平成11年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

分担研究報告書

酵母Two-Hybrid法を用いたエストロゲンの評価に関する研究

分担研究者  亀井 翼 (北海道大学大学院工学研究科 助教授)

研究要旨

 昨年度と同様にラットのエストロゲンレセプターを組み込み、形質転換した酵母を用い(1)昨年 度の知見の再確認、(2)環境水中に最大のバックグランド有機成分として存在するフミン質のエス トロゲン発現性の検討と(3)複合成分系におけるエストロゲン活性発現パターンの検討(4)高度浄水 処理システムおよび通常の浄水処理システムによる河川水のエストロゲン発現強度の低減効果の検 討を行い以下のような知見を得た。
(1)酵母Two-hybrid試験においてはpositive controlのみならず試料の析出による見かけの菌体 増加及び真の菌体増加の有無を常に確認し、得られた逆U字型応答曲線がエストロゲン活性反応に よって得られたものか、試料の析出あるいは菌体の非増加による見かけ上の逆U字型応答によるも のかの判断が必要である。
(2)環境水のようにエストロゲン活性強度が異なる複数成分が共存する場合、エストロゲンの最大 発現強度はその複合系における最もエストロゲン活性が強い1成分の最大発現強度に支配され、相 加作用はプラス方向ではなくマイナス方向(共存成分による全エストロゲン活性の減少)に作用す る。
(3)溶解性のエストロゲン活性成分は凝集処理でほとんど低減されないが、懸濁性成分に付着して いるエストロゲン活性成分は凝集処理あるいは砂ろ過により除去されうる。
(4)エストロゲン活性成分は水道法に定められている給水端で0,1mg/L以上の残留塩素濃度を20 時間程度確保する塩素添加量のみで十分に不活性化することがてきる。
(5)前置する砂ろ過により懸濁性成分に由来すると考えられるエストロゲン活性成分が除去されて いるためオゾン、生物活性炭によるエストロゲン活性成分の除去効果は確認できなかった。しかし ながら、オゾン処理によるエストロゲン活性成分の新たなる生成は認められない。
(6)母Two-hybrid法においては環境水中にバックグランド有機成分として多量に存在するフミン 質(Sep-Pak C-18Cartridge吸着成分でかつメタノール溶離可能区分)のエストロゲン活性は塩素 処理前のみならず塩素処理後でも認められなかった。

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