食品中のセミカルバジドに関するEFSAのAFCパネル
(食品添加物・香料・加工助剤及び食品と接触する物質に関する科学パネル)の意見

(要訳)


 EFSAは、パッキン由来のセミカルバジド(SEM)が食品中にはじめて検出された2003年、SEMについて予備的助言を行っている。その際、AFCパネルはどれだけの食品にSEMが検出されるか、SEMの生成条件、分析法などのデータを集めるよう依頼された。

 SEMは異なるタイプの食品に検出され、発生源は異なる。SEMは動物用医薬品ニトロフラゾンの代謝物であるが、EUでは使用禁止となって以来ニトロフラゾン由来のSEMは食品中に検出されてはならない。またSEMはビンなどの金属蓋に使用されるパッキンから移行して食品中に検出されることがある。この場合SEMはプラスチックパッキンの発泡剤であるアゾジカルボンアミド(ADC)の熱分解で生じる。また生地改良剤としてADCを添加した小麦粉を使っている食品からもSEMが検出される。ADCのこうした使用はEUでは許可されていない。他のSEM発生源についてはあまり詳細にはわかっていない。SEMはカラギーナンや卵白粉などと次亜塩素酸塩との反応で生じるとの報告もある。また食品の乾燥時あるいは未知の発生源から生成し天然にバックグラウンドレベルで存在する可能性がある。

 食品中のSEMの分析方法は、酸加水分解と2-ニトロベンズアルデヒドとの誘導体化後、LC/MSにより分析するもので、検出限界は0.2μg/kgである。この酸加水分解により結合型SEMが遊離されるので、分析結果は遊離SEMと結合SEMの総計になる。分析の際の酸加水分解は消化管での条件とは違うが、結合SEMの生物学的利用率は不明であるため、この試験方法で測定したデータでリスク評価を行うのが適切であると結論した。

 現時点ではパッキンのADC由来のSEMの移行が暴露源として飛び抜けて大きい。各国のデータは似ており、最も多くSEMを摂取する可能性があるのは調理済み乳児用ミルク及びベビーフードを食べている乳児である。食品からの摂取量について最悪ケースを推定したところ、推定摂取量は0.35〜1.4μg/kg bw/dayであった。成人では瓶詰め食品の摂取頻度の低さと体重の違いから推定暴露量は乳児より低く、最悪の推定摂取量は0.02 μg/kg bw/dayであった。Commission Directive 2004/1/ECは2005年8月2日から食品と接触する物質へのアゾジカルボンアミドの使用を禁止しており、瓶詰め食品の在庫がなくなり次第この経路からの暴露はなくなるであろう。

 他の食品由来のSEMは暴露源としては少ない。ADC処理(※注:国によっては粉に漂白剤等としてADCを使用している)した小麦粉から作ったパンはSEMを含む可能性がある。実験室での検査ではパン中のSEM濃度は28μg/kgであった。EUでは小麦粉のADC処理は認められておらず、パンなどの輸入は非常に少ない。冷凍鶏肉や魚などのパン粉をまぶした製品からの暴露はあり得るが、製品中のSEMの最大値を5μg/kgとすると、この製品を200g食べた時の摂取量は1人1μgである。次亜塩素酸塩を使った殺菌処理のために50μg/kg のSEM汚染がある卵製品を食べた場合、最悪の推定暴露量は0.008 μg/kg bw/dayである。食品添加物カラギーナンの場合、製造工程での次亜塩素酸塩使用によるSEM汚染の量は平均65μg/kgとなり、ADI に相当する量のカラギーナンを摂取した場合のSEM摂取量は最大0.005μg/kg bw/dayである。

 SEMはマウスで発がん性が示されているがラットでは発がん性はない。文献データでは、SEMは変異原性はあるが染色体異常誘発性はないことが示されている。こうした全体の情報に基づき、AFCパネルはSEMのin vitroによる弱い遺伝毒性はin vivoでは発現しないだろうと結論した。SEMは非遺伝子傷害性発がん物質で、閾値が設定できると考えられる。動物で発がんを誘発する用量と乳児を含むヒトでの暴露量との間には少なくとも5桁以上の大きな差がある。したがってAFCパネルは、食品中に検出されるSEMの発がん性によるヒトの健康影響は重要でないと結論している。