環境保健クライテリア 139
Environmental Health Criteria 139

部分的ハロゲン化クロロフルオロカーボン類
(エタン誘導体)
Partially Halogenated Chlorofluorocarbons
(Ethane Derivatives)

(原著130頁,1992年発行)

作成日: 1997年2月24日
はじめに
1. 物質の同定、物理的・化学的特性、分析方法
2. ヒトおよび環境の暴露源
3. 環境中の移動・分布・変質
4. 環境中の濃度およびヒトの暴露
5. 体内動態および代謝
6. 実験動物およびin vitro試験系に対する影響
7. ヒトへの影響
8. 実験室および野外におけるその他の生物への影響
9. 評価および結論
10. 結論
11. ヒトの健康と環境の保護のための勧告

→目 次


はじめに

 全ハロゲン化クロロフルオロカーボン類からの活性塩素による成層圏オゾン層の減
少に対する地球全体の関心により、1985年3月に採択されたオゾン層保護に関するウィ
ーン条約と、1987年に調印されたオゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議
定書が制定された。その合意事項は、全ハロゲン化クロロフルオロカーボン11、12、
113、114、115の生産と使用を1989年の半ばまでに1986年のレベルに凍結し、その20%
の削減を1993年7月1日より、また、30%の削減を1998年7月1日までに実現することを
要求している。この議定書には67か国および欧州経済共同体が調印した。1990年7月の
議定書で、総計15種類の全ハロゲン化クロロフルオロカーボンの、2000年までの完全
な段階的廃止が議定書への締約国により合意された。
 この段階的廃止は、受容し得る代替化学物質に対する緊急の必要性をもたらした。
これらは議定書に含まれるクロロフルオロカーボン類と同様の特性を備えねばならな
いが、それらはオゾン減少のおそれ、地球温暖化の可能性が低く、大気中での滞留時
間も短いことが求められている。さらに、代替化学物質はヒトの健康と環境に不合理
なリスクを与えてはならない。
 水素添加され部分的にハロゲン化されたクロロフルオロカーボン類は、代替物と見
なされる化学物質類を構成する。部分的ハロゲン化クロロフルオロカーボン類のオゾ
ン減少と地球温暖化のおそれは、全ハロゲン化クロロフルオロカーボン類と比較して
かなり低く、それらの大気中滞留時間はより短い。従って、毒性評価で不合理な健康
リスクが示唆されない部分的ハロゲン化クロロフルオロカーボン類は、特にこれらの
生産が技術的に可能の場合には、受容できない全ハロゲン化クロロフルオロカーボン
類の可能性のある代替品と見なし得る。クロロフルオロカーボン類の2種類の部分的
ハロゲン化メタン誘導体(ハイドロクロロフルオロカーボン類21及び22)の評価が終
了し、WHO環境保健クライテリア・シリーズのモノグラフNo.126(本書88頁抄訳参照)
として発行されている。このモノグラフでは、クロロフルオロカーボン類の6種の部
分的ハロゲン化エタン誘導体(ハイドロクロロフルオロカーボン141b、142b、
132b、133a、123、124)を評価している。


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1.物質の同定、物理的・化学的特性、分析方法 物質 HCFC 141b HCFC 142b HCFC 132b HCFC 133a HCFC 123 HCFC 124 注  クロロフルオロカーボン類は、次の様に番号付けられている   1番目=炭素原子の数−1(エタン誘導体では1)    2番目=水素原子の数+1    3番目=フッ素原子の数 a 物質の同定 a 物質名 HCFC 141b 化学式 CCl2F-CH3 化学構造

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図の枠内でマウスの左ボタンをクリック → 分子の向きを回転、拡大縮小 右ボタンをクリック → 3次元化学構造の表示変更

分子量 116.95 一般名 dichlorofluoroethane その他の名称 a 1,1-dichloro-1-fluoroethane; 1-fluoro-1,1-dichloroethane; ethane,1,1-dichloro-1-fluoro; HCFC 141b; Propellant 141b; R-141b CAS登録番号 1717-00-6 換算係数(20℃) ppm→mg/m3 4.85 mg/m3→ppm 0.206 a; 商品名 Arcton, Freon, Genetron, Isotronが、異なった製造業者により、相応する数字を付けて、 使用されている。   b 物理的・化学的特性 a 物質名 HCFC 141b 物理的状態 液体 色 無色 沸点 32.0℃ 凝固点 −103.5℃ 液体比重(20℃) 1.24 g/ml 蒸気圧 (25℃,psia) 11.5 飽和蒸気密度(沸点) 4.82 g/l 引火性 なし b 水溶解性( 25℃) 4〜13 g/l オクタノール/水分配係数 2.3 (log Pow) a; Graselli & Ritchey(1975), Hawley(1981), Horrath (1982), Sax(1984), Weast(1985), Solvay et Cie(1989)より b; 21℃から33℃の間で引火点なし;爆発性ないが,蒸気の状態で引火性を有し得る (Solvay et Cie, (1989)の私信による). Millischer(1990)はHCFC 141bを引火性なしと記載


