環境保健クライテリア 85
Environmental Health Criteria 85

鉛 Lead - 環境面からの検討 -

(原著106頁,1989年発行)

更新日: 1997年1月7日
1. 要約および結論
1.1物質の同定,物理的・化学的特性および汚染源

1.2 生物類における取り込み・喪失・蓄積
1.3 微生物類に対する毒性
1.4 水生生物類に対する毒性
1.5 陸生生物に対する毒性
1.6 野外における毒性影響
2. 評価
2.1一般的考察

2.2 水生環境
2.3 陸生環境

→目 次


はじめに
  化学物質によってもたらされる脅威の評価について、毒性学者(toxicolo‐
gist)と生態毒性学者(ecotoxicologist)との間のアプローチには、根本的な差異
が存在する。毒性学者の関心はヒトの健康と福祉であるため、個人の機能あ
るいは生存に対する究極的な悪影響があるか否かの問題に占められている。
これとは対照的に、生態毒性学者は、主として、環境中における生物の個体
群レベルの維持に関心をもっている。毒性試験において、それらの影響が
最終的に個体数に影響を及ぼす場合には、彼は個体の機能(performance)す
なわち生殖および生存への影響に関心をもっている。彼にとって、それらが
生殖・成長・生存に及ばないならば、汚染物質のささいな生化学的および生
理学的影響は的はずれなのである。
  本モノグラフの目的は、生態毒性学者の視点を取り入れ、環境中の生物の
個体数への影響を検討することである。鉛化合物のヒトの健康への影響を検
討する新しい「環境保健クライテリア」が作成中であるため、本資料ではヒ
トの健康影響への結論との関連づけは試みられなかった。そのため重点は、
当然、環境中での持続性と生物濃縮に置かれた。これらは、ヒトによる鉛
の摂取に密接な関係を有するであろう。
  本文書は、文献類の十分な検索に基づいているが、すべての資料について
徹底した検討を加えたわけではなく、簡潔に保つため、鉛が環境にもたらす
リスクの評価において不可欠と見なされるデータのみを包含した。環境中の
鉛の濃度の数値や特定の生物の種類はそれらが特別な毒性を示さない限り含
まれていない。鉛の存在と観察された影響との間の因果関係が明確には証明
されない「スナップ・ショット」(訳者注:一時点における、の意)の濃度デ
ータは除外された。
  生物濃縮という用語は、生物が環境中あるいは食物中に見出されるよりも
高濃度を形成する化学物質の取り込みを意味する。「生物濃縮係数」は、
生物濃縮を表す定量的方法で、生物申の化学物質濃度と、環境あるいは食物
中の濃度との比である。本資料において、生物濃縮は食物連鎖による化学物
質の進行性の蓄積を意味する。


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1. 要約および結論
1. 1物質の同定、物理的・化学的特性および汚染源
2. a物質の同定 元素記号Pb 原子番号82 原子量207.19 CAS登録香号7439-92-1 b物理的・化学的特性 融点327.5℃ 沸点(1気圧)1740℃ 比重11.34 天然の同位体208,206,207,204(存在量順) 鉛は、青みを帯びた、あるいは銀白色の柔らかい金属である。その硝酸塩、塩素酸塩、およびはるかに少ない量の塩化物を除き、その塩類は水にわずかにしか溶けない。またその程度は、鉛は安定した有機化合物をも生成する。テトラエチル鉛(四エチル鉛)、テトラメチル鉛(四メチル鉛)は燃料添加剤として広く用いられている。両者とも揮発性で水への溶解性は低い。トリアルキル鉛の分解物として環境中で生成される。これらのトリアルキル化合物の揮発性はより低く、水に容易に溶ける。鉛は、 通常は、その大部分が硫化物の方鉛鉱(galena)として採鉱される。その環境 汚染は、鉛の精錬および精製、鉛添加物を含む石炭燃料の燃焼、またその量 は少ないが、他の金属の溶解、石炭およびオイルの燃焼を通じて発生する。 猟銃の弾薬よりの金属鉛あるいは環境中で紛失された釣の錘りは、しばしば 生物体内に残存する。
