平成11年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

分担研究報告書

ポリ塩化ビニル製おもちゃからのフタル酸ジイソノニル(DINP)の溶出に関する調査研究


分担研究者 山田隆 国立医薬品食品衛生研究所
協力研究者 杉田 たき子
協力研究者 阿部 有希子

研究要旨

内分泌かく乱化学物質は人の発育初期に大きな影響を及ぼすことが懸念されている.ポリ塩化ビニル製の乳幼児用おもちゃには高濃度のフタル酸エステル類が含まれているため,口に含んだ場合のフタル酸エステルの溶出量を明らかにすること,摂取量を推定するためのシミュレーション溶出試験法を確立する必要があった.本年は昨年度提案した上下振とう溶出試験法についてさらに詳細な検討を行い以下の結果を得た.@人工唾液の組成による溶出量への影響を四種類の人工唾液を用いて調べたところ,溶出に及ぼす影響は極めて小さいものであった.A試験片を調製する際に皮脂が付着することが考えられ,付着した皮脂がDINPの溶出に何らかの影響を及ぼすか試験した.その結果,皮脂が付着した試験片では溶出量が50%と少なくなった.これは試験片の表面が皮脂でコーティングされ,DINPの溶出が妨げられるものと推察された.B溶出試験を行う場合の温度の影響を検討したところ,高温ほど溶出量が多くなり温度の影響を受けることが明らかとなった.従って上下振とう溶出試験法は温度コントロールができないため,新たな振とう方法を検討する必要が生じた.C温度コントロールが可能なVortexShaker(渦巻き振とう,回転振幅20mm)による振とう溶出試験法を検討したところ,250回及び300回でのバラツキは小さく,溶出条件は30℃,300回10分間が適当であった.Dおもちゃ8試料の渦巻き振とう溶出試験(300回/分,30℃10分)の結果と昨年度実施した上下振とう溶出試験(300回/分,20℃15分間)による溶出量を比較したところ,歯固め試験片以外の7試料の溶出量はかなり良く一致した.また,上下振とうに比べてバラツキも小さくより有効な方法と考えた.Eおしゃぶり等6試料について渦巻き振とう溶出試験を協力研究者に依頼した.3機関のおしゃぶり試験片からのDINP溶出量は321±52μg,変動係数は16%と良好であったが,歯固め試験片では3倍の差がみられた.これは同一の試験片を作るのが困難なためバラツキが大きくなったと推察されるが,3倍の差があったことは,試験片の違いだけでなく,機器の振とうの強さ等に由来することも考えられる.

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