平成10年度厚生科学研究費補助金(生活安全総合研究事業)

総括研究報告書

28日間反復投与試験等に関する調査研究

(OECDテストガイドライン国際共同バージョンプロジェクト)

主任研究者 広瀬雅雄 国立医薬品食品衛生研究所 病理部長

研究要旨

内分泌かく乱化学物質(EDCs)のin vivoスクリーニング法開発を目的とした国際共同バリデーションプロジェクトに参加する目的で、内分泌かく乱物質の人体影響に関する以下の調査研究事業を行った。

1)28日間反復投与毒性試験

化学物質の内分泌系への影響を高感度に検出し得る新しい試験法として提案された"enhanced OECD Test Guideline 407"の有用性を検証する目的で、既知の非ステロイド性抗アンドロゲン作用物質のFlutamideおよび合成男性ホルモンであるMethyltestosterone (MT)を用い、本案を基本としたラット28日間反復投与毒性試験を実施した。その結果、臓器重量、血清ホルモンレベル、病理組織学的所見がホルモン作用を検出する有効な指標であり、なかでも膣スメア検査や精子形成サイクルを考慮した精上皮の定量的解析がすぐれた指標になり得ると考えられた。一方、用量設定基準、設定方法、更に感度の良い検査項目の追加や不要な検査項目の削除、など更なる検討が必要であると思われた。また、臓器重量、血清ホルモンレベル、病理組織学的所見がホルモン作用を検出する有効な指標であり、なかでも雌ではスメア検査、雄では精子形成サイクルを考慮した精上皮の定量的解析がすぐれた指標になり得ると考えられた。一方、用量設定基準、設定方法、測定項目など今後検討を加えるべき課題も残されている。

2)子宮重量等を指標とした生体試験

当初の予定では、OECDが制定する統一プロトコールを用い、ホルモン作用の明らかな5品目について子宮肥大試験を行うこととしていたが、OECDの子宮肥大試験バリデーションの予定が変更となったため、日本の国立医薬品食品衛生研究所がリードラボとなってプレバリデーション段階として、3通りのプロトコールを用意し、それに基づいて国際的にエチニールエストラジオールについての用量作用データを持ち寄り、各施設のバリデーションとし、次の段階として6種類の代表的化学物質について、それぞれのプロトコールを用いて検討を進めることとなった。本研究では、3通りのプロトコールの作成に必須な基礎データの収集に必要な種々の実験を行った。

3)子宮重量等を指標とした生体試験による相加・相乗効果の検討

内分泌かく乱化学物質は、その環境化学物質としての性格上、複合暴露の影響が一つの問題として常に検討対象となってきている。しかし、複合作用に関する研究はin vitro試験系によるものがほとんどであるとともに、系統立った比較検討がなされたプロジェクトはほとんどない。本研究では、一世代試験を頂点に、子宮肥大試験およびハーシュバーガー試験を用いて、内分泌かく乱作用が実験的に知られている代表的な化合物について、その複合作用を検討した。その組み合わせば、それらが結合することが想定される、あるいは知られている核内受容体毎になされた。使用する化学物質の単一ロットの確保、必要なものについては新規合成、あるいは調達に予想を上回る時間を要したため、全体的に実験開始の遅延が生じ、現段階では一部の子宮肥大試験およびハーシュバーガー試験からのpreliminary dataを得ている段階である。

 

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