平成11年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

分担研究報告書

Bisphenol A の行動影響に関する研究

分担研究者 鈴木 勉 星薬科大学薬品毒性学教室教授
協力研究者 成田 年 星薬科大学薬品毒性学教室講師
協力研究者 矢島義識 星薬科大学薬品毒性学教室助手

研究要旨

近年、内分泌かく乱化学物質の生体に対する影響が深刻な社会問題となっている。そこで究では、内分泌かく乱化学物質の1つであるbisphenol A を妊娠期および授乳期に曝露したマウスからまれたマウスにおける行動影響を検討した。実験にはddY系マウスを用い、bisphenol A をそれぞれ2μg/g of food, 0.5, 2, 8 mg/g of food の濃度に混入した飼料で妊娠期および授乳期に処置した親から生まれたマウスを離乳後4週間以上普通飼料で飼育して使用した。bisphenol A処置マウスは用量依存的に異常行動を示し、比較的高用量では新規環境における自発運動量、methamphetamine誘発自発運動促進作用およびその耐生形成を有意に増強した,さらに、methamphetamineの精神依存はbisphenol Aの用量に依存して増強された。また、疾痛閾値はwram-plate法で用量依存的に減少し、morphine誘発鎮捕効果も有意な減少を示した。一方、bisphenol A 処置マウスは抗葛藤作用を示したが、学習・記憶や運動協調性には著明な変化を示さなかった。また、bisphenol A 処置マウスはreserphine誘発体温低下作用に対する拮抗作用、すなわちresphine作用を示した妊娠期および授乳期にbisphenol A を処置されたマウスが示した異常行動・新境への適応性の低下、methamphetamine誘発自発運動促進準用、その逆耐性形成および精神依存形成の増強reserphine誘発体温低下作用における抗reserphine作用などは主にゆdopamine神経系の変化に由旅するものとえられる。すなわち、bisphenol lAの妊娠期および授乳期投与により、dopamine神経系の発達に不可逆蹴変化が引き起こされてこのような行動変化が発現した可能性が高いと推察される。さらに、bisphenol A処置マウスにおいて瘤病閾値の低下やmorphine誘発鎮痛作用の減弱カ観察されたことから、opioid神経系の発達にも不可逆的な変化が引き起こされている可能性が考えられる。

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