環境保健クライテリア 118
Environmental Health Criteria 118

無機水銀 Inorganic Mercury

(原著168頁,1991年発行)

作成日: 1997年2月24日
はじめに
1. 物質の同定
2. 物理的・化学的特性
3. 分析方法
4. ヒトおよび環境の暴露源
5. 用途
6. 環境中の移動・分布・変質
7. ヒトの暴露
8. 体内動態および代謝
9. ヒトにおける影響
10. 今後の研究に対する勧告
11. 国際機関によるこれまでの評価

→目 次


はじめに 

  本モノグラフは、主として無機水銀のヒトの健康に及ぼすリスクに焦点をしぼり、
環境保健クライテリア1:水銀(WHO,1976)の発行以降に発表された研究報告を
検討した。1976年以降の期間においては、無機水銀に関連して2件の健康問題、す
なわち歯科用のアマルガム(訳者注:水銀と他の金属との合金)と皮膚漂白用石けん
についての新しい研究データが入手できるようになった。本報告では、これら2件の
発生源からの暴露に重点を置いたが、無機水銀のすべての面に留意してその基礎的動
態と毒性学についてレビューした。
 無機水銀の地球上での移動・生物濃縮・変換に関連するヒトの健康問題のほとんど
は、水銀化合物のメチル水銀への変換と、水産物およびその他の食品中のメチル水銀
への暴露から発生している。本モノグラフにおいては、無機水銀の地球環境および生
態学の局面を要約している。さらに詳細な内容については、環境保健クライテリア
86:水銀−環境面からの検討−(WHO,1989)(本書3頁抄訳参照)および環境保健
クライテリア101:メチル水銀(WHO,1990)において見出されるであろう。

1.物質の同定
 水銀は、Hg0(金属)、Hg2++(第一水銀)、Hg++(第二水銀)の3種類の状態で存在する。
これらは有機金属化合物類の生成が可能で、その一部は工業用および農業用に用いられている。

2.物理的・化学的特性

a 物質の同定

元素記号           Hg
原子番号           80
原子量             200.59
CAS登録番号        7439-97-6
換算係数           1 ppm = 1 mg/kg = 5 μmol/kg
                   1 molクレアチニン = 113.1 g クレアチニン
 
b 物理的・化学的特性

比重(20℃)       13.456
蒸気圧(20℃)     0.16 Pa(0.0012mmHg)
大気中飽和濃度(20°C)     約15 mg/m3

 元素としての水銀はきわめて高い蒸気圧を有する。20℃における飽和ガス体では、
現在の職業上暴露の許容濃度の200倍以上の濃度を示す。
 水中での溶解性は、水銀元素<塩化第一水銀<塩化メチル水銀(U)<塩化第二水
銀の順である。水銀元素およびアルキル水銀類のハロゲン化合物は、非極性溶媒中で
溶解する。
 水銀蒸気は蒸留水中ではわずかに溶解するが、血漿・全血・ヘモグロビン中での溶
解性の方が高い。その有機金属化合物類は安定しているが、その一部は生物により容
易に分解される。



