平成11年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

総括研究報告書

エストロゲン様化合物の組換え酵母活性とラット・スメア試験の相関及び数種の日常生活関連物質のスクリーニング評価の試み

総括研究者  片瀬 隆雄 (日本大学生物資源科学部)

研究要旨

組換え酵母系検出法を用いて内分泌撹乱物質を検索したところ、 食品包装用ラップフィルム、学校給食用手袋、オモチャなどのプラスチック製品からの溶出物や関連化合物 (5種),天然物成分化合物(3種)及び医薬品(3種)の一部に明らかなエストロゲン様活性が検出きれ た。1930年代にDoddsらの検索したラット・スメア法によるエストロゲン活性物質の中から6種の化合物を 選び組換え酵母系検出法の活性結果と比較したところ,両法の間でよい相関(r=0.99260)が求められた。 しかし,Dodds関連化合物の中で,hexestrolは酵母系検出法で相対的に強い活性を示した。そこで,同時に 行った乳癌細胞系検出法において,天然エストロゲン成分のestriolは酵母系検出法に比べて100倍強い活性を 示した。未解明の必要な検討事項の残されていることを前提として,酵母系検出法によるスクリーニング実 験結果をDodds法による日常で使用されている生活物資溶出物及び関連化合物(12種)のラットヘの最少効 果投与量を推定した結果,3.6xl0-4mgの17α-ethynylestradiol(低用量避妊薬ピルの成分)から9.6gのプラス チック製食卓用クロス溶出物の範囲にあった。
プラスチック製品の食品包装材ラップや給食用手袋及びノニルフェノールなどの検討の過程で,工業的に生 産され日常生活で使用される化学物資の中で,それらの成分の一部を除去することによって生活環境中に放出 される汚染物質を低減させることができる可能性が指摘された。

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