平成11年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

分担研究報告書

クロロベンゼン類及びパラベン類の分析法開発と実試料の分析

分担研究者  織田 肇 (大阪府立公衆衛生研究所)
研究協力者 藤島 弘道、月岡 忠、寺澤 潤一 (長野県衛生公害研究所)

研究要旨

  クロロベンゼン類およびパラベン類は内分泌かく乱作用を持つ可能性があることが指摘されている。このうちパラジクロロベンゼンは防虫剤として、パラベン類は保存料として一般の環境で広範囲に使用されている。これらの物質にはヒト体内で代謝する経路があることが知られているが、環境中での大量消費に伴いヒト体内に常時供給がある場合、体内中(血液等)で検出される可能性が高く代謝物を含めての内分泌かく乱作用の可能性についての検討が必要である。そのため、ヒトがこれらの物質を摂取する経路の解明、摂取してからの体内中での挙動、代謝、排泄等について調査を行うための迅速で高感度な分析方法の開発を行い、併せて実試料の分析によるヒト健康への影響について研究を行った。
1)パラベン類を模擬飲料として摂取した生体内での挙動を確認したところ摂取直後20分以内に血液中にパラベン類が検出されるとともに代謝であるパラヒドロキシ安息香酸(PHBA)濃度の増加が確認された。PHBAの血中濃度はその後急速に低下し8時間後ではほぼ初期濃度まで回復した。同時に行った尿試料の結果、尿からもパラベンが検出された。また、PHBA濃度は、試飲後20時間近く影響が残った。
2)パラベン類の摂取経路として食品に分類されない栄養ドリンク剤について調査をした結果、パラベン類を含むドリンク剤の場合、平均で50ppm程度添加されており、比較的大きなパラベンの摂取源であることが確認された。
3)内分泌かく乱作用の確認されているHCBは食事由来で摂取する可能性が大きいことから、暴露量の推定を行った。トータルダイエット法による一日摂取量は65ng/日であった。陰膳法での平均一日摂取量では113ng/日であった。概ね魚介製品がHCBの摂取源であることが確認された。
4)パラジクロロベンゼンは防虫剤として使用されているが室内空気経由であることが明らかである。ヒト体内での代謝はあるものの、常時高濃度暴露される条件下では血液中に高濃度で存在することが明らかになり、室内濃度と血液濃度の濃度レベルの比較を行った結果、y=1.4Xの回帰式が得られた。この結果、室内濃度から血液濃度を推定できることになった。

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