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3.分析方法  総水銀量および無機水銀化合物類の定量に最も一般的に用いられる分 析方法は、冷却蒸気の原子吸光法(CVAA)と中性子放射化分析法である。分析方法 に関する詳細の情報は、環境保健クライテリア1:水銀(WHO,1976)、環境保健 クライテリア101:メチル水銀(WHO,1990)に示されている。  水銀のすべての分析手法には、注意深い精度管理(quality control)と精度保証 (quality assurance)が必要とされる。    3.1 分析・サンプリング・尿の保存  無炎原子吸光分析法は各種媒体類の定常的な分析に用いられる。水銀化合物類によ る汚染を避けるため、血液採取時に用いる抗凝固剤の選定には、特別に注意しなけれ ばならない。細菌の増殖は媒体中に存在する種々のかたちの水銀濃度の数値を変化さ せるため、尿の採取と保存にも特別の注意を払わねばならない。塩酸あるいは殺菌剤 類の添加と試料の凍結は、尿サンプルの変化防止に最良の方法である。尿比重あるい はクレアチニン含量による濃度の補正が推奨される。    3.2 空気の分析と採取  空気中の水銀の分析方法は、直読法と、サンプリングと分析段階を分離した方法に 分かれる。直読方式は水銀元素蒸気の定量に用いることができる。酸−酸化媒体中あ るいはホプカライト法(訳者注:気体中の一酸化炭素定量法の一種)によるサンプリ ングは総水銀量の定量に用いられる。  冷却蒸気原子吸光(CVAA)の手法は最も頻繁に用いられる分析方法である。
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4.ヒトおよび環境の暴露源  4.1 天然の存在  水銀の主な天然の産出源は、地球の地殻らのガスの噴出、火山からの排出、天然 の水からの蒸発である。  天然の排出量は、1年に2,700〜6,000トン程度である。   4.2 人間の活動による発生源  世界における水銀の採鉱は、年に約10,000トンの産出量と推定されている。これ らの活動では、水銀の一部のロスと大気への直接放出が生じる。その他の重要な発生 源は、化石燃料の燃焼・金属硫化鉱石の製錬・金の製錬・セメント生産・廃物の焼却・ 金属類の工業的適用である。  塩素アルカリ工場において、苛性ソーダを1トン製造する際の水銀の正常な排出量 は約450gである。  人間活動による水銀の大気への放出量は、世界で3,000トン/年と推定されてい る。 5.用途  水銀の主な用途は、塩化ナトリウムの電気分解の陰極としてである。生成 される化学物質類は水銀で汚染されるため、これらの他の工業活動への使用は他の産 物の汚染をもたらす。水銀は電子工業で、また家庭や工場の制御機器に、さらに実験 室および医療機器に用いられている。ある種の治療用薬剤には無機水銀を含んでいる。 非常に大量の水銀が金の抽出に用いられている。  歯の充填に用いる歯科用銀アマルガムは、合金粉末(銀・スズ・銅・亜鉛)と混合 され(1:1の比率で)、大量の水銀を含有している。銅アマルガムの大部分は小児 歯科で用いられ、70%までの水銀と30%までの銅を含有している。  一部の皮膚の黒みがかった人々は、皮膚を白く見せるために水銀含有のクリームや 石けん類を使用している。これらの製品の販売は、欧州経済共同体、北米、多くのア フリカ諸国において禁止されているが、水銀含有の石けんは欧州の数か国において現 在でも製造されている。この石けんは3%までのヨウ化第二水銀を、またクリームは アンモニア水銀(10%までの)を含んでいる。
