1.物質の同定、物理的・化学的特性、分析方法
a 物質の同定
化学式 C14H18N4O3
化学構造
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分子量 290.3
一般名 Benomyl
その他の名称 Methyl 1-(butylcarbamoyl)-2-benzimidazolecarbamate
主な商品名 Benlate, Tersan, Fungicide 1991, Fundazol
CAS登録番号 17804-35-2
CAS化学名 Carbamic acid,[1-[(butylamino)carbonyl]-1H-benzimidazol-2-yl]-,ethyl ester
IUPAC名 Methyl 1-[(butylamino)carbonyl]-1H-benzimidazol-2-yl carbamate
b 物理的・化学的特性
物理的状態 結晶性固体
色 白色
臭気 ほとんどない
融点/沸点/引火点 140℃で融解後に分解
爆発限界(空気中) LEL=0.05 g/l
密度 0.38 g/cm3
蒸気密度(25℃) <5.0×10−6 Pa (<3.7×10−8 mmHg)a
溶解性 水(pH5,25℃) 3.6 mg/l
有機溶媒(25℃) クロロホルム 9.4 g/100g溶媒
ジメチルホルムアミド 5.3 g/100g溶媒
アセトン 1.8 g/100g溶媒
キシレン 1.0 g/100g溶媒
エタノール 0.4 g/100g溶媒
ヘプタン 40 g/100g溶媒
n‐オクタノール/水分配係数 1.36
(log Pow)
ヘンリー定数(pH 5, 25℃)<4.2×10−9 atm m3/mol
土壌/水 分配係数 1090 mg/g(Kom); 1860 mg/g(Koc)b
a; Barefoot (1988)より
b; Koc=土壌有機炭素に吸着した殺虫剤と溶液中の殺虫剤の分配係数
Kom=土壌有機物に吸着した殺虫剤と溶液中の殺虫剤の分配係数
ベノミルの純度 a 工業規格品ベノミル 95%以上
a; FAO 仕様より
ベノミルは黄褐色で結晶性の固体で、ベンゾイミダゾール類に属する全身性の殺菌
剤(訳者注:生物体の全般にわたって浸透して効果を発揮する作用機序を有する)で
ある。140℃の融点のすぐ上の温度で分解し、25℃における蒸気圧は<5×10−6Pa
(<3.7×10−8mmHg)である。ベノミルは、pH5、25℃の水中では実質的に不
溶性で、その溶解度は3.6mg/lである。通常の保管状態では安定であるが、水中で
は分解されてカルベンダジムになる。
残留物および環境中の分析は、有機溶剤への抽出、液−液分配法による精製および
残留物のカルベンダジムへの変換によって行う。残留物の測定は、高速液体クロマト
グラフィーあるいはイムノアッセイ[訳者注:immunoassay・免疫定量(検定)法
ともいい、抗原抗体反応を利用して、抗原または抗体を定量する]により行われる。
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2.ヒトおよび環境の暴露源
1988年の世界におけるベノミルの使用量は約1,700
トンである。それは50か国において、70種以上の農作物への使用が登録され、広範
囲に使用されている殺菌剤である。ベノミルは湿潤性の粉末として製剤化されている。
3.環境中の移動・分布・変質
ベノミルは環境中において、水中では2時間、土壌
中では19時間の半減期をもってカルベンダジムに変換する。したがって、ベノミル
とカルベンダジム双方の研究データが環境影響の評価に関連する。
カルベンダジムは環境中で、露出土壌上では6〜12か月、芝生上では3〜6か月、
好気的および嫌気的条件下の水中では2〜25か月の半減期で分解する。
カルベンダジムは主として微生物類により分解される。2‐アミノベンゾイミダゾ
ール(2‐AB)は主要な分解産物であり、微生物作用によりさらに分解される。
フェニル−14C‐標識のベノミルが分解された場合、1年の滞留期間中に14C
のわずか9%のみがCO2として放出される。残りの14Cは主にカルベンダジムと
して回収され、残留物と結合する。分解産物(1,2‐ジアミノベンゼン)の運命は、
環境中におけるベンゾイミダゾール系殺菌剤の分解経路をさらに明らかにするであ
ろう。
