平成11年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

(総括・分担)研究報告書

ポリ塩化ビニル製玩具からのフタル酸エステルの溶出に関する研究
−ヒトのchewingによる玩具から唾液へのフタル酸エステノレの溶出-移行
および回転振とう方式による人工唾液への溶出−


分担研究者 山田隆 国立医薬品食品衛生研究所
協力研究者 石橋亨 (財)東京顕微鏡院
協力研究者 新野竜大(共同研究者) 東京理科大学薬学部
協力研究者 小野寺祐夫(共同研究者) 東京理科大学薬学部

研究要旨

本研究は平成10年度の厚生科学研究の結果に基づいて人工唾液への溶出では振とう方式を代え,さらにヒトchewir実験では被験者人数を増やし,それぞれ試験研究を行ったものである.

1.フタル酸エステルのジエステル体およびモノエステル体のHPLC分析とその確認

  フタル酸ジエステルのDBP,DEHP,DHpPおよびDINPと,フタル酸モノエステルのMBPおよびMEHPのHPLC分析は,逆相系のODSカラムで,ジエステル体の移動相をアセトニトリル・水(80:20)をリニアグラジエントによりアセトニトリル(100)とし,またモノエステル体は移動相をアセトニトリノレ・2%酢酸水溶液(80:20)とし,それぞれ良好な分離能が得られた.
GC-MSによる確認はSIMモードにて行った.,ジエステル体の確認にはフラグメントイオンm/e149を測定した.モノエステノレ体の確認にはカルボキシル基をメチルエステル化し,asyoetricなフタル酸エステノレとしたのち,フラグメントイオンm/e163にて測定した.

2.回転振と'方式による人工唾液へのフタル酸エステルの溶出

  振とう方式に回転式を採用し,人工唾液へのフタル酸エステル溶出の条件設定を行った.試験品はPVC製のおしゃぶり(DINI)58.3%含有),歯がため(DINP35.胱含有),ソフト人形A(DEHP32.p含有)およびソフト人形B(DHpP25.0%含有)の4試験片を用い,60分間(15分×4回)における溶出条件を検討した.溶出溶媒としての人工唾液量,溶出温度および振とう回数それぞれは,30mL,35±5℃および300rpm/分に溶出条件を設定した結果,それぞれのフタル酸エステル溶出量にバラツキが少なく,ほぼ一定の溶出量を得ることが可能となった.この条件でのそれぞれの試験片からの1時間あたりの溶出量は,溶出温度30℃で,おしゃぶりのDINPが460μg,歯がためのDINPが395μg,ソフト人形AのDEHPが547μgそしてソフト人形BのDHpPが75.7μgであった.
  また,設定した条件で1区分(15分間)ずつの溶出量をみたとき,第1区分の溶出量が4試験片ともに多く,第2,3,4区分と減少する傾向が見られた。

3.ヒトのchewingによる乳幼児製具から唾液へのフタル酸エステルの溶出-移行

  被験者を30人のべ人数(54人)でPVC製玩具試験片のchewing実験を行った.試験品はDINP含有のおしゃぶり,歯がため,ガラガラ,DEHP含有ソフト人形AおよびDHpP含有ソフト人形Bの5種類とし.chewing時間は1区分15分間とし,これを4回繰り返し,合計60分間とした.
おしゃぶり試験片は同一被験者が同種の試験片を2回chewingし,そのDINP溶出一移行量は95.8μg/hrと101μg/hrであった.歯がため試験片も同様に2回行い,53.2μg/hrと52.1μg/hr,ガラガラ試験片は1回で,64.3μg/hr溶出一移行した.ソフト人形A試験片はDEHPが32.6μg/hr,ソフト人形BはDHpPが6.95μgそれぞれ溶出一移行した.
  またそれぞれの区分間では,おしゃぶり,歯がためおよびガラガラの第1区分で溶出量が多
く,第2区分,第3,4区分と除々に減少する傾向があった.しかし,ソフト人形Aとソフト人形Bではこの傾向が見られず,第1区分,第2,3,4区分間の溶出一移行量の差はあまり見られなかった.
  また,DBPおよびDEHP含有するボールを同様にchewing試験を行った結果,DBPおよびDEHPの溶出一移行量は29.8μg/hrおよび75.9μg/hrであった.さらに,フタノレ酸ジエステルの変化物質であるフタル酸モノエステルを測定したところ,MBPおよびMEHPを検出した.

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