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6.環境中の移動・分布・変質  排出された水銀蒸気は溶解性の構造に変換され、雨 水により土壌および水中に蓄積される。大気中における水銀蒸気の残留期間は3年ま でで、一方、溶解性の構造の水銀の残留期間はわずか数週間である。  水銀が無機からメチル化の構造へ変化するのは、水生生物による濃縮過程の最初の 段階である。この変化は、酵素作用なしでも、あるいは微生物作用がなくても起こり 得る。メチル水銀は、生物濃縮を起こす食肉性動物種の食物連鎖に入る。 7.ヒトの暴露  一般集団は主として食餌および歯科アマルガムを通して水銀に暴露 される。毎日の水銀の取り込みは、空気および水の中の濃度に依存し、大きく寄与す る。魚類は、ヒトのメチル水銀暴露の主要な発生源である。最近の実験的研究によれ ば、水銀は口内のアマルガム修復個所から蒸気として放出されることを示している。 この水銀の放出率は咀嚼により増加する。数件の研究では、歯科アマルガム充填の数、 あるいはアマルガム修復面、ヒトの死体解剖からの組織中および血液・尿・血漿サン プル中の水銀含有量に関連するものであった。アマルガムからの水銀の取り込み推定 量と、観察された水銀の蓄積の双方は、実質的に個人的な変動を示した。従って、歯 科アマルガムによる補綴治療の際の、ヒトの生体による水銀の放出と取り込みの正確 な定量的推測は困難である。  ヒツジによる実験的研究では、アマルガム補綴部位から放出された水銀の分布につ いてより詳細に検討された。  皮膚漂白用石けんおよびクリーム類の使用は、実質的な水銀暴露を起こすことがあ り得る。  無機水銀への職業的暴露について、塩素アルカリ工場・水銀鉱山・温度計製造所・ 製錬所・歯科診療所において検討されてきた。水銀濃度は作業環境条件により変わる が、これらのすべての職業上暴露において高濃度が報告されている。
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8.体内動態および代謝  ヒトおよび動物の双方の研究結果では、吸入された金属水 銀の約80%が体内に滞留する一方、液体水銀の胃腸管からの吸収は少ない(1%以 下)。吸入された無機水銀のエアロゾルは呼吸器官に蓄積・吸収されるが、その比率 は微粒子サイズに依存する。無機水銀化合物は、ヒトの胃腸管から平均して10%以 下が吸収されるようであるが、大きな個人差が存在する。新生仔ラットにおける吸収 はずっと高い。  水銀蒸気あるいは無機水銀化合物類の投与(動物の身体負荷の50〜90%)後にお ける主要な貯蔵場所は腎臓である。マウスおよびサルの水銀元素の吸入後においては、 水銀として同等量の静脈注射の場合より著しく多い水銀が脳に運ばれる。ヒトの血漿 の赤血球比率は、第二水銀よりも水銀元素の投与後の方が高く(≧1)、より多くの 水銀が胎盤関門を通過する。投与された2価の水銀のごく小部分がラットの糞中に入 る。  いくつかのかたちの代謝変換が起こる。  ・金属水銀の2価水銀への酸化  ・2価水銀の金属水銀への還元  ・無機水銀のメチル化  ・メチル水銀の2価無機水銀への変換  金属水銀蒸気の2価イオン水銀への酸化は、水銀元素の血液−脳関門・胎盤・その 他の組織の通過を阻止するほど早くない。これらの組織内の酸化は、水銀を保持する ためのトラップとして役立ち、脳内および胎児組織内の蓄積をもたらす。  2価水銀の金属水銀への還元は動物(マウスとラット)とヒトの双方において立証 されている。メチル水銀を含む有機水銀類の分解も、第二水銀の発生源である。  水銀元素の一部は呼吸で吐き出されるが、糞および尿の経路は、ヒトにおける無機 水銀排出の主要経路である。減少のひとつのかたちとして、母親の水銀の胎児への移 動がある。  吸収された水銀の大部分は数日あるいは数週間存続するだけであるが、一部の水銀 に対する生物学的半減期は非常に長く、おそらく数年におよぶであろう。このように 長い半減期は動物実験およびヒトにおいて観察されている。水銀と、セレンを含む他 の元素との間には複雑な相互作用が存在する。セレン錯体の生成は一部の水銀の長い 半減期が原因であろう。    8.1 参照データおよび正常値  死亡した鉱山作業者からの限られた情報によれば、暴露中止の数年後の脳内水銀濃 度は数mg/kgで、脳の一部にはさらに高い数値が示された。しかし、この分析には 精度管理を欠くため、これらのデータは不明確である。水銀中毒の症状がなく、死亡 した少数の歯科医の例では、水銀濃度は後頭葉皮質において極めて低濃度から数百μ g/kgまで、また下垂体では約100μg/kgから数mg/kgまでの間を変化した。  職業的暴露がなく、アマルガム充填数の異なる被験者においては、アマルガム修復 面が中程度の数(約25個所)の場合には、脳内水銀濃度の平均増加量は約10μg/kg と見られる。