野外およびカラムによる研究は、カルベンダジムが土壌表層中に残留することを示
している。土壌中におけるカルベンダジムの吸着に関する数値は入手できないが、K
oc値(訳者注:土壌中有機炭素に吸着された殺菌剤と、溶液中の殺菌剤との間の分
配係数をいう)は1,000〜3,600の範囲で、ベノミルと同程度土壌に強く吸着され
ていると考えられる。ベノミルおよびカルベンダジムのlog Kow(n−オクタノー
ル/水分配係数)は、それぞれ1.36および1.49である。
浸出(leaching)のリスクがないことは、吸着と持続のデータに基づいたスクリー
ニング・モデルでの評価で明らかである。このことは、米国の井戸水の分析で、495
ヶ所のどの井戸水にもベノミルが検出されず、212ヶ所のどの井戸水にもカルベンダ
ジムが検出されなかったこと(検出限界不明)で立証される。ベノミルおよびカルベ
ンダジムの表層からの流失は、これらの殺菌剤の土壌粒子に吸着している部分のみに
よると予測され、これらの化合物は水生環境中の堆積物に強く吸着されていると考え
られる。
溶液・植物・土壌中のベノミルはカルベンダジム(メチル−1H−ベンゾイミダゾ
ール−2−カーバメート)、2‐AB、STB(3−ブチル−1,3,5−トリアジノ[1,
2a]ベンゾイミダゾール−2,4(1H,3H)ジオン)、BBU(1‐(2‐ベンゾイミ
ダゾリル)‐3‐n‐ブチル尿素)に分解される。ベノミルの光分解はほとんどないか、
あるいは全くない。
動物の生体組織中では、ベノミルは代謝されて、カルベンダジムと、速やかに排泄
される他の極性代謝生成物となる。ベノミルおよびカルベンダジムは、いずれの生物
学的組織系においても蓄積は観察されていない。
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4.環境中濃度およびヒトの暴露
ベノミルについての環境モニタリング・データは
入手困難である。しかし、環境中での運命の研究からは次のように要約されるであろ
う。
ベノミルおよびカルベンダジムは、植物体中で数週間安定であり、葉や小枝を食餌
とする生物類に取り込まれる可能性がある。土壌および堆積物はカルベンダジムの残
留物を3年位まで包含するであろう。しかし、カルベンダジムの土壌および堆積物粒
子への強い吸着性は、陸生・水生生物への暴露を減少させるであろう。
ヒトの一般集団への主要な暴露は、食品農作物中のベノミルおよびカルベンダジム
の残留物である。米国(ベノミルとカルベンダジムの組み合わせ)とオランダ(カル
ベンダジム)の食事からの暴露分析では、予想平均摂取量は、ベノミルとカルベンダ
ジムの一日許容摂取量(ADI:acceptable daily intake)のそれぞれの勧告値0.02
および0.01mg/kg体重の約1/10と推定された。
製造工程中の職業的暴露は許容濃度以下である。農薬の混合・積載に従事する、あ
るいはベノミル施用後の畑に立ち入る農業作業者は、1時間当り数mgの経皮暴露を
受けると予測される。この種の暴露は保護用具の使用により減少できるであろう。さ
らに、経皮吸収は低いと予想されるため、ヒトの集団に対するこの経路のベノミルの
全身的毒性の可能性はきわめて低い。
5.体内動態および代謝
ベノミルは動物実験において、経口および吸入暴露後では
容易に吸収されるが、経皮暴露による吸収はずっと少ない。吸収されたベノミルは速
やかに代謝され、尿および糞中に排泄される。14C‐標識のベノミルにより飼育さ
れたラットでは、その代謝産物であるカルベンダジムおよびメチル(5‐ヒドロキシ
‐1H‐ベンゾイミダゾール‐2‐イル)カーバメート(5‐HBC)が血液中に検出さ
れ、睾丸・腎臓・肝臓にも少量検出された。生体組織内の分布は生物濃縮を示しては
いない。尿中の主な代謝産物は5‐HBCであったが、少量のカルベンダジムも含ま
れていた。投与後72時間までに、投与量の98%が排泄された。50mg/kg食餌に相当
する用量の放射性標識のベノミルをカプセルにより5日間投与されたウシにおいて、
ベノミルの濃度は肝臓内で4mg/kg、腎臓内で0.25mg/kgであり、その他の組織あ
るいは脂肪中では有意の濃度ではなかった。飼育中に、標識の65%が尿中に、21%
が糞中に、0.4%が牛乳中に排泄された。牛乳中の主な代謝産物は5‐HBCであっ
た。同様の代謝および排出パターンは他の動物中でも認められた。