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a物質の同定 (続) 物質名 HCFC 142b 化学式 CClF2-CH3 化学構造

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分子量 100.47 一般名 chlorodifluoroethane その他の名称 a 1-chloro-1,1-difluoroethane; 1,1-difluoro-1-chloroethane; difluoromonochloroethane; HCFC 142b CAS登録番号 75-68-3 換算係数(20℃) ppm→mg/m3 4.1 mg/m3→ppm 0.243 a; 商品名 Arcton, Freon, Genetron, Isotronが、異なった製造業者により、相応する数字を付けて、 使用されている。 b 物理的・化学的特性 (続)a 物理的状態 気体 色 無色 沸点 −9.2℃ 凝固点 −131.0℃ 液体比重 (20℃) 1.123 g/ml 蒸気圧(25℃,psia) 49.2 飽和蒸気密度(沸点) 4.72 g/l 引火性 有り 発火温度 632℃ 引火限界(大気中) 6.0〜14.8 体積% 水溶解性( 25℃) 1.9 g/l オクタノール/水分配係数 1.60 b (log Pow) a; Graselli & Ritchey(1975), Hawley(1981), Horrath (1982), Sax(1984), Weast(1985), Solvay et Cie(1989)より b; Log KowはSRCに引用。(H. Trochimowicz(1991), Haskell Laboratories, C‐57資料)


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a物質の同定 (続) 物質名 HCFC 132b 化学式 CClF2-CH2Cl 化学構造

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分子量 134.92 一般名 dichlorodifluoroethane その他の名称 a 1,2-dichloro-1,1-difluoroethane; HCFC 132b CAS登録番号 1649-08-7 換算係数(20℃) ppm→mg/m3 5.5 mg/m3→ppm 0.181 a; 商品名 Arcton, Freon, Genetron, Isotronが、異なった製造業者により、相応する数字を付けて、 使用されている。 b 物理的・化学的特性 (続)a 物理的状態 液体 色 無色 沸点 46.8℃ 凝固点 −101.2℃ 液体比重 (20℃) 1.42 g/ml 蒸気圧(25℃,psia) 6.1 飽和蒸気密度(沸点) 5.15 g/l 引火性 なし 水溶解性 (20℃) 4.9 g/l a; Graselli & Ritchey(1975), Hawley(1981), Horrath (1982), Sax(1984), Weast(1985), Solvay et Cie(1989)より


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a物質の同定 (続) 物質名 HCFC 133a 化学式 CH2Cl-CF3 化学構造

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分子量 118.49 一般名 chlorotrifluoroethane その他の名称 a 1-chloro-2,2,2-trifluoroethane; 1,1,1-trifluoro-2-chloroethane; 2,2,2-trifluorochloroethane; 1,1,1-trifluoroethylchloride; CFC 133a; HCFC 133a; R‐133a CAS登録番号 75-88-7 換算係数(20℃) ppm→mg/m3 4.92 mg/m3→ppm 0.203 a; 商品名 Arcton, Freon, Genetron, Isotronが、異なった製造業者により、相応する数字を付けて、 使用されている。   b 物理的・化学的特性 (続)a 物理的状態 気体 色 無色 沸点 6.93℃ 凝固点 -105.5℃ 液体比重(20℃) 1.389 g/ml 蒸気圧(25℃,psia) 29.7 飽和蒸気密度(沸点) 5.17 g/l 引火性 なし 水溶解性(25℃) 8.9 g/l a; Graselli & Ritchey(1975), Hawley(1981), Horrath (1982), Sax(1984), Weast(1985), Solvay et Cie(1989)より


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a物質の同定 (続) 物質名 HCFC 123 化学式 CHCl2-CF3 化学構造

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分子量 152.91 一般名 dichlorotrifluoroethane その他の名称 a 1,1-dichloro-2,2,2-trifluoroethane; 2,2-dichloro-1,1,1-trifluoroethane; ethane, dichlorotrifluoro; Fluorocarbon123; HCFC 123; Propellant 123; Refrigerant 123; R‐123 CAS登録番号 306-83-2 換算係数(20℃) ppm→mg/m3 6.25 mg/m3→ppm 0.160 a; 商品名 Arcton, Freon, Genetron, Isotronが、異なった製造業者により、相応する数字を付けて、 使用されている。   b 物理的・化学的特性 (続)a 物理的状態 液体 色 無色 沸点 27.97℃ 凝固点 -107.0℃ 液体比重(25℃) 1.46 g/ml 蒸気圧(25℃,psia) 14 飽和蒸気密度(沸点) 6.38 g/l 引火性 なし 水溶解性(25℃) 2.1 g/l a; Graselli & Ritchey(1975), Hawley(1981), Horrath (1982), Sax(1984), Weast(1985), Solvay et Cie(1989)より


