平成11年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

分担研究報告書

内分泌かく乱物質を解毒するヒトUGT分子種の特定と母胎・胎盤・胎児での機能

分担研究者  塩田 邦郎 (東京大学 大学院農学生命科学研究科 細胞生物学)
研究協力者  横田 博 (酪農学園大学 獣医学部獣医生化学教室)

研究要旨

  ビスフェノールAはラット肝臓にあるUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT2B1)によってグルクロン酸抱合(解毒)される(H.Yokotaら,1999,Biochem J.)。今回、ノニルフェノール・オクチルフェノール・植物由来のエストロジェンについて、ヒトおよび各種動物肝におけるグルクロン酸抱合能について検討した。市販のヒト肝ミクロゾーム及び各種動物肝ミクロゾームを用いて、グルクロン酸抱合反応を行い、逆相HPLCにより反応産物の同定・定量を行った。また。ラット肝潅流法を用いてビスフェノールAの臓機内での代謝を測定した。その結果、@ラット肝臓ミクロゾームにより、ビスフェノールAのみならずノニルフェノール・オクチルフェノール・植物由来エストロジェン(ゲニステイン、ビオカニンA、ダイゼイン)もグルクロン酸抱合された。Aヒト肝臓ミクロゾームにも、これら内分泌かく乱物質のグルクロン酸抱合能が検出された。Bヒト肝における、ビスフェノールA抱合活性値はラットの60-50%、ノニルフェノール抱合活性値は40%前後、オクチルフェノールは30%前後であった。また、植物由来エストロジェンは40-10%であった。Cウサギ・豚・牛・ヒツジの肝ミクロゾームにも同様の酵素活性が存在し、ラットと同程度以上の値を示した。D薬物のグルクロン酸抱合能が遺伝的に欠損しているネコには、ビオカニンA以外の活性は検出されなかった。EビスフェノールAはほとんどラット肝臓内でグルクロン酸抱合され、胆汁中に排泄されることが分かった。
  以上の結果より、ヒトはじめ多くの動物肝に於いて、ビスフェノールA・ノニルフェノール・オクチルフェノール・植物由来エストロジェンはグルクロン酸抱合されること。ビスフェノールAは大部分グルクロン酸抱合で胆汁中に排泄されることが分かった。

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