環境保健クライテリア 172
Environmental Health Criteria 172


テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)および誘導体 Tetrabromobisphenol A and Derivatives

(難  燃  剤)

(原著139頁,1995年発行)

-目次-
はじめに
T.テトラブロモビスフェノール(TBBPA)
 1.要約と評価
 2.結   論
 3.勧   告
U.テトラブロモビスフェノールA誘導体
 1.テトラブロモビスフェノールAジメチルエーテル
-要約と評価、結論および勧告-
 2.テトラブロモビスフェノールAジブロモプロピルエーテル
-要約と評価、結論および勧告-
 3.テトラブロモビスフェノールAビス(アリルエーテル)
-要約と評価、結論および勧告-
 4.テトラブロモビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)
-要約と評価、結論および勧告-
 5.テトラブロモビスフェノールA臭素化エポキシオリゴマー
-要約と評価、結論および勧告-
 6.テトラブロモビスフェノールA炭酸塩オリゴマー類

はじめに
テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)は重要な難燃剤である。テトラブロモビスフェノールAおよびその誘導体への需要は、年間6万トンを超える。

難燃剤は、それらの用途は何であれ、究極的には、環境中で、そのまま、あるいは分解産物として終わる。テトラブロモビスフェノールAの場合には、終局的な分解産物とそれらの濃度は、TBBPAが反応性あるいは添加難燃剤のいずれに用いられたかにより異なる。

ある物質のヒトおよび環境に対する危険性を適切に評価するには、毒性や生態毒性に関するデータの入手が不可欠であるのみならず、次の諸点が求められる。

・本物質の種々の使用法と、焼却を含む廃棄条件による最終的の環境中の運命(fate)。

また、その分解産物についても同様の検討が必要。

・本物質とその分解産物の残留性と生物濃縮/生物的拡大。

国際化学物質安全性計画(IPCS)は難燃剤に関する数種類の環境保健クライテリアを作成しており、それらはTBBPAに関連する追加的の情報を与えるであろう。

「難燃剤-その概説-」のモノグラフ(作成中)には、難燃剤の用途、作用の態様、リスクの可能性、さらに難燃剤として用いられる物質のリストと入手可能なデータの概要についての紹介が含まれるであろう。

広範囲の用途に用いられる難燃剤については、例えば環境保健クライテリア(EHC)162:ポリ臭素化ビフェニルエーテル類で検討されている。

一部の難燃剤はヒトおよび環境に危険と見なされており、別のモノグラフで検討されている。これらには、EHC152「ポリ臭素化ビフェニル類」、EHC173「トリス-およびビス-(2,3-ジブロモプロピル)リン酸塩」が含まれる。

特定の、例えば熱分解のような条件下では、ハロゲン化ジベンゾダイオキシン類およびジベンゾフラン類が生成される可能性があるため、次のモノグラフが作成された。EHC88「ポリ塩素化ジベンゾ-パラ-ダイオキシン類、ジベンゾフラン類、ポリ臭素化ジベンゾダイオキシン類、ジベンゾフラン類」。

読者は、さらに詳細の情報については、これらのモノグラフを参照されたい。




T.テトラブロモビスフェノール(TBBPA)
1.要約と評価
1.1 物質の同定、物理的・化学的特性、分析方法
TBBPAは白色の(無色の)結晶性粉末で、59%の臭素を含んでいる。その融点は約180℃であり、沸点は316℃である。蒸気圧は20℃において1mmHgよりずっと低い。TBBPAの水溶解性は低いが、メタノールおよびアセトンにはよく溶ける。n-オクタノール/水分配係数(log POW)は4.5である。
テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)
a 物質の同定
化学式C15H12Br4O2
化学構造  3次元
分子量543.92
一般名phenol,4,4′-(1-methylethylidene)bis[2,6-dibromo-]
その他の名称4,4′-isopropylidene-bis(2,6-dibromophenol);
2,2-bis(3,5-dibromo-4-hydroxyphenyl)propane;
phenol,4,4′-isopropylidenebis(dibromo-);
3,3′,5,5′-tetrabromobisphenol A;tetrabromo-
dian;tetrabromodihydroxy diphenylpropane
商品名Great Lakes BA-59P;Saytex RB-100;Saytex
RB-100ABS;FR-1524;Bromdian;FG2000;
Fire Guard2000;Firemaster BP4A;Tetrabrom
略称TBBPA
CAS登録番号79-94-7
EINECS番号2012369
換算係数a (標準状態)1ppm=0.02mg/l