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1.2 生物類における取り込み・喪失・蓄積 環境中の鉛は、堆積物および土壌に強く吸着され、生物による利用は少な い。鉛の塩類は大部分が低溶解性のため、鉛は複雑な溶液中では沈澱する傾 向がある。 1.2.1生態系モデル 水生および陸生生態系モデルにおいて、主要な生産者および消費者による 取り込みは、鉛の生物学的利用能により決定されるように見える。生物学 的利用能は、有機物質、堆積物、金属微粒子(例えば、粘土)などが存在する 場含には、一般にはずっと低い。多くの生物においては、生物により吸着さ れ、あるいは実際に取り込まれるかどうかは明らかではない。(生態系にお ける)消費者は、汚染された食餌から鉛を取り込み、それはしばしば高濃度 に達するが、生物濃縮(biomagnification)をおこすことはない。 1.2.2水生生物類による取り込みと蓄積 水生生物による、水および堆積物からの鉛の取り込みと蓄積は、温度、塩 分、pH、フミン酸およびアルギン酸の含有量などの各種の環境因子により 影響される。汚染された水系においては、ほとんどすべての鉛は堆積物と強 く結合している。堆積物微粒子の間に水がある場合でも、一部分が水に溶け るのみである。 魚類による鉛の取り込みは、暴露後数週間を経てはじめて平衡に達する。 鉛の大部分は童思(えら)、肝臓、腎臓、骨に蓄積される。魚類の卵では、暴露 濃度の増加により、その鉛濃度は上昇するが、鉛は卵の表面に存在し胚子に は蓄積しない。 無機鉛化含物とは対照的に、テトラアルキル鉛は魚類により迅速に取り込まれ、 暴露の終了後には速やかに除去される。 1.2.3陸生生物類による取り込みと蓄積 細菌においては、鉛の大部分は細胞壁に関連している。同様の現象は高等 植物においても認められる。鉛の一部は植物の根の細胞に入り、新しい細胞 壁物質と結合し、その後に細胞壁の細胞質から取り除かれる。若い枝や葉の 組織中の鉛の濃度は通常は根よりもずっと低い、という理由から、根の細胞 に残存する鉛が植物の他の部分に移動する証拠は極めて少ない。葉による鉛 の取り込みは起こるが、その程度は著しく少ない。 動物においては、組織中の鉛濃度はほとんど常に低いが、組織と食餌中の 鉛濃度との間には強い相関性がある。動物中の鉛の分布は、カルシウム代謝 と密接な関係がある。 鳥類の砂嚢に人った鉛の弾は徐々に摩耗して鉛を放出する。 4価の有機鉛は、一般に2価の有機鉛や無機鉛よりも毒性が強く、生物中 での4価の有機鉛の分布は特にカルシウム代謝の結果ではない。 1.2.4野外における鉛の取り込み 生物の野外における鉛含有量は、一般には汚染の程度に比例している。地 域における鉛蓄積は、発生源からの距離に伴って減少する大気中の鉛濃度に 依存する。 貝類においては、鉛濃度は軟部組織よりもカルシウム分の多い貝殻部分で 高く、それは堆積物中の濃度に関連している。 ある種の海産魚類中の鉛濃度は、負思(えら)および皮膚においては他の組織 中よりも高いが、これは吸着によるためであろう。肝臓内の濃度は加齢に伴 い著しく増加する。 イルカにおいては、鉛は胎児の発育および授乳期間中に母獣から仔に移行 する。これはカルシウム代謝に関連しているのであろう。 1.2.5ハイウェイの周辺およぴ都市部における取り込み 鉛濃度は、交通量の多い道路に近い土壌および生物中において最高値を示 している。この測走された鉛は無機鉛で、そのほとんどすべては石油に添加 されたアルキル鉛より派生している。 植物中および植生中の鉛は、道路からの距離によって指数的に減少する。 鉛は、ハイウエイの近くの河川の椎積物中からも発見されている。 植物中および動物中の鉛汚染のレベルは、道路に近い地域において増加し ている。これらのレベルは、交通量と道路との距離に強い関連性を有している。 鉛蓄積の大部分は、道路の500メートル以内で、土ナ裏の上部数センチ内で 見出されている。土壌中および生物相(訳者注:地域の動植物)内の鉛濃度は、 道路からの距離がこれ以上の場合には、交通により影響されないと推測され る。 1.2.6工業発生源からの取り込み 陸生および水生植物は、工業的に汚染された環境内において、鉛を蓄積す る。水生植物種においては、鉛の取り込みは水および堆積物の双方より起こ る。鉛濃度は、その発生源からの距離に伴って減少し、陸生植物が活発に発 育する時期に最低を示す。葉による取り込みの役割は明らかではない。コケ 類は大気中からの鉛を蓄積し、それは大気中鉛の生物学的指標として利用さ れる。 体内の鉛濃度の上昇は、汚染地域の陸生無脊椎動物および脊椎動物におい ても見出されている。 1.2.7鉛の銃弾からの取り込み 鳥類の砂嚢中の鉛銃弾は著しい鉛汚染の発生源である。それは、血液・腎 臓・肝臓・骨などに高濃度の鉛を分布させる。
