出席者:毒性部 長谷川隆一
開催場所、時期:Karolinska Institute(Stockholm, Sweden)、平成9年6月15-18日
参加者内訳、人数:WHO/IPCS 事務局 4名、日本 1名、スエーデン 5名、米国7名、オランダ 3名、カナダ 3名、ドイツ 1名、デンマーク 1名 合計 25名
会議内容:
WHOヨーロッパ事務局のDr. van Leeuwenの開会の辞に続き、本会議の目的がダイオキシン類のヒトに対するTEFの再評価、生態系に対するTEFの値の検討し、出来れば統一したTEFを決定することを目的とするとの説明があった。また、TEFの設定に当たって、産業界等からの影響を一切受けないようにするため、会議へのオブザーバーの参加および外部の人との接触を認めないとの指示があった。
TEFとは、ダイオキシン類の中で最も毒性の強い2,3,7,8-TCDDを1.0とした時に、他のダイオキシン類、フラン類、PCBのダイオキシン様毒性発現(Ah受容体を介した毒性)の強さをその比として示した数字である。
最初にヒトのTEFのグループと生態系TEFのグループに分かれて、それぞれのTEFの検討が行われた。1988年に設定されたダイオキシンおよびフラン類に対するTEFならびに1993年に提案されたPCB類に対するTEFを参考に、特にそれ以降に得られた新しいデータを中心に比較検討し、TEFを決定した。TEF決定のためのデータ採用の優先順位は、亜慢性以上のin vivo実験の毒性比較、不十分な場合にその生化学的変化(肝のCYPあるいは酵素活性の誘導等)、急性毒性試験、in vitro試験とした。データがない場合で、TEFを決定する必要があると考えられた場合は構造活性相関の資料を参考とした。なお、著しく毒性の弱い物質については、不純物含量が問題とされたが、必ずしも十分なデータが得られてはいなかった。一般にTEFが0.01以上の場合は信頼できる複数のin vivoのデータに基づいて決定された。
全体会議において、ヒトのTEFの決定の経緯の説明の後、生態系のTEFについて説明がなされた。生態系は哺乳動物、魚類、鳥類が対象となるが、哺乳動物についてはヒトのTEFを用いることとなった。鳥類および魚類についてのTEF決定のデータ採用優先順位は、第1に卵への注入による50%致死量の比較、第2にその条件でのCYPの誘導等、第3に培養細胞を用いた試験、第4に構造活性相関に基づく比較により決定したとの説明があった。続いて、統一TEFを設定することについて、意見調整が行われたが、生態系のグループは全員が反対し、ヒト(哺乳動物)、魚類、鳥類それぞれ個別にTEFを決定することになった。なお、生態系のTEFのデータはほとんどが1または2実験に基づいたものであった。
本会議の結果は、事務局で取りまとめたものを参加者に回覧し、続いて産業界からの意見を取り入れた後、本年度末には Environmental Health Perspectivesに公式に発表する予定であることが合意された。