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a物質の同定 (続) 物質名 HCFC 124 化学式 CHClF-CF3 化学構造

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分子量 136.48 一般名 chlorotetrafluoroethane その他の名称 a 1-chloro-1,2,2,2-tetrafluoroethane; 1,1,1,2-tetrafluoro-2-chloroethane; Fluorocarbon 124; HCFC 124 CAS登録番号 2837-89-0 換算係数(20℃) ppm→mg/m3 5.58 mg/m3→ppm 0.179 a; 商品名 Arcton, Freon, Genetron, Isotronが、異なった製造業者により、相応する数字を付けて、 使用されている。   b 物理的・化学的特性 (続)a 物理的状態 気体 色 無色 沸点 -11.0℃ 凝固点 -199.0℃ 液体比重(11.3℃) 1.4 g/ml 蒸気圧(25℃,psia) 61 飽和蒸気密度(沸点) 6.88 g/l 引火性 なし 水溶解性(20℃) 17.1 g/l a; Graselli & Ritchey(1975), Hawley(1981), Horrath (1982), Sax(1984), Weast(1985), Solvay et Cie(1989)より


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 本モノグラフは、エタン中の水素原子がフッ素と塩素原子で部分的に置換されて誘 導された6種のハイドロクロロフルオロカーボン類(HCFCs)を扱っている。この レポートで検討される化合物は、1,1‐ジクロロ‐1‐フルオロエタン(HCFC141b)、 1‐クロロ‐1,1‐ジフルオロエタン(HCFC142b)、1,2‐ジクロロ‐1,1‐ジフ ルオロエタン(HCFC132b)、1‐クロロ‐2,2,2‐トリフルオロエタン(HCFC133a)、 1,1‐ジクロロ‐2,2,2‐トリフルオロエタン(HCFC123)、1‐クロロ‐1,2, 2,2‐テトラフルオロエタン(HCFC124)である。  これらの化合物は、常温、常圧下では、引火性気体(HCFC142b)、非引火性気体 (HCFC133a、HCFC124)、非引火性蒸発性液体(HCFC141b、HCFC132b、 HCFC123)である。それらは無色でその大多数は実際上無臭あるいはかすかなエー テル様の匂い(HCFC141b、HCFC123)を有する。それらは水にはわずかに、ある いは中程度に溶け、多くの有機溶剤と混合する。  これらのハイドロクロロフルオロカーボン類の測定に利用可能の分析法は、フレー ムイオン化および電子捕獲検出器つきガスクロマトグラフィーを含む。大気中の比較 的高濃度はシングル・ビーム光度測定法によりモニターできる。
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2.ヒトおよび環境の暴露の発生源  このモノグラフでレビューされたハイドロクロロフルオロカーボン類は、 天然物としての存在は知られていない。これらの化合物は末端の消費のために、 商業的に大規模には生産されていないため、ヒトへの暴露あるいは環境への放 出は少ない。これら化合物の一部は、全ハロゲン化クロロフルオロカーボン類 (すなわち、CFC11、CFC12、CFC113)の代替品として、将来使用されよう。 HCFC133aおよび142bは他のフッ素化物製造の中間物である。HCFC133aは 麻酔薬ハロタンのin vivo(生体内)の代謝生成物の一種である。 3.環境中の移動・分布・変化  環境中の生分解のデータでは、微生物により容易に は生分解されないことが示されているHCFCs141bおよび142bの研究に限られてい る。オクタノール/水分配係数の情報はほとんどないが、HCFC142bでは2.3であ り、このハイドロクロロフルオロカーボンの生物濃縮はありそうにない。対流圏内で は、これらの化合物は主としてヒドロキシラジカルとの反応により分解される。それ らの大気中の寿命(life‐time)は(メチルクロロホルムの大気中寿命の6.3年であ るのに対し)1.6年(HCFC123)から19.1年(HCFC142b)の間である。(CFC 類の大気中の寿命は、CFC11は75年、CFC12は110年、CFC113は90年である。) これらの化合物のオゾン減少および地球温暖化のおそれは、数値のないHCFC133a を除き、最高のオゾン破壊および地球温暖化作用を有する全ハロゲン化クロロフルオ ロカーボンCFC11の1/10以下である(HCFC142bの地球温暖化作用はCFC11の 約1/3であり、例外である)。 4.環境中濃度およびヒトの暴露  HCFCsの141b、132b、133a、123、124は未だ 大規模の商業生産はされておらず、HCFC142bは中間物としてのみ用いられるので、 これらの物質が環境中へ大量に放出されることはない。従って、環境中濃度あるいは ヒトの暴露に関するデータはない。
