平成11年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

分担研究報告書

水道水のエストロゲン様作用の特性とその制御性の関する研究

分担研究者  伊藤 禎彦 (京都大学大学院工学研究科 助教授)

研究要旨

 「内分泌撹乱化学物質のスクリーニングと試験法に関する諮問委員会」(Endocrine Disruptor Screening and Testing Advisory Committee,EDSTAC)では、個別の 化学物質に加えて、次の6つのタイプの混合物についても試験を行うことを勧告して いる1,2)。@母乳、A大豆ベースの乳幼児食中の植物エストロジェン、B有害廃棄物処 分場で一般的に検出される混合物、C農薬・肥料、D消毒副生成物、Eガソリン。
 EDSTACが勧告した6つの混合物の中に「消毒副生成物」が含まれていることは重 要である。わが国の水道としても内分泌撹乱誘発の可能性があるものとして取り上げ、 対応策を検討しておく必要があると考えられる。
 実際、平成10年度までの研究で、琵琶湖水中からエストロゲン様作用を検出すると ともに、その作用が塩素処理によって増大することを示した2,3)。また、試薬フミン酸 を用いた実験でもエストロゲン様作用は塩素処理によって増大した。この実験的知見 は、内分泌撹乱誘発性からみた安全管理が今後本格化すると考えられる中で、個別の 化学物質のほかに消毒副生成物も管理対象とすべきであることを示唆したものとして 重要と考えている。
 以上から本調査研究では、消毒副生成物に重点をおいている。目的の第一は、自然 水中のエストロゲン様作用の構成を把握、推定した上で、塩素によってエストロゲン 様作用が強められる原因について実験的検討を行うこととした。
 一方、上記検討を行った上でもエストロゲン様作用を示す原因物質や、その有害性 については不明点が残らざるを得ない。しかし、水道水からエストロゲン様作用を検 出できるのは事実である。したがって、水道としては処理過程での挙動の把握や、現 状での除去程度、技術選択の方向性などに関する基礎資料を整備していく必要があろ う。この観点から、目的の第二として、凝集、活性炭吸着を取り上げ、バイオアッセ イで検出されるエストロゲン様作用全体の処理性について検討する。
 また、東京都玉川水処理実験施設で採取されたサンプルのエストロゲン様作用試験の 結果を6.に報告する。

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