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硫化水素

 

概要

硫化水素は、特徴的な臭い(腐敗した卵)のある無色の気体である。0.5 ppbの濃度で感知できるが、高濃度に暴露した場合、あるいは低濃度でも持続的に暴露した場合は嗅覚がききにくくなるため、臭いは硫化水素の存在を示す有効な指標とはならない。硫化水素は空気よりやや重い。

 

硫化水素による中毒事例としては、化学工場における漏洩事故や、廃棄物、汚水、汚泥などの処理槽で硫化水素が発生し作業者が暴露した事例など、作業現場における事故が多い。硫化水素は空気より重く、槽内やマンホールなど閉鎖空間では滞留しやすいので、被災した作業者を救出しようとして被災現場に入った他の作業者も被害を受ける二次災害の例も多い。救護・搬送・治療等にあたる救護者や医療従事者も、二次災害防止が重要である。

この他、旅館・ホテルの温泉施設での湯ノ花の除去作業中における硫化水素中毒例、火山での観光客や登山客の硫化水素中毒例も時々みられる。20072008年には複数の製品から硫化水素を発生させ自殺をはかる例が多発した。

 

 

1.名称  硫化水素 Hydrogen Sulfide

 

2.物質の特定

化学式:H2S

分子量:34.1

CAS番号:7783-06-4

 

3.物理/化学的性質

外観:無色の気体(常温常圧において) 

臭い:特徴的な臭い(腐敗した卵)。

沸点:−60

融点:−85

相対蒸気密度(空気=1)1.19

溶解性:水への溶解度 0.5 g/100 ml (20)、水に溶けやすい。

引火性ガス

発火温度: 260

  爆発限界:4.346 vol(空気中)

 

4.毒性情報の概要 (ICSC, , HSDB, Meditext, Hazardtext) 

     主たる暴露経路:吸入。速やかに肺から吸収される。

     低濃度でも眼、気道を強く刺激する。中枢神経系に影響を与えることがある。

     重症の場合、肺水腫を引き起こすことがある(肺水腫は遅れて生じることがある)。

     中毒症状:眼の痛みや熱傷、頭痛、めまい、咳、咽頭痛、吐き気、息苦しさ、意識喪失など。

     空気中濃度250500 ppm で、頭痛、吐き気、嘔吐、下痢、めまい、頻脈、筋攣縮、衰弱、失見当識、昏睡などの徴候や症状が発現することがある。

     7501,000 ppmで、突然倒れたり(ノックダウン)、死亡することがある。

 

 

 [参考資料]

1) International Chemical Safety Card (ICSC), ICSC 0165 (Hydrogen Sulfide)及び

ICSC日本語版(国立医薬品食品衛生研究所、http://www.nihs.go.jp/ICSC/

2) Hazard Substance Data Bank (HSDB), US National Library of Medicine (NLM).

  http://toxnet.nlm.nih.gov/cgi-bin/sis/htmlgen?HSDB

3) HAZARDTEXT(R): Hazard Management, TomesPlus (Micromedex)

4) MEDITEXT(R): Medical Management, TomesPlus (Micromedex)

5) Medical Management Guidelines (MMGs) for Acute Chemical Exposures,

  ATSDR(Agency for Toxic Substances and Disease Registry)

 http://www.atsdr.cdc.gov/MHMI/mmg.html