a Bayer(1990)
b 物理的・化学的特性
表 テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)(商業品)の物理的・化学的特性
物理的状態 結晶性固体または粉末状固体
白色(無色)
臭気 特徴的な微臭
臭素含有率 58.7%
比重 2.18b
沸点 316℃ (およその値)a
融点 181〜182℃a,b
蒸気圧 (20℃)a <1mmHg
溶解性 水 (15℃)c 0.72mg/l
        (25℃) (<0.1重量%)a
        (25℃) 4.16mg/la
        (35℃) 1.77mg/la
有機溶媒 (25℃) メタノール 920g/l(47.2重量%)b
            アセトン 2,400g/l(69.6重量%)b
            トルエン 6.4重量%b
            スチレン <1.0重量%b
n-オクタノール/水分配係数
(logPOW)
4.5〜5.3a
平衡定数pKa1,pKa2 7.5, 8.5a
引火点 178℃a

a Bayer(1990)より
b Ethyl Corporation(1992);Great Lakes Chemical Corporation(1986)より
c 水溶解性は、フェニル-UL-14Cでラベル化したTBBPAを用いて、ラジオアッセイにより求めた
表 テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)の構成成分(市販品)a
純度テトラブロモビスフェノールA98.5%
不純物0.1%
加水分解性の臭素最大60mg/kg
イオン性の臭素(臭化物)最大100mg/kg

a Ethyl Corporation(1992)より
表 工業品中の分解生成物a
6臭(素)化ジベンゾフラン12μg/kg
5臭(素)化ジベンゾフラン31μg/kg
8臭(素)化ジベンゾフラン19μg/kg

工業製品TBBPAのサンプルより1〜6-BDF/BDDが測定され、20μg/kgより少ない合計量が報告された;2,3,7,8-TeBDDおよび2,3,7,8-TeBDFは検出されなかった(検出限界、0.5μg/kg)b

a Thorma et al.(1986)
b Thies et al.(1990)
1.2 生産と用途
市販のTBBPAは、臭素化合物の難燃剤としては世界で最も多く生産されている。TBBPAとその誘導体に対する需要は年間6万トンに達する。TBBPAは、ABS(訳者注:ABSはアクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの略)、エポキシ、ポリカーボネートの各樹脂、耐衝撃性ポリスチレン、フェノール樹脂、接着剤、その他として、反応性あるいは添加難燃剤として用いられる。
1.3 環境内の移動、分布、変質
TBBPAは、分配係数および水溶解性が低いため、環境中においては、大部分は底質(sediment)や土壌中の有機物質に吸着されると予測される。

水生無脊椎動物類および脊椎動物類の蓄積実験では、生物濃縮係数は20〜3,200を示している。その半減期は、魚類において1日以内、カキでは5日以下である。蓄積されたTBBPAの大部分は、排出試験期間中の3〜7日以内に排出されるであろう。

生分解実験では、TBBPAの一部は、好気性および嫌気性の双方の条件下で、土壌、河川底質、水中において分解されることを示している。土壌の種類、温度、湿度、土壌の組成により、約40〜90%のTBBPAは56〜64日後においても残留する。汚泥処理条件下では、2週間以内におけるBOD(生物学的酸素要求量)による測定では、生分解は見出されていない。

実験室における熱分解試験は、TBBPAの重合体は、Sb2O3(酸化砒素)の有無の両条件下、種々の温度、酸素の存在下で、ポリ臭素化ジベンゾフラン類(PBDF)と少量のポリ臭素化ジベンゾダイオキシン類(PBDD)を生成させることを示している。主として、臭素化の程度の少ないPBDFおよびPBDDが生成される。TBBPAを付加した樹脂重合のシミュレーション加熱条件下で分析したところ、2,3,7,8-PBDD/PBDFは検出されなかった。樹脂中では、濃度100μg/kg以下の濃度のモノ-またはジブロモ-置換のPBDFのみが検出された。作業環境の研究では、2,3,7,8-置換PBDD/PBDFは見出されなかった(検出限界は0.1ng/m3)。