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5.実験動物およびヒトにおける体内動態と代謝  レビューしたHCFCs各種について、ヒトの毒性動態について入手し得るデータはない。   5.1 HCFC141b  毒性研究の結果では、HCFC141bの吸収は、呼吸器上皮を通して行われることを 示している。哺乳類におけるHCFC141bの分布についての情報は入手できない。最 近のラットによるin vivoの単回暴露実験において、尿中に2,2‐ジクロロ‐2‐フ ルオロ−エチルグルクロン酸抱合体および2,2‐ジクロロ‐2‐フルオロ酢酸が同定 された。  ラットにHCFC141bの蒸気を暴露させた吸収と代謝の予備実験では、きわめて小 範囲の代謝変化のみが示唆された。    in vitro(試験管内)の実験では、HCFC141bは肝ミクロソームにより限定された 範囲内で脱塩素化されることが示された。   5.2 HCFC142b  HCFC142bの毒性動態についての情報はない。動物毒性実験からは、吸収は起こ ると推論し得る。in vitro実験では、脱塩素化することが示唆された。   5.3 HCFC132b  ラットに対するHCFC132bの腹腔内投与による代謝実験では、尿中に2‐クロロ ‐2,2‐ジフルオロエチルグルクロン酸抱合体、クロロジフルオロアセトアルデヒド (含水結合した)、クロロジフルオロ酢酸が同定された。クロロジフルオロ酢酸の生 成と排泄は動物へのHCFC132bの反復注射後に増加した。ラットの肝ミクロソーム を用いたin vitro実験では、最初のヒドロキシル化の段階でチトクロームP‐450IIEI の関与を示唆した。肝臓タンパク質へのフッ素化代謝生成物の共有結合の証拠は認め られなかった。   5.4 HCFC133a  HCFC133aの毒性動態に関する情報は入手できない。動物の暴露後の吸収につい ては、各種の実験における毒性影響から推定できる。HCFC133aの脱塩素化はin vitroにおいて観察されている。   5.5 HCFC123  HCFC123についての毒性動態のデータは存在しない。しかし、ラットを用いた毒 性研究により全身的影響および尿中フッ化物の増加が見られ、吸収は予測し得る。 HCFC123はラットにおいて、代謝変化を受けることを示している。その代謝の程度 は知られていないが、トリフルオロ酢酸(TFA)は尿中主要代謝生成物として、フッ 化物のほかに同定されている。HCFC123と肝臓タンパク質との共有結合は立証され ている。   5.6 HCFC124  HCFC124の体内動態と代謝についてのデータは存在しない。しかし、呼吸器官内 でのHCFC124の吸収は、吸入毒性実験から推定できるであろう。
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6.実験用哺乳動物およびin vitro(試験管内)試験系への影響 6.1 HCFC141b  HCFC141bの急性経口毒性は低い。ラットへの5g/kgの投与後には毒性の徴候は 観察されなかった。  ラットおよびマウスに対する急性吸入実験では、高濃度暴露では中枢神経(CNS) 抑制・麻酔作用・死亡が認められた。投与に関連する肉眼的あるいは組織病理学的な 影響は観察されなかった。ある研究では、ラットの4時間のLC50(50%致死濃度) は295g/m3、また他の研究では、マウスの2時間のLC50は151g/m3と報告さ れている。ラットにおいて、死亡を誘発する最低濃度は、6時間で242g/m3と報じ られている。  ラットおよびウサギにおける2g/kgの経皮暴露後においては、死亡は見られなかっ た。  暴露範囲が10〜97g/m3の短期吸入実験を90日まで続けても、著しい毒性は観察 されなかった。しかし、体重増加の低下・「軽度の生化学的変化」・中枢神経系の抑 制を含む影響が見られた。無影響量(no‐observed‐effect level)は90日間の実験 では設定できなかった。  実施された2件の研究のうちの1件では、HCFC141bはウサギの皮膚および眼の 刺激の徴候を示さなかった。しかし、第二の研究では、眼に「軽度の」の刺激反応が 観察された。モルモットにおいて、皮膚感作性(訳者注:過敏状態を誘発する特性) は認められなかった。  HCFC141bを用いた二世代生殖実験が現在進行中である。ラットの発生研究では、 胎仔における皮下水腫と出血の出現率および胚死亡が増加したが、母獣への毒性は 97g/m3においてのみ観察された。また、催奇形性は見られなかった。ウサギにおけ る実験では、投与に関連する胚あるいは胎仔の発育への影響は認められなかった。  HCFC141bは細菌のDNA修復試験により変異原性を示さなかったが、他の細菌に よる変異原性テストでは矛盾した結果を生じた。