1 2-クロロベンジリデンマロノニトリル
1−1 物理的化学的性質
1−2 毒性および症状
2 ジベンゾ-1,4-オキサゼピン
2−1 物理的化学的性質
2−2 毒性および症状
3 クロロアセトフェノン
3−1 物理的化学的性質
3−2 毒性および症状
【ご利用にあたっての注意】
国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部催涙剤 (Lacrimators、Tear gas, Mace)
催涙剤は、涙を流出させ皮膚を刺激する。被害者は一時的に戦ったり抵抗できなくなる。一般に毒性は低いが、低濃度、短時間で効果を現す。主な作用は、眼の激しい灼熱感、流涙、眼瞼痙攣、粘膜や皮膚の激しい痛みなどであり、これらの作用は通常、暴露後数秒以内に発現し、暴露が中止すると数分〜十数分で消失する。致死量と有効量の間の幅があり広い安全域を有する。暴徒鎮圧、護身用などに使用される。
第一次世界大戦後、暴徒鎮圧のための催涙剤として主にクロロアセトフェノン(CN)が用いられていたが、その後、より強力で毒性の少ない2-クロロベンジリデンマロノニトリル (CS) やジベンゾ-1,4-オキサゼピン(CR)が開発された。CN、CS、CRはいずれも揮発性の低い固体で、水には溶けにくく有機溶媒に溶ける。粉末のまま、あるいは適当な溶媒に溶かしスプレー剤として噴霧し、エアロゾルにして用いる。
催涙作用をもつ物質としてはこの他、OC(Oleoresin Capsicum、トウガラシ抽出物、有効成分カプサイシン)がある。
o-Chlorobenzylidene malononitrile
2-Chlorobenzylidene malononitrile
2-Chlorobenzalmalononitrile
コード名: CS
CAS 番号: 2698-41-1
分子量: 188.6
化学式: ClC6H4CH=C(CN)2; C10H5ClN2
性状: 白色の結晶性固体
臭気: 胡椒のような臭い
融点: 95-96℃
沸点: 310-315℃
蒸気圧: 0.00034 mmHg (20℃)
揮発性: 0.71 mg/m3 (25℃)
溶解性: 水に不溶。有機溶媒に可溶。
作用を及ぼす速さ: 瞬時。
持久性/一時性: 一時性(エアロゾルの場合)。
2-クロロベンジリデンマロノニトリルは適当な溶媒に溶かしスプレー剤にするなどしてエアロゾルとして用いる。ざらざらした表面(布など)に付着しやすく、ゆっくりとしか除去できない。
1. 作用機序および毒性
催涙剤は、神経末端、角膜、粘膜、皮膚に作用し、その反応は非常に速い。
暴露経路:吸入、経口摂取、皮膚や眼への局所刺激
毒性は非常に低い。人での1時間の概算致死濃度は1,000 mg/m3 である。一方、ほとんどの人が1mg/m3 のCSの催涙作用に耐えられない。
ほとんどの場合、被害者を新鮮な空気のもとに連れ出すだけで症状は消える。
2. 徴候、症状
眼:激しい灼熱感、結膜炎、瞼の紅斑、眼瞼痙攣、激しい流涙、まぶしい感覚
呼吸器系:最初は喉の灼熱感と痛み(気管および気管支に広がって行く)、その後、不安感を伴い窒息感。鼻の灼熱感、鼻汁、鼻腔粘膜の紅班。
他に、吐き気、下痢、頭痛、くしゃみ、味覚の変化、疲労感、咳。
皮膚:特に湿った部分に灼熱感があるがすぐに消える。これは数時間後に再発することがある。大量暴露が長引くと、紅斑や小さな水疱が生じることがある。
Dibenz(b,f)(1,4)oxazepine
Dibenz(b.f.)-oxazepine
コード名: CR
CAS 番号:257-07-8
分子量:195.2
化学式:C6H4(O)(N=CH)C6H4; C13H9NO
性状:淡黄色の固体
臭気:胡椒のような臭い
融点: 73℃
比重/密度:1.56
溶解性:水への溶解度は非常に低い。
作用を及ぼす速さ: 瞬時。
持久性/一時性: CSより残存しやすい。
暴露経路:吸入、経口摂取、皮膚や眼への局所刺激
クロロベンジリデンマロノニトリル(CS)と同じである。但し、最小作用濃度はCSより低く、吸入時の毒性はCSより低い。しかし、皮膚に対する作用はより強い。CSよりも環境中や衣服に残存する。
2-Chloroacetophenone
Chloromethyl phenyl ketone
コード名: CN
CAS 番号:532-27-4
分子量:154.6
化学式:C6H5COCH2Cl
性状:無色〜灰色の結晶性固体
臭気:鋭い刺激臭
融点: 57℃(純品)
沸点: 244℃
比重/密度:1.3 (15℃)
蒸気密度:5.3(空気=1)
蒸気圧:0.005 mmHg (20℃)
溶解性:水にほとんど不溶。有機溶媒に可溶。
作用を及ぼす速さ: 瞬時。
持久性/一時性: 一時性(エアロゾルの場合)
1. 作用機序および毒性
CSやCRと同様に、知覚神経末端の刺激を起こす。
CSより毒性が高い。
2. 徴候、症状
眼:灼熱感、流涙、瞼の炎症と浮腫、眼瞼痙攣、まぶしい感じ。
高濃度では一時的な失明。
高濃度暴露では、上部気道刺激、皮膚に小さな水疱形成、視覚障害、肺水腫。
小滴や飛沫が、眼にかかると永久的な視覚障害を生じることがあり、皮膚にかかると丘疹小水疱性皮膚炎や皮膚表面の熱傷を生じることがある。