米国疾病対策センター(US CDC: Centers for Disease Control)からのノロウイルス関連情報
http://www.cdc.gov/


多州にまたがる、家族の“集まり”におけるノロウイルスによる胃腸疾患アウトブレイク、ウェストバージニア州、2006年10月
Multistate outbreak of norovirus gastroenteritis among attendees at a family reunion --- Grant County, West Virginia, October 2006
Morbidity and Mortality Weekly Report
July 13, 2007 / 56(27);673-678
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5627a1.htm

(食品安全情報2007年15号(2007/07/18)収載)

 2006年10月17日、ウェストバージニア州の保健省(WVDHHE: West Virginia Department of Health and Human Resources)に1家族の“集まり(実家に大家族が集合した)”で発生した急性胃腸疾患のアウトブレイクが報告された。アウトブレイクはまずメリーランド州Garrett郡の衛生部局に、同日中にウェストバージニア州Grant郡の衛生部局、その後、WVDHHEに報告された。“集まり”は2006年10月14日午前11時、ウェストバージニア州Grant郡の個人の住宅で行われ、フロリダ、メリーランド、ニューヨーク、ペンシルバニア、バージニア及びウェストバージニア州から53人が集まった。患者の定義はこの“集まり”に参加し、10月7日またはそれ以降に、24時間以内に2回以上の非出血性下痢または嘔吐のあった者とされた。10月14日午後8時〜18日の午前12時までに発症した患者をコホート研究の対象とした。コホート研究の患者の定義に合致したのは19人で、20人は発症しなかった。“集まり”で提供された31食品中、スカロップト・ポテト(相対リスク [RR] = 2.8, 95%信頼区間 [CI] = 1.1〜6.9)及び鶏肉 (RR = 2.2, 95%CI =[1.0〜4.8])が有意なリスク因子と考えられた。この2食品とも、“集まり”の前から胃腸炎を発症していた者が喫食していることから、これらの者が食品を汚染したことも考えられた。鶏肉はニューヨークから来た家族が購入したものであったが、その家族中4名は“集まり”の前から胃腸炎であったことから、彼らが鶏肉を汚染したことも考えられた。”集まり”中、発症者と直接接触したことも有意なリスク因子と考えられた(RR=2.3, 95%CI=[1.0〜5.1])。提出された13検体の糞便検体中12検体(92.3%)が RT-PCR によってnorovirus genogroup II 陽性であった。 同一株 (Hu/GII-4/Chester/2006/UK) がメリーランドの2検体、ニューヨークの2検体及び西バージニアの1検体から検出されたほか、もう1つの株(Hu/NLV/Oxford/B6S6/2003/UK) がペンシルベニアで陽性であった6検体すべてから検出された。

 調査結果により、2州から来た人々によって2種類のウイルスが侵入し、少なくとも2種類の食品が汚染されてアウトブレイクが発生、さらにヒト−ヒト感染と食品由来感染の組み合わせによって発生した可能性が高いと考えられた。この事例は複数の感染ルートが考えられるアウトブレイク調査とノロウイルス感染アウトブレイク制圧に関する問題を浮き彫りにした。ノロウイルスの活性がピークである期間中、公衆衛生担当部局は、トイレに行った後の手洗いの重要性と患者に食品を調理させないことの重要性を強調するべきであるとしている。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部