内分泌かく乱化学物質(The Endocrine Disrupting Chemicals)

◎用語解説(厚生省内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会中間報告書、1998)



(ア行)

RNAポリメラーゼ

遺伝情報の転写、複製などの過程で、DNAを鋳型としてRNAを合成する酵素。


RfD

Reference dose、一生涯人間の集団が毎日暴露を受けても有害影響のリスクがないと思われる推定値。RfDNOAEL(無影響量)から不確実の因子をかけて決定される。RfDは閾値のないと考えられているイニシエーション作用のある発がん物質の場合には適用されない。


亜急性毒性試験

試験動物の全生涯のうちある期間(通常は13週間以内)に化学物質を毎日反復投与した結果、その影響を調べる動物試験。経口、経皮、吸入などにより実施される。また、亜急性毒性試験の結果は、長期毒性試験(発がん性試験、慢性毒性試験等)における試験評価の項目、投与量等の基礎となるデータを与える。(subacute toxicity test)


アジソン病

イギリスの医師T.Addisonによって、1855年に初めて報告された疾患で、結核による場合と自己免疫疾患による場合がある。副腎皮質の90%以上が破壊されると発症し、全身倦怠感、脱力感などを臨床的な特徴とする。


アナボリックステロイド

蛋白質同化作用をもつステロイドの総称。一般にテストステロン等のアンドロゲンは強い蛋白質同化作用をもつが、医薬品としては、比較的アンドロゲン作用が弱く、蛋白質同化作用が強いものが使われる。


アリール炭化水素(Ah)受容体

アリール炭化水素とは、ベンゼン環を含む炭化水素の総称。これらの化学物質が結合するある種の受容体をアリール炭化水素受容体と呼ぶが、実際に生体内でどうような物質がホルモンとして結合しているのかわかっていない。


アルキルフェノールポリエトキシレート

ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルともいわれる。非イオン性界面活性剤の1種で、洗浄剤、分散剤として使用されている。このほかコンクリートの空気連行剤、パルプの浸透剤、メッキ浴添加剤としても使用される。


アルドリン

有機塩素系殺虫剤の1種。土壌害虫の駆除に使用される。日本では、農薬取締法に基づく登録が昭和50年度(農薬年度:以下農薬については同じ。)に失効しており、現在では使用されていない。


アンドロゲン

男性ホルモン。代表的な男性ホルモンは精巣のライディッヒ細胞で合成されるテストステロンで、成人男性の平均的なテストステロン合成量は約8mg/日である。アンドロゲンは、胎生期の性分化、生殖器官の機能維持、二次性徴発現、蛋白質同化促進作用などを示す。


閾値

化学物質等が生体に影響を生じさせる最低用量のこと。即ち、閾値のすぐ下の用量では影響はないが、閾値のすぐ上の用量では影響が起きる。実際には、ある化学物質をとっても、個々の影響毎に閾値があり得る。また、同一人におけるある影響の閾値も時によって異なり、ある化学物質やある毒性学的影響については閾値を提示できない場合もある。


イソフタル酸ジメチル

白色フレーク状の固体で、ポリエステル樹脂、繊維の改質剤、塗料、接着剤原料として使用される。(Dimethyl isophthalate)


イソフラボン

イソフラボン自体は、天然から抽出されていないが、その類縁体が植物から十数種類発見されている。イソフラボン誘導体はマメ科植物に最も多く見出されており、イソフラボン誘導体のうちゲニスタインやダイゼインはエストロゲン様作用があることが知られている。


インヒビン

主に精巣、卵巣から分泌され、下垂体前葉からの濾胞刺激ホルモン(FSH)の分泌を負のフィードバック的に抑制するホルモン。


in vitro

試験管内の、生体外のという意味


in vivo

生体内(動物実験での)のという意味


ウォルフ管

中腎管。脊椎動物の発生過程でミュラー管とともに精管の原器として存在する。この二つの原器は、性腺の分化の始まる妊娠7週ぐらいまでは、男女で全く差は認められない。ウォルフ管は、アンドロゲン依存性のため、女性では退化するが、男性では精巣上体、精管、精嚢に分化する。


