研究要旨

エストロゲン様作用を持つノニルフェノール(nonylphenol)、ゲニスタインの 7,12-dimethylbenz[a]anthracene(DMBA)誘発ラット卵巣発がんに対する影響を検討するする目的で動物実験を開始した。 また、これらの物質とオクチルフェノールについて培養がん細胞(MCF-7,CACO-2)を使用したがん細胞の増殖や細胞周期に及ぼす 影響を検討した。動物実験は総計145匹の雄性F344ラットを使用し、以下の８群に分けた。第１群(20匹):DMBA(0.5%の濃度でオリーブ油に 懸濁し、左卵巣内に0.01ml注入)→25Oppmノニルフェノール、第２群(20匹):DMBA→25ppmノニルフェノール、 第３群(20匹):DMBA→25Oppmゲニスタイン、第４群(20匹):DMBA→25ppmゲニスタイン、第５群(20匹):DMBA、 第６群(15匹)：250ppmノニルフェノール、第７群(15匹):25Oppmゲニスタイン、第７群(15匹):無処置対照群。 被験物質はDMBAの最終投与の1週後から50週間、混餌投与し、その発がんに及ぽす影響をみる。現在、実験開始後約26週を経過し、 実験は順調に経過している。一方、両物質のヒト乳がん細胞株MCF-7とヒト大腸がん細胞株CACO-2の増殖に対する影響を検討したところ、 ノニルフェノールは10^-6molの濃度に、ゲニスタインは10^-7molの濃度にMCF-7増殖活性のピークがあった。MCF-7の細胞周期に対して、 ノニルフェノールは影響を与えなかったが、ゲニスタインは10^-4molの濃度でG2/M arrestを惹起した。また、ノニルフェノール、 ゲニスタインはCACO-2細胞の増殖を濃度依存性に抑制し、ゲニスタインは10^-4〜10^-6molの温度でG2/M arrestを惹起した。