平成11年度
厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)
(総括・分担)研究報告書
玩具類からの内分泌かく乱化学物質の分析
おもちゃからのフタル酸エステルの溶出に関する調査研究(その2)
協力研究者 松木容彦 (財)食品薬品安全センター秦野研究所
協力研究者 平林尚之 (財)食品薬品安全センター秦野研究所
研究要旨
生活環境が豊かになる一方、様々な化学物質による人体への影響が報告され、なかでもホル
モン様作用を有する(外因性)内分泌かく乱物質に社会的関心が持たれている。とりわけ、生
活関連用品由来の内分泌かく乱物質は、直接および間接的に体内に取り込まれ影響を及ぼすこ
とから、様々な調査研究が進められてきた。
昨年度、我々は、乳幼児が種々のプラスチック製おもちゃをおしゃぶりしたときに溶出する
可塑剤の曝露量を推定するためのin vitro 試験法を確立することを目的に、フタル酸ジイソ
ノニル(DINP)を指標として、縦(上下)振盈によるin vitro 溶出法の溶出条件の基礎的検
討を行った。
そこで本年度は、in vitro 試験法を確立するに当り、予め、成人被験者によるMouthing実
験を行い、唾液中DINPの溶出レベルを調べた。その結果、試料として用いた歯がためからの
DINPの溶出量はおよそ1〜数μg/min、単位面積当り、0.1〜1μg/p2/minと推定された。
次にin vitro 溶出条件の追加検討として、歯がためを用い、試料の大きさ(表面積)と溶
出液量の関係がDINPの溶出に及ぼす影響について調べたところ、一定範囲の表面積を有する
試料に対し定容量の溶出液で溶出することにより、試料の単位面積当り一定レベルのDINPが
溶出すると推測された。そこで、昨年度実施した歯がため(3cmφ円形ディスク、表面積約
17.4p2)の溶出試験結果を調べたところ、単位面積当りのDINP溶出量は約0.5μg/p2/min
と、先のMouthing実験でのDINP溶出量とほぼ同程度の溶出レベル示すことから、縦振盈に
よるin vitro 溶出法では試料の表面積を約15cm2、溶出液量を30mLに設定した。
一般におもちゃは様々な大きさや形をしており、定形の試験試料を得ることは困難である。
そこでin vitro 溶出試験で用いる試料の形状とDINP溶出量の関係について、3pφ円形
ディスクを基に形状の違いによるDINP溶出量を調べた。すなわち、表面積約15p2の異な
る形状の試料をそれぞれ同一条件で溶出したところ、各試料の単位面積当りのDINPの溶出量
はおよそ0.7〜2μg/p2/minと、ほぼ近似した溶出結果が得られ、形状によりやや高い値を
示すものの、いずれも成人のMouthingに近い溶出レベル示した。
以上、歯がためを用いてDINPのin vitro 溶出条件を検討した結果、溶出容器に50mLの
遠心管を用い、表面積が約8〜25p2試料を30mLの溶出液中で縦(上下)振盈により10〜
30分間溶出するとき、試料の形状の違いによる影響が少なく成人のMouthingに近似した
DINPの溶出レベルを示すことが明らかとなった。
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