環境保健クライテリア 149
Environmental Health Criteria 149

カルベンダジム  Carbendazim

(原著132頁,1993年発行)

作成日: 1997年2月24日
1. 物質の同定、物理的・化学的特性、分析方法
2. ヒトおよび環境の暴露源
3. 環境中の移動・分布・変質
4. 環境中濃度およびヒトの暴露
5. 体内動態および代謝
6. 実験用哺乳類およびin vitro(試験管内)試験系への影響
7. ヒトへの影響
8. その他の実験室および自然界の生物類への影響
9. 結論
10. 今後の研究
11. 国際機関によるこれまでの評価

→目 次


1.物質の同定、物理的・化学的特性、分析方法

a 物質の同定
                              
化学式               C9H9N3O2 
化学構造

3次元の化学構造の図の利用
図の枠内でマウスの左ボタンをクリック → 分子の向きを回転、拡大縮小 右ボタンをクリック → 3次元化学構造の表示変更

分子量 191.2 一般名 Carbendazim(BSI, ISO) その他の名称 carbendazol(ZMAF), methyl-2-benzimidazolecabamate(MBC, MCB, BCM, BMC) 主な商品名 Carbendazim, Delsene, Bavistin, Corbel, Konker, Bendazim, Derosal, Kombat, Kemdazin, Carbendor, Hoe 017411, Cekudazim, Equitdazin, Aimcozim ( これらは、他の殺虫剤にも使用される) CAS登録番号 10605-21-7 CAS化学名 Methyl(1H-benzimidazol-2-yl)carbamate IUPAC名 Methyl benzimidazole-2-ylcarbamate   b 物理的・化学的特性 物理的状態 結晶性固体 色 白色 臭気 ほとんどない 融点/沸点/引火点 〜250℃で融解 爆発限界(空気中) LEL=0.13 g/l 密度 0.27 g/cm3(ルーズな状態) 0.62 g/cm3(充填した状態) 蒸気密度(20℃) <1×10−7 Pa(<1×10−9 mbar) 溶解性 水(20℃) pH4 28mg/l pH7 8mg/l pH8 7mg/l     有機溶媒 ヘキサン 0.5 mg/l ベンゼン 36 mg/l ジクロロメタン   68 mg/l エタノール      300 mg/l ジメチルホルムアミド 5000 mg/l アセトン        300 mg/l クロロホルム      100 mg/l n-オクタノール/水分配係数    1.49 (log Pow) ヘンリー定数(20℃) 1.02×10−9 atm m3/mol 表 カルベンダジムの純度(工業規格品)a  ―----------------------------------------------------------------------    純度      カルベンダジム        98%以上   不純物     2,3-diaminophenazine(DAP)           2-amino-3-hydroxyphenazine(HAP)  ―----------------------------------------------------------------------   a; FAO 仕様       カルベンダジムは、白色結晶性の固体で、ベンゾイミダゾール類に属する全身性の 殺菌剤(systemic fungicide)(訳者注:生物体の全体にわたって浸透して効果を発 揮する作用機序を有する)である。約250℃で融解し、20℃における蒸気圧は<1× 10−7Pa[<1×10−9mbar]である。カルベンダジムは、pH7、20℃において、 水には実質的に不溶性(溶解度8mg/l)である。通常の保管状態で安定である。  残留物および環境中の分析は、有機溶剤抽出により行われ、抽出物は液−液分配法 により精製される。残留物の測定は高速液体クロマトグラフィーあるいはイムノアッ セイ[訳者注:immunoassay・免疫定量(検定)法ともいい、抗原抗体反応を利用 して、抗原または抗体を定量する]により行われる。