hprt特定座位試験はV79細胞に影 響はなかった。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を用いたin vitroの試験で 染色体異常が観察されたが、これはヒトのリンパ球のin vitro試験では見られなかっ た。2件のマウスin vitro小核試験も陰性であった。  ラットを用いた慢性吸入長期毒性/発がん性実験が進行中である。  HCFC141bは、イヌにおいて、投与されたアドレナリンに対する心臓の増感(訳 者注:感受性を高める)作用を表す。この反応を誘発する最低濃度は、イヌにおいて 24g/m3、サルにおいて48g/m3である。   6.2 HCFC142b  HCFC142bのラットに対する5g/kgまでの単回経口投与は、ごくわずかな毒性の 徴候を示すに過ぎなかった。  ラットに対する525g/m3の4時間の単回吸入暴露は、動物に約50%の死亡をもた らした。より短い暴露時間を用いた他の実験でのLC50(50%致死濃度)値は1, 000g/m3以上であった。  ラットにおける41g/m3の濃度の反復吸入暴露実験(6時間/日、5日/週、90 日間)は、有害な反応は生じなかった。さらに高い用量レベルにおいては、ラットの 死亡は呼吸器の激しい刺激に関連していた。  HCFC142bの皮膚および眼への刺激、あるいは皮膚感作性についての研究報告は ない。心臓感作実験(アドレナリン投与による)を、マウス・イヌ・サルを用いて試 験した。イヌは最も敏感で、NOEL(無影響量)は5分間暴露に対し102.5g/m3 であったが、205g/m3(同じく5分間暴露)では心臓不整脈を誘発した。 C142bを、ラット(1群当り、オス130匹、メス110匹)に対し、4、41、82g/m3 の各濃度に6時間/日、5日/週、104週間まで暴露した1件の長期試験が報告されて いる。血液学・血液および尿の生化学・組織病理学を含む研究項目のいずれにも、暴 露に関連する影響は観察されなかった。また、腫瘍発生については、暴露に関連した 著しい変化は報告されていない。  HCFC142bの生殖に対する影響は、従来の手法では検討されていないが、オスの 授精能力には影響のないことが優性致死性実験において認められた。2件の催奇形性 試験が実施されている。1件の催奇形性試験では、Sprague‐Dawley系ラットが4 および41g/m3に暴露された(妊娠第3〜15日の間、6時間/日)、他の試験では Sprague‐Dawley系ラットが13および39g/m3に暴露された(妊娠第6〜15日の 間、6時間/日)。これらの試験においては、催奇形性の影響は認められなかった。 後者の試験では、両方の投与量で少数の胎仔に骨化作用の減少が観察されたが、前者 の試験においては認められなかった。  HCFC142bは細菌に変異原性を誘発したが、培養哺乳類細胞による遺伝毒性のデ ータは不足している。in vivo試験では、骨髄内の染色体異常の増加あるいはオス・ ラットにおける優性致死性の影響は示されなかった。   6.3 HCFC132b  HCFC132bのラットにおける急性経口毒性は低い。死亡の認められる最低用量は 25g/kgであった。2g/kgの経口投与後、自律神経および中枢神経系の抑制が、運動神 経調整・運動活性・筋肉活動状況への影響と共に観察された。オス・ラットは、肝臓 の腫脹と重量減少が認められた。  HCFC132bの急性吸入毒性の特徴は、高濃度暴露における麻酔作用である。ラッ トにおける4時間の暴露中に、死亡の観察された最低用量は110g/m3であった。マ ウスの30分暴露のLC50(50%致死濃度)は269g/m3であり、麻酔作用は71g/m 3で起こった。ある研究では、オス・ラットにおいて、精巣の重量の減少、肝臓・肺 の重量の増加が33g/m3の6時間の暴露後に観察された。  ラットを用いたHCFC132bの経皮暴露(2g/kg)では、中枢神経系の臨床的徴候と 動物の一部に肝臓の腫脹を生じた。この無希釈の化合物は、モルモットに対し「軽度 の」皮膚刺激を、またウサギの眼に「軽度から中程度の」刺激を発生させた。モルモ ットに対する皮膚感作の証拠はない。アドレナリンに対するイヌの心臓の感作は 27g/m3以上のHCFC132bの吸入により起こった。  オス・ラットのHCFC132bの短期間吸入暴露の重大な影響は、中枢神経系の抑制 のほか胸腺の萎縮と精子形成性への影響である。精子形成性の破壊は、3g/m3以上 の濃度の13週間の暴露後において観察された。その他の影響は、オス・ラットでの 最低暴露濃度(3g/m3)における胆管の増殖および肝臓/体重比の増加が含まれる。 肝臓の影響は、メス・ラットはオスよりも感受性は低いように見える。  HCFC132bは、ラットに対する3〜28g/m3の濃度の、妊娠6〜15日までの期間 の吸入暴露後に胎仔毒性を誘発し、このため胚吸収(resorption)(訳者注:体内に 吸収し、子宮に吸収痕を残す)の発生の増加(11および28g/m3において)、すべ ての暴露濃度における胎仔の体重減少を生じさせた。