(食品安全情報2020年10号(2020/05/13)収載)
食品を介してコロナウイルスに感染する可能性は極めて低い。
コロナウイルス感染症(COVID-19)は呼吸器疾患である。食品や食品包装への曝露による感染は報告されていない。
体調が良くない食品取扱者は仕事に従事すべきではない。また、症状がある場合は、政府の助言に従って自宅に留まるべきである。
(https://www.gov.uk/government/publications/full-guidance-on-staying-at-home-and-away-from-others)
食品を介してコロナウイルスに感染する可能性は極めて低いが、適正衛生規範の観点から、食品取扱者は石鹸を使用して少なくとも20秒の手洗いを頻繁に行うべきである。この手洗いは食品の取り扱い前後には習慣として行い、特に人込みに出かけた後、鼻をかんだ後、咳やくしゃみの後には必ず行うべきである。
食品事業者は、英国食品基準庁(UK FSA)が作成した食品製造における適正衛生規範に関するガイダンスおよび危害分析重要管理点方式(HACCP)に常に従うべきである。
(https://www.food.gov.uk/business-hygiene)
FSAは、高齢者や人々の生活に欠かせない業務を行う従事者(英国国営医療サービス(NHS)職員など)がスーパーマーケットや食品提供施設を優先的かつ安全に利用できるような対策を支援している
食品衛生に関するガイダンス
食品事業者は、食品衛生に関する現行のガイダンスおよびHACCPが含まれている食品安全管理システム(FSMS)に従うべきである。
(https://www.food.gov.uk/business-guidance/food-hygiene-for-your-business)
雇用者は、食品の調理・取扱区域では手指をより頻繁に洗うことと適切な衛生慣行を守ることの重要性を強調すべきである。従業員は20秒間の手洗いを励行し、特に人込みに出かけた後、鼻をかんだ後、咳やくしゃみをした後は必ず行う。
たびたび触る物や表面は、一般的な洗剤で頻繁に洗浄および消毒を行う。食品事業者は、求められる食品衛生基準に関するFSAの詳細なガイダンス「より安全な食品はより良い事業に繋がる(safer food, better business)」を参照することも可能である。
(https://www.food.gov.uk/business-guidance/safer-food-better-business)
事業者は、公衆衛生に関する政府の助言の注意喚起を行うことによって、コロナウイルスの拡散を抑制することができる。そのためのポスター、パンフレットなどの資料がオンラインで入手可能である。
食品を介した疾患の拡散防止のために従事者が適正衛生規範を確実に守ることを目的として、FSAが調理に関する適正衛生規範およびHACCPのガイダンスを作成している(https://www.food.gov.uk/business-hygiene)。安全のために重要なことは、就業に適した体調であること、手洗い、エプロンや清潔で適切な衣類の着用などである。FSAが作成した安全のためのチェックリストにより、雇用者は従業員の衛生管理および就業の適切性を確認できる。
(https://www.food.gov.uk/sites/default/files/media/document/personal-hygiene-fitness-to-work.pdf)
〇食品包装
世界保健機関(WHO)は、コロナウイルスの感染者が商品を汚染する可能性は低いという助言を発表している。流通する間に様々な環境や温度に曝される包装を介してCOVID-19の原因ウイルスに感染するリスクは非常に低い
食品包装がリスクになるという報告はないが、必ず通常の食品安全慣行に従って洗浄と取り扱いを行う必要がある。
洗浄は、HACCPで規定された食品衛生規範および環境管理対策に沿って行うべきである。従業員は、現行のリスク評価および職場の安全対策に従うべきである。これら以外の予防対策は追加しなくてもよい。
〇洗浄および廃棄
政府は、コロナウイルスの拡散防止への取り組みについて事業者の参考になるように、洗浄および廃棄に関するガイダンスを発表している。
(https://www.gov.uk/government/publications/covid-19-decontamination-in-non-healthcare-settings)
社会的距離
社会的距離(social distancing)の対策に関する助言はあらゆる人が対象である。人と人との間に2mの間隔を保つことによって、ウイルスが拡散する機会を最小限に抑える必要がある。この助言は、食品提供施設内だけでなく、施設外で顧客が行列を作るような場所にも適用される。また20秒間の手洗いを通常よりも頻繁に行うことを認識すべきである。
この助言をどのように実践するかは、各地域の状況にしたがって判断される。店舗管理者が判断するのが最良と考えられるが、大多数のアウトレット小売店では一般的ないくつかの指標が有用と考えられる。
社会的距離およびCOVID-19の罹患リスクが高い人に関する詳細な情報が、英国政府のWebページから入手可能である。
(https://www.gov.uk/government/publications/covid-19-guidance-on-social-distancing-and-for-vulnerable-people)
食品事業施設における社会的距離の維持
〇食品加工施設
食品加工施設では、個人防護具の使用や頻繁な手洗いなどの食品安全慣行により、高い衛生水準が維持されるようにすべきである。
食品事業者を含めたすべての雇用者は、社会的距離に関するガイダンスに可能な限り従うことが求められる。これが難しい製造環境である場合、雇用者は、従業員を守るためにどのような対策を講じればよいかを検討すべきである。従業員は食品加工区域から出て保護衣を脱いだ後も、社会的距離と手洗いに関するガイダンスを守る。
〇スーパーマーケット
スーパーマーケットでは密集を防ぎ、人と人との間に十分な空間を作る必要がある。
そのための効果的な対策は店舗によって様々であるが、たとえば以下のような方法がある。
イングランド公衆衛生局(UK PHE)は、高齢者や人々の生活に欠かせない業務を行う従事者(NHSや介護施設の職員など)が優先的かつ安全に利用できるような対策を支援している。
〇従業員用の食堂および休憩場
食品を介してコロナウイルスに感染する可能性は極めて低い。従業員が食事をする所が他にない場合は、従業員用食堂の営業を継続させても構わない
〇持ち帰り料理店および持ち帰り料理を提供するレストラン
顧客は、オンライン、アプリまたは電話を使用して注文する。
顧客が料理の注文または受け取りを行う際は、他の人と2mの間隔を維持できる指定区画で順番を待つ。このような区画がない場合、顧客は注文した料理の用意ができて受け取る際にのみ1人ずつ入店する。
店の外で人込みができないようにするため、受け取り時間を調整すべきである。行列ができる場合は、2mの間隔を維持するために行列管理を行うべきである。
〇戸外の食品市場および農産物直売所
戸外の食品市場で主に懸念される問題は人込みである。社会的距離を維持するための対策の一環として、市場などの閉鎖を決定した地方自治体もある。
FSAは、現在も営業している市場の運営者に対し、人込みを作らずに製品を安全に販売できる方法を検討し、衛生対策を実施するよう要請している。たとえば以下のような方法が考えられる。