エクジステロイド

エクジソンとその類縁物質の総称。エクジソンは、昆虫や甲殻類などの脱皮や変態を誘導するホルモンである。この動物性エクジソンの類縁物質は、植物からも発見されている。


エストロゲン

卵巣の卵胞を形成する顆粒膜細胞で生合成されるホルモンの一種で、卵胞ホルモンとも呼ばれる。特に17β−エストラジオール(E2)の生理活性が強く、思春期発来、二次性徴発達、生殖機能や骨代謝維持に不可欠なものである。


EDSTAC

「内分泌かく乱化学物質のスクリーニングとテストに関する諮問委員会」(Endocrine Disruptor Screening and Testing Advisory Committee)の略。EPA(米国環境保護庁)の中に内分泌かく乱化学物質問題について化学物質のスクリーニング及び試験を行うために設置された委員会。米国のSafe Drinking Water Act(飲料水安全法)及びFood Quality Protection Act(食品品質保護法)に基づいて19965月に設置された。


NGO

非政府組織。環境問題等の地球的規模の問題に非政府・非営利的な立場から取り組んでいる市民レベルの団体のこと。


ND

不検出(not detected)のこと。試料を分析したとき、ブランクと区別できる信号が得られないこと。


mRNA

メッセンジャーRNADNAの遺伝情報を基にしてRNAポリメラーゼの働きによって、核内で合成され、核外に移動し、細胞内で蛋白質を合成するための鋳型となる


LD50

試験動物の群の50%を致死させると期待される統計学的に得られた被験物質の1回の経口投与量。通常体重kg当たりのmg(mg/kg)で示される。50%致死量、半数致死量という。(lethal dose 50% kill)


エンドセリン

1988年にブタ血管内皮細胞の培養液上清から発見された血管内皮細胞由来の血管収縮ペプタイド。一過性の血管拡張と引き続く持続的な血管収縮を引き起こす。


orphan receptor

受容体のみが特定されており、受容体に結合する体内のホルモン(リガンド)が判明していないもの。


p−オクチルフェノール

室温では白色の固体である。油溶性フェノール樹脂、界面活性剤等に用いられる。



(力行)


界面活性剤

ある物質を液体に溶かしたとき、その液体の表面張力を著しく低下させて、湿潤、浸透、乳化などの作用を示す物質。例えば、石鹸、合成洗剤のアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどがある。


可塑剤

プラスチックなどに添加することにより柔軟性を増し、成形加工を容易にする。ポリ塩化ビニル樹脂の可塑剤としては、フタル酸エステル等が使用されている。


外分泌と内分泌

分泌物うぃ体外や体腔に排出するための管があるのが外分泌(消化酵素などの分泌)。分泌物を血液や体液に直接排出するのが内分泌(ホルモンなどの分泌)。


去勢雄ラット反応試験

去勢ラットに化学物質を投与して、前立腺重量と精嚢重量を測定し、アンドロゲン作用を評価する試験。


KDa

ダルトンとは、質量の単位で、1ダルトン=1.661×1027kg。染色体、タンパク質などの質量を表すために用いられ、数値的には分子量と同一である。


疑似ホルモン

外因性の物質で生体内に入ってホルモンに類似の作用をもつもののこと。


クレチン症

甲状腺の形成不全、自己免疫異常などにより甲状腺の機能が低下し、甲状腺ホルモンが欠乏し、身長発育の著しい遅れ、知能の発達遅滞などが認められる疾患。


クロルデン

有機塩素系殺虫剤の1種。白アリ駆除剤等に使用される。皮膚吸収により、肝臓障害を引き起こす。化審法第1種特定化学物質、毒物及び劇物取締法等の規制を受け'ている。日本では、農薬取締法に基づく登録が昭和44年度に失効しており、現在では使用されていない。他のシクロジエン系殺虫剤としては、カフェンクロール、ヘプタクロール、ベンゾエピン、アルドリン、エンドリン、ディルドリン、ノナクロール等がある。


グルココルチコイド

副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンのうち糖、タンパク質、脂肪の代謝に重要な役割を果たしているホルモン。抗炎症作用があり、アレルギー、免疫異常疾患、喘息などに医薬品として用いられる。