母獣への毒性は、すべての用量 レベルにおいて認められた。  入手し得る限られたデータに基いた場合、HCFC132bはin vitroの変異原性の証 拠はない。本化合物の発がん性は研究されていない。   6.4 HCFC133a  HCFC133aの急性経口毒性のデータは入手できない。吸入経路による急性毒性は 低く(マウスにおける30分のLC50は738g/m3)、その主な毒性影響は麻酔作 用である。心臓感作・皮膚あるいは眼の刺激・皮膚感作についての情報は入手できな い。  ラットに対する49g/m3の反復暴露(90日間)は、鼻腔部の炎症・肺気腫・肺水 腫・気管支炎・肺炎を生じさせた。胸腺・精巣・卵巣・脾臓の萎縮も観察された。ラ ットおよびイヌに対する約25g/m3の濃度のHCFC133aの反復暴露(ラットは7日 間、イヌでは90日間)では影響は見られなかったが、0.5g/m3以上(2.5g/m3 を除く)に5日間暴露されたマウスでは死亡が認められた。  HCFC133aの生殖に対する影響について、従来手法による試験結果は入手できな いが、オスの授精および精巣の組織病理への影響は、マウスにおける3件の優性致死 実験において認められた。2.5g/m3以上の濃度への5日間の暴露では、妊娠するメ スの減少と異常精子の比例的増加を生じさせ、5g/m3の濃度への暴露は輸精管上皮 の組織病理学的損傷を発生させた。  ラットを用いた実験(妊娠6〜16日に投与)で、軽度の母獣への毒性の徴候を生じ させる暴露濃度において、HCFC133aは2g/m3以上の濃度で胎仔毒性を、また、 10g/m3以上においては胎仔致死性を立証した。妊娠したメスへのプロゲステロン (訳者注:女性ホルモンの一種の黄体ホルモン)の事前投与は、胎仔/致死性に影響 を及ぼすことはなかった。催奇形性作用(肢および尾の外見上の異常)の誘発は1件 の実験で見られた。HCFC133aは、妊娠7〜19日におけるウサギへの、ごく軽度の 母獣への毒性を示す25g/m3の暴露では、自然流産と胎仔全数の死亡を発生させた。  入手し得る研究結果からは、細菌に対する変異原性の証拠はない。1件の実験では、 形質変換コロニーを生成するハムスターの腎臓細胞に比例した増加は見られなかっ た。オス・マウスに対する12g/m3以上の濃度の少なくとも5日間の暴露後におけ る優性致死作用は、3件中2件の実験で観察された。骨髄細胞の染色体異常試験は、 ラットに対し98g/m3(6日/週、5日間まで)への暴露による影響は受けなかった。 1件の発がん性実験では、強制経口によりコーン・オイル中の300mg/kgを52週間 投与されたラットにおいて、子宮腺がんおよび精巣の良性の間質細胞腫瘍の発生率の 増加が認められた(この結果は、73週間の観察期間により見出された)。   6.5 HCFC 123  HCFC123は、低い急性経口毒性および皮膚毒性を有する。ラットにおいて死亡を 生じさせるHCFC123の最低経口用量は9g/kgと報告されている。2g/kgの用量レベ ルにおいては、ラットおよびウサギに死亡は見られなかった。  HCFC123の急性吸入毒性も低い。その影響は、クロロフルオロカーボン類におけ る協調運動障害と麻酔作用に似ている。4時間のLC50は、ハムスターで178g/m 3、マウスで463g/m3、ラットにおいては200〜329g/m3である。アドレナリン 注射の ”challenge" (訳者注:実験動物に反応を起こさせるための被験物質の投与) の後における心臓感作は、イヌにおいて119g/m3以上において起こった。液体 HCFC123は、ウサギの皮膚と眼に「軽度の」刺激を生じさせたが、モルモットに皮 膚感作は発生させなかった。  HCFC123について、吸入経路を用いた数件の短期毒性試験が実施されている。濃 度31g/m3以上において、ラットでは中枢神経系抑制の徴候が一貫して観察された。 HCFC123は、31g/m3以上の暴露で、ラットにある程度の肝臓への影響も発生させ た。HCFC123への長期暴露(4週間以上)も、ラットにおける血清トリグロセライ ド・コレステロールおよびグルコース濃度の一貫した減少を反映し、脂質および炭水 化物の代謝に影響を及ぼした。現在実施中のラットにおける慢性吸入毒性/発がん性 試験からの中間結果は、HCFC123は、2、6および31g/m3の長期暴露後に影響の 誘発が示されている。この試験では、脂質代謝および肝臓ペルオキシソーム(訳者注: 微小体ともいい、細胞器官の一つ)活性の増強に基く無影響量(NOEL)は記録され ていない。  ラットの吸入暴露による二世代生殖試験は、HCFC123について現在実施中である。 ラットによる2件の限定された試験では、軽度の母獣への毒性を形成する濃度におい て胎仔毒性の証拠は見られなかった。ウサギでは、重度の母獣への毒性を示す濃度(62. 5g/m3以上)においてのみ胎仔毒性の証拠が存在する。母獣への毒性(体重減少、 中枢神経系抑制)はラットの31g/m3以上の濃度において、またウサギでは3g/m3 以上で認められた。