1 乳等からのエンテロトキシン検査方法(TCA濃縮法)

 迅速かつ安価な、更に簡易で毒素回収の良いブドウ球菌エンテロトキシン(SE)検出法として、トリクロロ酢酸(TCA)による抽出・濃縮方法とVIDAS法、RIDA法、TP法、及びRPLA法を用いた検出方法を示す。

1 試料の調製

牛乳等50mlを秤量し、試料とする。脱脂粉乳の場合は、10 W/V (10g/100ml)になるように滅菌蒸留水に溶解し、4℃で一夜保存したものを試料とする。

2 抽出方法

試料50ml2M HClpH3.8に調整し、10分間室温放置後、遠心分離(3000rpm20分、4)を行う。試料に2M HClを加える場合、少しずつ加えると十分タンパク質凝固がみられないことがあるので、HClを一気に加えた後、すぐに撹拌する。HCl添加量については、あらかじめその量を検討しておく必要がある。

その上清を2M NaOHpH6.8に調整後、クロロホルムを10%量になるよう添加し、激しく混和後、遠心分離(3000rpm20分、4)を行う。上清に30%TCA溶液を20%量になるように添加(最終TCA濃度は5%となる)し、10回転倒混和する。氷中で30分間放置後、遠心(3000rpm20分、4)し、上清を除去した後、3000rpm4℃で1分間遠心し、管壁に付着しているTCA溶液を十分に除去する。沈さに100mM Tris-HClpH8.0)を少量(0.50.8 ml)添加して溶解した後、2M NaOHpH78に調整し、最終溶液量が2mlになるように100mM Tris-HClを加える。これをSE抽出・濃縮液としてSEの検査試料とする。

遠心チューブ等はポリプロピレン製を使用すること。(ポリスチレン製のチューブは毒素を吸着する可能性がある。)

3 エンテロトキシン(SE)測定キット

(1)VIDAS Staph nterotoxinbioMerieux社):以下VIDASと略す。

(2)Transia Plate Staphylococcal EnterotoxinsMERCK社):以下TPと略す。

Catalog No.ST0796  

(1)RIDASCREEN SET A,B,C,D,EBiopharm社):以下RIDAと略す。Art.No.R4101上記3種の測定キットはSE定性キットであり、定量的に用いる場合はロット毎及び測定毎に標準曲線を作成する必要がある。

(2)ブドウ球菌エンテロトキシン検出用キットSET-RPLA(デンカ生研()):以下RPLAと略す。

 ○ キットの測定原理及び検出限界

  キットの測定原理及びキットに示された検出限界

     キット名          測定原理       最小検出量  型別の可否

VIDAS     サンドイッチ法のELFA          0.25ng/ml        

TP        サンドイッチ法のELISA         0.25ng/ml        

RIDA      サンドイッチ法のELISA       0.20.7ng/ml     

    RPLA       逆受身ラテックス凝集反応      12ng/ml        

 4 標準SE:トキシンテクノロジー社(Toxin Technology社)から毒素標準品(表示の濃度より高めになっている)が市販されており、デンカ生研(株)のキット付属の標準SEと整合して一定濃度を作製して用いると定量の精度が向上する。

5 キットの操作方法

(1)VIDAS

ミニバイダスにスパー及びストリップをセットし、検体500μlをストリップのサンプル用ウェルに注入後、ミニバイダスユーザーズマニュアルの指示に従い、測定を開始する。