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2.ヒトおよび環境の暴露源  カルベンダジムは、ベンゾイミダゾール系殺菌剤の中 で最も広く使用されている。それは水性分散剤・水性懸濁剤・流動性水和顆粒剤・水 和粉剤として製剤化されている。 3.環境中の移動・分布・変質  ベノミル(訳者注:カーバメート系農業用殺菌剤)は環境中で速やかにカルベンダ ジムに変換され、その半減期は、水中で2時間、土壌中で19時間である。したがって、 ベノミルとカルベンダジム双方の研究データが、環境影響の評価に関連する。  カルベンダジムは環境中で分解し、その半減期は露出土壌上で6〜12か月、芝生上 で3〜6か月、好気性および嫌気性条件下の水中ではそれぞれ2および25か月である。 カルベンダジムは主として微生物類により分解される。2‐アミノベンゾイミダゾー ル(2‐AB)が主要な分解産物であり、さらに微生物作用により分解される。フェニ ル−14C−標識のベノミルが分解された場合、1年の滞留期間中に14C標識のわ ずか9%のみがCO2中に放出され、その残りの14Cは主にカルベンダジムとして 回収され残留物と結合する。分解産物(1,2‐ジアミノベンゼン)の環境中の運命は、 環境中におけるベンゾイミダゾール系殺菌剤の分解経路をさらに明らかにするであ ろう。  野外およびカラム法による研究では、カルベンダジムは土壌表層中に残留すること を示している。土壌中のカルベンダジムの吸着に関する測定値は入手できないが、ベ ノミルと同程度に土壌に強力に吸着されていると考えられる[Koc値(訳者注:土 壌有機炭素に吸着された殺菌剤と、溶液中の殺菌剤との間の分配係数)は1,000か ら3,600の間]。ベノミルおよびカルベンダジムのlog Kow値(n‐オクタノール /水分配係数)はそれぞれ1.36および1.49であった。  浸出のリスクは、吸着と蓄積性のデータに基づいたスクリーニング・モデルでの評 価では明らかではなかった。しかし、この見解は、カルベンダジムが米国の212ヵ所 の井戸水のどこにも検出されなかったという分析結果(検出限界は入手できない)に より支持されている。ベノミルおよびカルベンダジムの地表上の流失は、土壌粒子に 吸着されている殺菌剤のみで構成されており、この殺菌剤は水生環境中の堆積物に強 く吸着されているようである。  カルベンダジムは加水分解されて2‐ABになる。これは土壌および植物中におい ても主要な代謝産物である。  動物の体内においては、カルベンダジムは代謝されて、(5‐ヒドロキシ−1H−ベ ンゾイミダゾル‐2‐イル)カーバメート(5‐HBC)と、速やかに排泄される他の 極性代謝産物となる。カルベンダジムはいかなる生物組織においても、その蓄積は観 察されていない。
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4.環境中濃度およびヒトの暴露  カルベンダジムについての環境モニタリング・データは入手できそうにない。しか し、環境中での運命の研究から次のように要約されるであろう。  ベノミルおよびカルベンダジムは、植物体の中で数週間安定であり、葉や小枝を食 餌とする生物にとりこまれる可能性がある。土壌および堆積物はカルベンダジムの残 留物を3年位まで包含するであろう。しかし、カルベンダジムの土壌および堆積物粒 子への強い吸着性は、陸生・水生生物への暴露を減少させるであろう。  ヒトの一般集団への主要な暴露は、食品農作物のベノミルおよびカルベンダジムの 残留物によるものであろう。米国(ベノミルとカルベンダジムの組み合わせ)とオラ ンダ(カルベンダジム)の食事からの暴露分析では、予想平均摂取量は、ベノミルと カルベンダジムそれぞれの一日許容摂取量(ADI:Acceptable Daily Intake)の勧告 値0.02mg/kg体重と0.01mg/kg体重の約1/10と見積もられた。  製造中の職業的暴露は、ベノミルに対して設定された許容濃度以下である。農薬の 混合・積載に従事する、あるいはベノミル施用後の畑に立ち入る農業作業者は1時間 当り数mgの皮膚接触暴露を受けると予想される。この種の暴露は保護用具の使用に より減少できるであろう。さらに、経皮吸収は低いと予想されるためこの経路による ベノミルの全身性毒性の可能性はきわめて少ない。 5.体内動態および代謝  カルベンダジムは経口暴露後にはよく吸収される(80〜 85%)が、経皮暴露ではずっと低い。吸収されたカルベンダジムは生物の体内で代謝 され多数の化合物になる。その主な代謝生成物は5‐HBCおよび5,6‐HOBC‐N ‐オキシドである。少量の代謝産物は5,6‐DHBC‐Sおよび5,6‐DHBC‐Gで ある。  カルベンダジムの生体組織分布は生物濃縮を示さない。