催奇形性の証拠は、ラットあるいはウサギのいずれにおいても見 られなかった。  HCFC123は、細菌およびイースト(酵母)による試験で変異原性の証拠を示さな い。しかし、in vitroのヒトのリンパ球における染色体異常誘発作用の証拠が存在す る。しかし、この知見はin vivoのマウスの小核試験からのデータでは確認されなか った。  ラットについての総合的な慢性吸入毒性/発がん性実験が進捗中である。予備的な 報道では、HCFC123はオスのラットにおいて、精巣の良性腫瘍の発生率と膵臓外分 泌の増加を示した。しかし、HCFC123の発がん可能性については、完全な結果が入 手できるまでは評価できない。   6.6 HCFC 124  HCFC124の動物急性吸入毒性は低い。死亡は、ラットは1,674g/m3(240分間 暴露)、マウスは2,460g/m3(10分間暴露)で発生した。その影響は、クロロフ ルオロカーボン類に特有の協調運動障害および麻酔作用である。アドレナリン注射に よる心臓の感作は、イヌに対して140g/m3以上で起こった。本化合物の皮膚あるい は眼の刺激、皮膚感作についての情報は入手できない。  短期吸入毒性は、ラットを用い5件の実験で14〜90日間の試験期間により検討さ れた。臓器の組織病理学的変化は、実験された最高濃度の暴露(560g/m3の14日間、 279g/m3の90日間の実験)においても観察されなかった。28g/m3のNOEL(無 影響量)が、90日間の機能観察と血液化学測定に基づいて報告されている。  HCFC124の慢性吸入毒性試験は進捗中である。  ラットによる限定された3件の催奇形性試験において、HCFC124は30g/m3と3 〜279g/m3で試験されたが、胎仔毒性あるいは催奇形性の証拠はなかった。また、 母性毒性は84g/m3において証明された。HCFC124の生殖に関する影響の情報は入 手できない。完全な催奇形性試験は進捗中である。  数件の細菌試験による唯一の哺乳類細胞試験よりのデータが入手でき、それらは HCFC124の変異原性の証拠を示していない。吸入発がん性試験は実施中である。
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7.ヒトへの影響  HCFC141b、HCFC132b、HCFC133a、HCFC123、HCFC124 のヒトに対する影響のデータは入手できない。  ヒトがHCFC142bに職業的に暴露された唯一の研究データでは、そのヒトへの影 響は、他の多くの物質の暴露と独立して評価するわけにはゆかない。 8.実験室および自然界における他の生物への影響  レビューされたハイドロクロロ フルオロカーボン類の環境中の生物への影響についての情報は、HCFC141bおよび HCFC142bについての限定されたデータ以外は入手できない。HCFC141bのゼブラ フィッシュに対する96時間のLC50(50%致死濃度)は126mg/l、Daphnia magna の遊泳阻害試験の48時間のEC50(50%影響発現濃度)は31mg/lであり、両者 とも閉鎖容器内で観察された。HCFC142bの場合は、グッピーの92時間のEC50 は220mg/lであるのに対し、ミジンコの遊泳阻害試験に対する48時間のEC50は 160〜190mg/l以上の間を変化する。HCFC142bのニジマスに対する96時間のLC 50は36mg/lである。 9.評価および結論  レビューした6種のHCFCsの環境中濃度は知られていないが、 現在の使用パターンに基づいた場合には低いと見なされている。  HCFC142bの潜在的毒性は低いが、事故以外の暴露状況下では、ヒトの健康に著 しいリスクをもたらすとは考えられない。HCFC141b、HCFC123、HCFC124の毒 性情報は不完全であり、ヒトの健康の有害性を評価し得る前に、さらにデータが必要 である。HCFC133aおよびHCFC132bはヒトの健康に危険性をもたらす。  ここでレビューされた6種類のハイドロクロロフルオロカーボン類は、全ハロゲン 化クロロフルオロカーボン類と比較し、オゾン層破壊の可能性はより低く、大気中で の滞留時間はかなり短い、あるいはそのように推定される。従って、これらの間接的 健康リスクは、より低いであろう。これらの地球温暖化作用は、全ハロゲン化クロロ フルオロカーボン類よりも低いと推定され、地球温暖化への著しい寄与はないであろ う。  HCFC142bの毒性は低く、オゾン層破壊および地球温暖化の可能性は全ハロゲン 化クロロフルオロカーボン類よりも少ないため、モントリオール議定書に含まれるク ロロフルオロカーボン類の一時的な代替品と見なすことができる。  HCFC141b、HCFC123、HCFC124に対しては、さらに毒性データが入手できる までは勧告は作成できない。HCFC133a、HCFC132bは、環境と間接的健康リスク は低いが、それらの毒性のため、モントリオール議定書に含まれるクロロフルオロカ ーボン類の代替品として推奨はできない。