(2)TP

@ 必要数のストリップ(*)をセットし、陰性コントロール2ウェル、陽性コントロール1ウェルを設定する。1サンプルに対し2ウェルを設定する。

A バイアル1の陰性コントロールと、バイアル2の陽性コントロールを100μlずつ添加する。各サンプルを各ウェルに100μlずつ添加し、プレートに蓋をする。

B 室温で約30分間振とう培養する。この間に洗浄液を調整する。

C プレートをしっかり持ち、手首を軽く打ってプレートの中味を振り出す。各ウェルをよく洗浄する。

  洗浄方法:洗浄液は5〜10秒ウェルの中に入れておき、その後プレートをひっくり返し、ペーパータオル上に数回たたきつけて洗浄液を取り除く。この作業を9回繰り返す。

D バイアル4の複合物100μlを各ウェルに添加する。ピペットの先端がウェルに接触しないよう注意する。

E 室温で約30分間振とう反応させる。反応が終了する直前に、基質・色素混合液の必要量を調整する。

F プレートをしっかり持ち、手首を軽く打ってプレートの中味を振り出す。各ウェルをよく洗浄する。Cの洗浄方法参照

G 基質・色素混合液100μlをピペットで各ウェルに添加し混合して蓋を閉める。

H 室温で約30分間振とう反応させる。

I バイアル7の反応停止液50μlを各ウェルに添加し、ウェルの中味を完全に混和して色の変化を確認する。

J 空気をブランクとして、450nmの吸光度を測定する。

 ストリップには番号を記載しておくと良い。ペーパータオル上で洗浄液を取り除く際にストリップがフレームから外れ、思わぬ混乱を生じる恐れがある。

(3)RIDA 

@ 1試料あたり1つのマイクロタイターストリップをフレームに入れる。

A 100μlの試料をA〜E(毒素型に対応)及びFG(陰性コントロール用)のウェルに、100μlの陽性コントロールをHのウェルに加える。

B 室温で1時間反応させる。

C ウェル中の液体を捨て、マイクロタイターストリップをフレームにいれたまま吸水紙に良くたたきつけ(3回以上)、ウェルの液体を十分に取り除く。

D すべてのウェルに250μlの希釈した洗浄液を入れ、ステップCと同様にして洗浄液を取り除く。この操作を3回以上繰り返す。

E 100μlの酵素複合体を各ウェルに加えて、室温で1時間反応させる。

F ウェル中の液体を捨て、マイクロタイターストリップをフレームにい

れたまま吸水紙によくたたきつけ(3回以上)、ウェルの液体を十分に取り除く。

G すべてのウェルに250μlの希釈した洗浄液を入れ、ステップCと同様にして洗浄液を取り除く。この操作を3回以上繰り返す。

H 各ウェルに50μlの基質液と50μlの色素原液を加える。よく混合し、室温で30分間反応させる(暗所)。

I 各ウェルに100μlの反応停止液を加え、よく混合し、空気をブランクとして450nmの吸光度を測定する。

 (4) RPLA

@ マイクロプレートに、最前列の穴を除き各系列の穴に希釈液100μlずつを滴下する。

A 前列と2穴目に各サンプル100μl2系列ずつ滴下する。

B 2穴目から最後穴を除いて2倍段階希釈する。

C 感作ラテックス抗A 25μl及び対象エンテロトキシンA 25μlを、それぞれの系列に滴下する。

D マイクプレート用ミキサーで十分振盪する。

E マイクロプレートを室温に1820時間静置後、判定する。

F 通常の判定方法及び角度を70度に傾けた判定方法(RMAT法)で判定する。

5 測定結果の読み取り方

(1)VIDAS

結果のTest Value(TV)値が、0.13より低い場合は検出限界以下であり、0.13以上の場合は陽性とする。

(2)TP

・陽性コントロールの吸光度は0.5と等しいか或いはそれ以上である必要がある。

・陰性コントロールの吸光度は0.3と等しいか或いはそれ以下である必要がある。

・しきい値は陰性コントロールの平均値に0.2をプラスした値を用いる。

・吸光度値が(しきい値-0.05)より低いサンプルは陰性、吸光度値がしき

い値より高いか等しいときは陽性とする。

・吸光度が(しきい値-0.05)としきい値の間にある場合は、疑陽性とする。

(3)RIDA

・ウェルFGの陰性コントロールの吸光度値の平均を求める。平均値に0.15を加えた値をしきい値とする。

・陰性コントロールの吸光度値は0.3以下、陽性コントロールの吸光度値は0.5以上であることを確認する。

・吸光度値がしきい値未満の試料は陰性、吸光度値がしきい値以上のときは陽性とする。

(4)RPLA

・通常判定:ラテックス凝集像の判定は、判定像の基準に従って行う。

・角度を70度に傾けた場合の判定方法(RMAT法):ラテックス粒子の流下がウェルの下側まで観察されるものを陰性、ラテックス粒子がウェルの中央部に沈降し、ボタン状に観察されるもの及び僅かにラテックス粒子の流下が観察されるものを陽性とする。

6 標準曲線

(1)毒素溶液の調整

キット付属buffer又はSEを含んでいないことが確認されている試料から上記2の抽出方法を用いて調整した濃縮液に、標準SEを添加して0.1250.250.51ng/mlの毒素溶液を作成する。毒素溶液の希釈はbuffer又は濃縮液で行う。

(2)測定方法

各施設で使用可能な検査キットを用いて、各毒素濃度溶液を測定する。

VIDAS及びRIDA1点測定し、TP及びRPLA2点測定する。

(3)標準曲線の作成

測定値からbuffer又は濃縮液の近似曲線を作成する。

RPLA法については、1ng/ml毒素液を2倍段階希釈したときの最高希釈倍率を求める。

7 注意事項

(1)TCA法による検出限界について

TCA法における食品中毒素の検出濃度は0.025ng/mlであり、キットに示されたものより10倍感度が高くなっている。回収率は濃縮液標準曲線から求めると5269%と推定されている。

(2)遠心チューブについて

遠心チューブ等の器材はポリプロピレン製を使用する。毒素、特に精製毒素はポリスチレン製のチューブに吸着する可能性がある。

       

 

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