平成11年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

総括研究報告書

食品中内分泌かく乱物質等の発がん修飾作用に関する実験的研究

総括研究者  西川 秋佳 (国立医薬品食品衛生研究所病理部室長)

研究要旨

食品中に存在する天然および合成の内分泌かく乱物質として、genistein および nonylphenolを取り上げ、甲状腺、乳腺、子宮、前立腺、卵巣ないし多臓器における発がん修飾作用を同一の投与条件で 検討する実験を開始し、一部実験を終了した。実験モデルとして、DHPN誘発ラット甲状腺発がんモデル、DMBA誘発ラット乳腺発がん モデル、ヒトプロト型c-Ha-ras遺伝子導入ラットにおけるDMBA誘発乳腺発がんモデル、p-53遺伝子欠損マウスにおける ENU誘発子宮発がんモデル、DMAB誘発ラット前立腺発がんモデル、DMBA誘発ラット卵巣発がんモデルおよびラット多臓器中期発がん 検索モデルを用いて、genisteinおよびnonylphenolを250ppmと25ppmの二段階の用量で混餌投与した。その結果、 genisteinは乳腺腫瘍の促進または抑制という相反する傾向を示しているが、いずれも組織学的検索は終了していない。 その他の臓器に対するgenisteinの影響は今のところ認められていない。また、nonylphenolは現在までのところ諸臓器の発がん過程に 影響を及ぽしていない。
内分泌かく乱物質の作用機構に関連するその他の主な実績として、大豆粉末は低ヨ ード食と特異的に作用して ラットの甲状腺を増殖させ、フェノバルビタールなど他の甲状腺腫瘍プロモーターとの相乗効果を示さないこと、低ヨード食との 相乗作用には閾値があることおよび大豆イソフラボン自体には顕著な甲状腺増殖作用がないことを明らかにした。p-53欠損マウスに ENUを一回腹腔内投与し、1週後から内分泌かく乱物質とされるビスフェノールAおよび大豆粉末を26週間混餌投与した結果、子宮、 肺などに対する発がん修飾作用はみられなかった。天然物質であるmorinやchalcone の植物性エストロゲン様作用について、 ヒト乳がん培養細胞MCF-7を用いて調べた結果、morinにはnonylphenolよりも弱いMCF-7細胞の増殖活性があるが、chalconeには 増殖活性がないことを明らかにした。また、genisteinはがん細胞の増殖を抑制し、その作用は細胞周期のG2/M期であることを明らかに した。さらに、ラット下垂体でのがん遺伝子pttgはエストロゲンにより発現調節されており、その応答性の差が下垂体の腫瘍化に 関連していることを示唆する知見を得た。

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