ベノミルは、in vitro(試験管内)において、アセチルコリンエステラーゼを阻害
しない。それは、マウスおよびラットのin vivo(生体内)実験において、肝臓エポ
キシヒドロラーゼ(加水分解酵素)・γ−グルタミルペプチド転移酵素・グルタチオ
ン−S−転移酵素の誘導を示した。
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6.実験用哺乳類およびin vitro(試験管内)試験系での影響
6.1 単回暴露
ベノミルは、ラットにおいて、経口LD50(50%致死量)10,000mg/kg以上、
吸入による4時間のLC50(50%致死濃度)は4mg/lであり、低い急性毒性を示し
た。カルベンダジムは、その親化合物(parent compound)のベノミルと同様に、ラ
ットにおけるLD50は10,000mg/kg以上である。イヌに1.65mg/lのベノミルを
1日4時間、28日間吸入暴露させた場合には、肝臓重量の減少を示した。ラットにベ
ノミルを食餌により単回投与したとき、暴露後70日において生殖影響を示した。
6.2 短期暴露
ベノミルを強制経口(gavage)、混餌(dietary)、経皮により投与した90日まで
の短期試験では、ラットで肝臓重量の軽度の増加を示した(125mg/kg/日、混餌投与)。
オスの生殖器官への影響(睾丸および精巣上体の重量の減少と精子形成の低下)は、
ラット[45mg/kg/日、強制経口投与、無影響量(NOEL:no‐observed‐effect level)
は15mg/kg]、ウサギ(経口投与で1,000mg/kg/日、経皮適用で500mg/kg体重/
日)、ビーグル犬(62.5mg/kg、NOELは18.4mg/kg/日、混餌投与)で認められ
た。肝臓および睾丸への影響は、200mg/m3までの濃度のベノミルの90日間の吸入
暴露においては認められなかった。
6.3 皮膚および眼への刺激と感作
ウサギおよびモルモットの皮膚への適用では、刺激はないかあるいは軽度であり、
皮膚感作(訳者注:過敏状態の誘発)は中程度であった。ラットの眼に対する適用で
は、一過性の軽度の結膜刺激を生じた。
6.4 長期暴露
ラットにおける長期食餌実験では、2,500mg/kg食餌(125mg/kg体重/日)まで
の投与量においては、この化合物に関連する影響は立証できなかった。この実験は、
生殖影響を評価するためには十分とは見なされていない。CD‐1系マウスでは、1,
500mg/kg食餌以上の用量において肝臓重量は増加した。オス・マウスでは、5,
000mg/kg食餌の用量において、睾丸の実重量の減少と胸腺の萎縮が発生した。
6.5 生殖・胚毒性・催奇形性
ベノミルは、精巣および精巣上体の重量の減少、尾のある精子の貯蔵数の低下、精
子形成の減少、オスの授精率の低下を生じさせる。さらに高用量においては、すべて
の段階の精子形成の普遍的な崩壊を伴う精子形成不全が認められる。ベノミルは、交
尾行動、精嚢腺、精子運動あるいは関連の生殖ホルモン類には影響を与えない。オス・
ラットの精子形成に対して、統計学的に有意の影響を及ぼすベノミルの最低濃度は
45mg/kg/日であった。これらの影響に対するNOEL(無影響量)は15mg/kg/日であ
った。
ラットにおけるベノミルの強制経口による単回投与(100mg/kg以上)では、暴露
後70日に、睾丸重量の減少と精細管の萎縮を含む影響が示された。
ChR‐CD系およびウイスター系ラットに対し妊娠7〜16日の間にベノミルを強
制経口投与した場合、62.5mg/kgにおいて双方の種で催奇形性が見られたが、ChR
‐CD種では30mg/kgで、またウイスター種では31.2mg/kgにおいては影響はなか
った。またSprague‐Dawley系ラットの妊娠7〜21日の間での強制経口投与では、
ベノミルは31.2mg/kgで催奇形性を示した。その影響は、小眼球症、水頭症(訳者
注:頭蓋内に脳脊髄液が過剰に貯留し、脳室が拡大し、頭は大きく、脳実質は圧迫萎
縮を起こす疾病をいう)、脳室ヘルニアであった。ラットの出生後の発育に対しては、
15.6mg/kg以上の投与量で悪影響がみられた。
マウスに対する50mg/kg以上の濃度の強制経口投与では、過剰肋骨およびその他
の骨格・内臓の異常を誘発した。投与量50mg/kg以下の試験は行われていないため、
