1 ホスゲン
プラスチックや農薬製造など化学工業分野で重要な化学物質である。第一次世界大戦では化学兵器として大量に使用され、この大戦で使用された化学物質による死亡の大部分はホスゲンによるとされる。
ホスゲン:
1−1 物理的化学的性質
1−2 毒性および症状
吸入した場合:
(2) 徴候、症状
暴露源除去後に状態が一見良好にみえても、下記のような症状が遅れて現れる場合があるため、暴露後48時間は十分な注意が必要である。呼吸困難、白〜ピンクがかった液体が出る咳(肺水腫の徴候)、低血圧、心不全等。
2 ジホスゲン
ジホスゲン:
2−1 物理的化学的性質
2−2 毒性および症状
【ご利用にあたっての注意】
国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部窒息剤(Choking Agents、Pulmonary Agents)
窒息剤を吸入すると肺組織を冒し、主に肺水腫を起こす。皮膚や眼に接触すると強く刺激する。主な窒息剤としてはホスゲン(CG)、ジホスゲン(DP)がある。塩素(CL)やクロルピクリン(PS)も多くの資料で窒息剤に含められているが、化学兵器としての価値は低いとされる。クロルピクリンは催涙剤に分類されることもある。
塩化カルボニル
オキシ塩化炭素
Phosgene
Carbonyl chloride
Carbonyl dichloride
Chloroformyl chloride
Carbon oxychloride
コード名: CG
CAS 番号:75-44-5
分子量: 98.9
化学式: COCl2
性状: 液化しやすい無色の気体、もしくは無色〜淡黄色の液体
臭気: 刈ったばかりの干し草、または腐った果実の臭い
融点: -128℃
沸点: 7.8℃
比重/密度: 1.38 (20℃)
蒸気密度: 3.4(空気=1)
蒸気圧: 1,400 mmHg (25℃);
揮発性: 7,460,000 mg/m3 (25℃)
溶解性: 水にわずかに溶ける。通常の有機溶媒と混和する。
加水分解速度: 水に溶けると加水分解して二酸化炭素と塩化水素になる。
作用を及ぼす速さ:瞬時〜3時間(濃度に依存)
持久性/一時性: 一時性。
(1) 作用機序及び毒性
ホスゲンは、わずかしか水に溶けないが、いったん溶けると急速に加水分解し、二酸化炭素と塩酸を生成する。高濃度のホスゲンを吸入すると早期に眼、鼻、気道への刺激症状が生じるが、これはホスゲンの加水分解によって生じた塩酸によって引き起こされる。
ホスゲンは非常に活性が高く、肺胞−毛細血管壁で直接反応し、肺胞に液体を溢れさせる。肺胞毛細血管の透過性を高めることによって、肺水腫になる。
ホスゲン中毒の最も大きい特徴は肺水腫である。無症状の潜伏期があり、この状態は場合によっては24時間以上持続することがある。その間にも肺水腫は進行し、死に至ることがある。潜伏期後に生じる最も顕著な症状は、呼吸困難である。肺水腫は、肺胞毛細血管への酸素運搬を妨害し、低酸素症を引き起こす。また液体が肺胞に流出することによって血液濃縮を起こし、心不全に進行する。
長期暴露の場合、肺に影響を与え、繊維症、機能障害を生じることがある。
咳、喉や眼の灼熱感、流涙、かすみ眼、呼吸困難、息切れ、吐き気、嘔吐など。
皮膚に接触した場合は凍傷や火傷と同様の損傷。
高濃度暴露の場合、2〜6時間で肺水腫を生じることがある。
Diphosgene
Trichloromethyl chloroformate
Carbonochloridic acid trichloromethyl ester
コード名: DP
CAS 番号: 503-38-8
分子量: 197.8
化学式: ClCOOCCl3
性状: 無色油状液体
臭気: 刈ったばかりの干し草の臭い
融点: -57℃
沸点: 127℃
比重/密度: 1.65 (20℃)
蒸気密度: 6.8(空気=1)
蒸気圧: 4.4 mmHg (20℃);
揮発性: 47,700 mg/m3 (20℃)
溶解性: 水に44.6 g/L(20℃)、通常の有機溶媒に溶ける。
作用を及ぼす速さ:瞬時〜3時間(濃度に依存)
持久性/一時性: 一時性。ホスゲンより残存しやすい。
ジホスゲンそのものの毒性に関するデータはきわめて少ない。分解するとホスゲンを生じる。毒性はホスゲンに準じる。
眼、皮膚、上部気道を強く刺激する。高濃度暴露では、肺水腫を生じる。眼への刺激は、暴露がなくなってもしばらく続くことがある。