回収されたTBBPA含有の重合体では、1kg当り5μg以下の合計量のPBDF/PBDDが検出され、2,3,7,8-置換の同属体は0.2μg/kg以下の濃度が見出されたのみであった。

TBBPAを含む大量のポリブチレンテレフタル酸エステル(PBT)が焼けたある倉庫の火事では、焼けたPBTと灰/スラッグ中で、ごく低濃度の2,3,6,7-置換のテトラ-、ペンタ-、ヘキサ-BDF/BDD(5μg/kg以下)が検出された。

1.4 環境中濃度およびヒトの暴露
TBBPAは、日本およびスウェーデンの一部の底質中で、また、日本の魚類でμg/kgの濃度で検出されている(229検体中の、工業地帯に近い2検体において)。

TBBPAのジメトキシ誘導体は、ムラサキイガイおよび底質中で確認されている。TBBPAは、一般的には水中では検出されていない。

1.5 実験動物およびヒトにおける体内動態
ラットにおいては、TBBPAは消化管から吸収されることは少ない。吸収されたTBBPAおよび/またはその誘導体は体内の大部分の臓器にわたって分布するように見える。ラットにおいては、すべての臓器における最長半減期は2.5日以下である。
1.6 実験用哺乳類およびin vitro(試験管内)試験系への影響
実験動物に対するTBBPAの急性経口毒性は低い。その経口LD50(50%致死量)は、ラットにおいて>5g/kg体重、マウスでは10g/kg体重である。ウサギに対する経皮LD50は>2g/kg体重であり、マウス・ラット・モルモットの吸入LC50(50%致死濃度)は>0.5mg/lであった。ウサギおよびモルモットの皮膚へのTBBPAの単回の経皮適用では、3.16g/kg体重以下の濃度においては、 局所および全身的の影響は誘発されなかった。TBBPAはウサギの皮膚あるいは眼に刺激性を示さなかった。数件のモルモットの実験においては、感作反応(訳者注:過敏状態の誘発)は認められなかった。ウサギの耳介において、TBBPAの塩素ざ瘡(にきび)発生作用(chloracnegenic activity)も試験されたが、そのような作用は観察されなかった。剃毛および表皮剥離のウサギの皮膚を、 2,500mg/kg体重以下のTBBPAに暴露した3週間の皮膚毒性実験においては、軽度の皮膚の紅疹のみが見られた。本化合物に関連するその他の変化は認められなかった。

微粉化された18mg/l以下のTBBPA(18,000mg/m3)に4時間/日、5日/週で2週間暴露されたラットでは、体重、組織病理学的検索、血清化学的検査、尿検査への影響はなかった。

ラットに対する、TBBPA1,000mg/kg食餌以下の用量での28日間の経口投与では、何らの悪影響ももたらされなかった。肝臓の臭素総量は、対照群と高用量(1,000mg/kg)投与群との間では差異はなかった。

ラットにおける、TBBPA100mg/kg体重以下の用量による90日間の経口毒性実験では、体重、血液学的検査、臨床化学検査、尿検査、臓器重量、肉眼的および顕微鏡的検索については、いかなる悪影響の誘発もなかった。

マウスによる90日間の実験では、4,900mg/kg混餌(約700mg/kg体重/日)の投与量は、何らの悪影響も発生させなかった、また、15,600mg/kg混餌(約2,200mg/kg体重/日)では、体重の減少、脾臓重量の増加、赤血球濃度・血清タンパク質・血清トリグリセライドの低減を生じさせた。

2件の催奇形性試験がラットについて実施された。その一つは、10mg/kg体重以下の用量が妊娠6〜15日に強制経口投与された。第二の試験では、妊娠0〜19日の間に2.5mg/kg体重の用量が投与された。最初の試験では、10g/kg投与の動物の5分の3が死亡したが、3g/kg投与の動物では毒性の徴候は認められなかった。また、催奇形性は観察されなかった。第二の試験では奇形は見出されなかった。