これに相当する腎臓内での増加の極めて少数の分析では、おそらく300 〜400μg/kgであろう。しかし、個人間における変動は無視できない。  尿および血中の水銀濃度は、その暴露が最近のことで比較的一定で長期の場合には、 グループとしての指標に用いることができる。最近のデータは、環境保健クライテリ ア1:水銀(WHO,1976)で引用したものより信頼できる。約50μg/gクレアチ ニンの尿中濃度は、水銀気中濃度約40μg/m3の職業的暴露の後と見られる。この 尿と気中濃度の相関性(5:4)は、WHO(1976)により推定された3:1よりもず っと低い。この差異の一部は気中暴露評価のためのサンプリング手法が異なることに より説明されるであろう。40μg水銀/m3空気の暴露は、水銀約15〜20μg/l血液 に相当する。しかし、メチル水銀暴露からの干渉は、血液分析による無機水銀の低濃 度暴露の評価を困難にするであろう。この問題を解決する一つの方法は、血漿中の水 銀の分析あるいは無機とメチルの両方の水銀を分析することである。メチル水銀から の干渉の問題は、メチル水銀は尿中にはごく少量しか排泄されないため、尿分析では ずっと小さいであろう。
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9.ヒトにおける影響  水銀蒸気への急性吸入暴露は、胸痛・呼吸困難・咳・喀血を 続発し、時には間質性肺炎を起こして死に至る。水銀化合物の摂取、特に塩化第二水 銀の場合には、潰瘍性の胃腸炎・急性尿細管壊死を生じさせ、透析を利用できないと 無尿症による死を招く。  中枢神経系は、水銀蒸気暴露の重要な器官(critical organ)(訳者注:標的臓器) である。亜急性暴露は、譫妄(訳者注:一時的精神錯乱)・幻覚・自殺的傾向を特徴 とする精神的反応を引き起こす。職業的暴露は広範囲の機能障害を主な特徴とする神 経性興奮を生じさせる。暴露の継続により、初期には手の細かい振戦(ふるえ)を発 症する。軽症の場合には、暴露からの配置転換後の数年間に神経性興奮とふるえは 徐々に退行する。水銀暴露作業者においては、神経伝達速度の低下が立証されている。 長期低濃度暴露は、それほど顕著でない神経性興奮と関連している。  水銀中毒の症例において、脳内の水銀濃度について入手し得る情報はきわめて少な く、無影響量あるいは用量−反応曲線は推定できない。  水銀の尿中排泄濃度100μg/gクレアチニンにおいては、水銀中毒の古典的な神経 学的特徴(震顫・神経性興奮)の発現とタンパク尿発症の確率は高い。水銀30〜100 μg/gクレアチニンに相当する暴露は、明らかな臨床上の障害には至らない程度の、 さほど重篤ではない有害影響の発生率を増加させる。電気生理学的に記録された震顫 についての少数の研究では、尿中における低濃度(25〜35μg/g以下のクレアチニ ン)が観察された。しかし他の研究では、このような影響は示されなかった。暴露さ れた人々の一部では、タンパク尿(低分子量タンパクとミクロアルブミン尿)を発症 した。水銀30〜50μg/gクレアチニン以下に相当する暴露濃度を対象とした適切な 疫学研究は入手できない。  一般集団への暴露は総じて低いが、時には職業的暴露にまで上昇し、有害性を示す ことさえある。従って、液体水銀の誤った取り扱いは重篤な中毒を発生させている。  無機2価水銀塩の摂取による重要な臓器は腎臓である。金属水銀への職業的暴露は、 水銀中毒の別の証拠を有する作業者および証拠のない人達の双方において、タンパク 尿の発症に関連を持っていた。それほど一般的ではないが、職業的暴露は腎炎の症状 を続発し、それは無機水銀を含む皮膚漂白用クリームの使用後や、偶発的な暴露後に おいてさえ起こった。最近にいたるまで、元素水銀蒸気の腎臓に対する影響は、中枢 神経系からの徴候や症状が発現する場合よりも高い用量においてのみ報告されてき た。しかし、新しい研究は、より低濃度暴露における腎臓の影響を報告している。動 物を用いた実験的研究では、無機水銀はテストしたすべての動物種において自己免疫 性糸球体腎炎の誘発を示したが、すべての系統での誘発は見られず、この事象は遺伝 的素因を示している。