平成11年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

分担研究報告書

内分泌かく乱物質等の文献情報に関する調査研究

分担研究者  長谷川 隆一(国立医薬品食品衛生研究所・総合評価研究室長)

協力研究者  小泉 睦子
廣瀬 明彦

研究要旨

 本年度は、最近研究が大きく進展したアルキルフェノールに関してここ数年内に 公表された最新の情報に注目し、最初に培養細胞や酵母を用いたエストロゲン様作 用、ほ乳動物(ラット、マウス)に投与した際の子宮を中心とする雌生殖器、乳腺 および雄生殖器に対する作用を、続いて、生体における体内動態および毒性試験に よる成績をまとめ、最後に作用発現摂取量を踏まえ、ヒトが摂取したときのリスク アセスメントおよび総合考察を行った。その結果、培養細胞あるいは酵母を用いた エストロゲン様活性は、nonylphenolが17β-estradiolの1,000〜300,000分の1で、 octylphenolがnonylphenolの10〜30倍強いとの結果が得られているが、ヒトへ外 挿の場合には経口投与による作用発現投与量が最も重要である。in vivo摂取による 生殖系への影響のなかで、最も低い経口摂取無毒性量は生殖発生毒性に関するNTP の多世代生殖試験の低用量で、15mg/kg/dayである。この値を現在知られている暴 露量から推定されるヒトヘの摂取量と比較し、蓄積性のないことを踏まえると、成 人においては十分に高い安全域が保たれていると考えられる。しかし、一般的に胎 児・新生児期は内分泌かく乱物質を含む多くの化学物質に対する感受性が高いとさ れており、また、信憑性はともかく幾つかの動物実験で低用量の胎児・新生児期暴 露による影響が報告されていることからも、今後、胎児・乳児期からの長期暴露も含 め、更なる検討が必要であると考えられる。

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