アロクロールが導入されたラットおよびシリアンハムスターのS9mixによる代謝活性化系を用いたサルモネラ菌(Salmonella typhimurium)TA1535、TA1537、TA1538、TA98、TA100による種々の試験において、変異原性を示すことはなかった。ここでは、10,000μg/プレートまでの濃度が試験された。酵母(Saccharomyces cerevisiae)を用いた2件の試験結果は、アロクロールが導入されたラットのミクロソーム酵素生成の有無いずれの場合にも陰性であった。

発がん性あるいは長期毒性試験は報告されていない。

1.7 ヒトへの影響
TBBPAは54名のヒトのボランティアにおいて、皮膚の刺激作用あるいは感作を生じさせることはなかった。

ヒトの疫学研究あるいはその他のデータは入手できない。

1.8 実験室および野外のその他の生物類への影響
TBBPAの海洋性藻類に対する毒性はさほど強くはない。28件の短期試験では、そのEC50は0.1〜1.0mg/lであり、一方、淡水性藻類では9.6mg/lにおいてさえ成育阻害を示さなかった。

ミジンコ(Daphnia magna)に対する急性48時間のLC50は0.96mg/lと報告されており、0.32mg/lにおいては被験生物の5%が死亡した。しかし、21日間の実験では、ミジンコの生存と成育に対するEC50は>0.98mg/lであった。この実験におけるミジンコの生殖に対するTBBPAの影響に基づいた場合、毒性物質最大許容濃度[Maximum Toxicant Concentration(MATC)]は0.30〜0.98mg/lの間である。アミ(Mysid shrimp)(<1、5、10日齢)では、96時間LC50としてそれぞれ0.86、1.1、1.2mg/lが示された。

カキ(Eastern oysters)に対する96時間EC50(貝殻形成の減少)は0.098mg/l、無影響濃度(NOEC)は0.0062mg/lと算定された。

クロマス科スズキ、ニジマス、コイに対するTBBPAの96時間LC50は、それぞれ0.51、0.40、0.54mg/lであった。これら3魚種の無影響濃度は0.10、0.18、0.26mg/lであった。TBBPAに35日間暴露されたコイ(胚および幼生)では、胚および幼生への有害影響に基づくMATCは0.16〜0.31mg/lの間を示した。

底質無脊椎動物ユスリカ(Chironomous tentans)への14日間の無影響濃度は、低・中・高レベルの有機炭素堆積物中では、それぞれTBBPA0.039、0.045、0.046mg/l水であった。水生系での実験の大多数は、pKa2付近のpHで実施されている。酸性条件でのTBBPAの挙動は異なるであろう。




2.結   論
2.1 一般集団
TBBPAは広く用いられ、反応性および添加剤難燃剤の重合体として製品化されている。一般集団との接触は、これらの重合体からの製品から生じ、TBBPAの重大な取り込みは起こらないであろう。その上、TBBPAの急性および反復投与毒性は極めて低い。また、消化管からのTBBPAの吸収はわずかである。したがって、TBBPA暴露による一般集団のリスクは重大ではない(insignificant)と見なされる。
2.2 職業暴露
TBBPAへの職業暴露は、主として、包装あるいは混合作業中の微粒子によるものである。局所換気その他の技術的方法の利用による粉塵の防止は、作業者のリスクを減少するであろう。もし、粉塵が十分に防止できない場合には、呼吸保護具を用いるべきである。
2.3 環   境
環境中でTBBPAが検出されるのは、主として土壌および底質の試料中である。比較的高い生物濃縮係数は速やかな排泄と均衡を保っているように見え、本化合物は、通常は環境内の生物試料では見出されていない。

TBBPAのフェノールグループは環境中でメチル化され、生成されるMe2-TBBPAはより親油性が高い。この化合物は堆積物、魚類、貝類でも見出される。

2.4 分解産物
PBDDおよびPBDFはTBBPAのごく少量の不純物として見出されているが、2,3,7,8-同属体の存在は立証されていない。実験室での熱分解条件下では、PBDF/PBDDはTBBPAから生成される。

少数の研究では、ごく微量のPBDF/PBDDが添加難燃剤としてのPBBPAを含む重合体の製造工程および再利用の間に生成されることを示している。適切な換気およびその他の技術的対策が、作業者の暴露防止を可能にするであろう。