ラットにおいては、カルベ ンダジムの経口投与後の最高濃度(投与量の1%以上)は肝臓でみられた。それはミ トコンドリア(訳者注:すべての真核細胞内にある細胞内小器官)内ではカルベンダ ジムとして、サイトソル内では5‐HBCとして、ミクロソーム(訳者注:細胞原形 質に存在する微小顆粒体)内では2‐ABとして分布している。カルベンダジムとそ の代謝生成物は、メンドリとウシの腎臓中でも検出されたが、その他の生体組織中に おいては有意の濃度では検出されなかった。カルベンダジムを与えた授乳中のウシの 乳汁中には、少量の5‐HBCおよび4‐HBCが見出された。  ラットでは、カルベンダジムは経口投与後72時間内に尿および糞中に排泄された。  ラットおよびマウスに混餌法および強制経口投与で高用量のカルベンダジムを与 えたとき、ある種の肝臓ミクロソームの酵素に影響を与える。7‐ヒドロキシクマリ ンO‐脱エチラーゼ活性の減少が見出されたのに対して、スチレン−7,8‐水解酵素 (訳者注:加水分解を触媒する酵素の総称)およびエポキシド水解酵素が誘導された。 可溶性グルタチオンS−転移酵素活性も誘導された。
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6.実験用哺乳類およびin vitro(試験管内)試験系への影響 6.1 単回暴露  カルベンダジムの急性毒性は低い。そのLD50(50%致死量)は、広範囲の実験 動物および投与経路において、2,000〜15,000mg/kgの範囲である。しかし、生殖 に対する重大な有害影響が単回暴露後に認められた。   6.2 短期暴露  カルベンダジムの90日までの混餌投与では、360mg/kg体重/日に暴露されたメ ス・ラットの肝臓重量に軽度の影響を与えた。ラットの90日間の強制経口投与実験 では、肝毒性に基づくNOEL(no‐observed‐effect level:無影響量)は16mg/kg/ 日であった。イヌの短期食餌試験はNOELの確定には不十分であった。ウサギを用 いた10日間の皮膚実験における1種のみの用量(200mg/kg)では、全身的な毒性は 生じなかった。   6.3 皮膚および眼への刺激と感作  ウサギおよびモルモットの皮膚への適用は、刺激あるいは皮膚感作(訳者注:過敏 状態の誘発)を生じさせることはなかった。ウサギの眼への適用により中程度あるい は軽度の結膜の刺激が生じた。   6.4 長期暴露  2,500mg/kg食餌で飼育されたオスおよびメスのラットでは、赤血球数、ヘモグ ロビンおよびヘマトクリット値の減少を示した。肝臓に関連する毒性は認められなか った。2,500mg/kg食餌以上の用量で飼育されたオス・ラットでは、びまん性の精 巣萎縮と前立腺炎のごくわずかな増加を示した。ラットにおけるNOELは500mg/kg 食餌である。カルベンダジムを500mg/kgを含む食餌で1年以上飼育されたイヌに おいては、血清コレステロールとアルカリホスファターゼ活性の上昇、その他の肝毒 性の徴候が観察された。イヌにおけるNOELは300mg/kg食餌である。  5,000mg/kg食餌で飼育されたオスおよびメスのマウスでは、肝臓実重量の増加 を示した。また、1,500mg/kg食餌で飼育されたオスのマウスでは、肝臓における 顕著な小葉中心の肥大、壊死、膨脹も認められた。   6.5 生殖・胚毒性・催奇形性  カルベンダジムの500mg/kg食餌までの濃度により飼育された3世代のラットの生 殖試験においては、生殖についての有害影響は認められなかった。カルベンダジム (200mg/kg/日)を食餌中に85日間強制経口投与した場合には、オス・ラットの授 精能力は低下した。本試験における50mg/kg体重の投与量は精巣上体の精子数を著 しく減少させた。  ラットへの経口での単回投与後には、100mg/kg体重で、組織学的検索では精巣輸 出管の閉鎖を伴う精子形成の早期の(0〜2日)破壊が発生し、精巣重量が増加した。 なお、50mg/kgの単回投与では影響は認められなかった。400mg/kgを投与したラッ トでは、これらの影響は70日まで持続した。  カルベンダジムは、妊娠7〜16日のラットに10mg/kg以上の量を毎日投与した場 合、奇形および異常を増加させた。ウサギにおいて、妊娠7〜19日に20および 125mg/kg/日の投与により、卵子着床率の軽度の減少と、125mg/kg/日の場合は吸収 (resorption)の発生率の増加が見られた。母体毒性は、ラットで20mg/kg/日、ウサ ギでは125mg/kg/日において観察された。  さらにラットにおいては、20および90mg/kg/日により、妊娠率の減少、早期吸収 の増加、胎仔の体重の有意の減少が、また90mg/kg/日では胎仔の奇形の有意の増加 が認められた。