2.5%)、不明が8件(2.2%)であった。発生状況としては、ほとんどが不慮の事故で352件(97.2%)、故意に摂取した事例が9件(2.5%)、不明が1件(0.3%)であった。発生場所は、居住内(庭を含む)が344件(95.0%)、屋外が4件(1.1%)、その他が7件(1.9%)、不明が7件(1.9%)であった。摂取経路は複数の経路の場合があるため、延べ件数として算出した。経口が333件(88.3%)で最も多く、次に吸入が26件(6.9%)、経皮が14件(3.7%)、眼が4件(1.1%)であった。 製品に含有される殺虫成分別では、ピレスロイド剤(1群)が28件、ピレスロイド剤+有機リン剤またはカーバメート剤の合剤(2群)が27件、有機リン剤またはカーバメート剤(3群)10件、その他[ヒドラメチルノン、リチウムパーフルオロオクタンスルフォネート、ホウ酸、メタアルデヒド等](4群)294件、不明3件であった。

 暴露から受診時までに悪心、嘔吐、しびれ等何らかの症状があった事例は44件(12.2%)、症状がなかった事例は312件(86.2%)、不明6件(1.7%)であった。症状があった事例44件のうち20件(45.5%)は、エアゾール剤や粉剤等による吸入事例であり、また、17件(38.6%)は有機リン剤またはカーバメート剤を含む製品であった。

 全体としては、5歳以下の小児の居住内における誤飲・誤食事故が大部分を占め、症状がないことが多い点が明らかになった。

A家庭用品に係る健康被害病院モニター報告書
  厚生労働省では、毎年、家庭用品健康被害病院モニター報告書を作成している。この中で吸入事故に関する報告が、(財)日本中毒情報センターから家庭用品による吸入事故及び眼の被害に限定して情報を収集・整理している。
  不快害虫用殺虫剤は殺虫剤、防虫剤に含まれるが、平成15年度の報告書中に記載された被害の状況としては、
 1.乳幼児・痴呆症患者など、危険認識能力が十分にないものによる事例
 2.用法どおり使用したと思われるが、健康被害が発生した事例、若しくはそれが懸念された事例
 3.蒸散型の薬剤を使用中、入室してしまった事例
 4.適用量を明らかに超えて使用した事例
 5.換気を十分せずに使用した事例
 6.ヒトの近辺で使用し、影響が出た事例
 7.マスク・メガネ等の保護具を着用せずに使用した事例
 8.薬剤が飛散し、吸入したあるいは眼に入った事例
 9.使用時に風下にいたため、吸入した事例
 10.使用方法を十分確認せずに使用した事例
等があげられた。

4−6−2 健康被害事例((財)日本中毒情報センターデータより抜粋)

@エアゾール剤
・1歳3カ月男児:
エアゾール剤を口の中に自分で1回噴射してしまった。口の中をふいて麦茶を飲ませた。症状なし。
・47歳女性:
 地震の振動でアリ用エアゾール剤のふたがはずれ、ものが落ちてきてスプレーのボタンを押した状態になり、10分間吹き出していた。知らずに吸っていた。曝露30分後、鼻水、口渇が出現した。翌日から3日目まで鼻水が止まらず、病院で治療、投薬を受けて治った。4日目の朝からのどが渇き、咳が出る。
・年齢不明女性:
 エアゾール剤の使い方がわからず、さわっていたら30cm位の距離で顔面にスプレーしてしまった。症状なし。
・年齢性別不明
畳をあげて、全量噴射型エアゾール剤を使用しようとしたら、畳が製品のペダルの上に倒れてきて、ずっと霧が出ていた。締め切ったその部屋に数分間いた。頭痛がした。
A粉剤
・6歳男児:
  庭に粉剤を散布してあった。小麦粉と思って指につけてなめたらしい。症状なし。
・6歳女児:
 弟に粉剤を、頭から10回ぐらい頭が真っ白になるほどかけられた。シャワーですぐに洗い、家庭にて気管支拡張剤の吸入と酸素投与を行った。(気管支喘息の既往歴あり)直後は呼吸困難、咳があった。
・77歳男性:
 粉剤を屋外で散布中、風向きが変わって、吸入した。頭痛、目がちかちかし、嘔気があった。
Bその他
・1歳9カ月女児:
  受信2.5時間ほど前、アリ用顆粒製剤を食べた。下痢気味。
・2歳女児:
アリ用顆粒・ゼリー製剤を玄関前に配置したところ、顆粒剤がバラバラにこぼれており、女児の口の中にも少しあった。うがいをした。症状なし。
・2歳女児:
  アリ用ゲル剤の容器に水を入れてその水を飲んだ。腹痛がある。
・7歳男児:
アリ用顆粒製剤を少量水に浸し、歯ブラシでこすった。薬品がついていると思われる歯ブラシで歯を磨いた。症状なし。

4−6−3 まとめ 

 家庭用不快害虫殺虫剤による健康被害状況を解析した結果、無症状の小児の誤飲・誤食事故が多数を占める一方、エアゾール剤、燻煙剤等の吸入事故や、有機リン剤またはカーバメート剤を含む製品の摂取事故では、症状が発現する可能性が高いことが判明した。これらの製品では、健康被害事故防止と対応の観点から、製品本体やラベルに成分名と含有量、実際の事故事例から考慮された使用時の注意(エアゾール剤の使用時風向き注意等)、応急処置、24時間対応が取れる緊急連絡先等を記載することが必要であると考える。また、小児の誤飲・誤食事故を防ぐために、家庭内での製品保管場所の徹底と、使用上の注意の啓発が重要である。


○ 確保マニュアル作成の手引きに戻る ○