3.勧   告
3.1 一   般
TBBPAおよび本化合物を含む製品の製造に従事する作業者は、防止技術、職業暴露のモニタリング、適切な労働衛生対策により、暴露から防護されるべきである。
本化合物あるいは製品を用いる工場における排水および大気中への排出の適切な処理を通じて、環境暴露を最小にすべきである。
本物質とその分解産物の環境汚染を最小にするため、工場廃棄物と消費者製品の処分を規制すべきである。
TBBPA処理の資材を焼却する際には、適切な設備で、一貫して最適の状況でなされるべきである。
3.2 今後の研究
TBBPA、Me2-TBBPA、PBDF/PBDDの環境試料のモニタリングを継続すべきである。もし、これらの化合物が見出された場合には、ヒトのモニタリングも実施すべきである。
TBBPAの吸入性微粒子への職業暴露測定のため、モニタリングを実施すべきである。もし、作業場でのモニタリングで見出された場合には、ラットによる吸入実験を実施すべきである。
TBBPA処理の資材からのPBDF/PBDDの生成について、焼却処分、事故による火災、火災をシミュレートした状況下で実験を行うべきである。
TBBPAを含む重合体(重合体中に添加と反応の双方)での環境中の運命(fate)についての長期研究、特に埋立地の場合について実施すべきである。
環境中におけるTBBPAのジメチル誘導体への転化、特に堆積物中の場合についての研究を実施すべきである。
TBBPA含有重合体の再利用性(recyclability)について、その分解産物に留意して、研究を継続すべきである。
現在、データがないため、TBBPAの細胞遺伝子損傷についての追加的なin vitro試験が必要である。もし、この試験が陽性の場合には、さらに、in vivoの研究が必要であろう。もし、in vivo試験が陽性を示した際には、さらに、短期あるいは長期試験が必要である。
現在、データがないため、ラットにおける生殖毒性の試験が必要である。



U.テトラブロモビスフェノールA誘導体
1.テトラブロモビスフェノールAジメチルエーテル
-要約と評価、結論および勧告-

a 物質の同定
化学式C17H16Br4O2
化学構造  3次元
分子量571.9
一般名1,1′-(1-methylethylidene)bis(3,5-dibromo-4-
methoxy)benzene;tetrabromobiphenyl A bis-(methylether);tetrabromobisphenyl A methyl-ether
CAS登録番号37853-61-5
b 物理的・化学的特性
表 テトラブロモビスフェノールAジメチルエーテルの物理的・化学的特性
蒸気圧(25℃)2×10-7Torra
n-オクタノール/水分配係数
(logPOW)
6.4〜7.6a,b

a Watanabe & Tatsukawa(1990)
b Sellstrom et al.(1994)

テトラブロモビスフェノールAジメチルエーテルを評価するため、あるいはその商業的な使用を支持するためのデータベースは存在しない。

テトラブロモビスフェノールAジメチルエーテルに対する評価は、その物理的・化学的特性、生産と用途、環境中の移動・分布・変質、環境中濃度とヒトの暴露、動物およびヒトにおける体内動態と代謝、実験用哺乳動物およびヒトへの影響、in vitro試験系への影響、実験室および野外のその他の生物への影響についての十分なデータの入手なくしてはできない。




2.テトラブロモビスフェノールAジブロモプロピルエーテル
-要約と評価、結論および勧告-

a 物質の同定
化学式C21H20Br8O2
化学構造  3次元
分子量943.9
一般名 1,1′-(1-methylethylidene)bis(3,5-dibromo-4-(2,3-dibromopropoxy)-benzene;
Bis(2,3-dibromopropoxy)-tetrabromobisphenol A;
propane2,2′-bis[3,5-dibromo-4-(2,3-dibromopropoxy)phenyl];
tetrabromobisphenol A dibromopropyl ether;
2,2′-bis[4-(2,3-dibromopropoxy)-3,5-dibromophenyl]-propane;
bis(2,3-dibromopropylether)of tetrabromobisphenol A;
Dibromopropydian
商品名Bromcal66.8;Fire guard3100;PE-68
CAS登録番号21850-44-2
b 物理的・化学的特性
表 テトラブロモビスフェノールAジブロモプロピルエーテルの物理的・化学的特性
物理的状態結晶性固体または粉末状固体
白色/オフホワイト
臭気微臭
臭素含有率a68%
密度b0.7〜0.9g/cm3
融点b90〜100℃(95℃)
水溶解性(25℃)c1g/l
安定性270℃より高温で分解する