これらは主として、水頭症(訳者注:頭蓋内に脳脊髄液が過剰に貯留 し、脳室が拡大し、頭は大きく、脳実質は圧迫萎縮を起こす疾病)、小眼球症、無眼 球症、肩甲骨の奇形、中軸(訳者注:四肢と区別して頭部・体幹の部分をいう)骨格 の奇形[脊椎・肋骨・胸骨分節の融合(訳者注:fusion、形成臓器の異常による結合)、 脳ヘルニア、半椎体、肋骨の過形成]により構成されている。しかし、ウサギにおい ては著しい奇形は見られなかった。   6.6 変異原性および関連終末点(end‐points)  哺乳類および非哺乳類のin vitro(試験管内)およびin vivo(生体内)、体細胞、 生殖細胞における生物試験では、カルベンダジムはDNAと相互作用せず、点突然変 異(訳者注:point mutation、ある遺伝子内で起こった突然変異による変化が非常に 狭い範囲に限定されている場合をいう)を誘発し、あるいは生殖細胞に突然変異を発 生させることを示している。  しかし、カルベンダジムはin vitroおよびin vivoの双方の実験系の中で、染色体 数異常[異倍数性(aneuploidy)および、あるいは多倍数性(polyploidy]を生じさ せる。   6.7 発がん性  ベノミルおよびカルベンダジムを含む食餌による飼育試験では、CD‐1系および SPF(訳者注:いわゆる「無菌実験動物」)スイス系マウスにおいて肝細胞腫瘍の発 生率を増加させた。  CD‐1系マウスを用いたカルベンダジムの発がん性試験では、メスにおいて、統 計学的に有意の、用量関連性の肝細胞新生物(neoplasia)(訳者注:腫瘍のような 異常組織の発生)の増加を示した。また、中等度の用量(1,500mg/kg食餌)を投 与されたオスにおいても統計学的に有意の増加が認められたが、高用量のオスでは高 い死亡率のため有意の増加は見出せなかった。遺伝学的に関連性のある系統のマウス でのカルベンダジムの発がん性試験において、SPFマウス(スイスの任意の系統)へ の0、150、300、1,000mg/kg食餌(試験中に5,000mg/kgにまで増量)の投与に より、肝細胞腺腫およびがん腫の合併病態の発生率増加を示した。また、NMRKf系 のマウスにカルベンダジム0、50、150、300、1,000mg/kg食餌(試験中に5,000mg/kg にまで増量)を投与した試験では発がん性は認められなかった。ベノミルあるいはカ ルベンダジムは、肝腫瘍の自然発生率の高い系統のマウス(CD‐1およびSPF)に おいて肝腫瘍を生じさせた。これとは対照的にその種の腫瘍の自然発生率の低い NMRKf系のマウスにおいては、カルベンダジムは発がん性を示さなかった。  カルベンダジムとベノミル双方共、ラットにおける発がん性試験は陰性であった。   6.8 毒性のメカニズム−作用機序−  ベノミルおよびカルベンダジムの生物学的影響は、それらと細胞の微細管との相互 作用から生じる。これらの組織は、ベノミルおよびカルベンダジムにより阻害される 細胞分裂のような生体機能に含まれる。ベノミルおよびカルベンダジムの哺乳類にお ける毒性は、微細管の機能低下に関連している。  ベノミル・カルベンダジムおよびその他のベンゾイミダゾール化合物類は、動物種 に選択的な毒性を発現する。この選択性の少なくとも一部は、ベノミルおよびカルベ ンダジムの標的動物種および非標的動物種の微細管への結合性の差異により説明さ れる。
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7.ヒトへの影響  ヒトの健康への有害作用は報告されていない。 8.その他の実験室および自然界の生物類への影響  カルベンダジムは、勧奨適用濃 度においては、土壌微生物の活動への影響はごくわずかである。一部の有害影響は真 菌のグループについて報告されている。  緑色藻Salenastrum capricornutumの総増殖量に基づいた72時間のEC50 (50%影響発現濃度)は1.3mg/l、NOEC(無影響濃度)は0.5mg/lと算出された。 カルベンダジムの水生無脊椎類および魚類に対する毒性は大きく変化し、96時間の LC50(50%致死濃度)値は、ナマズ(channel catfish)に対する0.007mg/lか ら、スズキへの5.5mg/lまでの範囲に及んでいる。ミジンコ属の21日間の試験にお いては、繁殖の開始は0.025mg/lの濃度で著しく遅延し、NOECは0.013mg/lで あった。  カルベンダジムは、現実的な暴露濃度および畑地での勧奨された使用法を用いた実 験室の試験において、ミミズに対し毒性を示す。また、ミツバチに対しては「比較的 無毒」で、鳥類への毒性は低い。 9.結  論  ベノミルはヒトに皮膚感作を生じさせる。ベノミルおよびカルベンダ ジムのヒトへの急性毒性のリスクはきわめて低い。