検出限界

機器分析等において、目的物等が検出できる下限のことをいう。検出下限、検出下限界ともいわれる。


抗原性試験

化学物質による抗原性(アレルギー性)を検討するための試験で、即時型アレルギー試験と遅延型アレルギー試験に分けられる。


抗利尿ホルモン

バソプレッシンとも言う。主な作用は腎臓に働いて、水分の再吸収を促進することであり、水分代謝、血圧調節等に重要な役割を果たす。


コホート研究

疾病の発生要因を明らかにするため、危険因子と想定される物質の暴露を受けている集団と受けていない集団を将来に向かって追跡し、それぞれの集団の罹患率を観察し、疾病原因を研究すること。



(サ行)


再現性

繰り返し実験を実施しても、同様の結果が得られること。


臍帯血

哺乳類において胎児と胎盤とを連結する索(俗称“へその緒”)の中を流れる血液のこと、臍静脈は酸素や栄養を胎盤から胎児へ、臍動脈は不要物を胎児から胎盤へ運んでいる。


催奇形性試験

妊娠中の母動物が被験物質に暴露された場合の胎児の発生、発育に対する影響、特に催奇形性に関する情報を得るための試験。


サイトカイン

リンパ球などによって産生され、免疫応答の発現や調節などの細胞間相互作用に関与する生物活性因子の総称。


子宮頸がん

子宮頸部に発生する主に扁平上皮がん。子宮頸部の異形成病変から上皮内がんを経て発生すると言われている。


子宮体がん

子宮体内膜に発生する腺がん。閉経期以降に発生する。女性ホルモン過剰状態が発生に関与するとされている。


子宮肥大反応試験

エストロゲン作用を評価するため、雌ラットに被験物質を投与して、子宮重量変化、子宮の組織学的変化などを観察する試験。


視床下部

脳幹の間脳に位置し、内部に多数の神経核が存在している。視床下部は、自律神経系の中枢であるとともにホルモンを産生しており、下垂体機能を調節している。


食品衛生調査会

厚生大臣の諮問に応じて、食品衛生に関する重要事項を調査審議し、これらの事項に関して厚生大臣に意見を述べるための調査会であり厚生大臣が学識経験者の中から委員及び臨時委員を任命する。現在、常任委員会のほかに7部会、3特別部会が設置されている。


G−蛋白

GTP(グアノシン三リン酸:情報伝達に関与している)結合型の蛋白質の一つであり、ホルモンなどが細胞膜上の受容体に結合し、細胞内への伝達物質を産生する場合に、情報の伝達などを行う。


重縮合

高分子生成反応のうちの1つで、縮合を繰り返した反応をいう。


スクリーニング

screening」ふるい分けの意。目的とする性質を持つ物質や生物などを、特定の試験、操作、評価方法を用いて、多数の中から選別すること。


スチレンモノマー、ダイマー、トリマー

monoditriとは、数を表す言葉で、それぞれ、123のことを示す。スチレンモノマーとは、スチレン単分子のことをさす。スチレンダイマーとは、2つのスチレン分子が結合して生成したものをいう。スチレントリマーとは、3つのスチレン分子が結合して生成したものをいう(stylenemonomerdimertrimer)


ステロイドホルモン

右下図のような構造のステロイド骨格を有するホルモンであり、副腎皮質、性腺から分泌される。エストロゲン、アンドロゲン、プロゲステロン等が含まれる。


生殖・発生毒性試験

化学物質などが、雄雌両性の生殖細胞の形成から受精、妊娠、分娩、授乳、哺育を通し、次世代の成熟に至る一連の生殖発生の過程のいずれかの期間に作用し、生殖発生に対して有害な反応を引き起こすことについての能力を生殖発生毒性と呼ばれており、この能力を調査する試験。


性腺刺激ホルモン

性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)には、下垂体前葉から分泌される卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンがある。