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1.3 微生物類に対する毒性 一般に、無機鉛化含物は、トリアルキルおよびテトラアルキル鉛よりも、 微生物に対する毒性は低い。テトラアルキル鉛はトリアルキル鉛イオンヘの 分解により毒性を示す。 鉛の水生毒性に影響する最も重要な因子の一つは、生物における鉛の生物 学的利用能を左右する遊離イオン濃度である。無機鉛塩類の毒性は、水の硬 皮、pH、塩分などの環境条件に大きく依存しているが、この点はほとんど の毒性試験において適切に検討されていない。鉛に対して耐牲を示す系続の 技生材が存在し、耐性は他の系統でも形成される。
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1.4 水生生物類に対する毒性 一般環境において見出される濃度程度の鉛は、水生植物に対して影響を与 えないようである。 単純な構造の鉛の塩類は水生無脊椎動物に対し急性毒性を示し、その濃度 は淡水牛物に対しては0.1−40mg/l以上、また海水生物では2.5−500mg/l 以上であった。同一種の魚類に対する96時間のLC50(訳者注:50%致死農 度)は、軟水では1−27mg/1、硬水では440−540mg/lの間を変化した。硬 水における高い方の数値は有名無実の濃度を表しており、入手し得る測定値 では硬水中の鉛は少ないことを示唆している。鉛の塩類は水にはわずかしか 溶解しないため、他の塩類が存在すると沈殿して、生物による鉛の利用を減 少させている。毒性試験の結果を出すためには、溶解された鉛のみを対象と して測走するように注意すべきである。 水生無脊椎動物の群棲では、一部の個体は他よりも感受性が高く、群棲構 造は鉛汚染により有害影響を受けると思われる。しかし、汚染地域からの無 脊椎動物の個体は、非汚染地域のものよりも、鉛に対して大きい耐性を示す ことがある。その他の水生無脊椎動物においては低酸素状態への順応は、高 い鉛濃度により妨害されることがあり得る。 幼齢の魚類は、成魚あるいは魚卵よりも鉛の影響を受け易い。鉛の毒性の 典型的な症状には、背骨の奇形、尾部の黒色化が含まれる。無機鉛に対する 牛大許容毒性物質限界(MATC:Maximum AcceptableToxicantLimit)が各種の 魚について、種々の条件下で決定され、その範囲は0.04−0.198mg/lという 結果を示した。鉛の急性毒性は溶液中の他のイオンの存在に大きく依存し、 毒性試験中での溶存鉛の測定には現実的な結果が不可欠である。魚類に対し ては、有機鉛化合物は無機鉛塩類よりも毒性が強い。 カエルおよびヒキガエルの卵は、止水試験では1.0mg/l、流水試験は0.04 mg/lの濃度において敏感であるとの証拠があり、発育阻害と卵購化の遅れが認 められた。成長したカエルにおいては、水溶液中の濃度が5mg/1以下で は著しい影響はなかったが、10mg/kgの食餌では、ある種の生化学的影響 が認められた。
