平成11年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

総括研究報告書

内分泌かく乱化学物質の人の生殖機能等への影響に関する研究

主任研究者  津金 昌一郎 (国立がんセンター研究所支所 臨床疫学研究部長)

研究要旨

  内分泌かく乱化学物質(EDC)と健康影響の関連を検証する疫学研究をデザインするための基礎的情報を得るために、人への暴露とその要因(暴露源)に 関する検討、人の健康影響評価のためのバイオマーカーの開発、人の健康影響に関するエビデンスの検討を行った。マーケットバスケット方式で集めた食品の分析によ1日摂取量は、PCB 0.13μg、DDE 0.30μg(1999年)と推定されたが、他の農薬系EDC8種類は検出されなかった。魚介類が主な摂取源だった。一般地域住民の48時間尿中のビスフェノールA(BPA)排泄量は、平均(標準偏差)83(54)μgで あり、12〜245mgの範囲に広く分布していた。ビスフェノールAジグリシジルエーテ ル(BPADGE)の職業曝露者と対照者の尿中BPAの平均濃度はそれぞれ41, 61ng/mgクレアチニンであり、両者に有意な差が認められなかった。末梢血白血球のCYP1B1のmRNA発現量が、タバコ煙中のダイオキシン類似化学物質の曝露指標となる可能性が 示唆される一方、職業的な多環芳香族炭化水素やダイオキシンによる暴露では、変化が認められなかった。PCBとがんに関する文献レビューを行った結果、いくつかの部位においてリスク上昇の可能性が示唆された。そして、子宮内膜症とEDCとの 関連を検証するための症例対照研究のプロトコールを作成し、倫理審査を受け、症例収集の準備を終了した。以上より、PCB,DDE,BPAなどの日常環境中に存在し、人が暴露していることが示されたEDCが、子宮内膜症やある種のがんの発症に関連 しているか否かを疫学的に検証する必要があるとの結論を得た。

戻る

内分泌かく乱物質ホームページに戻る
平成11年度 厚生科学研究報告書のページにもどる