米国疾病対策センター(US CDC: Centers for Disease Control)からのノロウイルス関連情報
http://www.cdc.gov/


ノロウイルス胃腸炎の糞便中のウイルス濃度と下痢の関連性
Norovirus and Gastroenteritis in Hospitalized Children, Italy
Emerging Infectious Diseases, Volume 13, Number 9, September 2007
http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/13/9/06-1535_article.htm
http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/13/9/pdfs/06-1535.pdf(PDF)

(食品安全情報2007年19号(2007/09/12)収載)

 ノロウイルスのGII.4型の患者40人の糞便中のウイルス濃度と、下痢の継続期間および嘔吐の頻度との関係を調査した。

 2004年11月〜2006年11月の2年間の調査期間中に、香港特別行政区内の地方病院2施設で、急性胃腸炎の成人患者44人(16歳以上)からノロウイルスGII.4型感染を確認した。各患者の病歴をレビューし、ベースラインの特性(年齢、性別等)、臨床所見、検査データを調査した。発症から96時間以内に糞便検体が採取された患者を解析対象とした。下痢の症例定義は1日3回以上のものとし、下痢の継続期間は下痢の初回と最終回を含むその間の日数と定義した。

 糞便検体の提供患者40人は、年齢が60.4 ±24.3(Mean ±SD)歳で15人(37.5%)が男性であった。17人(42.5%)に既往症が認められ、21人(52.5%)が入院していた。下痢症状は100%の患者から観察されたが、嘔吐と発熱はそれぞれ64.9%、36.8%で観察された。下痢の継続期間の中央値は3日間(範囲は2〜6日間)で、糞便検体のcDNAウイルス濃度の中央値は糞便1g当たり8.93 log10 copies(四分位偏差(inter-quartile range)糞便1g当たり8.22〜10.24 log10 copies)であった。

 糞便検体中のcDNAウイルス濃度はベースライン特性と臨床所見に照らして検討した。糞便中のウイルス濃度が高いことと患者の年齢が高いこととの間に関連性があった(p = 0.064)。また、短期間の下痢よりも4日間以上の長期にわたる下痢症継続の方が有意に多くウイルスを排出していた(両群の中央値の差が糞便1g当たり2.11 log10 copies, p = 0.001、マンホイットニー検定)。症状が継続している間、糞便中のウイルス濃度と下痢の総継続時間(スピアマンの順位相関係数rs 0.47, p = 0.004)および嘔吐の総回数(rs 0.34, p = 0.043)との間に正の相関関係が認められた。発熱は長期にわたる下痢症状が認められた患者でより多く認められた(64.3% vs. 21.7%; p = 0.010、カイ二乗検定)。下痢および嘔吐の平均総回数は、下痢が長期間認められた入院患者ではそれぞれ14.9回および3.1回で、下痢が短期間であった患者ではそれぞれ11.8回および1.2回であった。このコホートにおける1日あたりの排泄量とウイルス濃度の間に相関は認められなかった。

 単変量解析により、4日間以上の長期の下痢と高齢および既往症があること(いずれもp <0.05、カイ二乗検定)並びにウイルス濃度との間に相関が認められた。変数減少法によるステップワイズ・ロジスティック回帰分析の結果、糞便中のウイルス濃度(オッズ比9.56、95% CI [1.18〜77.57/ log10 copies] p = 0.035)および年齢(オッズ比1.15、95%CI [1.03〜1.28歳] p = 0.013)は、ノロウイルスGII.4型による長期間持続型下痢に関連している2つの独立した因子であると考えられた。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部