a Arias(1992)
b Kopp(1990)
c この溶解性は高過ぎると思われる

テトラブロモビスフェノールAジブロモプロピルエーテルを評価するため、あるいはその商業的使用を支持するためのデータベースは存在しない。

入手し得るデータからは、テトラブロモビスフェノールAジブロモプロピルエーテルの急性および短期毒性は低い、との結論を下すことができる。本物質は変異原性について試験され、サルモネラチフィムリウム(ネズミチフス菌)(Salmonella typhimurium)TA100およびTA1535において直接変異原性を示した。しかし、不定期DNA合成試験およびin vitroの姉妹染色分体交換試験の結果は陰性であった。

本物質の評価は、その物理的・化学的特性、生産と用途、環境中の移動・分布・変質、環境中濃度とヒトの暴露、動物およびヒトにおける体内動態と代謝、実験用哺乳動物およびヒトへの影響、実験室および野外のその他の生物への影響についての十分なデータの入手なくしては不可能である。




3.テトラブロモビスフェノールAビス(アリルエーテル)
-要約と評価、結論および勧告-

a 物質の同定
化学式C21H20Br4O2
化学構造  3次元
分子量655.9
商品名BE-51
CAS登録番号25327-89-3
b 物理的・化学的特性
表 テトラブロモビスフェノールAビス(アリルエーテル)の物理的・化学的特性
物理的状態結晶性白色固体
臭素含有率a51%
比重1.8
融点115〜120℃
水溶解性(25℃)<1g/l
安定性過熱により分解して、臭化水素が発生すると思われる

a Arias(1992)

テトラブロモビスフェノールAビス(アリルエーテル)を評価するため、あるいはその商業的使用を支持するためのデータベースは存在しない。

入手し得るデータからは、本化合物の急性経口および経皮毒性は低い、との結論を下すことができる。ウサギの皮膚および眼に対する実験では、本物質は軽度の刺激物質であることが示された。

本物質に対する評価は、その物理的・化学的特性、生産と用途、環境中の移動・分布・変化、環境中濃度とヒトの暴露、動物およびヒトにおける体内動態と代謝、実験用哺乳動物およびヒトへの影響、in vitro試験系への影響、実験室および野外のその他の生物への影響についての十分なデータの入手なくしてはできない。




4.テトラブロモビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)
-要約と評価、結論および勧告-

a 物質の同定
化学式C19H20Br4O4
化学構造  3次元
商品名BA-50P, BA-50,Fireguard3600
CAS登録番号4162-45-2
b 物理的・化学的特性
表 テトラブロモビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)の物理的・化学的特性
物理的状態結晶性白色固体,固まりのある粉末
臭気はっきりした微臭
臭素含有率a51%
比重およそ1.80
融点およそ112℃(115℃)
安定性火災により分解して、臭化水素および/または臭素が発生する

a Arias(1992)

テトラブロモビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチルエーテル)を評価するため、あるいはその商業的使用を支持するためのデータベースは不十分である。

入手し得るデータからは、本物質は環境中に存在するという、ある程度の徴候がある。ラットおよびウサギにおける経口・経皮による投与後の急性毒性は低い。ラットによる急性吸入毒性(1時間暴露)は中程度である。ラットの短期毒性実験では、1,000mg/kg食餌では影響は示されなかったが、臓器中の臭素総量においては有意の増加が認められた。本物質はウサギの皮膚および眼を刺激しないことが見出されている。5系統のサルモネラ菌(Salmonella typhimurium)を用いた変異原性試験の結果は、代謝活性の有無いずれの場合にも、陰性を示した。