免疫学的に感受性の高い個人のグループについての用量−反応 研究がない状況下において、免疫学的病因により水銀に関連した症状の発現(個々の 症例で)のない水銀濃度(血中および尿中の)を設定することは科学的に不可能であ る。  金属水銀蒸気および水銀化合物の双方は接触皮膚炎を発生させる。水銀製剤は、小 児のピンク病(Pink disease)(訳者注:先端疼痛症)の発生の原因とされてきた、 また、水銀蒸気暴露は川崎病(Kawasaki disease)(訳者注:急性熱性皮膚粘膜リン パ節症候群)の一因であろう。一部の研究では、月経周期および、または胎児発育へ の影響が報告されている(他の研究ではそのような報告はない)。発表された標準的 な疫学研究においては、水銀蒸気が月経周期あるいは胎児の発育に有害影響を与える か否かについては、よく知られた水銀中毒の徴候がないため、疑問のまま残されてい る。  最近になって、歯科用アマルガムの安全性について激しい議論が戦わされ、アマル ガムの水銀は重篤な健康への危険を生じさせる、との主張がなされた。種々の異なっ た症状および徴候を述べたが報告が出されているが、少数の疫学研究のため確定的で はない(inconclusive)。
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10.今後の研究に対する勧告   今後の研究には次の領域が必要である。  1. 生物学的試料中の少量の水銀の特定のためのマイクロ技術の開発および分析 精度保証の技術を含む、低濃度暴露における異なる化学構造の水銀の暴露量の測定。  2. 時間・食餌・技術的および生理学的条件に関連したアマルガム修復個所から の放出水銀の薬物動態と、特に感受性の高い個人(部位の粘液の反応・口腔内の電気 化学的測定・免疫毒性など)を確認する試験の開発。  3. 医薬品および化粧品への水銀の使用。  4. 動物およびヒトの双方における、セレンとの相互作用を含む各種の構造の水 銀の結合・生物変換(訳者注:生体内変化)・輸送。  5. 水銀の胎盤を介しての移動、胎児臓器中での特徴的な分布、胎児毒性、神経 学的行動への作用に重点を置いた発生段階の影響。  6. 職業的に暴露された集団(歯科医その他)における神経学的行動への影響に ついての研究。  7. 一般集団中の糸球体腎炎誘発における水銀の役割の疫学的研究。  8. 被験者の症状の有無にかかわらず、低用量の水銀暴露における免疫学的影響 および高感受性。  9. 脳腫瘍、特に神経膠芽腫(訳者注:急速に増殖する大脳半球白質の悪性腫瘍) と水銀暴露との症例−対照研究。  一般集団に対する水銀含有の医薬品および化粧品への暴露を減少させるための方 法を推進すべきである。 11.国際機関によるこれまでの評価  無機水銀化合物によるヒトの健康へのリスクは、 以前に環境保健クライテリア1:水銀(WHO,1976)において評価された。国際化 学物質安全性計画(IPCS)によるさらに最近の評価では、主としてメチル水銀暴露 の健康リスクを取り上げた(WHO,1990)。無機水銀の職業上の健康リスクのレビ ュー(WHO,1980)および水銀の環境的側面のIPCSレビュー(WHO,1989)が 発行されている。健康に基づいた金属水銀蒸気の職業的暴露限界は水銀25μg/m3 空気(時間荷重平均、長期暴露)および水銀500μg/m3空気(ピーク値、短期暴 露)が勧告されている(WHO,1980)。無機水銀化合物の長期暴露の同等値は水銀 50μg水銀/m3空気(時間荷重平均)である(WHO,1980)。また、個人の尿中 最高水銀濃度も50μg/gクレアチニンが勧告されている(WHO,1980)。  各国の国家機関および欧州共同体においては確立された規制基準は、国際有害化学 物質登録制度(International Register of Potentially Toxic Chemicals):IRPTC) のデータ・プロフィル(IRPTC,1987)に要約されている。
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Last Updated :24 August 2000 NIHS Home Page here