生体試料

 被験物質の分析を行う際に使用する物質で、ヒトから採取したもの(血液、母乳等)の総称をいう。


精母細胞

精子形成の段階で発生する細胞の名称で、睾丸(精巣)の精細管内の精祖細胞から精母細胞を経て精子が形成される。


セルトリ細胞

胚細胞とともに精巣(睾丸)の精細管を構成する細胞、精祖細胞から精母細胞を経て精子が形成される段階で、細胞に栄養を供給する細胞のこと。



(夕行)

体内動態試験

被験物質の吸収、分布、代謝、排泄について調べ、体内における動態を明らかにする試験で、ADME試験、薬物動態試験ともいう。


多世代繁殖試験

生殖細胞の形成、性腺機能、性周期、交尾行動、受精・受胎、妊娠の維持、分娩、授乳・哺育などの雄と雌の生殖関連事象および出生児の成長や発達に及ぼす被験物質の影響など、生殖発生毒性に関する一般的な情報を得ることを目的とした試験。


TCDD

ダイオキシンの一つで、2,3,7,8tetrachlorodibenzoparadioxinのこと。非意図的に生成する環境汚染物質で、極めて強い生体作用を有し、蓄積性も高い。


DD

1,1,1trichloro2,2bis(4chlorophenyl)ethaneのこと。1938年に開発された有機塩素系殺虫剤で、昆虫類に対し広い効力を有する。マラリアを媒介する蚊の駆除などに用いられ、残効性が高い。1970年代に食品から検出され、環境中での難分解性及び生体蓄積性が問題となったため、我が国及び欧米諸国では、本品の使用が禁止されている。


停留精巣

胎児の睾丸は、妊娠後期に胎盤性性腺刺激ホルモンの作用により、腹膜に沿って下降し、陰嚢内に到達する。しかし、睾丸の発育不全などにより睾丸が陰嚢内に下降しない場合があり、新生児の約10%に認められるが、1年間でほぼ90%は自然に下降する。


定量的構造活性相関研究

化学物質の構造と生理活性との相関を定性的あるいは定量的に明かにし、データ未知の物質について化学構造から有効性や毒性などを予測する研究。


テストステロン

精巣から分泌される代表的な男性ホルモン。テストステロンは、二次性徴の発現、タンパク質同化作用、筋肉の発育促進などの機能を有する。


テタニー

副甲状腺の機能低下、ビタミンDの欠乏などにより、上下肢に部分的に強い痙撃を起こす疾患。低カルシウム血症、高リン血症が臨床的症状の引き金となっている。


転写因子

DNAの遺伝情報をmRNAへ転写する際に働く、タンパク質性の因子。(ただし、RNAポリメラーゼを除く。)


転写調節因子

細胞の種類や外的刺激などによりDNAからRNAへの転写は調節される。転写開始は一般に蛋白質により抑制又は促進されている。


ディルドリン

有機塩素系殺虫剤の1種。殺虫剤、防ダニ剤等として使用される。日本では、農薬取締法に基づく登録が昭和48年度に失効しており、現在では使用されていない。


DNA

主に細胞の核内に存在し、遺伝情報を保持している。二重らせん構造をとっており細胞分裂とともにすべての体細胞に正確に複製される。



(ナ行)


28日間反復投与毒性試験

化学物質の安全性評価の目的で実施される哺乳類を用いた短期毒性試験法のひとつで、被験物質を28日間連続反復投与した際の、生体の機能および形態の変化を観察することにより、被験物質の毒性を調べることを目的とした試験。


尿道下裂

男性の尿道の先天奇形としてよく認められる症状で、尿道が亀頭先端部に開口せずに亀頭から会陰部に至る正中線上に開口する。


熱交換媒体

化学反応の過程などで適切な範囲に温度を維持する場合などに使用される。熱安定性であり、反応性に乏しいものが使用される。


熱ショック蛋白質

細胞、組織等が生体温度より510℃高い温度にさらされると、合成が誘導される蛋白質。


t−ノナクロール

有機塩素系殺虫剤の1種。防ダニ剤等として使用される。日本では農薬取締法に基づく農薬登録を受けたことはない。


p−ノニルフェノール

室温では無色ないしは淡黄色の粘性の液体で淡いフェノール臭を有する物質で、界面活性剤、エチルセルロースの安定剤、油溶性フェノール樹脂、エステル類、マンニッヒ塩基などの窒素を含む中間物の合成原料、殺虫剤、殺菌剤、防かび剤、洗剤、油性ワニス、ゴム助剤及び加硫促進剤、石油系製品の酸化防止剤及び腐食防止剤並びに石油類のスラッジ生成防止剤等に用いられる。



