Eurosurveillanceのノロウイルス関連情報
http://www.eurosurveillance.org/


2006年9月にオーストリアの寮制学校で発生した急性胃腸炎のアウトブレイク
Outbreak of acute gastroenteritis in an Austrian boarding school, September 2006
Eurosurveillance monthly release, Outbreak report
Volume 12 issue 3 March 2007
http://www.eurosurveillance.org/em/v12n03/1203-224.asp
http://www.eurosurveillance.org/images/dynamic/EM/V12N03/art692.pdf(PDF)

(食品安全情報2007年8号(2007/04/11)収載)

 2006年9月21日、オーストリア東部の寮制学校で急性胃腸炎のアウトブレイクが発生し、患者113人のうち101人が入院した。生徒222人と職員30人を対象に後ろ向きコホート研究を行ったところ、学校の食堂で提供された食品への曝露に最も強い関連性が認められた。予備的微生物調査ではノロウイルス感染の可能性が考えられたが、その後の詳細な記述疫学調査により、ウイルス感染ではなくStaphylococcus aureusによる食中毒であることが示唆された。ほとんどの患者の発症は9月21日午後1〜7時の間であった。19〜21日の日毎の発症率及び相対リスクを計算したところ、21日の食事と非常に強い関連性が認められた。そこで21日の食事のメニュー毎にまた、アタックレート及び相対リスクを計算したところ、最も可能性の高い感染源は食堂で昼食に提供されたご飯(相対リスク2、95%信頼区間1.4〜2.9)とパン粉付き鶏手羽(相対リスク7.4、95%信頼区間2.5〜21.8)であった。患者45人から糞便検体が集められ、うち44人からS. aureusが分離された。昼食の残品、パン粉をつける際に使用した生卵のうち、いずれの検体からもenterotoxoinは検出されず、ご飯から低い菌数のS. aureus(<104/g)が検出されただけであった。大多数の患者からの分離株、健康な食堂従業員の手のひらの拭き取り検体分離株及びご飯からの分離株は、S. aureusの新しいt2046 というspaタイプであることが判明した。

 ご飯から分離されたS. aureusの菌数は低く、また疫学的に関連性が認められた食品からenterotoxoinは検出されなかったが、S. aureus毒素による食中毒であるという仮説は次の2つの事実により支持された。1)疫学的に関連性が認められた食品の喫食から発症までの時間が30分から7時間、平均2〜4時間であること、2)患者の大多数及びご飯からの分離株は、新しいt2046 というspaタイプであったこと。  今回のアウトブレイクにより、調理場で基本的な衛生管理指針を遵守することの重要性が強調された。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部