本物質に対する評価は、その物理的・化学的特性、生産と用途、環境中の移動・分布・変化、環境中濃度とヒトの暴露、動物およびヒトにおける体内動態と代謝、実験用哺乳動物およびヒトへの影響、in vitro試験系への影響、実験室および野外のその他の生物への影響についての十分なデータの入手なくしてはできない。In vitroにおける細胞遺伝子の試験も必要である。




5.テトラブロモビスフェノールA臭素化エポキシオリゴマー
-要約と評価、結論および勧告-

a 物質の同定
化学構造EP type(Epoxy terminated)
  3次元

EC type(tribromophenol end-capped)
  3次元
分子量EPタイプ 1,300〜40,000
ECタイプ 1,400〜3,000
b 物理的・化学的特性
表 テトラブロモビスフェノールA臭素化エポキシオリゴマーの物理的・化学的特性a
 EPタイプECタイプ
物理的状態薄黄色粉末薄黄色粉末
臭素含有率50〜52%59〜55%
比重1.81.9
軟化点103〜>200℃99〜140℃

a Satoh & Sugie(1993)より

テトラブロモビスフェノールA臭素化エポキシオリゴマーを評価するため、あるいはその商業的な使用を支持するためのデータベースは不十分である。テトラブロモビスフェノールA臭素化エポキシオリゴマーの物理的・化学的特性、生産と用途について、一部の、しかし不十分なデータの入手が可能である。これらのエポキシオリゴマーを含む樹脂が熱分解する際に生成されるPBDDとPBDFの量は、TBBPAが熱分解時よりもずっと少ない。

これらの物質に対する評価は、その物理学的・化学的特性、生産と用途、環境中の移動・分布・変化、環境中濃度とヒトの暴露、動物およびヒトにおける体内動態と代謝、実験用哺乳動物およびヒトへの影響、in vitro試験系への影響、実験室および野外のその他の生物類への影響についての十分なデータの入手なくしてはできない。

これらの化合物の使用は、少なくとも日本においては増加しているように見えるため、今後の研究の実施が不可欠である。




6.テトラブロモビスフェノールA炭酸塩オリゴマー類
BC-52テトラブロモビスフェノールA
a 物質の同定
化学式(C7H5O2)(C16H10Br4O3)x(C6H5O)   (x=3〜5)
化学構造  3次元
商品名BC-52
CAS登録番号94334-64-2
b 物理的・化学的特性
表 テトラブロモビスフェノールA炭酸塩オリゴマー類(BC-52)の物理的・化学的特性a
物理的状態白色粉末
臭素含有量55%
融点210℃〜230℃
水溶解性(25℃)<0.1%
安定性火災により分解して、臭化水素および/または臭素が発生する

BC-52中では、6ng/kgのTeBDDが検出された

PBDFおよび2,3,7,8-置換異性体は検出されなかった

(DiBDF/DiBDD〜OBDF/OBDDの検出限界は、1〜400ng/kg)b

a Kopp(1990);Arias(1992)より
b Brenner & Knies(1993)

BC-58テトラブロモビスフェノールA
a 物質の同定
化学式(C7H2Br3O3)(C16H10Br4O3)n(C6H2Br3)  (n=3〜5)
化学構造  3次元
CAS登録番号71342-77-3
b 物理的・化学的特性
表 テトラブロモビスフェノールA炭酸塩オリゴマー類(BC-58)の物理的・化学的特性a
物理的状態白色粉末
比重2.2
融点230℃〜260℃
水溶解性ほとんど溶けない(negligible)
安定性火災により分解して、臭化水素および/または臭素が発生する

a Kopp(1990)より

テトラブロモビスフェノールA炭酸塩オリゴマーを評価するため、あるいはその商業的使用を支持するためのデータは存在しない。

5系統のサルモネラ菌(Salmonella typhimurium)を用いた変異原性試験の結果は、代謝活性化の有無いずれの場合にも、双方の物質に対して陰性であった。

これらの物質に対する評価は、その物理的・化学的特性、生産と用途、環境中の移動・分布・変化、環境中濃度とヒトの暴露、動物およびヒトにおける体内動態と代謝、実験用哺乳動物およびヒトへの影響、in vitro試験系への影響、実験室および野外のその他の生物への影響についての十分なデータの入手なくしてはできない。In vitroの細胞遺伝子の試験も必要である。