(ハ行)


暴露

化学物質、物理的刺激や生物等と生体の外部境界との接触のこと。食品や水などを介した経口的なもの、居住空間や労働環境の大気を通した経気道的なもの、経皮的なものの全てを含む概念。


発がん性試験

ラット、マウス等の遺伝的背景がわかっている実験動物を用いてほぼ一生涯にわたり被験物質を投与することによって被験物質の発がん性について調べるための試験。投与の方法としては、被験物質を餌に混ぜて投与する方法、胃内に注入する方法、注射する方法等がある。


PCB

ポリ塩化ビフェニルのこと。ビフェニルの2個以上の水素を塩素で置換した化合物である。性状は油状から結晶性固体で、水に不溶である。塩素数と置換位置により、理論上209種の異性体が考えられる。


非イオン性界面活性剤

界面活性剤とは、水に対して強い表面活性(表面張力を弱めること)を示し、溶液内でミセルのような会合体を形成する物質のことをいう。非イオン性界面活性剤とは、水溶液でイオンに乖離する基を有しない界面活性剤をいう。


ヒドロキシ体

もとの化合物が水酸化されたもので、もとの化合物よりも水溶性が高まる。一部の化合物は、生体内の代謝過程において水酸化酵素の働きにより水酸化される。


ビテロゲニン遺伝子

ビテロゲニンから誘導されるタンパク質は、卵生の動物(魚類、両生類、鳥類など)が卵内で成長するために重要な栄養源となっている。これらの雌動物の肝臓では、エストロゲンによりビテロゲニン遺伝子の転写が促進され、ビテロゲニンが合成される。


ppm

百万分率(parts per million)のこと。濃度の単位として mg/kg、μg/gmg/L、μg/mLに相当する。(例えば、1ppmは、長さ2m×1m×深さ50cmの浴槽に1gを溶かした濃度)


ppb

十億分率(parts per billion)のこと。濃度の単位として μg/kgng/gng/mL、μg/Lに相当する。(例えば、1ppbは、長さ25m×20m×深さ2mのプールに1gを溶かした濃度)


フタル酸ジエチルヘキシル

無色透明な液体で、塩化ビニル、ニトロセルロース、メタクリル酸樹脂等の可塑剤に用いられる。フタル酸ジオクチルとも言う。(Di(2-ethylhexyl)phthalate)


フタル酸ジオクチル

通常、フタル酸ジエチルヘキシルのことを指す。油状の液体で、塩化ビニル、酢酸ビニル、ニトロセルロース、メタクリル酸樹脂等の可塑剤として用いられる。(Dioctyl phthalate)


フタル酸ジイソノニル

油状の液体で、高級レザー等に使用される。(Dilsononyl phthalate)


フタル酸ジブチル

油状の液体で、塩化ビニル、酢酸ビニル、ニトロセルロース、メタクリル酸樹脂等の可塑剤として用いられる。(Dibuthyl phthalate)


フタル酸ジヘプチル

油状の液体で、塩化ビニルの可塑剤として使用される。(ヘプチル基については、組成がヘプタノールと称するC7アルコール由来のものである。)


分泌顆粒

分泌を行う細胞中に存在する膜に包まれた顆粒で、内部に濃縮された分泌物を含み、分泌刺激に応じて膜を開口し顆粒外に分泌する。


プロゲステロン

女性の性周期及び妊娠成立、維持に重要な役割をはたすホルモンで、非妊女性では主に卵巣黄体より分泌されるため、黄体ホルモンとも呼ばれている。


プロゲストーゲン

受精卵着床、妊娠維持などのプロゲステロン様の作用を有する化学物質の総称。黄体ホルモン、プロゲスチン、ゲスターゲンとも呼ばれる。


プロラクチン

プロラクチンは下垂体前葉の好酸性細胞から分泌される単純蛋白質、哺乳類では、乳腺の発育、乳汁分泌、黄体刺激、前立腺等の発育促進が主な作用である。


ヘキサクロロシクロヘキサン

有機塩素系の殺虫剤の1種で、BHC、リンデンとも呼ばれる。ダニ駆除剤等として使用される。日本では、農薬取締法に基づく登録が昭和47年度に失効しており、現在では使用されていない。