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1.5 陸生生物類に対すそ毒性 無機鉛は高度に不溶性の塩類を生成し、各種の陰イオンと錯体を合成し、 土壌と強固に結合する傾向があり、陸生植物による根を経由した利用能を劇 的に減少させる。植物におけるイオンの移動は限られており、結合した鉛の 大部分は根部あるいは葉の表面にとどまる。その結果、鉛の毒性の実験的研 究の大多数において、光合成、成長、その他のパラメーターに明らかな毒性 影響を起こすには、土壌1kg当り100−1,000mgの高濃度が必要とされて いる。従って、鉛は環境中で極めて高い濃度の場所においてのみ、植物に影 響を与えるように見える。 鉛に汚染された細菌や真菌類の摂取は、線虫類に生殖障害をもたらす。木 の皮などに住む虫類(woodlice、ワラジムシ)は、外部からの鉛塩類を含む土 壌あるいは枯れ草に長期間暴露されているため、通常は、鉛に対して耐性を もつように見える。鉛塩類を含む餌で飼育された毛虫類は毒性による症状を 示し、発育および生殖障害をもたらす。 鉛に汚染された枯れた枝葉の腐敗期間中における無脊椎動物のリスクを定 量するため、入手し得る情報は極めて少ない。 鳥類にとって、鉛塩類は餌中の量が多い場含(100mg/kg以上)のみ有害で ある。実験研究のほとんどすべては、ニワトリおよびウズラを用いている。 ウズラに対する購化から繁殖年齢までの暴露では、餌中の鉛濃度が10mglkg の場含には産卵への影響を生じさせた。高用量の鉛の投与における各種の影 響が報告されているが、その大部分は餌消費の一次影響として説明されてい る。下痢および食欲喪失は無食欲・体重の減少をもたらし、それらは鉛塩類 の主要な影響である。他の鳥類への影響を評価するための実験的証拠はない ため、感受性の比較について推測する必要がある。以上のデータが正しけれ ば、鉛の環境中での暴露が有害影響を発生させることは、到底起こりそうに ない。 金属鉛は、極めて高い川量が粉末で投与さナtた場合を除き、鳥類にメして 毒性を示すことはない。野鳥類にとっては、鉛の銃弾を(訳者注:餌と間違 って)食べた場合は極めて有毒に作用し、1個の鉛弾丸の摂取においても、 ある種の鳥類には致命的となり得る。その感受性は鳥の種類により異なり、 餌に影響される。砂嚢に多数の鉛弾丸をもった野鳥類が発見されている(20 個の弾くらいは普通である)ため、多くの鉛弾が溜っている河岸や原野で餌 をとる種類の野鳥類には大きな危険をもたらす。 有機鉛化含物の影響についての情報は少ない。トリアルキル鉛化合物は0.2 mg/日の用量でムクドリに影響を与え、2mg/日では常に致死的である。 実験室以外の(野生の)哺乳類に対する鉛の影響について結論を下した報告 は極めて少ない。野生のラットは、実験室のラットと同様な影響を示した。
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1.6 野外における毒性影響 鉛に対する植物の耐性についての研究の大部分は、当然高度に汚染されて いる鉱山廃棄物の上や道路境界地域の植物の成育に集中している。耐性は、 わずかの種類の植物にしか見出されていない。ハイウエイ近くに巣づくりし た野鳥類において、繁殖への影響は認められなかった。都市部のハトには毒 性影響が見られ、腎臓への影響が最も多かった。 鉛弾の摂取による鉛中毒は、多数の野鳥類の死因である。これらのケース では、鉛弾は砂嚢で見出され、鉛濃度は肝臓・腎臓・骨中で上昇していた。 鉛アンチノック剤製造工場の近くの河口において、野鳥類の多数の死亡事 故がくり返し報告されている。著しく高い肝臓中の鉛の総量が死亡の原因と なっており、鉛の大部分はアルキル鉛の形で存在していた。
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2. 評価
2.l一般的考察
鉛の環境への有害性の評価においては、実験室研究より生態系への外挿が 必要である。これは次の理由より、極めて慎重に実施しなければならない。 (a)環境中において、生物による鉛の利用能(availability)は、土壌堆積物、 有機物質、生物相(訳者注:地域の動植物)のような環境構成物への強い 吸着により限定されている。鉛の生物濃編、すなわち「食物連鎖におい て鉛の濃度の増加はない」ということが容認されている。しかし、鉛に よる環境汚染は拡大され、生物は鉛の高度の体内負荷を蓄積している。 (b)狭い範囲の生物の種類について、いくつかの研究は、温度、pH、水中 の化学的構成、土壌タイプ、地質構造等の環境上の変数は、鉛の取り込 みと作用に影響を及ぼすことを示している。 (c)名目上あるいは鉛の総量よりも、生物が利用し得る鉛の量が、その取り 込みと作用の決定的なパラメータである。 (d)金属混合物の影響について、コントロールされた実験研究からのデータ は限られている。環境中の生物は汚染物質の混合物に暴露されている。 酸蓄積は、環境中に各種の金属類を放出し得る。 (e)自然社会および生態系の代表的あるいは重要な構成要素である生物の種 類あるいは群棲について、少数の実験的研究が実施されている。これら の研究では、個体数に影響を及ぼす環境要因のすべてと個体数との間の 相互作用のすべてが考慮されていない。 急性影響についての実験室研究が示唆するよりもはるかに低い濃度におい て、群棲への微妙な障害が起こるのは有り得ることである。鉛の毒性につい て入手し得る情報の多くは、非現実的なほど高い濃度と短期暴露における実 験的研究に基づいている。これは、野外での状況への外挿を困難にしている。
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2.2水生環境 鉛は地表流出を通じて水生環境に入り、大気中の鉛を蓄積する。底質への 吸着は迅速にほとんど定量的に起こる。 水生生物による水および底質からの鉛の取り込みと蓄積は、種々の環境因 子により影響を受ける。鉛による環境汚染の有害性を評価する際には、これ らを考慮しなければならない。 水生生物による鉛の取り込みは遅く、長期の暴露後においてのみ平衡に達 する。低レベルの栄養状態の水生生物は、より高い栄養状態の生物よりも鉛 の蓄積はずっと多く、生物濃縮係数は100,000以上に違する。一方、食物連 鎖を通しての生物濃編は極めて低く、しばしばIよりはるかに低い数値とな る。しかし、これは決して「有害性がない」ことを示すものではない。 水生生物に対する鉛の毒性は、その利用性(availability)、取り込み、生物種 による感受性の差異に大幅に依存するが、一般的には幼齢時ほど有害影響を 受け易い。鉛は、生化学、形態学、行動特性のパラメータに影響を与える。 有機鉛化合物は水生生物に対して、無機鉛よりも一般的に10−100倍の毒 性を示す。テトラアルキル鉛はトリアルキル鉛への変換により有毒となる。
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2.3陸生環境 鉛は、暴露された表土への大気中の鉛の蓄積により、陸生群集(terrestrial communities)に導入される。大気中の鉛による陸生生物の有害性を示す十分 な証拠が存在する。土壌中の鉛の正常な濃度の範囲は15−30mg/gを示し、 路傍の土壌では5,000mg/kgに達することがあり、工業地帯の土壌は30,000 mg/kgを越えるであろう。土壌は陸生群集を通しての鉛の移動を妨げるが、 一部の鉛は高度に汚染された土壌から浸出するであろう。土壌中の鉛の一部 は植物により取り込まれ動物に移行するが、その大部分は根の細胞表面に蓄 積される。植物による鉛の利用性を決定する因子は、pH、有機物質、土壌 のタイプである。一般的には土壌中の鉛は、1,000mg/kg以下の濃度では植 物に対する毒性は見られない。ある種の植物は、より高い濃度の鉛に耐性を 示し、また一部の植物では遣伝的な耐性を形成するように見える。動物は、 水、食物、土壌、塵挨の摂取を通じて鉛に暴露される。すべての場合におい て、動物内の鉛の濃度は環境中の濃度に関連しており、多くの場合は、鉛は 石灰化した組織に選択的に蓄積されるように見える。 鉛の環境中暴露は、大多数の陸生個体群に対し急性の有害影響を発生させ ることはありそうもない。しかし、鉛の銃弾は、食物を砕くための砂嚢を持 ち、小石を食べる習癖をもつある種の鳥類においては非常に有害である。実 験室研究では、動物への影響として、行動の変化、血液代謝の崩壊、特走酵 素の妨害が示されている。これらはカルシウム代謝との密接な関連性による ものであろう。
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Last Updated :10 August 2000
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