平成11年度 厚生科学研究費補助(生活安全総合事業)

分担研究報告書

先天異常の発生動向および不育症、不妊・子宮内膜症に関する症例対照研究
−内分泌かく乱物質との関連を中心に−

T.不育症、不妊・子宮内膜症に関する症例対照研究

主任研究者  藤本 征一郎 (北海道大学医学部産婦人科学講座 教授)
研究協力者  山田 秀人、星 信彦、和田 真一郎、奥山 和彦、平山 恵美
佐田 文宏、小橋 元、戸崎 静香、貢 英彦、片倉 洋子

研究要旨

  北大産婦人科で経験した不育症、不妊・子宮内膜症例に関し、内分泌かく乱物質の代謝に関与する薬物代謝酵素(CYP1A1,CYP1B1,GSTM1)の遺伝子多型、NK細胞活性ならびにNKサブセットによる免疫機能および先天性凝固異常症(Factor V Leiden および MTHFR C677T Mutation)との関連を調べた。不育症例において、CYP1A1の3’側の変異型遺伝子CYP1A1*2AMspT多型)の頻度は31.5%(ホモ型10.7%,ヘテロ型41.7%)、GSTM1の完全欠損型の頻度は63.5%で、後者は高頻度であった。非妊時におけるNK活性は33.1±15.8%であった。NK活性およびサブセットと流産回数や不育症原因との関連は認めなかった。非妊時NK活性およびサブセットと妊娠帰結とは有意な関連はみられなかった。妊娠初期のNK活性と妊娠帰結との検討では、非流産群(C群)において、妊娠6-7週のNK活性(28.7±12.2%)は、4-5週のNK活性(37.7±]13.5%)に比べて低下していた(p<0.01)。また妊娠6-7週における染色体異常流産群(Aa群)のNK活性(31.1±11.1%)は、C群とは差を認めなかったが、染色体正常流産群(An群)のNK活性(41.7±20.3%)は、C群に比べ高値であった(p<0.05)。妊娠6-7週における末梢血NK細胞の高活性は、染色体正常流産と関連することが初めて明らかとなった。Factor V Leiden Mutation,MTHFR C677T Mutaionの頻度は、習慣流産患者とコントロールで有意差はみられなかったことより、習慣流産の発症には、先天性凝固異常症の関与は少ないと考えられた。また、1976年以降現在まで、出生前診断施行症例および胎児異常症例について保持されている羊水、臍帯血、胎盤、胎児組織などの検体を用いて、年代毎疾患別に内分泌かく乱物質等の定量と、前方視的に胎児奇形症例の臍帯血、母体血、羊水を検体採取を行い、種々の内分泌かく乱物質の定量の準備を進めている。

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