マウスにおけるNOELは確立されていない。ウサギでは、500mg/kg食餌の投与量に
おいて、過剰肋骨のわずかな増加以外には催奇形性は観察されなかった。
6.6 変異原性および関連終末点(end‐points)
体細胞および生殖細胞による実験では、ベノミルは遺伝子突然変異あるいは染色体
構造損傷(異常)を発生させず、DNAと直接的には相互作用しない(DNAの損傷と
その修復の発生)ことを示している。これは哺乳類および非哺乳類の試験系において
立証されている。
しかし、ベノミルはin vitroおよびin vivoの実験系において、染色体数異常[異
倍数性および/または多倍数性]を生じさせる。
6.7 発がん性
ベノミルおよびカルベンダジムは、肝腫瘍の自然発生率が高い2種の系統のマウス
[CD‐1系およびスイス系(SPF)(訳者注:SPFはいわゆる「無菌実験動物」)]
において肝腫瘍を発生させた。これとは対照的に、カルベンダジムは、この種の腫瘍
の自然発生率の低いNMRKf系のマウスで発がん性を示さなかった。
CD‐1マウスを用いた最初の発がん性試験では、メスにおいて、統計学的に有意
の用量関連性の肝細胞の新生物(訳者注:腫瘍のような異常組織)の増加が認められ
た。またオスでも、中程度の用量(1,500mg/kg)において統計学的に有意の反応が
あったが、高用量では高い死亡率のため評価は得られていない。カルベンダジムの第
二の発がん性試験では、遺伝学的に関連性のある系統のSPF系マウス(スイスの任
意の系統)への0、150、300、1,000mg/kg(試験中に5,000mg/kgにまで増量)
の用量において、肝細胞腺腫とがん腫の合併病態の発生率増加を示した。第三の試験
はNMRKf系マウスで実施され、0、50、150、300、1,000mg/kg(試験中に5,000mg/kg
にまで増量)の用量において、発がん作用は示されなかった。
ベノミルとカルベンダジムの双方共、ラットにおける発がん性試験は陰性であった。
6.8 毒性のメカニズム−作用機序−
ベノミルおよびカルベンダジムの生物学的影響は、それらと細胞の微細管との相互
作用から生じると考えられている。これらの組織は、ベノミルおよびカルベンダジム
により阻害される細胞分裂のような生体機能に含まれる。ベノミルおよびカルベンダ
ジムの哺乳類における毒性は、微細管の機能低下に関連している。
ベノミルおよびカルベンダジムは、他のベンゾイミダゾール化合物のように、動物
種に選択的な毒性を発現する。この選択性の少なくとも一部分は、ベノミルおよびカ
ルベンダジムの標的動物および非標的動物の微細管との結合性のちがいにより説明
される。
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7.ヒトへの影響
ベノミルは接触性皮膚炎および皮膚感作を生じさせる。その他の影響は報告されていない。
8.その他の実験室および自然界の生物への影響
ベノミルは、勧奨されている適用
濃度においては、土壌微生物の活動への影響はほとんどない。一部の有害影響は真菌
のグループについて報告されている。
緑色藻Selenastrum capricornutumの総増殖量に基づいた72時間のEC50
(50%影響発現濃度)は2.0mg/lと算出され、無影響濃度(NOEC:no‐observed
‐effect concentration)は0.5mg/lであった。水生無脊椎類および魚類に対するベ
ノミルの毒性は大きく変化し、96時間のLC50(50%致死濃度)は、ナマズ(yolk
‐sac fry)に対する0.006mg/lからザリガニの100mg/l以上までの範囲に及んでい
る。
ベノミルは、現実的な暴露濃度および畑地での勧奨使用法を用いた実験室の試験に
おいて、ミミズに対して毒性を示す。また、鳥類への毒性は低く、カルベンダジムの
分解産物は、ミツバチに対し「比較的無毒」である。
9.結 論
ベノミルはヒトに皮膚感作を生じさせる。ベノミルおよびカルベンダ
ジムは両方共、ヒトへの急性毒性のリスクは極めて低い。これら二化合物の現在の暴
露状況と低い率の経皮吸収から、一般集団および職業的に暴露される作業者のいずれ
においても、全身的有害影響を生じさせることはないであろう。これらの結論は、動
物データおよびヒトの入手し得る限られたデータから導き出されるが、カルベンダジ