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10.結  論  入手した情報に基づき、タスク・グループは次の結論に達した。   1. レビューした6種の全てのハイドロクロロフルオロカーボン類は、低い急性毒性 を有し、その主な毒性徴候は中枢神経系の抑制である。しかし、事故による過 剰暴露により急性中毒あるいは死亡事例をも発生させ得る。 2. これらの化学物質類は、反復暴露後には種々の異なる毒性の可能性をあらわ す。 3. HCFC141bは、動物において反復暴露による毒性の可能性は低く、発生段階への 影響は一定せず、また変異原性を示さない。in vitro(試験管内)試験系での HCFC141bの変異原性の有無については明確には判定できない。慢性毒性/発が ん性評価の情報は未だ入手できない。 4. HCFC142bも、反復暴露による毒性の可能性は低い。少数のデータベースは、 HCFC142bは発生段階およびオスの授精能力に影響のないことを示している。 HCFC142bは細菌試験においては変異原性が認められた。しかし、ラットにおい ては変異原性あるいは発がん性は示さなかった。 5. HCFC132bは、動物における反復暴露後に毒性を示した。それは動物の発生段階 に影響を及ぼすが、試験は母体毒性が認められる用量でのみ行われた。生殖に 関する試験は実施されていないが、反復暴露後に精子形成作用への障害が組織 病理学的に認められた。また、in vitroで変異原性を示さなかったが、in vivo (生体内)での試験は行われていない。発がん性についてのデータは存在しない。 6. HCFC133aは、動物における反復暴露後において毒性を示し、ある範囲の影響を 発生させる。これは、動物の生殖および発生段階に重大な影響を及ぼす。変 異原性についてin vivoのデータは不明確である。また、ラットの発がん物質で ある。 7. HCFC123はラットに対する反復暴露により、肝毒性および脂質・炭水化物の代謝 への影響を誘発する。発生段階への影響は、母体毒性を示す高濃度の暴露にお いてのみ発生した。生殖への影響についての情報は入手できない。HCFC123は in vitroで染色体異常誘発性を示したが、動物において認められてない。ラッ トにおける発がん性の完全な情報は未だ入手できない。 8. HCFC124は反復暴露において低い毒性を示す。少数のデータベースによれば、 発生段階への影響の証拠はない。生殖毒性の可能性あるいは発がん性の情報は 入手できない。これはin vitroでは変異原性を示さないが、in vivoの試験は実 施されていない。 9.ここでレビューされたハイドロクロロフルオロカーボン類(数値のない HCFC133aを除くが、それは他のレビューされたものと類似した数値をもつと考 えられる)は、全ハロゲン化クロロフルオロカーボン類よりもオゾン層破壊能 力は低く、従って間接的な健康リスクはより低いであろう。 10. HCFC141b、HCFC142b、HCFC123、HCFC124の地球温暖化作用は、全ハロゲン化ク ロロフルオロカーボン類より何れも同程度低い。HCFC132bあるいはHCFC133aの データは入手できないが、これらはレビューされた他のハイドロクロロフルオ ロカーボン類と類似の数値をもつと推定される。これらの化合物は地球温暖 化に大きく寄与するとは考えられない。
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11.ヒトの健康と環境の保護のための勧告   1. HCFC142bの毒性は低く、オゾン層破壊および地球温暖化の可能性は全ハロゲン      化クロロフルオロカーボン類よりもかなり低いため、HCFC142bはモントリオー      ル議定書に含まれるクロロフルオロカーボン類の過渡的な代替品と見なすこと      ができる。しかし、1990年のモントリオール議定書締約国ロンドン会議の結論      に沿って、環境にリスクを与えない代替品と代替技術の開発に努力すべきであ      る。また、HCFC142bの使用においては、その引火性に留意すべきである。   2. HCFC141b、HCFC123、HCFC124のヒトの健康への危険性を評価する前に、これら      の毒性作用についての情報がさらに必要とされるため、現時点では、モントリ    オール議定書に含まれる全ハロゲン化クロロフルオロカーボン類の暫定的代替 品としての使用については推奨はできない。 3. HCFC133aおよびHCFC132bは環境に低いリスクを与えるため、モントリオール議 定書に含まれるクロロフルオロカーボン類の代替品としては推奨できない。 4. ここでレビューされたハイドロクロロフルオロカーボン類のすべては、ある 程度のオゾン層破壊のおそれを持っているため、これらの環境中への放出は最 小限にすべきである。
Last Updated :24 August 2000 NIHS Home Page here