平成11年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

分担研究報告書

水道水における内分泌かく乱物質としての農薬に係わる毒性及び環境動態情報

分担研究者  高木 博夫 (国立環境研究所地域環境研究グループ主任研究員)

研究要旨

1.日本国内における内分泌かく乱化学物質として疑われる農薬の使用実態
 農薬の出荷量を用途別、県別農薬出荷量として農薬要覧より1999農薬年度から過去にさかのぼり 調査した。内分泌かく乱化学物質として疑われる農薬は、「Environmental Endocrine Disrupors A Handbook of Property Data」および「内分泌かく乱作用が疑われる化学物質の生体影響データ集」 に記載されていた化学物質の中に42種が記載されていた。それらの内、国内では使用されない有機 塩素系農薬および有機りん系農薬を除いた22種の農薬について国内での出荷があった。(表1) 出 荷量からみた主な農薬は、殺虫剤ではカルバリル(NAC)が12位、メソミルが13位、マラソン17位、 クロルピリホス19位、ケルセン27位、ベンゾエピン32位の6種であった。殺虫殺菌剤ではベノミ ル4位の1種、殺菌剤ではマンゼブ2位、マンネブ6位、ジラム14位、ジネブ30位の4種、除草 剤では、2,4-D 17位、アラクロール28位、メトラクロール32位、アトラジン33位、シマジン35位の5種、 合計16種であった。

2.農薬の使用実態に基づくプライオリティー
 内分泌かく乱作用の可能性を示唆する催奇形成、繁殖影響等の毒性試験に関するデータを2次情報 から検索した。その結果は69種の農薬についてしか得られていなかった。これらのデータで催奇形成 がある農薬は、上記ハンドブックにすべて記載されていた。
 光・水に対する安定性、土壌中での運命、動物における運命などについても同程度の数データしか えら得ていない。

3.農薬の酵母Two−Hybrid System エストロゲンアッセイ
 内分泌かく乱作用が疑われる農薬の中にアトラジン、シマジンのトリアジン系農薬が含まれている ことから、トリアジン系農薬に注目しトリアジン系農薬5種(除草剤)および河川において検出され た農薬(殺虫剤10種、殺菌剤1種、除草剤5種)の総計21種について酵母Two−Hybrid Systemを 用いてエストロゲン活性を調べた。(表2) その中にはEnvironmental Endocrine Disrupors A  Handbook of Property Dataに記載されている農薬のうちアトラジン、NAC、マラチオン、シマジン が含まれている。また、DDTおよびメトキシクロルがポジティブコントロールとして含まれている。
 Agonistとしては、いずれの農薬にもS9を加えた系、加えていない系の両者において、エストロゲ ン活性は見られなかった。Antagonistとしては、ブロモプチド、ディメピペレート、イソプロチオラ ン、プレチラクロール、メフェナセットおよびペンタクロロフェノールにおいて活性が見られた。ペ ンタクロロフェノールの場合は、MICROTOXによる毒性が見られていることから、さらに検討する 必要がある。今回は、AntagonistについてはS9を加えた系を行っていないが、S9による代謝物質が 活性を示す可能性ものこされている。

戻る

内分泌かく乱物質ホームページに戻る
平成11年度 厚生科学研究報告書のページにもどる