ベノミルとカルベンダジムの現在 の暴露状況と低率の経皮吸収から、一般集団および職業的に暴露する作業者のいずれ においても、全身的有害影響を生じさせることはないであろう。これらの結論は、動 物データおよびヒトの限られたデータから導き出されるが、その外挿は標的および非 標的の双方の動物種におけるカルベンダジムとベノミルの作用機序の知識により支 持されている。  カルベンダジムとベノミルの哺乳類における毒性メカニズムを一層解明すること により、より正確な無影響濃度の決定がおそらく可能であろう。標的細胞(精巣およ び胎生組織)の微細管との結合についての研究は、動物種間の比較対照を容易にする であろう。  カルベンダジムは土壌有機物に強く吸着されており、土壌中に3年までの期間存続 する。葉の表面にも残存するため、葉のリター(litter)(訳者注:落葉落枝)にも 残る。その勧奨使用濃度において、ミミズは有害な影響(個体数および繁殖への影響) を受けることを示している。同じように暴露されるその他の土壌あるいはリター上に 生息する節足動物(訳者注:クモ・ムカデなど)についての情報はない。  実験室の試験における水生生物に対する強い毒性は、堆積物に結合したカルベンダ ジム残留物の低い生物学的利用能(訳者注:生物による化学物質の利用性)のため、 自然界ではありそうもない。しかし、最高の暴露を受ける堆積物に生息する生物種に ついての情報は入手できない。
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10.今後の研究 1. カルベンダジムの標的組織の微細管への結合について、多種類の動物による比 較研究に着手すべきである。 2. 環境中の1,2‐ジアミノベンゼンおよび結合残留物の環境中の運命について、 今後の解明が必要である。 3. 堆積物上に生息する生物類に対するベノミルおよびカルベンダジムの影響を検 討する必要がある。 11.国際機関によるこれまでの評価  カルベンダジムは、FAO/WHOの合同残留農 薬専門家委員会(JMPR)により、1973、1976、1977、1978、1983、1988年の会 合において評価を受けた。1978年の会合では、ベノミル、カルベンダジム、チオフ ァネートメチルの最大残留限界(MRLs)を一本化し、カルベンダジムとして表わす ことが合意された。カルベンダジム残留物は1988年に最終的に評価され、MRLSは その時点で更新された(FAO/WHO,1988)。これらのMRLS(カルベンダジムと 表記)はP.000の表に掲げた。1983年の会合(FAO/WHO,1985)ではカルベンダ ジムの毒性が評価され、次のNOEL(無影響量)およびADI(一日許容摂取量)が 設定された。  ラット:500mg/kg食餌、25mg/kg体重に相当。  イ ヌ:100mg/kg食餌、2.5mg/kg体重に相当。  ラット:催奇形性−ベノミル30mg/kg体重/日。  カルベンダジムの概算ADIは0〜0.01mg/kg体重/日と設定された。  カルベンダジムは、これまでに国際がん研究機関(IARC)による評価は受けてい ない。
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表. 特定商品に対する各国のカルベンダジムの最大残留限界値(mg/kg)a バナナ 穀類 桜桃 柑橘類 豆類 キュウリ モモ リンゴ イチゴ ブドウ ・ナシ オーストラリア 1 0.05 5 10 3 3 5 5 6  2 オーストリア 0.2 0.5 7 1 0.5 2 1.5 3 ベルギー 2 0.5 2 2 0.5 2 5 5 2 ブラジル 1 0.5 10 10 2 0.5 10 5 5 10 ブルガリア 0.5 10 5 5 10 カナダ 5 10 1 0.5 10 5 5 5 デンマーク 2 0.1 2 5 2 2 2 2 5 5 フランス 1 1.5 6 フィンランド 0.2 1 2 0.5 0.5 1 1 1 ドイツ 0.2 0.5 2 7 1 0.5 2 2 3 ハンガリー 2 1 イスラエル 10 10 10 5 10 イタリア 0.5 0.5 1 1 メキシコ 10 2 1 15 7 5 10 オランダ 3 0.1 3 4 3 3 3 3 3 3 ニュージーランド 5 1 5 5 2 2 5 5 5 5 スペイン(指針) 1 0.5 5 7 2 2 5 5 1 5 スイス 1 0.2 3 7 0.2 0.1 3 3 3 3 英国(提案) 1 0.5 10 0.5 10 5 5 10 米国 1 0.2 15 10 2 1 15 7 5 10 ソ連 1 0.5 10 10 2 0.5 10 5 5 5 ユーゴスラビア 0.1 7 0.5 0.1 2 0.5 2  a FAO/WHO(1988)より
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