ムとベノミルの標的・非標的動物種の双方における作用機序の理解により支持されて
いる。
ベノミルおよびカルベンダジムの哺乳類における毒性メカニズムを一層解明する
ことにより、より正確な無影響濃度の決定がおそらく可能であろう。標的細胞(精巣
および胎生組織)の微細管との結合についての研究は、動物種間の比較対照を容易に
するであろう。
カルベンダジムは土壌有機物に強く吸着され、土壌中に3年までの期間残留する。
カルベンダジムは葉の表面に残存するため、葉のリタ−(訳者注:落葉落枝をいう)
にも残る。その勧奨使用濃度において、ミミズは有害な影響(個体数および繁殖への
影響)を受けることを示している。同じように暴露されるその他の土壌あるいはリタ
ー上に生息する節足動物についての情報はない。
実験室の試験における水生生物に対する強い毒性は、堆積物に結合したカルベンダ
ジム残留物の低い生物学的利用能(訳者注:生物による化学物質の利用性)のため、
自然界では起らないだろう。しかし、堆積物中に生息し、最高の暴露を受ける生物種
についての情報は入手できない。
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10.今後の研究
1. カルベンダジムの標的組織の微細管への結合について、多種類の動物による比
較研究に着手すべきである。
2. 環境中の1,2‐ジアミノベンゼンおよび結合残留物の環境中の運命について、
今後の解明が必要である。
3. 堆積物上に生息する生物類に対するベノミルおよびカルベンダジムの影響を
検討する必要がある。
11.国際機関によるこれまでの評価
ベノミルは、FAO/WHOの合同残留農薬専門家委員会(JMPR)により、1973、1975、
1978、1983、1988年の会合において評価された。1978年の会合では、ベノミル、カ
ルベンダジム、チオファネートメチルの最大残留限界(MRLS)を一本化し、カルベ
ンダジムとして表わすことが合意された。ベノミル残留物は1988年に最終的に評価
され、MRLSはその時点で更新された(FAO/WHO,1988)。これらのMRLS(カルベン
ダジムと表記)は次頁の表に掲げた。1983年の会合(FAO/WHO,1985)ではベノミ
ルの毒性が評価され、次のベノミルのNOEL(無影響量)およびADI(一日許容摂取
量)が設定された。
ラット:2,500mg/kg食餌、125mg/kg体重に相当。
イ ヌ:カルベンダジム100mg/kg食餌、2.5mg/kg体重に相当。
ラット:催奇形性−30mg/kg体重/日。
ベノミルの概算ADIは0〜0.02mg/kg体重と設定された。
ベノミルは、これまでに国際がん研究機関(IARC) による評価は受けていない。
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表.特定商品に対する各国のベノミルの最大残留限界値(mg/kg)
a
バナナ 穀類 桜桃 柑橘類 豆類 キュウリ モモ リンゴ イチゴ ブドウ
・ナシ
オーストラリア 1 0.05 5 10 3 3 5 5 6 2
オーストリア 0.2 0.5 7 1 0.5 2 1.5 3
ベルギー 2 0.5 2 2 0.5 2 5 5 2
ブラジル 1 0.5 10 10 2 0.5 10 5 5 10
ブルガリア 0.5 10 5 5 10
カナダ 5 10 1 0.5 10 5 5 5
デンマーク 2 0.1 2 5 2 2 2 2 5 5
フランス 1 1.5 6
フィンランド 0.2 1 2 0.5 0.5 1 1 1
ドイツ 0.2 0.5 2 7 1 0.5 2 2 3
ハンガリー 2 1
イスラエル 10 10 10 5 10
イタリア 0.5 0.5 1 1
メキシコ 10 2 1 15 7 5 10
オランダ 3 0.1 3 4 3 3 3 3 3 3
ニュージーランド 5 1 5 5 2 2 5 5 5 5
スペイン(指針) 1 0.5 5 7 2 2 5 5 1 5
スイス 1 0.2 3 7 0.2 0.1 3 3 3 3
英国(提案) 1 0.5 10 0.5 10 5 5 10
米国 1 0.2 15 10 2 1 15 7 5 10
ソ連 1 0.5 10 10 2 0.5 10 5 5 5
ユーゴスラビア 0.1 7 0.5 0.1 2 0.5 2
a FAO/WHO(1988)より。