ヘキサクロロベンゼン

有機塩素系殺菌剤の1種で、HCBとも呼ばれる。麦類の種子の処理に使用される。日本では、農薬登録された実績はない。


ヘプタクロール

有機塩素系殺虫剤の1種。稲、麦類、じゃがいも、さつまいも、たばこ、豆類、あぶらな科野菜。ネギ類、ウリ類、てんさい、ほうれん草等の殺虫剤として使用される。日本では、農薬取締法に基づく登録が昭和47年度に失効しており、現在では使用されていない。


n−ヘプタン

直鎖状の飽和炭化水素のうち、炭素数が7のもの。(CH3(CH25C3


変異原

DNAに対して何らかの作用を示して、生物に誘発変異を引き起こす化学物質。変異原性物質、突然変異原又は突然変異誘発物質という。


変異原性試験

被験物質がDNAに影響を与え、その結果、遺伝子突然変異あるいは染色体の構造異常及び数的異常を起こす性質があるかどうかを明らかにするための試験。


ペプタイド

同種あるいは異種のα−アミノ酸が2個又はそれ以上で互いに一方のカルボキシル基と他方のアミノ基との間で脱水して酸アミド結合(−CO−NH−)を形成してできる物質の総称。ペプチドとも言う。


ホメオスタシス

生物の体内の諸器官が、外部環境(気温・湿度等)の変化や主体的条件の変化(姿勢、運動等)に応じて、統一的に体内環境をある一定範囲に保っている状態や機能。恒常性。



(マ行)


μg/cm2

食品衛生法で器具・容器包装に関する規格基準の単位として用いられている。1平方センチメートル当たりの溶出量をμgで表す。


慢性毒性試験

動物を用いた毒性試験を行う際に、被験物質を長期間(化学物質の場合には12ヶ月以上)反復投与し、認められる毒性影響を観察し、毒性が認められる投与量及び示されない投与量を明らかにする。


ミネラルコルチコイド

副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンのうち電解質と水分の代謝に重要な役割をはたしているホルモン。


ミュラー管

中腎傍管。脊椎動物の発生過程でウォルフ管とともに精管の原器として存在している。この二つの原器は、性腺の分化の始まる7週ぐらいまでは、男女で全く差は認められない。ミュラー管は、男性ではセルトリ細胞から分泌されるミュラー管抑制因子の影響により退化するが、女性では発達して輸卵管となる。


無作為比較試験

医薬品の臨床試験において、治験を実施する医師の作為が入らないように、無作為に被験者にそれぞれの薬の割り当てを行うこと。



(ヤ行)


有機塩素系農薬

塩素化炭化水素を有効成分とする農業用の殺虫剤の総称。昆虫類に対し広い効力をもつが、環境中で難分解性であり、脂肪組織に蓄積するなどの問題が指摘されたため、DDT等は我が国や欧米諸国において使用されなくなっている。


輸精管

精子の排出路の一部で輸精小管と尿道を連絡する。ウォルフ管に由来する。



(ラ行)


ライディッヒ細胞

精巣の精細管と精細管との間に存在し、男性ホルモンを分泌する内分泌機能を受け持っている。


ランゲルハンス島

ドイツの医学者P.ランゲルハンスにより発見され、多くの脊椎動物の膵臓内に存在する内分泌腺の組織。ランゲルハンス島は、ABC細胞に分けられ、例えばランゲルハンス島B細胞からは血糖値を低下させるインシュリンが分泌されている。


リガンド

一般に蛋白質に特異的に結合する低分子物質のことをいう。例えば、ホルモン、抗原、抗体、酵素の基本などが含まれる。


リン酸化

生体内の蛋白質は、酵素の働きでリン酸化されることにより、その機能が変化する。