平成11年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

分担研究報告書

内分泌かく乱物質・性ステロイド代謝に関与する遺伝子の多型と機能の解析

主任研究者  岸 玲子 (北海道大学医学部予防学講座公衆衛生学分野教授)
研究協力者  佐田 文宏、戸崎 静香、貢 英彦、片倉 洋子

研究要旨

   シトクロムP450(CYP)遺伝子スーパーファミリーは、非常に多くの薬物、発癌物質、毒素などの外因性化学物質およびステロイド、脂肪酸、プロスタグランジンなどの内因性化合物の酸化的代謝を触媒する一群のヘム蛋白質をコード化している。このうちCYP1A1、1B1、3A4などは、Ah受容体などの核内受容体とともに2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin(TCDD)などの内分泌かく乱物質やテストステロン、エストラジオールなどの性ステロイドの代謝に関わり、グルタチオン転移酵素(GST)など抱合反応により不活化(解毒)を担う第2相の酵素群と連携している。CYP3A4はヒトの肝臓、腎臓および小腸で発現し、臨床的に、生理学的におよび中毒学的に重要な多くの化合物の代謝に関与している。テストステロンの2β、6β、15βの水酸化反応やエストラジオールの16αの水酸化反応などには、この酵素が関わっている。
  本研究では、内分泌かく乱物質の生殖機能と次世代への影響、特に生殖泌尿器系・先天異常の成因を遺伝子レベルで明らかにすることを目的として、尿道下裂等の先天異常の患者と親および不育・不妊症例の遺伝子多型を検索し、機能の不明な異変に関しては、in vitroの発現系を用い、薬物動態の解析を行う。
  CYP3A4 遺伝子の変異型アリルCYP3A4*2(Ser222Pro)は、ニフェジピンに対して、野生型に比べると低い固有クリアランスを持つが、テストステロンの6βの水酸化反応に対しては、野生型と有意差は認められなかった。不育症例において、GSTM1の完全欠損型の頻度は63.5%と高頻度であった。
  今後、尿道下裂、停留精巣など先天異常に関し、親の機能異常を伴う遺伝子型による次世代影響を、不育症に加え不妊症および子宮内膜症における症例の遺伝子型の関与を検討する予定である。

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